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令和5年5月10日付 事務総長定例会見記録

令和5年5月10日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

 無し

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和5年5月10日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の成立について

 本日は、2点お話しさせていただきます。1点目は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の成立について、でございます。
 いわゆるフリーランスに関する法律でございますが、令和4年6月に閣議決定されました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、フリーランスに関しまして、「取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出する」とされていました。これを踏まえまして、内閣官房を中心に、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、厚生労働省で検討を行いまして、令和5年2月24日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」、通称はフリーランス・事業者間取引適正化等法案といいますが、これについて閣議決定が行われまして、国会に提出されました。その後、国会での審議が行われ、衆議院本会議では4月6日に、参議院本会議では4月28日に、全会一致で可決されて、法律として成立しております。
 この法律は、働き方の多様化の進展に鑑みまして、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とし、発注事業者に対し、いわゆるフリーランスとの取引について、書面等での契約内容の明示や報酬の原則60日以内の支払を義務付け、さらに、一定期間継続してフリーランスに業務委託する場合の減額、買いたたき等を禁止するものです。また、フリーランスの就業環境を整備するために、発注事業者に対し、フリーランスへのハラスメント行為に係る相談対応等の必要な体制を整備すること、一定期間継続する業務委託を中途解除する場合等には、原則として解除日の30日前までに予告することなどを義務付けることとしております。
 この法律の施行は、法律の公布から1年6か月以内の政令で定める日からとされておりますので、今後、施行に向けて政令・規則・ガイドラインを策定する予定です。公正取引委員会としては、関係省庁と連携しながら、この法律の施行に向けての準備や周知活動などをしっかりと行っていきたいと考えています。
 これが1点目でございます。

ヴェステアー欧州委員会上級副委員長との会談について

 2点目でございますけれども、先月28日に実施された、古谷委員長と、マルグレーテ・ヴェステアー欧州委員会上級副委員長との会談についてお話しします。
 先々週のこの定例会見で御質問がありましたけれども、古谷委員長とヴェステアー上級副委員長との会談が行われております。欧州委員会でデジタル政策、競争政策等を担当されているヴェステアー上級副委員長が、先月29日及び30日に開催されましたG7デジタル・技術大臣会合に出席するために来日されたことから、これに合わせて古谷委員長との会談を東京で行ったものです。古谷委員長とヴェステアー欧州委員会上級副委員長とは、令和3年2月12日に、ウェブでバイの会談を行っておりますが、対面で会談を実施するのは今回が初めてです。
 会談では、デジタル市場における取組、グリーン社会の実現に向けた取組等、日EU双方における競争法・競争政策の最近の展開について活発な質疑応答、意見交換が行われました。限られた時間ではございましたけれども、トップレベルによる対面での意見交換を行うことができたことは、競争当局間の協力関係の強化にとって大変有意義であったと考えております。
 公正取引委員会としましては、引き続き、日EU間で幅広いレベルでの対話を継続していきたいと考えているほか、このような競争当局のトップ同士の会談等の積極的な実施を通じて、競争当局間の相互理解を深め、協力関係の一層の強化を図っていきたいと考えております。
 私からは以上、2点でございました。

質疑応答

(問) 1点目についてですが、この法案は、所管官庁がいくつかに分かれていますが、公正取引委員会が関わるのはどういう部分で、施行に向けてどういう準備をされていくのか教えてください。あと、他省庁との連携のところが、ちょっとイメージが湧かないものですから、具体的に教えていただけるとありがたいです。
(事務総長) この法案は、大きく分けますと、二つのパートがございます。一つ目のパートである取引の適正化では、下請法と同じように発注内容を書面等で明示することが求められるほか、一定の継続的なフリーランスの取引については、先ほど申しましたように、減額とか受領拒否など一定の行為が禁止されています。このパートについては、中小企業庁や公正取引委員会が主に担当するということでございまして、最終的な勧告や命令といったところは、公正取引委員会で担っていく部分になります。
 もう一つのパートが、フリーランスの方の就業環境の整備でございます。これは、冒頭でも申しましたように、ハラスメント行為に関する相談対応などの体制整備や、フリーランスの方はお一人でされているものですから、育児等ができるような環境への配慮などといったパートでございます。こちらの方は、厚生労働省が中心になって対応されていくと理解しております。ただ、一つの法律でございますので、政令を作ったりするところは、他省庁と共同して行ったり、また、執行に際しても、執行を担うそれぞれの役所で連携する必要があると思います。今後、施行まで時間がありますけれども、それに向けた準備といいましょうか、政令、規則、ガイドラインを作るといったこと、さらには、その執行に向けた連絡や体制の整備といったことが今後の課題になってくるのではないかと思います。
(問) 追加してですが、下請法や優越的地位の濫用に関する対応について、ここ近年、公正取引委員会の体制が強化されているかと思いますが、このフリーランス法案の対応ということで人員を増強することはあるんですか。それから、どこの部署が担当するのかも教えてください。
(事務総長) 公正取引委員会の中でどこが担当するかというのは、公正取引委員会の組織に関する政令や規則で決めていくと思いますけれども、法律が成立したばかりでございまして、まだはっきりとは決まっておりません。新しい法律の施行、運用には、一定の体制が必要になるのは御指摘のとおりかと思います。
 この法律の施行自体が、公布の日から1年6か月以内ということでございますので、令和6年度や令和7年度の予算要求をどうするかという先の話になり、まだ確たるものが決まっているわけではありませんが、しっかり体制の整備に努めていかなければなりませんし、また、関係各方面にもお願いしていくことが必要になると思っています。
(問) 二つ目のテーマであるヴェステアーさんとの会談について、会談の時間はどのくらいだったのでしょうか。また、日本側として、どういうことが有益だったのか、お話しできる範囲で結構ですのでお願いします。
(事務総長) ヴェステアーさんの日程も詰まっていましたので、1時間程度の会談を東京で行いました。トップが顔を合わせて、今申し上げたような、双方の共通の関心事項であるデジタル市場やグリーン社会の実現といったものへの対応について、トップ同士で普段考えていることをお話ししたり、相手方に質問を投げかけたりといったことができたことは、実務的にも意味がありますし、また、双方の理解の醸成、あるいは信頼関係の形成といった面でも意味があったと思っております。
(問) AIのことでお伺いしたいんですけれども、岸田首相がAI戦略会議を立ち上げると発表されていて、明日にも初回会合を開くことを官房長官が発表されていますが、AIの分野について、規制や制度の部分で、競争当局として留意したり、あるいは関心を高く持たなければならない論点として、どういうことをお考えなのか教えてください。
(事務総長) 生成AIについての御質問かと思いますけれども、今、いろいろと実装され始めているところかと思いますし、実際に生成AIを実装していこうという会社があるなど、いろいろな動きがあるということは承知しております。
 このような動きは、生成AIや、生成AIを扱った検索サービスなどが実際にあるわけですけれども、基本的に、これら生成AIや検索等の市場における競争を促進するものではないかと考えておりまして、直ちに独占禁止法や競争政策上の問題を生じさせるものではないと考えています。ただ、例えば、仮に、デジタル・プラットフォーム事業者が、生成AIを通じて膨大なデータを獲得し、それによって、競争優位性が築かれた場合には、新たにそういった分野に入っていこうという事業者の参入が困難になるなど、有効な競争が働かなくなるといった問題が生じる可能性はあるのではないかと思っております。
 まだ具体的にこういうことが起きているという認識ではないんですけれども、今、申し上げたような観点も含めまして、引き続き、生成AIがデジタル市場における競争に与える影響については、注視していく必要があると思っております。

以上

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