[配布資料]
無し
事務総長会見記録(令和4年4月27日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
荷主と物流事業者との調査結果に基づく荷主に対する文書送付の実施について
本日、私からは、荷主と物流事業者との調査結果に基づく荷主に対する文書送付の実施についてお話しいたします。
公正取引委員会では、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制するため、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」、物流特殊指定を運用することで、荷主と物流事業者との取引の公正化を進めてまいりました。
令和4年3月30日に策定されました「令和4年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」では、令和3年度に実施した荷主と物流事業者との取引に関する書面調査の結果を踏まえ、今後、関係する荷主に対して、具体的な懸念事項を明示した文書の送付を実施するとしておりました。
そして、書面調査の結果を踏まえまして、「物流特殊指定」に照らして問題につながるおそれがある事項が見受けられた荷主に対し、違反行為の未然防止の観点から、必要な注意喚起を行う文書の送付を、本日開始いたしました。
この文書送付の対象となった荷主の数は、本日の時点で600社程度であります。
ただし、調査は一部継続中でありまして、文書送付の対象となる荷主の数は、今後、更に増える可能性もあります。
なお、書面調査の詳細な分析結果につきましては、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づく「価格転嫁円滑化に向けた法執行の強化の取組」の1つといたしまして、令和3年度における下請法措置実績の分析結果とともに、6月までに報告書を取りまとめ、公表する予定でありまして、現在、取りまとめに向けた作業を進めているところであります。
公正取引委員会といたしましては、今後も引き続き、荷主と物流事業者との取引を含め、中小事業者等の取引公正化に向けた取組を着実に実施してまいります。
なお、本件は、本年2月に新設いたしました「優越的地位濫用未然防止対策調査室」が担当しております。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 600社程度の荷主に文書送付ということですけれども、どういった指摘事項が多かったかなどありますでしょうか。主な問題点やそれに対してどんな指摘をされたとか、代表的なものを教えてください。
(事務方) 現在、調査結果を正に分析中のところでございまして、結果は6月までに取りまとめてまいりたいと思います。
(問) すみません、話題が変わるんですけども、昨日、政府の「デジタル市場競争会議」の方から、「モバイル・エコシステム」についての中間報告が出されました。まだ、中間報告で、これから最終的にどうなるかも分からない段階ですけれども、「事前規制」の導入もオプションの1つに掲げられています。公取の方も関わってのお話だったと思うので、別に驚きということはないと思うんですけど、現在の所感と、今後、独占禁止法の改正なり、公正取引委員会の方で何か対処していくことがありそうなのか、現時点でお分かりになる、お話しできる範囲で結構ですので、教えてください。
(事務総長) 御指摘のとおり、昨日、中間報告が出されて、そして、意見公募が始まっているかと思います。この中間報告の位置付けは、何か方向性を出したというよりは、今の法的な枠組みにとらわれず、幅広い考え方を対応策のオプションとして示して、それらについての考え方を関係者から集めて、その上で最終報告に向けて議論を深めていくと理解しておりますので、まだ一定の方向性があるというものではないと思います。御指摘のような、一般的に「事前規制」と言われているものが必要かどうかということは、日本だけじゃなく広く議論されておりますので、そういったものが対応策のオプションに入れられて、意見が求められるというのは自然なことかと思っています。
モバイルOSについては、公正取引委員会も今、実態調査を継続しているところでございまして、公表された中間報告にもありますけれども、公正取引委員会の実態調査が出た場合には、それを踏まえながら最終報告が取りまとめられるということですので、まだしばらくは、実態調査を進めつつ、議論の行方を見ていきたいと考えております。
(問) 他方、やはり日本だけでないですけれども、独占禁止法なり競争法で対応する場合には、事後的に調査を進めてという、競争法の執行による課題というのも出されたかと思うんですが、これまで、公正取引委員会もデジタル分野でいろいろな執行をされてきて、そこで学んだ教訓もあるし、課題もあるかと思うんですが、もう少し速やかに介入できるような方法を、公正取引委員会自体も検討していくべきだという問題意識はありますか。
(事務総長) 今の段階で理解しているのは、少なくとも日本においてはいろんな議論を経た結果、まずは「取引透明化法」という法律を施行しまして、その最初の報告というのが出てくるかと思います。そこでは、「共同規制」という枠組みを踏まえて、うまく行くかどうかを見ていくということだと思いますので、その中で、さらに、独占禁止法上問題があるものについては、引き続き、公正取引委員会が独占禁止法に基づき対応するということですので、今としてはそれで行くというところだと思います。
今回、「デジタル市場競争会議」から出されました中間報告についても、これまでの経緯等を見ながら、意見募集に対して出された御意見を含めて、今後更に何が必要なのかということを考えていくことかと思います。EUでも「デジタルサービス法案」について一部合意をされたという報道がなされておりますけれども、よく見ると、実際に、この合意が最終的に可決・成立したとしても、実際に執行されるのは更にそれから場合によっては1年以上先ということでございますので、諸外国の動向等については、今後の議論を含めて、しっかり見ていきたいと思います。
(問) 今の質問と関連するんですが、日本の独占禁止法が戦後に制定されてから、いろいろ時代も経って、デジタルだけでなくグリーンですとか、社会もいろいろと変わっている中で、率直に、今の競争法の体系というのを、時代に合わせて少しずつ変えていったりとか、そういった必要性や問題意識という、少し大きな話になりますが、社会情勢の変化についてどうお考えなのかというのを、改めてお聞かせいただけないでしょうか。
(事務総長) 競争法ができてからずいぶん時間が経っておりまして、そもそも最初は、アメリカの「反トラスト法」が1890年にできたんですね。アメリカでも絶えず、私の記憶の限りでは1990年代以降ですけれども、蒸気機関車の時代の法律がこのITの時代に通用するのかということをよく言われておりましたが、しかし、その後を見ていけば、やはり基本的な競争上の問題をきちんと調べて取り締まるという競争法の役割というのは、時代が変化したとしても変わっていないと思っております。御指摘のような意味での社会情勢は、この70年間、100年間に、今だけでなく絶えず変化しておりますので、その中でもベースとなる競争法の役割と意義というのは特に変わらないものだと思っております。ただ、実体経済は変わりますので、その中でどういう行為がどういう形で競争制限になるのか、ならないかをきちんと見極めるということが必要で、それは日本だけじゃなく、各国の競争当局が努力していることかと思います。
さらに、今議論になっているのは、競争法ですと、例えば、「不当な」とか、競争制限の程度といったことを、きちんと実態に合わせて調べた上で措置を採るということは、社会情勢が変わっても競争法を適用できるわけですけれども、そうではなく、今の状況の中で、特定の行為をしたら直ちに違反で、それをやめさせるということが必要かということが議論されていて、EUでもそうだと思いますが、日本でもそこまで必要かどうかという議論がされています。日本の「取引透明化法」の時もそうでしたけれども、独占禁止法を否定するんではなくて、独占禁止法を補完するものとして議論されていましたので、そういう意味で、競争法、日本の独占禁止法の役割というのは、引き続き、変わらざるものと思っています。
以上