[配布資料]
「公正取引委員会の令和5年度概算要求について」(令和4年8月31日公表資料)(PDF)
「公正取引委員会における令和4年度の政策評価結果について」(令和4年8月31日公表資料)(PDF)
[発言事項]
事務総長会見記録(令和4年9月7日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
公正取引委員会の令和5年度概算要求について
本日は2点、私から御説明します。
1点目は、8月31日に公表いたしました令和5年度予算の概算要求でございます。公正取引委員会の令和5年度の概算要求額は、111億9000万円ということでございまして、前年度当初予算に比較して、3億4400万円、率にしまして3.2%の増となっております。
概算要求の主な内容としましては、一つ目は「厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用」ということでございまして、デジタル分野や規制改革等における効果的な対応、それから、以前から公正取引委員会が行ってきております価格カルテルや入札談合事案等の違反事件処理、そのほか、グローバルな企業結合事案への的確な対応等に必要な経費として8億5200万円を要求しております。
二つ目の「中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化」につきましては、労務費、原材料費、エネルギーコスト、こういったものが上昇しておりますけれども、その上昇分の転嫁拒否に関する優越的地位の濫用、下請法違反行為への厳正対処やその未然防止、さらにはフリーランスやスタートアップ企業の取引適正化に向けた取組等に必要な経費として、6億900万円を要求しているほか、一部の経費は「事項要求」ということで要求を行っております。
三つ目の「競争環境の整備」につきましては、デジタル市場やグリーントランスフォーメーションを始めとする様々な分野におけるアドボカシー、いわゆる唱導機能、こういったものの実効性の強化、それから、各国競争当局間の国際協力の推進等に必要な経費として、2億9400万円を要求しております。
これに関連しまして、機構定員の要求でございますけれども、新しい資本主義実効計画などの政府方針や自民党競争政策調査会などでまとめていただいた提言などにおきましても、公正取引委員会の体制強化について掲げられておりました。そういったことを踏まえまして、機構につきましては、新しい資本主義実行計画等に基づく競争環境の整備に向けたアドボカシー機能強化のための体制整備として、官房審議官(アドボカシー担当)の新設、調整課企画官の新設という2点、それから、新しい資本主義実行計画等に基づく中小下請取引適正化に向けた執行強化のための体制整備としまして、官房参事官(中小事業者等担当)の新設のほか、企業取引課企画官の新設、この2点の合計4機構を要求しております。
定員につきましては、厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用、中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化、競争環境の整備等のため、合計68名の増員を要求するなど所要の体制整備に向けた要求を行っております。
以上が1点目、概算要求でございます。
公正取引委員会における令和4年度の政策評価結果について
2点目は、これも同じく8月31日に公表しておりますけれども、令和4年度の政策評価結果についてお話しいたします。
公正取引委員会では、「行政機関が行う政策評価に関する法律」という法律に基づきまして、公正取引委員会の行う施策につきまして、毎年度政策評価を実施しております。
令和4年度は、四つの施策、具体的には「発注機関における入札談合の未然防止」、二つ目として、「競争政策に関する理論的・実証的基礎の強化」、三つ目に、「政府規制分野等に係る調査・検討及び評価」、そして、四つ目として、「デジタル市場における競争環境の整備」、この4施策の政策評価を実施いたしました。
このうち一つ目の「発注機関における入札談合の未然防止」の施策につきましては、発注機関の職員の方々を対象に入札談合等関与行為防止法、いわゆる官製談合防止法等に係る研修でございますけれども、研修参加人数、参加者の理解度、どの程度有益と感じていただいたかという有益度といった指標において、高い水準を維持しております。
二つ目の「競争政策に関する理論的・実証的基礎の強化」の施策は、競争政策研究センターを設置しまして、競争政策上の先端的な課題の研究活動を行い、その結果を公開のシンポジウムやセミナー等で発信するものでございますが、こうしたシンポジウム等には多くの方に参加いただいておりまして、また、参加者のテーマへの満足度も高いことが確認されております。
次に、三つ目の「政府規制分野等に係る調査・検討及び評価」の施策でございますけれども、これは、政府規制分野の実態調査を行い、報告書で競争政策上の考え方を示すことで、政府規制等の見直しを促す等の取組を行うものでございますけれども、国民の関心が高い分野に関する実態調査報告書等を毎年2件以上公表しておりまして、各報告書等のウェブサイトには、目標値を大幅に超える多数のアクセスがございました。
最後に、四つ目の「デジタル市場における競争環境の整備」の施策では、デジタル市場に関する実態調査報告書、それから、競争政策上の論点・課題への取りまとめ結果を公表等しておりますところ、ウェブサイトに多数のアクセスが寄せられました。
以上の四つの政策評価対象の施策でございますけれども、三つ目の「政府規制分野等に係る調査・検討及び評価」については「目標達成」という評価をいたしておりまして、残る三つの施策については、「相当程度進展あり」という評価といたしました。
公正取引委員会としましては、引き続き、政策評価を適切に実施し、政策評価の結果を踏まえた効率的で質の高い施策等の実現を心掛けてまいりたいと考えております。
本日、私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 令和5年度の概算要求についてお聞きしたいんですけれども、1番目の「厳正かつ実効性のある独禁法の運用」というところで、昨年より4億500万円、倍増ぐらいしている一方で、5番目の「その他」が同じ4億500万円減っていて、これはいわゆる付け替えというか、今まで、昨年は5番目に入れていた分野を1番目に入れたということなのか、それとも、新たなプラスアルファの施策を行うということでしょうか。後者だとしたら、具体的にどういうところで予算を増やしたのか教えてください。
(事務総長) 御質問ありがとうございます。確かに数字がぴったりプラスとマイナスが同じなので、一見付け替えたのかのように見えるかも分かりませんけれども、5番目の「その他」というのは、新しい施策というよりは既定の、例えば人件費でございますとか、あるいは、我々は庁費と呼んでいますけれども、様々な組織維持のために必要な予算でございまして、こちらにつきましては、例えば、消費税転嫁対策というのをこれまで行ってまいりましたが、ほぼ終わりになっているということで予算を減らしたりして、4億円強を捻出しております。他方、1番目の「厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用」につきましては、それをそのまま持ってきたということではなく、それぞれ新たな予算要求をしております。大きいところで言いますと、審査関係経費といたしまして、新時代に対応した審査手法の高度化・効率化のための調査研究など、新しいものを要求しています。
具体的に言いますと、電子証拠の収集、保全、解析及び精査・分析などについて、業務量が増大しておりますので、こういったものの業務フローの見直しですとか、審査現場における非常に多い電子証拠について、AIを搭載したソフトウェアの導入ができないかということの検討、そこは、すぐに導入するというわけではないんですけれども、そういったことの調査検討を行うための経費増というのが、1番目の中では大きな固まりとしてあると御理解いただければということでございまして、実質的に、独占禁止法の運用のための新たな取組のための新規予算を要求しているものでございます。
(問) 概算要求なんですけれども、事項要求、これは新しい資本主義関連ということで、今、言われているフリーランスの下請法の改正なども入っていると理解しているんですけれども、下請法ということで、実際に法律が改正されて、執行になった場合は、公正取引委員会が執行するかと思うんですけれども、それ以前に実際の法改正に公正取引委員会がどのような関わり合いをしていくのか、前に示されたガイドラインでカバーし切れない点はどのようなものなのかということをお聞かせください。
(事務総長) 御質問ありがとうございます。先般の報道を前提として下請法の改正ということで御質問いただいたと思うんですけれども、確かにフリーランスの問題につきましては、6月7日に閣議決定された新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画におきまして、フリーランスについては相談体制の充実とともに取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出するとされているところでございます。これは、下請法改正というものを必ずしも考えているわけではなくて、現在、内閣官房を中心に、公正取引委員会も含む関係省庁におきまして、新法の制定も含めて、必要な法案を国会に提出すべく、法形式や内容についての検討を進めているところでございます。したがいまして、必ずしも下請法の改正に向けた検討というのは現在予定しておりませんけれども、いずれ何らかの形で取りまとまれば、新たに国会に提出していくことになると思います。
(問) そのような議論は、内閣官房が主になって進めるのかと思うんですけれども、具体的にどのような形で進められるか、今の段階で分かることがあれば教えてください。
(事務総長) 検討は随時進んでおりますけれども、公正取引委員会はチームの一員でございますので、公正取引委員会だけが先行してこういう状態ですということを申し上げるのは難しいものですから、取りまとまるのをもう少しお待ちいただければと思います。
(問) 機構の部分で、官房審議官のアドボカシー担当と、併せて中小事業者等担当を新設されることによって何がどう変わって、また、事務総長から何か期待みたいな部分もあれば、併せてお尋ねしたいです。
(事務総長) 官房審議官(アドボカシー担当)と官房参事官(中小事業者等担当)ですね。
(問) はい。
(事務総長) はい、分かりました。これにつきまして、それぞれ何がどう変わるかというよりも、ニーズがあるので、要求してお願いしているというところでございます。官房審議官(アドボカシー担当)につきましては、骨太の方針や、先ほど申しました新しい資本主義実行計画の中で、公正取引委員会による競争政策に係るアドボカシーの体制を整備し、アドボカシー機能を抜本的に強化することが求められているということがうたわれておりますので、公正取引委員会のアドボカシー機能への期待が高まる中で、実効性があって、改革的なアドボカシーを実行するために実態調査をしたり、提言をしたりするわけでございますけれども、その中で、様々な方面とハイレベルな折衝や調整が必要となるということでございまして、現在は各課室で課長や室長が頑張っているんですけれども、一段、それを統括するような、あるいは外向きにハイレベルな調整ができるような審議官の新設をお願いするというのが1点目でございます。
2点目の方の官房参事官(中小事業者等担当)ですけれども、こちらは御案内のとおり、エネルギー価格の上昇を始めとする経済環境の大きな変化を踏まえまして、独占禁止法上の優越的地位の濫用や下請法上の買いたたきに関する執行強化に取り組んでいるところでございますが、個別の違反行為を「点」として、法執行で叩いていくというだけでなくて、昨年12月に各省庁との連携で取りまとめられました転嫁円滑化施策パッケージで、価格転嫁円滑化スキームとして、新たに事業所管官庁とも連携して、業種別で「面」として、業種ごと、業界ごとに、対応強化に取り組むということをしておりますので、こういったことを行うためには、現在も企業取引課長などが頑張っておりますけれども、多くの事業所管官庁や関係団体とも緊密な連携を図って、高度な調整を行っていくという必要がありますので、そういったことをできる役職として、参事官をお願いしているところでございます。
(問) ちょっと話が変わるんですけれども、先週グーグルがグーグルプレイアプリストアで外部決済方法を地域限定で取り入れるというようなポリシーチェンジがありました。その中で日本も含まれていたんですけれども、公正取引委員会がアプリマーケットなどいろいろな競争的な懸念を示した今までの流れがあるかと思うんですけれども、今回のグーグルのポリシーチェンジをどう評価するかということを教えてください。
(事務総長) 御指摘の件は、9月2日に、グーグルが公表しました地域限定ということで、日本とか欧州とかオーストラリア、インド、インドネシアといったあたりの、ゲームは除かれているようですけれども、アプリを対象にアプリ内の決済方法について、グーグルが提供する以外の決済方法を選択できる仕組みの導入のことかと思いますが、そういったものが出たことは承知しております。
このアプリストアをめぐる問題につきましては、例えば公正取引委員会は、令和元年10月に公表しましたアプリストアの実態調査報告書の中では、アプリ外決済を禁止して、アプリ内課金の利用を不当に強制するなどの場合には、独占禁止法違反となるおそれがあるというような考え方を示しているところでございます。また現在、内閣官房のデジタル市場競争会議において、モバイル・エコシステム等の競争評価が行われておりまして、それと連携するような形で、モバイルOS市場やアプリ等流通市場それぞれについて、我々は実態調査を行っているところでございますけれども、内閣官房の中間報告でも、アプリストアにおける決済・課金システム利用義務付けに関する検討が行われておりまして、その1つのオプションとしてアプリ内決済の利用強制の禁止等が挙げられているというような関係がございます。
このような取組が進められている中で、今回グーグルが新たな取組に着手したものと認識しておりますけれども、実際どのように運用されていくか、アプリ開発者にとってどの程度メリットがあるか、あるいはそこでの競争が活発になるか、こういった点については今後の実態といいますか、運用のされ方を注視していきたいと考えております。
(問) ありがとうございます。グーグルが、このようなパイロットプログラムを始めたということで、アップルも似たような外部決済を取り入れる方針転換が望ましいとお考えでしょうか。
(事務総長) アップルにつきましては、昨年の9月でしたか、違う方法ではありますけれども、リーダーアプリについてアウトリンクを認めて、そちらの方のアプリベンダー側のサイトに移行してそこで決済をするというような方法を取り入れるということを前提に、公正取引委員会は、審査を打ち切ることを公表したところでございますけれども、そこはいろんなやり方があるんだろうと思っています。何が望ましいのかという点につきましては、先ほども申しましたように、その実態を見て、そこで競争が働いているかどうかということを見て判断するのかなと思っておりますので、ここでは二つの方法が挙げられておりますけれども、どちらが望ましいとか、こちらにすべきだとかということは現時点では考えておりません。
以上