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令和4年2月9日付 事務総長定例会見記録

令和4年2月9日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和4年2月9日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)

官公庁における情報システム調達に関する実態調査について

 本日,私からは2つのことについてお話しいたします。最初は,昨日公表いたしました「官公庁における情報システム調達に関する実態調査」についてです。
 現在,行政のデジタル化の推進が喫緊の課題となっていますけれども,本件は,国民の利便性の向上等に資するデジタル社会の実現に向けた政府全体の取組を踏まえ,競争政策の観点から,今後の情報システム調達について,ベンダーロックインが回避されることなどにより,多様なシステムベンダーが参入しやすい環境を整備することが重要であるとの認識の下,官公庁,すなわち国の機関や地方公共団体における情報システム調達の実態を把握するため,調査を実施したものであります。
 本報告書では,官公庁の情報システム調達における公正かつ自由な競争を促進する観点から,情報システムの疎結合化,オープンな仕様の設計や情報システムのオープンソース化,発注者側の組織や人員体制等の整備について,競争政策上の考え方を明らかにするとともに,官公庁の情報システム調達におけるシステムベンダー等の行為について,独占禁止法上の考え方や留意点を明らかにしています。本報告書には,デジタル庁等の関係府省庁に対する提言も含まれておりまして,公正取引委員会は,公表に先立ち,こうした提言に関して,デジタル庁と総務省に申入れを行っています。
 今後,公正取引委員会としては,デジタル庁等の関係府省庁と連携しながら,本報告書で示した考え方の普及啓発に努めることにより,官公庁,システムベンダー等において自主的な取組が行われ,官公庁の情報システム調達において公正かつ自由な競争が促進されることを期待しています。加えて,情報システム調達における独占禁止法違反行為に対しては,厳正に対処してまいります。
 さらに,公正取引委員会としては,情報システムに関して,多様なシステムベンダーの新規参入の促進が図られているかなどについて,今後,適切な時期にフォローアップを行うなど,引き続き,この分野を注視し,デジタル庁と連携して競争環境の整備に努めてまいります。

第27回開発途上国に対する独占禁止法及び争政策に関する集団技術研修の開催について

 続きまして,「開発途上国に対する集団技術研修」についてお話しいたします。
 近年,国際的なカルテルや企業結合,デジタル・プラットフォーム事業者の反競争的な活動への対応など,競争法執行に係る国際協力や法適用に関する国際的な収斂を更に促進する必要性が一層高まっております。これらに伴いまして,開発途上国においても,競争法制や執行能力を強化しようとする動きが活発化しています。
 こうした国々の競争当局等から,日本の競争法制とその運用や競争環境整備のためのアドボカシー活動について学びたいといった要望が数多く寄せられています。
 公正取引委員会は,これらの要望に応えるべく,職員を派遣したり,研修を実施することなどによって,競争法・競争政策に関する様々な技術支援を行っています。
 また,経済のグローバル化が言われる中,日本企業の開発途上国への海外進出は盛んに行われています。進出国において市場メカニズムが十分に機能しないとか,各国の競争法制が大きく異なるということになりますと,国際的な事業展開をしていく企業に大きな不利益が及んでしまうことになるおそれがあります。
 公正取引委員会が海外競争当局に技術支援を実施することによって,それらの国で公正な競争環境が深く確保されれば,日本企業の経済活動の予見可能性を高める可能性にも寄与することになります。
 こうした期待に応えるため,公正取引委員会は,以前から競争法・競争政策の技術支援に力を入れておりまして,その取組の1つとして,国際協力機構(JICA)の協力の下,開発途上国に対する競争法・競争政策に関する集団技術研修を行っています。
 この集団技術研修は,開発途上国の競争当局等の職員を対象に,日本の独占禁止法とその運用に関する知識を習得する機会を広く提供し,開発途上国における競争法の導入や運用の強化に資することを目的としています。
 今年度の集団技術研修は,公表文にもありますように,2月14日月曜日から2月28日月曜日にかけて,アンゴラ,インドネシア,ウクライナなど10か国の競争当局等の職員,計17名が参加して開催する予定となっています。本研修は,本来は,訪日して受講するものなのですけれども,新型コロナウイルス感染症の影響の下,昨年に引き続き,オンライン方式で開催することとなりました。
 今年度の集団技術研修では,デジタル関連の事件審査や取組,電子証拠の収集・活用のほか,競争唱導活動,アドボカシー活動等をテーマとして取り上げまして,説明や議論を行うことが予定されております。
 昨年も申し上げましたけれども,この集団技術研修は,平成6年度,私が,現在の国際課の前身であります「渉外室」というものがありましたが,そこにおりました時に,第1回が開催されました。その時は,中国,インド,韓国,マレーシア,モンゴル,そしてタイから計6名が訪日して研修が行われました。今回の開催が27回目となりまして,これまでの参加者は67カ国,309人に上っております。
 また,例えば,平成16年度・第11回の集団技術研修へのベトナムからの参加者ですけれども,当時は担当官だったということなんですが,現在は幹部職員になられておられまして,この研修は競争当局間の交流が一層深まることにもつながっております。
 公正取引委員会といたしましては,開発途上国が競争政策の分野を持続的かつ自立的に発展していくことができるよう,今後も継続して技術支援を実施していきたいと考えています。
 私からは以上でございます。

質疑応答

(問) ちょっと違う話なんですけれども,先週2月4日,経済産業省の産業構造審議会で行われた脱炭素社会への産業強化の部会議の一環として,独禁法の適用緩和についての話合いが行われたと存じております。複数企業のイノベーションの連携であったり,結合や事業再編に関して,これからいろいろ議論が進むとは思うんですけれども,公正取引委員会は,まず,こちらの関連する協議には既に参加されているのでしょうか。
(事務総長) 経済産業省で検討している場には,傍聴者として出ていまして,議論の中身は聞いているという状態だと認識しています。

(問) 2月4日の経済産業省の有識者会議で,脱炭素社会の実現に向けた対応として,競争政策を含めたルールの見直しについて言及しました。独占禁止法の適用緩和の取り沙汰されていますが,公正取引委員会の受止めと今後の対応をお願いします。
(事務総長) 何と言いますか,旧来型の産業政策ですと,何か新しいことを打ち出すという時には,例えば,日本の企業が一定の目標・目的に向かって一緒になって取り組んで,外国の企業に対抗していく,そのための手段として,日本の企業が共同して行うことについて独占禁止法の適用を除外するといったやり方を採ろうとする傾向があったかと思います。ただですね,経済産業省で今検討されているのは,産業政策の新機軸ということと聞いておりますので,そういう旧来型を思い起こさせるようなことは考えられていないんじゃないかなというふうに私は思っています。
 質問の中にありました脱炭素などの環境問題への対応と独占禁止法の関係ということについて,一般論ということで申し上げますと,独占禁止法の運用・執行によって公正かつ自由な競争を促進するということは,事業者の活動をより効率的にするということで,それは,すなわち同じ商品・サービスであればより少ない資源で生産・販売しようという努力を促すものですので,環境問題への対応と独占禁止法は,そもそも相反するものではないと考えています。
 また,脱炭素化に向けた目標や方針が示されている中で,事業者が技術開発を含めて脱炭素化に向けた様々な取組をするということは,基本的に消費者・需要者にとってプラスの影響を与えるものですので,そのこと自体が独占禁止法で問題になることはほぼ考えられないんじゃないかなと思っています。
 また,こうした脱炭素化に向けた取組を複数の事業者が共同で行う必要がある場合もあるかと思いますけれども,そうした取組というのは,通常,消費者・需要者にとって,脱炭素化というよりよい成果をもたらそうとするものですので,そうした取組が,実は個々の事業者の価格・数量や顧客・販路,技術・設備などを制限することになってしまって,消費者・需要者の利益が損なわれるというものでない限り,そうした脱炭素化の取組というのが独占禁止法で問題になるということは考えにくいかと思っております。
 更に言うと,むしろ,近年では事業者による脱炭素化の取組というのは,市場でプラスに評価されておりまして,そういう取組を怠るということが市場での評価を損なうことになりますので,自社の市場における地位を高めるための競争戦略の1つとして,脱炭素化の取組が各事業者によって積極的に進められているという傾向も見られると思っております。
 一方で,逆のこともありまして,事業者が共同して環境問題の改善に向けた研究開発などの取組を妨げるような行為が行われますと,これは独占禁止法上問題ということになります。2021年7月に,ドイツの自動車メーカー5社が有害な排出ガスを削減する技術に関して法律で要求されている以上のクリーン度を競うことを回避する共謀を行っていたということで,欧州委員会が制裁金を課しましたけれども,脱炭素化に向けた研究開発などの取組が,事業者の行為によって妨げられないようにするためには,こうした行為に対して,独占禁止法を厳正に適用していく必要があります。
 公正取引委員会は,従来から,事業者団体ガイドラインや共同研究ガイドライン,リサイクル・ガイドラインなどで公共目的を有する共同行為に対する独占禁止法上の考え方を示してきておりますし,事業者からの相談に対応して,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例も複数存在しています。また,欧州委員会が2021年11月に採択しました「新たな課題に対応する競争政策に関するコミュニケーション」でも,グリーンへの移行のために競争政策が果たす重要な役割ということが強調されております。
 こうしたことを考えますと,脱炭素化などの環境問題への対応では,類型的に独占禁止法の適用除外を設けるといったことではなくて,関連するガイドラインとか既に公表されている相談事例などを参考にしつつ,個々の具体的な取組で独占禁止法との関係が気になる場合には,個別の相談などで解決していくといったやり方で進めていくことの方が適切ではなかろうかと考えているところです。少々長くなりましたけど,私からは以上です。

(問) すみません。追加で1ついいですか。そうすると,公取委としては,新しいガイドラインであるとか,新しい動きをするのではなく,もう存在しているルールや法律の中で解釈を進めていくという理解でよろしいのでしょうか。
(事務総長) 経済産業省の方で検討されている場でも,報道のようなことが明示的に議論されているとは我々は承知しておりませんので,経済産業省で起きる議論がどういうふうに進んでいくかということもよく見ていきたいと思っております。
 また,通常,そういうことは,こちらの担当課にも相談が来ると思いますので,その中で,どういう議論が進むかによって,いろいろ検討を進めたいと考えております。

(問) 関連しまして,私からも,ちょっと経産省の資料は手元に無いのであれなのですが,産業構造審議会の新機軸部会の方で示したドイツの事例で,脱炭素に資する部品を作る会社が企業結合する際に,現地の競争当局が一旦差止めを行ったが,エネルギーや環境問題の観点から,関係する大臣がオーケーした,競争当局の判断が覆ったという事例を提示されていました。先ほどお話もありましたけれど,現行の日本の競争政策・独禁法の枠組みの中でも,多分,環境にいいからオーケーという明示的なものはないとは思うんですけれども,そうなると,多少,経産省が言っているとされるような競争政策の見直しみたいな議論も出てくるのかなという気はするんですが,そのあたりの議論の必要性に対する認識はどうでしょうか。
(事務総長) そうですね,ドイツの「大臣許可制度」の仕組みというのは,日本であまり十分に理解されていないと,私は思っておりまして,前提として,まずドイツの連邦カルテル庁というのは,数多くの企業結合の禁止決定を出しております。多分,1970年代からで100件以上の禁止決定があると思いますが,その中のごく一部で,「大臣許可」の申請が出されて,「大臣許可」の申請がなされたものの中で,更にごく一部で,その申請が認められている,しかも,かなり詳細な条件付きでしか認められていないというのが実態です。この「大臣許可」の申請が出された時には,賛否両論,喧々諤々の議論がドイツ国内で行われて,その中で,大臣が政治家として政治的な決定を下すというのが,この仕組みでありまして,極めて例外的なものであります。
 さらに,「大臣許可」で目指した目標があるんですけども,それも過去の,この件については,ちょっとまだ詳細に承知しておりませんが,過去の例ですと,その効果が実際に達成されたかどうかということについては,必ずしもそうではないと評価されているものの方が非常に多いと,私は理解しております。
 したがって,少なくとも,ドイツの事例を引用しつつ日本で議論をする場合には,背景事情とか反対議論とか,そういうことも含めて慎重に取り扱った方がいいと思います。表面的な事実で判断するのは極めて危険じゃないかと考えております。

(問) 経産省側の引用は,若干恣意的であるというふうなニュアンスでよろしいのでしょうか。
(事務総長) これについては根拠資料がありまして,2021年3月26日に出ている三菱総合研究所の報告書,多分,経産省からの委託調査の報告書なんですけども,それを見ていただくと,より詳しく出ておりまして,それを見ただけでもそう単純ではないということが分かるかと思います。

以上

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