[配布資料]
無し
事務総長会見記録(令和3年7月14日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
クラウド分野の実態調査のアンケート調査の開始について
本日,私からは,公正取引委員会が現在進めておりますクラウドサービスに関する実態調査におきまして,アンケート調査を実施することといたしましたので,そのことについてお話しいたします。
既に御案内のとおりではございますけれども,公正取引委員会では,本年4月から,デジタル広告分野に続くデジタル分野の新規実態調査としまして,クラウドサービスに関する取引実態について調査を行っております。
(参考:令和3年4月14日付 事務総長定例会見記録)
今般,この実態調査の一環としまして,クラウドサービスを開発・提供する事業者との取引や市場に関する情報を広く収集・把握することを目的として,クラウドサービスを利用されている事業者の方々を対象に,アンケート調査を実施いたします。
本アンケートに御回答いただく対象の事業者は,公正取引委員会から郵送でアンケート回答依頼書を送付いたします約1万社であります。今週中には発送を予定しております。併せて,関連する事業者団体2団体に,会員企業に対する回答の御協力の呼び掛けをお願いすることを予定しております。
このアンケートは,ウェブアンケート方式で行いまして,実施期間は来週の7月19日から8月20日までの約1か月間を予定しております。回答依頼が届きました事業者の方々におかれましては,是非とも御回答お願いいたします。
本件の担当は経済取引局総務課デジタル市場企画調査室です。
私から以上でございます。
質疑応答
(問) 先週,西村経済再生大臣が飲食店に対する酒類の提供停止などの要請を巡って,金融機関に事業者への働き掛けを求めるという方針を発表して,その後,直後,撤回されました。また,酒類販売事業者に対して,休業要請に応じない飲食店との取引を停止するよう求めた方針を出して,昨日になって撤回されました。
これらについて,優越的地位の濫用など独禁法違反を招きかねない方針や要請だったという指摘が出ています。公正取引委員会は「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」というのを公表しているところでありますけれども,2点,現時点で質問があります。この2つの方針や要望に際して,事前に公正取引委員会は相談を受けていたりしたことはありますでしょうか。2点目としては,この独禁法違反を招きかねなかったという指摘があるのですが,競争当局として,こうした方針や要請を,「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」に照らして,どう受け止めていますでしょうか。
(事務総長) 最初の御質問については,事前に何か相談を受けたということはないというふうに聞いております。
それから,2つ目につきましては,現状では,既に御案内のとおりですけれども,このいずれの方針も要請も,もうなくなっておりますので,それに関連する事業者の行為というものも,これまでもないし,これからもないということでしょうから,ある意味では個別的な話について,何かコメントはなかなか難しいということであります。
独占禁止法上問題になるかどうかということについて言いますと,例えば,関連することで言いますと,取引しないということであれば,取引拒絶という項目が独禁法の中にあるわけですけれども,取引をする,しないというのは,基本的には事業者の自由でありまして,ある事業者が,ある事業者と取引するかしないかが独禁法上問題になるというのは極めて例外的でありまして,例外的というのは,1つは独占禁止法上,違法な行為の実効を確保するための手段として取引を拒絶するとか,それからもう1つは,競争者を市場から排除する,そうした独禁法上不当な目的を達成するための手段として取引を拒絶する,そういうのに当たれば独占禁止法の検討の対象になるということであります。
もし現に事業者としてそういう行為が行われれば,今申したようなことに当たるのか,何のためにそういうことをしているのか,どういう効果があるのかないのか,そういうことを個別の状況に応じて検討していくということになろうかと思います。
(問) 追加ですけども,1番目の答えに関して,事前相談はなかったということではあるんですけれども,「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」では,一応,この考え方に十分留意するとともに,何か事前に公取と調整することを期待するものだということで出されていますけれども,事前相談等がなかったことに関しての御所見や受止め等があれば,お願いします。
(事務総長) 相談するかしないかというのは,その官庁であれ事業者であれ,そちら側の判断ということですので,何とも申し上げようがないということであります。
(問) クラウドサービスに関する実態調査についてお聞きしたいと思います。4月の,確か14日に,この事務総長の会見の中で,そういう実態調査を開始するというお話がありましたけれども,この中での質疑で,例えば,実態調査において現状どういうような問題があるかとか,スケジュール的なところについては,今のところまだ何も決まっていないというようなお話でした。
今回,それから3か月経ちまして,実際にこれからアンケートを行って,新たな問題等も出てくるとは思うんですけれども,今の段階で,3か月の調査の中である程度見えてきた部分,つまり,例えば,現状どういう行為が独禁法上の懸念があるとお考えなのかというのと,また,今後,例えば,最終報告の前に中間報告をするかとか,分かっているスケジュール的なところを教えてください。
(事務総長) 最初の,これまで調べた中でどういう認識かというのは,後で担当のほうから発言していただきますけれども,これまでクラウドサービスの提供者とか利用者とか,それから導入を支援する事業者とか,そういう市場の関係者,また有識者もいろいろいらっしゃいますので,そういう方からお話を聞いて,いろいろ状況を調べてきたというのが現状です。
ここで,利用者の方からアンケート調査を行いまして,今後としては,その結果,このアンケート調査から浮かび上がってきた問題点というのが出てくると思いますので,それを更に調査していく,必要な調査をしていく,ヒアリングなどして調査していくということを考えております。
したがって,アンケート結果からどういうことが出てくるかということによりますので,ちょっとまだ,最終的にいつ頃までにというのはまだ決めかねている状態で,見通せてない状態でございますので,ちょっと今のところ何とも申し上げようがないということでございます。
それから,中間報告をするかどうかもまだ決めておりませんが,中間報告をするにしろ,しないにしろ,このアンケートの結果というのは,例えば,中間報告しないのであれば,最終的な実態報告の中で,この結果ももちろん報告したいというふうに考えております。
これまでのヒアリングなどをした結果として,何か懸念事項や関心事項,注目点があるのかどうかは,担当から一言言っていただきます。
(事務方) 事務総長から申し上げましたように,4月から実態調査を開始いたしまして,これまで,関係者,市場関係者,具体的には,クラウドサービスを提供している事業者,クラウドサービスを利用している事業者,それから導入支援事業者ですね,そういった市場関係者であるとか,この分野の有識者の方に,積極的にヒアリングをしてきたところでございます。
具体的にお伺いしていたのは,クラウド市場の特徴であるとか,利用状況,それから取引関係,それから日本の市場の特性というものがあるか,こういったところについて聞いてきたところでございます。
その中で,いろいろな声をお伺いしているところではございますが,今後さらに具体的な声をアンケートで確認をしてまいりたいと思いますので,現時点で,どういった懸念があるかというところを具体的にお話しさせていただくのは差し控えたいと思います。
(問) クラウドサービスのアンケート調査についてなんですけれども,今週中に発送し,事業者団体2つにも協力要請するということですが,どことどこですか。
(事務総長) ASP・SaaS・IoTクラウドコンソーシアムと,一般社団法人ソフトウェア協会,この2つの団体を予定しております。
(問) アンケート調査ということになると,いろんな角度から取引状態,状況について伺うのかと思うんですけれども,特に,利用事業者から特に聞き出したい点など,御説明いただける点がありましたら教えてください。
(事務方) アンケート調査でお伺いする内容は多岐にわたるんですけれども,代表的な内容を御紹介させていただきますと,まず,回答者がどのようにクラウドサービスを利用しているか,どのような理由で今使っているサービスを選んだのかといった背景事情であるとか,あるいは取引実態,サービスに関する情報開示,あるいはサービスの提供に関して,利用者の立場から課題とか問題を感じている点に関する質問があります。それから,クラウドサービスの利用事業者が異なるサービス提供者のサービスを複数併用することがあるんですけれども,そのような併用がどの程度行われているのかとか,あるいはその切替えについての認識ですね,そのような質問もあります。
そこで,実際の取引に関する問題点であるとか,サービスの提供に関する問題点というのを把握するとともに,利用者が,先ほど申し上げたようなサービスを併用するとか,切替えが妨げられるといったようなことによって,市場における競争が働かなくなるといった要因がないかといったようなことを広く把握したいと考えてございます。
(問) 確認になりますが,アンケートの対象の約1万社の対象業種は特に絞っていないということでしょうか。また,日本に本社を置く企業のみということになるのでしょうか。
(事務総長) 調査の対象は,クラウドサービスを利用している事業者ということで,1つはインフラストラクチャーの機能を提供するIaaSの利用者,それからソフトウェアの開発環境などを提供するPaaSの利用者,それに加えまして,ソフトウェアの機能を提供するSaaSのうち,グループウェアとCRM,カスタマー・リレーションシップ・マネジメントの利用者というものを対象としております。
SaaSについては,非常に種類が多く,全てを聞くわけにはいかないので,特に主なものということで,グループウェアとCRMの利用者ということを対象にしたというふうに聞いております。
(事務方) 約1万社の対象業種に絞りを掛けているかということでございますが,本調査はIaaSとか,PaaSとか,あるいはSaaSのうちのグループウェアとかCRMを使っている事業者を対象にしてございまして,これらは,幅広い業種で使われていると認識しておりますので,対象業種については,特に絞りは掛けておりません。
約1万社をどのように選んだかということについてもう少し御説明させていただきますと,基本的に,クラウドサービスは大規模な事業者から導入が進んでいるという実態にあると聞いておりまして,回答を有効に得る観点から,一定の売上げ,具体的には直近の事業年度の売上げが50億円以上の事業者3万社から当委員会において無作為抽出した約1万社に発送することにしてございます。また,日本に本社を置く企業だけを対象にしたということでなく,選び方としては,今申し上げた選び方をしております。
以上