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令和3年10月20日付 事務総長定例会見記録

令和3年10月20日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和3年10月20日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)

第219回独占禁止懇話会の議事概要について

 本日,私からは3つお話しいたします。
 まず,本年9月24日に開催しました第219回独占禁止懇話会の概要についてです。
 独占禁止懇話会は,我が国経済の著しい変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く各界の有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,昭和43年11月以降開催しているものです。
 今回の開催に当たりましては,新型コロナウイルス感染拡大防止を図る観点から,会員の皆様にはオンラインで御参加いただきました。
 今回の独占禁止懇話会では,3つのテーマについて会員の方々から御意見等をいただきました。10月18日に公表いたしましたお手元の議事概要の中から各テーマでの主な御意見等を御紹介いたします。
 1つ目のテーマの「①令和2年度における独占禁止法違反事件の処理状況,②アップル・インクに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」では,確約手続が導入されたことによって,独占禁止法違反の疑いのある行為が違反と認定される前に解消されることは非常によいことであるが,公表の内容等については配慮してもらいたいとの御意見をいただきました。
 2つ目のテーマの「①令和2年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組,②最低賃金の引上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」では,令和2年度の下請法の処理状況について,指導件数が過去最多の件数となっていることは公正取引委員会や関係省庁が積極的に取り組んだ結果であると評価する一方,件数が高止まりしているようにも思われるとの御意見や,コロナ禍が長引き,多くの中小企業が苦しい事業環境に置かれている中で,アクションプランの取組を進めることは時宜にかなっており,有意義であるとの御意見をいただきました。
 3つ目のテーマの「令和2年度における企業結合関係届出の状況及び主要な企業結合事例」については,特段の御意見などはありませんでした。
 公正取引委員会としましては,今回いただいた御意見等を踏まえ,今後とも競争政策を有効かつ適切に推進してまいります。

ソフトウェア制作業の取引適正化に向けた実態調査の開始について

 続きまして,ソフトウェア制作業・受託システム開発業の取引適正化に関する実態調査の開始についてです。
 公正取引委員会は,従前から,優越的地位の濫用や下請法の観点から実態調査を実施しておりまして,今般,ソフトウェア制作業・受託システム開発業の取引適正化に関する実態調査を行うことといたしました。
 昨今,社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)化等の流れを受けて,ソフトウェア制作業・受託システム開発業の市場規模が拡大し続けている一方で,本業界の取引においては,多重下請構造の下で買いたたきや仕様変更への無償対応要求などの下請法上の問題が懸念されています。
 また,本業界では,フリーランスのシステムエンジニアが多く活動していることから,取引の末端では,フリーランスへのしわ寄せ問題も生じている可能性があります。
 このような状況を踏まえ,今般,本業界の商慣習,取引状況等に関する実態調査を実施するとともに,その調査結果を広く周知することによって,本業界における取引の適正化を図っていきたいと考えております。
 今週,10月22日(金)には,ソフトウェア制作業・受託システム開発業に従事する2万1000社の事業者に向けてウェブアンケートの案内を発送する予定です。
 なお,公正取引委員会は,本年9月8日に「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を公表し,今後の実態調査におきまして,最低賃金の引上げに伴う影響や取引先との価格交渉に関する質問を追加すると申し上げましたけれども,このウェブアンケートにもこれらの質問が含まれております。
 その他にも,今後,フリーランスのシステムエンジニアや企業に所属する従業員のシステムエンジニア向けのウェブアンケートも実施する予定です。

「下請取引適正化推進月間」の実施について

 最後に,令和3年度下請取引適正化推進月間についてです。
 公正取引委員会は,中小企業庁と共同し,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定めまして,下請法の普及・啓発に係る取組を集中的に行っております。
 令和3年9月8日に公表いたしました「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」におきましては,「下請取引適正化推進月間」の開催に併せて,事業者団体等との連携拡大を通じて,全国津々浦々に不当なしわ寄せ防止に向けた取組の情報が行き渡るよう周知活動を行うとしたところであります。
 「下請取引適正化推進月間」におきましては,中小企業庁と連携して全国の中小企業団体に情報が行き渡るように周知活動を行いますとともに,例年実施している「年末要請」を通じて,大企業の関係団体にも周知徹底を図っていきたいと考えています。
 公正取引委員会といたしましては,「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を着実に実行し,監督体制の強化を図りますとともに,今後も引き続き,取引の公正化を一層推進する観点から,更なる取組を検討・実施してまいります。
 私からは以上でございます。

質疑応答

(問) 実態調査について,報告書をまとめる予定でしょうか。仮にまとめるのであれば,公表時期の目途を教えてください。それから,多重下請の構造の下,買いたたきなどの下請法上の問題が起こり得るおそれについて,その構造や流れを解説してくださると助かります。
(事務総長) 最初の方ですけれども,これはあらゆる実態調査でそうですけれども,アンケート調査を行った後にヒアリングなども行いまして,調査結果の取りまとめをするということを考えております。報告書は公表する予定にしておりますけれども,時期としては,来年の春以降,場合によってはそれよりちょっと遅くなるかもしれませんが,いずれにせよ春以降に公表をしたいということで,今は考えているところでございます。
 2つ目の方は,こういう問題があるだろうという事前の予測を詳しくできるわけじゃないんですけれども,下請法の運用基準の中で,ソフトウェア制作業等での違反行為事例ということで挙げられておりますのは,下請法上の支払遅延でありますとか,不当な給付内容の変更といったものでして,こういうものが予想されるんじゃないかということを考えているということでございます。

(問) 大体,イメージとしてはですけれども,いわゆるエスアイヤー(SIer)と言われるところですとか,発注側である富士通,NTTデータといったところのような業種というようなイメージでよろしいでしょうか。
(事務総長) 直接のお答えになっているかちょっと分からないですが,今回の調査対象として考えている業態といいますと,受託開発ソフトウェア業とか組込みソフトウェア業とかパッケージソフトウェア業,それからゲームソフトウェア業ということでございます。受託開発ソフトウェア業というのは,企業からの依頼でいろいろなソフトウェアを制作する事業者,それから,組込みソフトウェア業というと,家電とか自動車などに組み込まれるソフトウェア開発の事業者,パッケージソフトウェア業というと,業務ソフト・システムとかですね,そういうものですし,ゲームソフトウェア事業者ということですと,ゲームソフトとか,そういうゲームアプリの開発の事業者ということです。
 今回,対象事業者としては,資本金3億円以下の事業者を対象にしているということですので,大手の事業者は,むしろ除いた調査ということを予定しているということでございます。

(問) ITのシステム開発業界は,正に多重下請で,一次請け,二次請け,三次請け,四次請けと,どんどん下請構造になっていて,そこの下の方には買いたたきが行われていたりとか,無理な納期を強要したりといった問題があり,結構,構造的な問題として指摘されていると思うんですけれども,そこに対して,本格的に切り込むということだと理解していますが,そういった問題に関して,公正取引委員会が,こういった基本的な実態調査等を行うのは初めてでしょうか。
(事務総長) ソフトウェア制作業等を対象とする調査ということですと,前回というのは随分前になりまして,平成16年に調査をしております。そういう意味では,17年ぶりで久しぶりということになります。先ほど,冒頭の発言でも申しましたけれども,市場規模がこういう分野は拡大しているという中で,今,御指摘のような構造的な問題という言い方が当たるかどうか分かりませんけれども,いろいろな問題が懸念されているという指摘もありますので,この際,きちんと調べて問題点を把握した上で,下請法上,優越的地位の濫用等の問題があれば,それを報告書の形でまとめていきたいということを予定しております。
 まだ,調査の開始前ですので,これ以上の詳しいことは分かりませんけれども,問題を見つける,見つかるだろうという予想はしているわけでございますが,問題点が見つかれば,それに対して考え方を示していきたいと考えております。

(問) 独占禁止懇話会の内容について質問したいんですけれども,この中で,配布資料別紙の2頁の上から2つ目の〇のところで,確約手続についての最初の質問があるんですけれども,これは確約手続について評価しながらも,公表の内容や方法については,企業のイメージ低下とか,企業秘密の漏えいにつながりかねないため,公表の内容については配慮してもらいたいという要望でして,要は,公表の幅を狭めろという要望のように読めるんですけれども,そうすると,例えば,企業名を匿名にしたり,違反が疑われた行為の内容がより曖昧になってしまったりとかですね,そういうことをむしろすべきではないかという問いかけのように感じます。メディア側としては,やはり新しい手続ですし,違反認定がされないことで,例えば,どういう違反があったのかと聞いても,これは違反の疑いであって,違反行為の認定はしないからということで,過去にも,記者会見等で十分な説明がなされなくて,それに対して,記者側からもうちょっと説明してほしいといったやりとりがありつつ,その後の公表については,少しずつ充実してきたという体感ではあるんですけれども,そこに逆行するような質問について,「公表に当たっては配慮していきたい」という回答をしているんですが,つまり,実際,今ある確約手続というのは,あくまでも行政処分でありますけれども,公取側としては,公表の幅をもうちょっと狭めるべきというふうに現時点で考えていらっしゃるんでしょうか。
(事務総長) この質問について,我々として認識しているのは,確約手続については,今,御指摘のように,もっと,より詳しく公表してほしいというリクエストも一方であるわけですけれども,やはり違反事実を認定しているわけではないということに伴う限界というのがありまして,その限界の中で,事案の中身を分かりやすく,また,再発防止という観点からも,世の中にどういうものが悪いかということを示すために公表していく,そのためにどういう範囲で公表できるかということを考えながら,これまでやってきております。
 あくまでも確約手続は,ある事業者との間で一定の疑いというのがある前提で,その疑いを公正取引委員会が指摘して,それを解消する措置を出すということでございますので,どういう事業者に対して,どういう疑いがあって,それに対してどういう措置を採るのかというところは,当然,最後は公表される,そこは変わらないと思います。ただ,公表する内容として,当たり前ですけど,事業者の秘密,例えば,原価を明かすといったことは通常はしてはいけないわけでございますが,そのようなことが公表されては困るという御指摘であると理解しておりますので,それに対してはきちんと配慮しますということでございます。違反の疑いのある行為そのものは事業者の秘密ではないと,我々は考えていますので,御指摘のような,何も公表できなくなるとか,公表しなくなるといったことになるとは考えていないということでございます。

(問) 分かりました。てっきり質問の内容についてですね,現時点で問題があるという認識のような指摘かと思ったんですけど,そうではなくて,そういう企業の秘密に当たる部分は話さないけれども,それ以外の被疑事実であるとか,企業名であるとか,そういう基礎的な情報については,これまでどおり公表していくという認識を今,確認したということでよろしいでしょうか。
(事務総長) もちろん,いろいろな御意見の方がいらっしゃいますし,様々な御意見があることは否定しないですけれども,公正取引委員会として,これまで公表している内容を公表しなくなるということはないものと考えております。

(問) 2万1000社対象の大規模アンケートということですが,大・中・小など事業者の規模はどのような内訳ですか。また,受託システムの調査ということで,下請法関連の問題が重視されると思いますが,海外ではシステムエンジニア業界などで注目されている従業員の引抜き禁止協定なども調査の項目に入りますか。
(事務方) いただいた御質問でございますけれども,まず,調査対象の事業者は先ほど事務総長からも説明させていただきましたが,資本金3億円以下の事業者2万1000社ということでございまして,経済産業省の統計によれば国内の事業所数2万1000社とか2万2000社といった数字を把握しておりますので,関連する事業者をおおむねカバーしているといったところでアンケートの発出を考えております。
 また,2点目の御質問の従業員の引抜き禁止協定といった部分に関しては,下請法の関係での違反のおそれがある案件についての調査でございますので,それに入っていないものについては含まれないということでございまして,従業員の引抜き禁止協定については,調査項目としては含まれておりません。ただ,他方ですね,事業者が自由記載して回答するということが,私ども調査の中では常に準備されておりますので,そういった観点からの情報提供ということが出てくることはあるのではないかなというふうに思います。

(問) 日本のIT業界の多重化構造は既に広く知られている問題だと思いますが,このタイミングで実態調査を始めたきっかけは何でしょうか。フリーランス保護の機運が高まっていることが関係するのでしょうか。
(事務総長) 御指摘の多重下請構造というところに焦点を当てて何か調べるというよりは,ソフトウェア制作業・受託システム開発業という業態が,今のデジタルトランスフォーメションとかデジタル化という中で伸びている一方で,そういう縦の関係での問題,フリーランスも含めていろいろな問題の指摘や懸念がありますので,そういったものについて,随分長い間調査をしていないということもありますので,この時点で改めてきちんと調べようということが主たる関心事項ということでございます。

(問) 2点ありまして,1点目は今のところで,もしお手元にソフトウェア制作業・受託システム開発業の事業規模の拡大についての何か数字を御存じでしたら教えてください。2点目は,話があったかもしれないんですけど,このアンケートの具体的な方式は,まず2万1000社に対してはアンケートということですが,これはウェブアンケートであって,封書等で回答先をお知らせした上でアクセスしてもらう形でしょうか。また,この続きで行うフリーランスのシステムエンジニア等へのアンケートについては,ウェブアンケートになるんでしょうか。
(事務総長) 2点目については,いわゆるウェブアンケート方式でございまして,2万1000社にウェブアンケートをやっていますよということを伝えて,回答先にアクセスしてもらって答えてもらうというやり方でございます。その後に行うフリーランスのシステムエンジニア等向けのアンケートについても,ウェブアンケート方式を考えております。
(事務方) 1点目のソフトウェア制作業界の市場規模の関係でございますけれども,私どもで把握しているところでは,経済産業省の特定サービス産業実態調査というものがございまして,直近の数字で平成30年ということで,若干古いですけれども,国内事業所数2万1953カ所,市場規模は年間取扱高ですけれども11兆9382億円という数字でありまして,この業界で働く従業員数としては70万7600人であるというふうに理解をしております。

(問) 発注者側は調査しないんでしょうか。また,ソフトウェア制作業はスマホなどのアプリなども含まれるのでしょうか。それからもう1つ,調査を始める背景としては,9月公表のアクションプランの一環と捉えていいのでしょうか。つまり,今回の調査は最低賃金引上げに伴う下請企業へのしわ寄せ防止という目的もあるのでしょうか。
(事務総長) 3つ目のところについて申しますと,これはソフトウェア制作業と受託システム開発業を対象とした実態調査ということなんですけれども,アクションプランの中で,今後行う実態調査の中でも最低賃金引上げ等に伴う影響とか,価格交渉の状況に関する質問を追加するなど,情報を積極的に収集するというふうに申しましたけれども,今回の実態調査ももちろんその対象でございまして,この実態調査のアンケートの中でも,最低賃金の引上げに関連して,その引上げに伴う労務費のコスト増加にかかわらず単価を据え置かれた経験があるかどうかとか,それから,価格交渉が十分に行われているかといった質問も入れて調査を行うということでございます。
(事務方) 1点目の御質問について,発注側にはヒアリングという形で調査をしたいというふうに考えております。また,2点目の御質問の,スマホアプリの関係についてはもちろん含まれるということで取り組みたいと思っております。

(問) アンケートの内容を教えてください。
(事務方) アンケートの中身についての詳細は控えさせていただきたいのですが,内容的には取引の実態に関する質問であったり,下請法に関する,様々な取引の中での困り事や懸念点,やや問題と思われる点についての情報提供についてお願いしているところでございます。

(問) 発注者側は何社が調査の対象になるでしょうか。
(事務総長) アンケートの結果,ヒアリングの必要が出てくれば,それに応じた数の発注者を調べるということですので,まだ今のところ発注者側が何社かとちょっと言える状態にはないということでございます。

以上

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