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令和3年7月7日付 事務総長定例会見記録

令和3年7月7日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和3年7月7日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)

令和2年度における企業結合に関する届出の状況及び主要な企業結合事例について

 本日は,令和2年度における企業結合に関する届出の状況及び主要な企業結合事例について,御紹介いたします。
 お手元の資料の1ページ目でありますけれども,これは過去5年度に受理した届出の処理状況をまとめたものです。令和2年度に受理した届出は266件で,前年度は310件でしたので,14.2%減となっております。また,外国事業者を当事会社に含む案件につきましても,20件の届出を受理いたしましたが,前年度が51件でしたので,60.8%減となっております。これらは,やはり新型コロナウイルス感染症の感染拡大が少なからず影響したものと受け止めております。
 届出を受理した266件のうち,より詳細な審査が必要であるとして,第2次審査に移行したものは1件で,これは令和2年5月に第2次審査に移行した「DIC株式会社によるBASFカラー&エフェクトジャパン株式会社の株式取得」です。本件は,令和2年12月に,当事会社グループが申し出た問題解消措置を講ずることを前提として,独占禁止法上問題ないと判断し,公表しております。
 次に,お手元の資料の2ページ目を御覧ください。こちらは「令和2年度における主要な結合事例」の掲載事例の一覧です。この事例集は,平成5年度以降,毎年公表しているもので,今年度の10事例を含めますと,これまでに合計306の企業結合事例を公表しています。公正取引委員会は,企業結合審査における独占禁止法の適用の考え方を企業結合ガイドラインとして公表しておりますけれども,具体的な企業結合案件においてどのように市場を画定し,競争への影響についてどのように判断しているのかなどについて明らかにすることで,企業結合審査の透明性・予見可能性の一層の向上を図るため,他の事業者の参考となると考えられる企業結合事例の審査結果を,毎年,事例集として公表しているものです。
 令和2年度の事例集の特徴といたしましては,例えば,デジタル分野における大型の企業結合案件を2件,これはZホールディングス/LINE,それと,Google/Fitbitの事案ですけども,2件掲載していることが挙げられます。
 このうち1件であるGoogle/Fitbitの件ですけれども,これは,届出基準には満たないものの買収に係る対価の総額が大きい案件であったことから審査を行ったというものです。これは令和元年12月に改正しました「企業結合審査の手続に関する対応方針」において示した方針,すなわち,買収に係る対価の総額が大きい案件については届出基準に満たなくても積極的に審査を行うという方針に沿ったものです。
 また,企業活動のグローバル化の進展を踏まえ,海外当局との間で情報交換を行う事例が増えてきております。令和2年度は事例の3,4と6の3件が海外当局と情報交換を行った事例でありまして,このうち事例の4では,初めて中国の競争当局であります中国市場監督管理総局と情報交換を行いました。
 さらに,近年,企業結合審査において経済分析を行う事例が増えてきておりますけれども,今回事例集に掲載した事例の中でも,経済分析を活用したものが4件あります。これは必ずしも今年に限った話ではありませんが,実際にどのような分析を行ったのかということをできるだけ具体的に記載するよう心がけております。
 なお,令和2年度においては,より積極的に情報を発信することで,企業結合審査の透明性・予見可能性の一層の向上を図るという観点から,第1次審査で終了した案件でありましても,特に関心が高いと考えられる案件については個別に公表してまいりました。今回の事例集に掲載した10の事例のうち3事例は,このように第1次審査で終了して,既に個別に公表しているものです。今回の事例集の全体の分量ですね,ページ数が例年と比べて大部となっておりますけれども,これは個別に,詳細に公表した事例が増えているということも影響していると考えています。
 公正取引委員会といたしましては,引き続き法運用の透明性を確保するとともに,企業結合を計画している会社におきまして,この事例集が活用され,独占禁止法上の考え方についての理解が一層深まることを期待しています。個別の企業結合事例のより詳細な内容につきましては,担当の企業結合課にお問い合わせいただければと思います。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) デジタル分野の企業結合対応について伺います。手続対応方針の改定など,既に取組を進めていますが,デジタル関連企業の積極審査の必要性や審査の難しさなど,改めてお考えをお聞かせください。
 また,別件になりますが,政府の成長戦略で公取の体制強化が明記されています。現状の組織に対する課題認識と定員増など,強化の方向性についてお考えをお聞かせください。
(事務総長) 最初の質問ですけれども,既にデジタル分野ということを念頭に置いた,先ほども少し申しましたけれども,企業結合ガイドラインと手続対応方針についても改定をしておりまして,今回の事例集にもありましたが,届出基準に当たらないものについても審査を行っている事案も出てきております。これは届出基準に当たらないものであっても,当事会社の方からこちらに相談が積極的に来ているものもありますし,大きな案件というのは,こちらでも気付くものですので,審査を促してやっているというものもありますが,いずれにしろきちんと行われているかと思います。ですので,そういう意味では,方針というか,考え方とかやり方としては順調に来ているかなと思います。
 審査の難しさというと,実際担当している企業結合課長の方が分かると思いますので,後で,もしあれば言っていただくことといたしまして,もう1点の質問ですけれども,御指摘のとおり,成長戦略など,何か所にも公正取引委員会の体制強化ということが書かれておりまして,そういう意味では,公正取引委員会の取組について,これまでのことも評価され,今後も期待されているということで,非常にありがたいことだと思っております。いろんな課題があると思いますが,デジタルといった専門的な知識が要る特に難しい分野などで,職員の能力の向上だけでなく専門家の協力を仰げるような体制を作るとか,経済分析を強化するとか,そうしたこともいろいろ期待されておりますので,その期待に応えられるように,体制の強化,特に定員の増ということになりますと,関係方面の理解も得ながらということになりますが,そういう取組を,これからまさに進めていきたいというふうに考えております。
(事務方) 審査の難しさということで申し上げますと,やはり今の体制の面でのお話と関連しますけれども,そもそも新しい商品・サービスというものが非常にデジタルの分野では多くありますので,まず我々としても,そういう商品やサービスの内容等を理解する,その辺が,まず入り口としていろいろ難しいというところはございます。そういう意味では,いろんな専門家の御意見等もお聞きしながらやっていくということが重要なのかなと思います。また,実際に審査を行っていく中で,競争上の評価をしていく中では,やはりデジタル,他の分野もそうなんですけど,デジタルについてはとりわけ,やはり経済分析をどれだけ活用できるかということが非常に重要になっているなというのは実感として感じております。そういう意味では,この点も,その体制の強化が必要という話とも絡むんですけれども,引き続き,その経済分析の能力の強化というのを図っていく必要があるなということを常に感じている次第です。

以上

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