[配布資料]
公正取引委員会の令和4年度概算要求について(令和3年8月31日公表資料)(PDF)
事務総長会見記録(令和3年9月1日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
公正取引委員会の令和4年度概算要求について
今日は9月1日ということで,8月の間,お休みしておりましたこの会見も今日からまた再開ということでございますので,よろしくお願いいたします。
8月31日,昨日ですけれども,令和4年度予算の概算要求を行いまして,公表いたしましたが,本日はこの概算要求についてお話しいたします。
令和4年度の概算要求額は114億2000万円,前年度当初予算と比較して4200万円,0.4%の減となっています。
見た目上減額要求となっておりますけれども,消費税転嫁対策特別措置法が本年3月に失効したことによります大規模書面調査の終了等が,この予算減の要因の大宗を占めておりまして,仮に消費税転嫁対策の分を除外して要求予算額を整理し直しますと,令和3年度当初予算額106億2000万円に対しまして,令和4年度概算要求額110億8000万円となりまして,対前年度プラス4億6000万円となります。
概算要求の主な内容といたしましては,第1に,厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用につきましては,カルテル,入札談合やデジタル市場分野等における他の事業者の不当な排除などの独占禁止法違反行為への厳正な対処のため,そして,企業結合事案について迅速かつ的確な審査を実施するために必要な経費として5億7600万円,第2に,中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化につきましては,主に,優越的地位の濫用行為等の未然防止や,下請代金の支払遅延行為,下請代金の不当な設定に対する調査など下請法違反行為に係る事件処理経費として,3億6500万円,第3に,競争環境の整備につきましては,デジタル市場分野などの取引実態等の把握・検討,デジタル市場分野に精通した専門人材の採用,各国競争当局間の国際協力の推進,アドボカシー,いわゆる唱導機能の強化に必要な経費として,3億3100万円を,それぞれ増額して要求しております。
その他,経済分析能力のある専門人材の採用を目的とした海外リクルート活動経費として,900万円を要求しております。
また,機構定員につきましては,与党からいただいた提言や成長戦略等に基づきまして,デジタル市場における法執行力強化及び競争政策促進のための経済分析の体制整備として,官房総務課企画官(経済分析担当)の新設と,時代に即した競争環境の整備に向けた唱導(アドボカシー,提言)機能強化のための体制整備として,経済取引局調整課企画官の新設を要求しています。
このほか,定員についても,厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用,中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化等のため34名の増員を要求しています。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 増員要求の規模は近年の推移で見ると多いと感じますが,狙いと意気込みを改めてお願いいたします。それから,増員分の職員をどのような業務に重点配置しようとお考えでしょうか。また,機構について,新設の企画官の具体的な業務の想定を教えてください。
(事務総長) 増員要求の規模というのは,更に多く要求していた時期,実際に定員が増えていた時期も実は以前あったんですけれども,我々としても仕事をしていく上で,人というのが非常に重要で,また成長戦略や骨太の方針といった中でも,公正取引委員会の競争政策に対する期待や求められることということも多く出てきておりまして,例えば,デジタル市場への対応でありますとか,フリーランス,また,スタートアップと大企業の取引の適正化とか,更に競争の活性化に向けたアドボカシー機能を強化せよとも言われているわけでございまして,そのような期待に応えるため,公正取引委員会は御存じのとおり予算の8割方は人件費であり,人で仕事をしているところでございますので,そうした面から御理解を得られるよう,増員の要求をさせてもらっているということでございます。
また,今申し上げたような点にほとんど絡んできているわけですけれども,デジタル分野の取組でありますとか,それからフリーランス,スタートアップ,それからアドボカシー機能の強化といった点からの増員をお願いしております。例えば,デジタル分野でも競争環境の整備のための体制整備とともに,事件審査の体制整備という点でも,増員要求をお願いしておりまして,そうした分野に重点的に配置ということになろうかなと考えております。
それから,企画官2名をお願いしようとしているわけですけれども,官房総務課企画官は主として経済分析の強化ということを狙ったものでございまして,それから,調整課企画官はアドボカシー機能の強化という面からの要求と,私たちとしては考えております。
(問) 今の経済分析担当の企画官の点にちょっと補足して伺うんですが,この経済分析については,今後どのように展開していきたいという,単なる企画官の新設だけじゃなくて,何か構想など,今,現時点で持っているものがあれば,より具体的に教えていただければと思いました。
(事務総長) 経済分析の強化というのは,長年と言っていいのか分かりませんが,前からずっといろいろと求めているのがあるところでございまして,公正取引委員会もこれまでも,特に,まずは企業結合審査において,市場画定や競争評価といった面で経済分析を実際行ってきておりますので,そういうところにも活用しておりますし,また,事件審査等におきましても,最近では当事会社の方から経済分析を用いた主張がなされ,公正取引委員会がそれを評価する又は反論するということも行ってきております。
そういう意味で,今後,より高度な,より緻密な分析というのが必要になってくると思いますので,現在,これまでもそういった能力のある職員が対応しているわけですけれども,今後,管理職である企画官の下で,しっかりと体制を整えて,有効な競争政策又は事件審査を強化するために,有効な機能を果たしていきたいというふうに考えております。
実は,先ほど冒頭で申しました海外リクルート活動経費も,職員だけではなく,外部の経済分析能力のある方にも是非来ていただきたいということで,特に,経済学の場合は,欧米の大学に留学して,産業組織論をはじめ経済学を研究している方がいらっしゃいます。聞くところによりますと,ロサンゼルスやボストン,ロンドンでは採用イベントというのが行われていて,そこに参加して採用活動することが効果的であろうということで,今回要求しています。
(問) 現在の経済分析チームは,バーチャルな組織だというふうに説明されることも多いと思うんですが,今後どうしていくかということについて,現時点で何かあるんでしょうか。
(事務総長) 今まさに御指摘いただいたとおり,これまでバーチャルな組織でやってきたわけですけども,これをきちんと体制化,組織化して,よりしっかりとやっていこうということを,まさに目指しております。
(問) アドボカシー機能の強化では,特にどのような分野,業界で今後取り組んでいくんでしょうか。成長戦略やスタートアップ,中小企業の参入促進や通信等のデジタル市場,電力等のエネルギー市場といったインフラ分野などとありました。そのあたりでしょうか。
(事務総長) 今まさに目に見えているところというか,現に取り組んでいるところや,近い将来まで考えて重点的に取り組んでいくであろう分野は,御指摘いただいたような,デジタル分野であるとか,それからスタートアップ,中小企業,それから電力やガスといったインフラ分野というのは,従来から取り組んでおりますけれども,そうしたところになろうかと思います。
ただ,競争環境の整備というのは,今後もいろいろと状況が変わる,経済実態が変わればいろんな分野が出てくると思いますので,今後,更に別の分野にも取り組んでいくかもしれません。
(問) 経済分析に関する質問で,確認と追加の質問になるんですけれども,今回,企画官の新設ということで,今の経済分析チームは10人くらいいると聞いているんですが,そうすると,その方々が,この企画官の下に,経済分析チームというフォーマルな体制になっていくんですか。また,今は,管理職の方は経済分析チームにはいないんですか。
(事務総長) 今,経済分析チームの中で,チームのトップを務めてもらっているのは,管理職クラスの者ではあるんですけれども,現職と兼ねているということでございますので,そういう意味で,今回,企画官ができれば,その企画官という経済分析を主として担当する者の下にチームが出来上がるということになろうかと思います。
ただ,どのような体制になるか,今はまだ分かりませんが,よりしっかりした体制を作って,経済分析に取り組んでいきたいということでございます。
(問) 外国人材のリクルート活動について,もう少し詳しく教えていただきたいんですけれども,今のお話ですと,主に米国の大学院等で,おそらく独禁法などを専門でやっていらっしゃる方をリクルートして採用したいということだと思うんですけれども,これは,実際,いわゆる審査の分野なのか,それともアドボカシーの分野なのか,どういった人材を求めているのかというのとですね,また,外国人の専門家を最終的に採用して,最終的には日本の公取のどういった部署,ポストに置くための人材を求めているのか。また,いわゆる米国で若い人材というと,いわゆるリナ・カーンさんみたいなイメージがあるんですけれども,「日本版リナ・カーン」さんみたいな人を採用したいということなんでしょうか。そのあたりも教えてください。
(事務総長) 先ほど申し上げました海外リクルート活動というのは,海外でリクルートするんですけれども,想定しているのはむしろ日本人の方でございまして,日本人で,欧米で勉強している,又は欧米で経済学を専攻している方でして,独占禁止法というよりは産業組織論といった経済学の分野の方です。日本の研究者の皆さんそうですけども,アメリカやイギリスに留学して,そこで成果を上げて,アメリカやイギリスで活躍されている,活躍しようとしている方もいらっしゃいますし,また,日本国内に戻ってきている方もいらっしゃいます。
公正取引委員会にエコノミストとして来ていただける方を,なるべく採用したいということで,エコノミストを対象とした採用イベントという場が,どうもアメリカやイギリスではいろいろあるようでございまして,私が聞くところによると,ロサンゼルスやボストン,ロンドンなどで,そういう採用イベントというのが行われていて,そこで,エコノミストとして採用されたい人と,それから採用したい人が集まってやっているというのがどうもあるようでございます。それに公正取引委員会としてもちょっと出張っていって,そこで意欲のある,日本の公正取引委員会で働きたい日本人の方に声をかけて,公正取引委員会に来てもらえればという試みで,900万円という予算の要求も今回しているということでございます。
(問) 海外でリクルートするのは,経済学博士号所持者ですか。
(事務総長) 博士号とは限らないかもしれませんが,そうしたドクター,マスターを取っている人,又はそれを目指して勉強している人,そういう方々を念頭に置いてリクルート活動をしたいということでございます。
以上