ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >令和5年 >4月から6月 >

令和5年5月17日付 事務総長定例会見記録

令和5年5月17日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。インボイス制度の実施に関連した注意事例についてpdfダウンロード(384 KB)

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和5年5月17日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

インボイス制度の実施に関連した注意事例について

 今年の10月1日から、消費税の仕入税額控除の方法として、いわゆるインボイス制度が開始されます。公正取引委員会は、令和4年1月に、関係省庁と共同で作成した「インボイスQ&A」の中で、インボイス制度の実施に際しまして、発注側の事業者と免税事業者との間で独占禁止法・下請法上問題となり得る行為についての考え方を明らかにし、周知広報を行っています。
 インボイスQ&Aでは、発注側の事業者が、免税事業者に対し、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げるなどと一方的に通告することは独占禁止法上問題となるおそれがあるという考え方を明らかにしています。
 今般、インボイス制度の実施に関連して、独占禁止法違反につながるおそれのある複数の事例が確認されたため、違反行為の未然防止を図る観点から、そうした事例が発生した業態を明らかにする形で注意事例の概要を公表することといたしました。
 お手元の資料を御覧ください。その表の中にございますように、具体的には、「イラスト制作業者」と「イラストレーター」との取引であるとか、「農産物加工品製造販売業者」と「農家」、「ハンドメイドショップ運営事業者」と「ハンドメイド作家」などといった事業者間取引において、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、発注側の事業者が免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合、消費税相当額を取引価格から引き下げると一方的に通告を行った事例がみられました。こうした事例は、独占禁止法違反、具体的には優越的地位の濫用につながるおそれがあるため、注意を行いました。
 公正取引委員会といたしましては、インボイス制度の施行に関連した独占禁止法又は下請法違反行為の未然防止のために、「インボイスQ&A」を公正取引委員会ウェブサイトの中の「インボイス制度関連コーナー」へ掲載していますが、これに追加して、今回の注意事例についても、お手元にお配りした資料を掲載します。また、関係省庁・関係団体と連携して事業者に対して周知広報を行うとともに、独占禁止法・下請法違反行為には厳正に対処してまいります。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 注意事例は、配布資料の1頁目の表にあるこの5件という理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) 随時注意を行っておりますので、現時点で正確な件数を集計しているわけではありませんが、この5件を含む10件程度の注意を行っていると承知しております。
(問) 注意を行った時期が、いつ頃か分かりましたらお願いします。
(事務総長) 注意の時期等の詳細は差し控えますが、最近の事例でございますので、今年に入ってからぐらいの最近のことと承知しております。
(問) 10月にインボイス制度が実際に導入されてから、公正取引委員会が、例えば実態調査のようなものに乗り出す可能性というのはあるんでしょうか。
(事務総長) インボイス制度の導入に当たって、実際に相談等が寄せられるのは、おそらく10月よりも前の段階がピークなのかなと思っておりますが、導入後も、実際こういうことがあったという免税事業者からの相談や申告もあろうかと思います。そういった相談や申告にはきちんと対応してまいりたいと思いますが、現時点で実態調査を行うというような計画があるわけではありません。
(問) インボイスの関係で、公正取引委員会が注意という措置を採ったのが約10件という理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) インボイスの関係で注意を行ったのは10件程度で、具体的にはお配りした資料に記載された注意事例があったという御理解で結構です。
(問) 注意の具体的な内容としては、配布資料に「消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど」とありますけれども、ほとんどがこういった内容なんでしょうか。
(事務総長) 現時点で注意を行った事例というのは、ほとんどが、消費税相当額について、免税事業者から仕入れる場合であっても、経過措置があり、一定程度の仕入税額控除ができるにもかかわらず、消費税相当額全部を取引価格から引き下げると一方的に通告したというケースでありました。
(問) こういったインボイスの関係の相談自体は増加傾向にあると言えますか。
(事務総長) インボイス制度の導入が近づくにつれて、実際に課税事業者と免税事業者の間の交渉は増えてくるでしょうから、そういった中での御相談というのも増えてきているとは思いますが、インボイスの相談については、公正取引委員会の他にも、インボイスのコールセンターなどの相談窓口もありますので、現時点のその正確な相談件数は把握しておりません。
(問) ちょっと不勉強で申し訳ないのですが、注意は、独占禁止法に基づくものということになるんでしょうか。
(事務総長) 独占禁止法に基づくという言い方が正確か分かりませんが、注意は、独占禁止法の違反につながるおそれのある行為というものでして、この行為自体がすぐに違反と認定できるものではないんですけれども、こういったことが続くと違反にならないとも限らないものですから、違反につながりますよということで、未然防止の観点から注意を申し上げるものです。したがいまして、これ自体が独占禁止法に基づく措置というわけではなく、事実上の行為として行っているものでございます。
(問) 注意は文書で行っているのでしょうか。
(事務総長)  調査を行った結果、相手方に直接、違反につながるおそれがあるということで注意をするものですが、基本的には口頭で注意していると承知しています。
(問) 10件程度の注意を行っているということですけれども、配布資料に載っている業態以外でも起きているケースはあるという御認識でしょうか。それとも、この業態の中に全部含まれていることでしょうか。
(事務総長)  ここに記載されているものに限られませんので、一つの例ということでございます。
(問) 5件の注意事例について、例えばイラスト制作業者とイラストレーターとの取引ですが、1人のイラストレーターなのか、それとも複数のイラストレーターなのか、というスケール感を教えてください。また、注意した事業者の業態について、配布資料の表を見ると、結構小さめな業種なのかなという印象を受けるんですけれども、実質的にはどれぐらいの規模感の事業者だったのかということもお願いします。
(事務総長)  御質問については、事案によって違いますので、一つの場合もあれば複数の場合もあるのではないかと思いますが、数字については詳しく承知しておりません。
 また、注意を受けた事業者の規模についての御質問ですが、必ずしも小さい事業者ばかりではないと承知しております。他方で、不利益を被った取引先である免税事業者というのは、零細企業又は個人事業者でありますので、注意を受けた事業者との間では交渉力等の格差があり、相対的な取引上の地位の優越性というものが見られたものと理解しております。
(問) 今回注意を受けた事業者が、こういう一方的な通告を行ったのは、どうしてなんでしょうか。制度自体を理解していなかったのか、それとも、理解していたけれども故意にやったということなのでしょうか。
(事務総長) その理由について詳しく調べたわけではありませんけれども、このような経過措置があることを認識していたケースもあったと聞いています。
(問) 今回の注意というのは、例えば先日のIPOのときの注意と同じ感覚でいいんですか。
(事務総長)  御質問は、みずほ証券に対する注意のことと思いますが、相手方の了解を得て、注意の相手先事業者の名前を明らかにした形での注意と同じく、公正取引委員会が行う事実上の行為ということになります。
(問) 今回の注意事案については審査局が対応しているのですか。それとも経済取引局ですか。
(事務総長)  審査局が注意した事例ということになります。
(問) 確認なんですけれども、注意が10件程度というのは、10事業者程度に注意したと考えてよろしいんでしょうか。
(事務総長)  注意は、注意を受けた相手の事業者ごとにカウントしますので、10事業者程度と理解いただければと思います。
(問) 優越的地位の濫用に該当するおそれがあるということだと思うんですけれども、独占禁止法上、それ以外の違法性というのは特にないのですか。
(事務総長)  インボイス制度に起因した今回の注意事例というのは、全て優越的地位の濫用につながるおそれがあるということで注意をしたものですが、他の違反類型の該当性について、掘り下げて調査したわけではないと理解しております。
(問) これは、事業者の力関係を背景にして一方的に通告を行うことが問題だということだと思うんですけれども、逆にどういう形であれば問題にならないんでしょうか。
(事務総長) 免税事業者と課税事業者との関係では、仕入税額控除の問題もありますので、そこはよく協議していただいて、かつ、その協議が形式的なものとならないようにということです。免税事業者の方も仕入れに係る消費税額を負担していますので、その消費税額の負担分を考慮しながら、よく交渉していただくということが大事だと思っております。
(問) インボイス制度は、特に当該の人々からは非常に批判も多いものでありますが、今後、公正取引委員会が矢面に立つことになるんだろうと思いますので、今後について一言お願いします。
(事務総長)  インボイス制度自体の是非は私どもが判断できるものでもありませんし、既に消費税法において、この制度の導入が法律で決まっているわけですから、あとはその導入に当たって、仕入税額控除に制約があるという観点で、価格を含む取引条件についての再交渉が必要になるケースはあるかと思います。そこは、免税事業者と課税事業者との間でしっかり交渉していただき、インボイス制度の導入に当たって、独占禁止法違反や下請法違反の行為が起きないようにしていただきたいと思います。仮に違反行為の疑いがある場合には、私どもとしても迅速かつ厳正に対応してまいりたいと考えております。

以上

ページトップへ