ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >令和4年 >10月から12月 >

令和4年12月7日付 事務総長定例会見記録

令和4年12月7日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和4年12月7日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

下請取引の適正化について

 本日、私から2点申し上げます。1点目は、下請法違反行為等の未然防止を図るための取組でございます。
 年末にかけての金融繁忙期におきまして、一般的に資金決済や従業員へのボーナス支給などで事業者の資金需要が高まる時期であるとされておりまして、下請事業者の資金繰り等について厳しさが増すことが懸念されます。そこで、下請代金の支払遅延、あるいは下請代金の減額等の行為が行われることがないよう、関係事業者団体に対し、公正取引委員会委員長と経済産業大臣の連名の文書により、下請法遵守の徹底等について毎年要請しております。
 昨今のウクライナ情勢や円安等の影響によりまして、エネルギー価格や原材料費が昨年にも増して高騰する状況が長期化する中、総じて外的要因の影響を受けやすい立場にある中小企業・小規模事業者には大きな影響が出ているものと存じております。
 さらに、これから年末にかけて資金需要が高まる中、下請事業者の資金繰り等は一層厳しさを増すことが懸念されますので、親事業者は下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにしていただく必要があります。
 また、公正取引委員会では、昨年末、政府全体として取りまとめられた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を踏まえ、取引の公正化の更なる推進に向けた取組を実施しておりますところ、下請事業者と親事業者との間で積極的な価格交渉と適正な価格転嫁を行っていただくとともに、親事業者には下請事業者への不当なしわ寄せが生じないようにしていただく必要があります。
 そこで、令和4年11月25日、日本経済団体連合会、日本商工会議所等といった全国の関係事業者団体1,650団体に対して、先ほど申し上げた内容について、傘下事業者に対し周知徹底を図り、下請法の遵守に取り組むよう協力をお願いする旨の文書を送付しました。これにより、下請取引等の一層の適正化が図られることを期待しております。

公正取引委員会の緊急増員について

 次に、公正取引委員会の緊急増員についてお話しいたします。
 昨日12月6日、「公正取引委員会事務総局組織令の一部を改正する政令」及び「行政機関職員定員令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。これによりまして、年度途中での緊急的な措置として、公正取引委員会において機構の新設及び50人の増員が行われることとなります。
 具体的には、官房参事官(中小事業者等担当)及び企業取引課企画官の新設を行うとともに、企業取引課に27人、企業取引課下請取引調査室に3人、審査局に10人、それから地方事務所等に10人の全体合計50人の増員を行います。また、これとは別に、内閣府沖縄総合事務局の公正取引室においても1人が増員される予定です。
 これらの増員につきましては、昨今の原材料価格の上昇や円安の影響などによる深刻な物価上昇の影響を受け、本年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」におきまして、「中小企業等が価格転嫁しやすい環境の実現」に向けて「公正取引委員会等の執行体制を強化する」旨明記されたことを踏まえたものです。
 今回の体制強化により、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否が疑われる事案が発生していると見込まれる業種への調査を行うとともに、独占禁止法や下請法上問題となる事案については、命令・警告・勧告など、これまで以上に厳正な執行を行ってまいります。
 改正組織令等は今月9日に公布・施行される予定です。
 本件の詳細については、官房人事課までお問い合わせください。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 発表事項とは違うんですが、東京五輪のテスト大会の談合事件について伺います。東京地検特捜部と公正取引委員会により、独占禁止法違反容疑の捜査が続いていますが、今回、3年ぶりに犯則調査権を使ったということで、その意味合いを教えていただきたいなと思っております。公正取引委員会は、告発方針だと、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案は積極的に刑事処分を求めるとしています。今回の事件だと、どの辺りが国民生活に大きな影響があると考えられるのかについて教えていただければと思います。
(事務総長) オリンピック・パラリンピックという世界的なイベントが久しぶりに日本で開催されることになったわけですけれども、国民の注目度も高いイベントに関連して独占禁止法違反の行為が行われたとすれば、それは国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案であると考えられます。今後の犯則調査の結果、独占禁止法違反行為があることが認められれば告発するということも視野に入れて現在審査中ということでございます。
(問) 大手電力会社のカルテル問題について、各社の適時開示により、過去最高額となる1000億円超の課徴金が、中部電力、中国電力、九州電力の各社とその関連会社に命じられたことが分かりました。一方で、関西電力は、リニエンシーを使ったために課徴金を課されないということが取材報道では見られます。独占禁止法違反のカルテルを解明する際に、リニエンシーが果たす役割や期待するところですとか、また、この制度ができて以降のリニエンシーの運用についてどのように見ていらっしゃるかという御見解、受け止めをお聞きします。
(事務総長) 今御質問いただきました電力カルテルについて、調査をしていること、それから、各社の適時開示のとおり、特定の旧一般電気事業者に対して、意見聴取手続に関する通知を行ったことは事実でありますし、また、関西電力に対して、今回の命令案の通知を行っていないことも事実でございます。現時点におきましては、それぞれ最終的な結論を出す前の手続の中であり、広い意味で言うと審査中ということでございますので、個別事案の中身についてはお答えを控えさせていただきたいと思います。
 同時に御質問のありましたリニエンシーの意義や役割につきましては、既に御存知かもしれませんけれども、カルテルや談合といった行為は、密室で行われて、秘匿性が高いといった特徴をもっていて、事案が表に出てきにくいものです。そういった中で、課徴金を減免されるということによって、その違反行為があったことを自主申告するということは、カルテルの抑止あるいは違反行為をなくしていくためには意義のある制度だと考えております。この制度が活発に使われて、今、起きてしまったカルテルや談合についても速やかに実態が解明されて、違反行為がなくなることを期待しているところでございます。
(問) 先ほどのオリンピックの関連について、まずあくまで一般論的な範囲でお話をいただきたいのですが、一部報道では、業者が決まるかどうか不安だったとか、あるいは必要悪だという言説を述べているという報道もあるのですが、こういった言い分というのは過去の事件の審判でも繰り返し主張をされているところだと思います。そういった必要悪といったことが談合した理由になるのかというところについて、どのような見解をお持ちでしょうか。
(事務総長) カルテルは必要悪という方便も時々耳にすることではございますけれども、あくまでも発注者が、競争的な方法によって受注者を決めるという仕組みを採っている以上、そこには競争原理を働かせるという発注者側の意思があると考えております。本来競争によって受注者が決まるような仕組みである市場原理の発揮を無にするようなカルテルや談合というのは、理由はともあれ、許されるものではないのではないかと考えております。
(問) オリンピック・パラリンピックに関することなんですけれども、今、審査中と理解していますが、告発の方向ということはもう既に視野に入れていると理解していいですか。
(事務総長) 犯則調査を行っていることは事実でありますけれども、あくまでも独占禁止法違反があるということが調査の結果、事実、証拠をもって認定された場合に、告発ということを決めていくということでございまして、現時点については、告発の方向と定まったものはありません。
(問) 先ほど発表のあった緊急増員についてなんですけれども、先月、10人の中途採用の募集について発表があったかと思います。そして、一方、来年度において、概算要求で68人の増員を求めているかと思うのですが、その68人と今回の50人はどのように関わっているのか。そして、既にもう配属先が決まっているようですけれども、永続的に企業取引課あるいは下請調査室等に配属されることになるんですか。
(事務総長) 最後の質問からお答えすると、これは定員でございますので、どこに何名というのは政令などで決まっているものになります。
 68人の増員を求めたというのは、令和5年度の定員要求で行っているものでして、今回は年度途中での緊急増員というイレギュラーなものでございます。令和5年度の定員要求についてはまだ結論は出ておりませんが、また年末頃に、その結果について明らかにできるのではないかと考えております。
(問) ということは、来年度要求を合わせて、100人増になる可能性もあると。
(事務総長) そこは査定当局の御判断もありますので、現時点でどれぐらいの人数になるかというのは分かりませんけれども、今回50人の緊急増員が認められておりますので、これに加えて、少しでも上積みを認めていただけたらと考えているところでございます。
(問) 先月の10人の中途採用について、こちらは目的が限定されているんでしょうか。
(事務総長) 中途採用の方は、特に目的を限定せずに、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用して、さらなる体制強化を図りたいということでございますので、必ずしも今回の50人の緊急増員とぴったりリンクしているものではありません。いろいろな形で人員の募集を行っておりますので、その中で、民間企業での経験を持った経験者採用を公正取引委員会で独自に行っていたというのが、前回10名程度募集したことの中身でございます。この50人と中途採用の募集の10人というのは、何か関連性があるというわけではありません。
(問) 来年度の定員要求68人の方も、ある程度目的が触れられていたかなと思うんですが、そこにも転嫁とか下請対策があるのかなと思うんですが。
(事務総長) この68名については、まだお願いをしているところでございますけれども、今回それとは別に、総合経済対策の観点も受けまして、転嫁対策等に対してさらに取組を強化するという観点から50名が年度途中で増員が決められたものでございます。
(問) こういった経済対策を理由に、これだけの大幅な定員増が図られたということは過去にあるんですか。
(事務総長) 他省庁は把握しておりませんけれども、公正取引委員会の歴史の中では、年度途中での緊急増員自体が、大変珍しいことかなと思っております。しかも現在の公正取引委員会の定員が854人であることからすると、50人という、かなり大規模のものをお認めいただいたと考えております。
(問) 電力カルテルについて、今回、カルテルがあったという判断の下、処分案を通知されたものと思いますが、これが事実であれば、電力自由化の精神ですとか、改革の趣旨に背く行為かと思うんですけれども、国民の生活に身近な電力会社をめぐるカルテルの問題としてどのような問題意識を持たれているか教えていただければと思います。
(事務総長) 今御指摘いただいたように、電力分野については、かつては各地域に、大手電力会社がその地域唯一の供給者という時代が長く続いてきたわけでありますけれども、その電力供給分野における規制改革が行われて、業務用から自由化が始まって、今は一般家庭向けの小売り分野まで自由化が進んでまいりました。
 このような自由化の中身としましては、競争を導入して、その競争の中で消費者に、あるいはユーザーにメリットがある電力市場になるようにということで進んでまいりました。仮に、例えば供給区域を元に戻すような形で、分割して、それぞれのエリアを守っていくというようなことがあったとするならば、それは、制度の趣旨や電力自由化といったことに反するものであり、我が国が目指している電力市場の方向性に反するものではないかと考えております。
(問) 今回、リニエンシー制度の活用が事件につながったと思っています。リニエンシー制度が導入された当初に比べると、申請の件数はかなり減ってきているのではないかなと思いますが、そのあたりの問題意識とか背景についてお考えがあれば教えていただきたいのと、制度の今後の活用方針みたいなものがあれば教えてください。
(事務総長) リニエンシー制度につきましては、日本ではなじまないのではないかと言われつつ、法改正をして導入され、比較的活発な申請があり、そのリニエンシー制度を端緒として事件審査、あるいは行政処分につながった事例も多々ございます。
 その中で、最近、リニエンシーの申請件数が減っているのではないかという御指摘でありますが、確かに件数自体は導入当初、あるいは直後、そこから数年の間は多かったんですけれども、今現在、減少傾向となっていると承知しています。しかし、これは必ずしも日本だけではなくて、世界的に今、リニエンシーの申請件数があまり多くない状況から、リニエンシーが活発ではないのではないかということを言われております。その背景にはいろんな事情があると思いますけれども、例えば海外では、リニエンシーをして当局の処分を免れたとしても、民事の損害賠償で巨額の賠償金を取られるなどといったことも一因ではないかと言われていると承知しているところでございます。
 日本でもリニエンシーの申請件数が減っているというのは、例えば、カルテル自体が減っているという可能性もありますし、それから、申請のインセンティブが薄れている可能性もなくはないんですけれども、その原因については、私どもも必ずしも分析しきれておりません。
 また、御質問がありましたリニエンシー制度の活用についての方向性ですが、令和元年の法改正で、協力減算制度が導入されましたところでございます。減免申請を行って調査に御協力いただいた場合、事前1位の場合には課徴金が免除ということはこれまでと変わりませんけれども、2位以下の事業者についても、当局の求めに応じて十分な資料や情報を出していただくことによって、減算率が変わるという制度を導入しております。これは、当局が一方的に事案を解明するというよりは、減免申請をした事業者と一緒になって、実態を解明し、カルテルもなくしていく、あるいは違反を抑止していくことにつながるものでございます。引き続き、この制度を活用していただきたいと思いますし、我々も減免申請で出てきたものを重要な端緒として独占禁止法違反事件の審査に取り組んでまいりたいと考えております。
(問) 先ほどの緊急増員のところで、取引部や審査局を増員するということですが、部署によって役割分担とか、棲み分けもあるんでしょうか。
(事務総長) 取引部の企業取引課に27人という数を申し上げました。今回、取引部に増やしておりますのは、価格転嫁の関係で、優越的地位の濫用に関する緊急調査というのを行っております。これは、単に実態調査だけではなく、個別具体的な事案を見ていって、違反行為の未然防止を図るというためのものでございます。今回の取引部や地方事務所等における調査に従事する37名につきましても、今後行うであろう調査、あるいは違反行為の未然防止のための定員ということでございます。そして、それが未然防止にとどまらず、さらに問題があれば、独占禁止法や下請法を執行していこうということでして、独占禁止法の審査事件として執行する部分は審査部門に増員されている部分でございます。未然防止と厳正な法執行と、両方で対応していくための増員であるとお考えいただければと思います。
(問) グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関するガイドライン検討会が12月5日に3回目を終えられたということで、この議論について伺います。先行して開かれた経済産業省の議論では、そもそも脱炭素で競争政策のガイドラインを示すのは難しいのではないかという意見もあったと思うんですけれども、公正取引委員会としてガイドラインの示す道筋というのはつけられたんでしょうか。今後の流れですとか結論の方向性など、可能な範囲で伺いたいと思います。
(事務総長) ガイドラインというのは、最初から完全なものを出すのか、あるいは出したものをさらに見直すことも含めてやっていくのかというのはあると思います。いずれにしましても、事業者又は事業者団体がGXを推進する上おいて、グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関するガイドラインを示すことで、独占禁止法上、どこまで、何ができるか、何ができないかをなるべく明らかにしたいと考えています。その上で、GXに関して独占禁止法の懸念なく取り組んでいただくことが大事だと思っております。ガイドライン自体は、現在、検討会における議論を踏まえて検討中ではございますけれども、令和5年の早い段階でガイドライン原案を公表したいと考えているところでございます。ただ、どの時点でというのが決まったものではございません。
(問) この検討会をつくったそもそもの狙いにつながる話だと思うんですけれども、脱炭素の流れの中で、独占禁止法の例外がある程度許容されるべきなのではないかという問題意識もあったと思いますが、改めてその辺りの問題意識を伺ってもよろしいでしょうか。
(事務総長) 既に環境政策を含むいくつかのガイドラインの中で、できることとできないことを示しております。今回は、そういったものを統合し、また、GXに向けた企業の新たな取組などを知った上で、どういった考え方ができるかを検討しているものですので、独占禁止法の規定の例外をつくることありきではございません。そもそもガイドラインというのは、現在の法律の考え方を明らかにするものでありますので、現行法でできないことをガイドラインでできるようにすることはできないことでございます。GXに向けて考えられる取組について、事業者の取組に沿った形で分かりやすく独占禁止法上の考え方を明らかにしていくというのが今回の趣旨です。例外をつくろうとか、あるいはつくれるといったものではないということは御理解ください。

以上

ページトップへ