[配布資料]
事務総長会見記録(令和2年12月16日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札談合に係る告発について
本日,私からは,2つお話しいたします。まず,先週の医薬品の入札談合に係る告発についてお話しいたします。
公正取引委員会は,これまで,独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札談合事件について犯則調査を行ってまいりました。その結果,独占禁止法に違反する犯罪があったと思料して,12月9日,アルフレッサ株式会社,株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社の3社と,それら3社で入札及び価格交渉等に関する業務に従事していた7名とを検事総長に告発いたしました。同日,東京地検は,告発を受けてこれらの事業者等を東京地裁に独占禁止法違反の罪で起訴いたしました。
公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案,違反を反復して行っている事業者・業界による価格カルテルなどであって,行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案について,法務・検察当局とも密接な連携を取りつつ,積極的に告発を行うこととしております。
本件入札談合は,国民の保険医療を支える上で社会的に必要不可欠な医薬品を対象としたものであり,医療保険制度の下で保険料を負担する全国民に多大に影響を与えた事案であり,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案です。また,本件の被告発会社は,過去にも公正取引委員会の処分を受けております。本件告発は,今後,入札談合や価格カルテルを抑止する上で大きな意義を持つものと考えております。
公正取引委員会としては,今後とも告発が相当と捉えた事案に対して,積極的に告発を行ってまいります。
OECD競争委員会11月・12月会合について
次に,OECD,経済協力開発機構の競争委員会の11月・12月会合についてお話しいたします。
OECD競争委員会の11月・12月の会合が,11月30日月曜日から,12月10日木曜日までの日程で,ウェブ会議形式で開催されました。公正取引委員会からは,青木委員ほかが参加いたしました。
OECD競争委員会は,OECD加盟国の競争当局が中心となりまして,競争法・競争政策に関する各国共通の課題について議論を行っております。公正取引委員会は,1964年に日本がOECDに加盟して以来,この委員会のメンバーとなっております。また,現在,青木委員がOECD競争委員会の幹事会であります「ビューロー」の副議長に就任しています。
OECD競争委員会は,本会合と,規制と競争に関する第二作業部会,そして協力と執行に関する第三作業部会を,それぞれ,毎年2回,6月と12月頃に開催しているほか,OECD加盟国以外の国・地域からの参加を得て,「競争に関するグローバルフォーラム」を,毎年12月頃に開催しております。
OECD競争委員会においては,近年,主要なテーマとして,市場のデジタル化が競争に与える影響が取り上げられておりまして,今回の会合でも「デジタル広告市場」が議題の一つとして取り上げられました。
本議題に関して,公正取引委員会は,本年4月に公表した「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」の内容を踏まえ,日本におけるデジタル広告市場の仕組みや取引実態等を紹介いたしました。また,競争に関するグローバルフォーラムにおいて,「新たな競争上の課題に対処するための市場調査の活用」のセッションに,貢献文書を提出するなどして,公正取引委員会の取組等を紹介いたしました。
公正取引委員会といたしましては,OECD競争委員会を含む国際的な取組におきまして,引き続き積極的に議論に参加し,貢献していきたいと考えております。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 先週,高等裁判所が判断した,山陽マルナカの判決についてなんですが,命令書の記載の不備ということで審決が取り消されたというのは初めてと思うんですが,率直な受止めと,判決からある程度時間がたったので,判決文を精査する時間があったのかなと思いますが,今後の対応についてお話しできることを教えてください。
(事務総長) 先週,御指摘の判決があったということでありまして,公正取引委員会の主張が認められなかったことは残念でございます。また,今後の対応については,引き続き,判決文の内容を精査の上,検討しているところでございますので,今現在,どうするかという結論についてお話しできる状態にはございません。
(問) 追加で1つ質問ですが,この他にも高等裁判所で審決の取消しが求められている優越的地位の濫用についての案件が3件あると思いますが,これらの案件についての影響については,どうお考えになりますか。
(事務総長) 今回の判決は,現在,見ている限りでは,優越的地位の濫用行為の相手方である納入業者が特定されていなかったという瑕疵ということで,こういう判断が出たものと考えております。本件以外の同種事案については,相手方である納入業者を特定しておりますので,そういう意味で今回の判決の基礎となった事実と,その他の事案は違いがあるものと考えております。訴訟の判断がどうなるかということについては,裁判所で判断されることですので,こちらからのコメントは控えたいと存じます。
(問) 今の質問に関連して,今回の山陽マルナカ訴訟についてお聞きしたいんですけれども,今回の山陽マルナカ訴訟については優越の課徴金第1号事件ということで,排除措置命令の命令書であったり,課徴金納付命令の命令書に特定納入業者について特定していませんでした。第2号事件以降については,命令書に直接記載するようになったということのほかに,この山陽マルナカの審決の段階では,確かに特定していないことの不備を指摘しつつも,結局,参考資料で十分補足できるとか,治癒されたということで退けられています。つまり,早い段階で公取委側としては,この命令書に記載,特定しなかったということに対して,ちょっとまずいんじゃないかとか,いろいろな議論はあったと思うんですけれども,いかんせん,ちょっと10年前の事案なので,なかなか当時をたどることができず,そこで,命令書に特定するようになった,つまり改善をその後されているわけですし,その後,審決も指摘されているわけなんで,そのような不備がどうして起きたのか,この背景について分かるところを教えてください。まず1点目の質問です。
(事務総長) その当時,どういう判断をしたかというのは,ちょっと今,答えられる情報を持っていないので,何とも申し上げようがございませんが,当時はそれで,ある意味では足りると考えたんでしょうけれども,その後は,より適切より厳格にということで,添付をしてきたということかと思います。ちょっと申し訳ございませんが,10年前の当時,その山陽マルナカの最初のときに,どう判断したかというのは,答えられる材料を持っておりませんので,控えたいと思います。
(問) もう1問です。今後の対応ということで,上告するかどうかということだと思うんですけれども,上告期限については,恐らく判決文はその日に,即日受け取っていると思いますので,上告期限は恐らく来週の土曜日になると思います。その際に,もし上告するとしたら,恐らく来週の金曜ぐらいまでには,公式に上告しましたという連絡が来るのかどうか,ちょっと確認をしたいのと,もし上告しなかった場合,上告を断念した場合については,土曜が経過した,要は日曜日の午前0時に判決が確定してしまうので,我々としても把握することが翌週になってしまいます。恐らく金曜日の段階で報告がないということになれば,土曜日に慌てて上告するということは少し考えづらいところがありますので,その際には少なくとも金曜までには,断念した場合も教えていただきたいということのお願いを含めての質問です。
(事務総長) もちろん上告の期限がございますので,それまでに公正取引委員会としてどうするかという結論を出すことになろうかと思います。今回のことは,何とも申し上げられませんが,過去の例で言いますと,更に公正取引委員会として争うと決めた場合も,争わないと決めた場合も,いわゆるプレスリリースというようなものはしておりませんので,過去の例で言えば,そういうものを出すということは,多分ないんじゃないかなと思っています。
(問) プレスリリースは出さなくても,我々も取材は続けていますし,少なくとも上告するかどうかというのは公正取引委員会の判断ということですので,また,今回,特に不備を指摘されての逆転敗訴という形でもありますので,そこについては,ちょっと今後も取材していきたいと思いますが,よろしくお願いします。
(事務総長) 担当なり,その責任者が答えられる段階になれば,取材に応じてお答えするということになろうかと思います。
(問) 私は以前,司法クラブで裁判取材をしている中で,例えば,刑事事件で敗訴した,いわゆる無罪というときに,例えば,控訴なり,上告するタイミングとして,上告するとしたら,大体その数日前に行うというのが,いわゆる国家機関であれば,よくあることだと思うんですけど,断念した場合には,要は土曜日の23時59分まで確定はしていないので,なかなかそこは把握してないところもあります。そこは臨機応変によろしくお願いします。
(問) 巨大IT規制について2問伺います。先日,欧州委員会が巨大IT企業への規制を強める2法案を発表しました。厳しい制裁を想定したものもありますが,受止めと国内での対応について教えてください。
(事務総長) 昨日,欧州委員会が,ちょっと仮訳ではございますけれども,「デジタルサービス法案」と「デジタル市場法案」というのを公表したということでございます。まだ出たばかりでございますので,今,担当のほうで一生懸命精査しているところでございます。今までで分かっている,私が聞いているところで言いますと,デジタルサービス法案については,オンラインでの消費者保護等を目的として,違法コンテンツの削除に関するルールでありますとか,ユーザーの保護措置等について,それから,デジタル市場法案については,ゲートキーパーとして機能している大規模なデジタル・プラットフォームによる特定の行動から生じる悪影響に対処するということを目的として,プラットフォームに対する禁止事項,ビジネスユーザーから取得したデータをビジネスユーザーとの競争に使うことを禁止するとか,自社サービスを表示順位で優遇することを禁止するとか,そういうことについて書かれているということのようでございます。
今まで見た感じですと,消費者保護とか,個人情報保護とか,それから今後日本で施行される予定のデジタル・プラットフォーム取引透明化法等に関係する事項といったような,独占禁止法以外の論点がかなり多く含まれているように,どうも見えます。
公正取引委員会としては,こういうデジタル関係の各国の取組につきましては情報収集に努めるとともに,内容を精査して,公正取引委員会としての今後の対応,競争環境整備の取組の参考にしていきたいと考えておりますし,また,今申しましたように,独占禁止法以外の論点が多く含まれているようでございますので,引き続き,デジタル市場競争本部事務局を始めとする関係省庁としっかり連携して取り組んでいきたいと考えております。
(問) デジタル広告分野の調査について,現在の状況を教えてください。また,デジタル広告分野での課題などについて,現時点のお考えをお願いします。
(事務総長) デジタル広告の調査は引き続き行っているところでございまして,申し訳ございませんが,今,中身にわたる部分について申し上げられるところがない状態でございます。
来年のどこかの時点で,最終的に公表し,詳しく御説明したいと考えております。
(問) 来週全面施行される改正独禁法について,2点,伺わせてください。
1点目は,改めまして,今回の改正の意義をお聞かせください。
(事務総長) 今回の改正独占禁止法は,課徴金制度の見直しを中心とするものでございまして,特に調査協力減算制度というものが入るということで,事業者と公正取引委員会が協力して事件解明を進めていくという領域を広げようというのが1つの大きな目的でございます。事業者の方にも,近年,いわゆるコンプライアンスに強く取り組んでいる方が多くございますので,そういう動きに沿って,いわゆる対立型ではなく,よりよい方向に向いて,事業者と公正取引委員会で協力して事件処理を迅速かつ適切に進めていくという方向に,今回の改正を機に一層進んでいくことを期待しているというのが大きな点であると,私は理解しております。
(問) その調査協力減算制度なんですけれども,実際,どれぐらい協力すれば,どれぐらいの減算率になるのかという,実際のところ,事業者さんの関心も高いと思います。現時点でどのように運用していくおつもりか,お考えをお聞かせください。
(事務総長) 調査協力減算制度については,ガイドラインに,こういう要素について,どれだけ満たせば何%というところまで合意するというような形で,私たちの考えでは,かなり明確に示しております。説明会などでも,その点は詳しく説明しておりまして,大方の共感は得られているというふうに考えておりますので,この制度が実際にも,うまく進んでいくことを強く期待しているというのが,私の考えでございます。
(問) 要するに,対話の中で,調査を進めながら対話をしていく中で,なるべく認められる方向,事業者さんとウィンウィンになれるような方向を模索していくということでよろしいんでしょうか。
(事務総長) 申出があった上で,協議をして合意をするということでございますけれども,つまり,決められた最大限,40%ないし20%には,どういう場合になるかということもガイドラインではっきり示しておりますので,そのガイドラインの中身については,事業者ないし関係する弁護士の方も十分御存じだと思いますので,それを基に両者で協議して合意する,そして,合意した結果に基づいて,事業者の方がきちんと証拠を出していただく,公正取引委員会の質問等に対しても継続して協力していただくとなれば,双方にとって満足のいく結論が出ると,こういうことかなと考えております。
(問) デジタル広告を含め,プラットフォーマーが抱える課題などは,これまで委員長からもお話しされているのは承知していますが,このタイミングで改めてお考えを聞かせてください。
(事務総長) 公正取引委員会としての考え方は,以前から基本的には変わっていないものと私は理解しています。プラットフォーム事業者というのは,さまざまな革新的なサービスを生み出していて,それは消費者にとっても,それを使う中小企業を含めた事業者にとっても非常に大きな利益になっている面はもちろんあると思います。だから,そういう革新的なイノベーティブな動きというのはもちろん促進していかなきゃいけないんですけども,その中で,独占禁止法で言えば,競争制限的な行為が行われる,典型的には,新しい革新的な事業者を妨害する,排除するとか,そういうことが行われると,結局,今後の経済成長ないし革新というのが妨げられますので,そういうことがないように,持続的に消費者ないし事業者にとって利益になるように進んでいかなきゃいけないというのが公正取引委員会の考え方だと思います。
また,今回のEUで書かれていることのように,独占禁止法だけではなくて,消費者保護とか個人情報とか,それから事前の透明性・公平性を高めるための取組とか,そういうこともいろいろ必要になってくると思いますので,公正取引委員会だけじゃなく,様々な関係者が連携し協力することで,先ほど申しました革新的な動きを止めることなく,新しい革新的な事業者が出てこられるような環境を作ることで持続的に成長していくということを実現していくことが重要かなと考えております。
以上