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令和5年7月5日付 新旧事務総長就退任記者会見

令和5年7月5日付 新旧事務総長就退任記者会見

[発言事項]

新旧事務総長就退任記者会見記録(令和5年7月5日(水曜)13時30分~於審判廷)

新旧事務総長就退任挨拶

(小林前事務総長)
 本日付で事務総長を退任いたしました小林でございます。
 皆様、大変お世話なりました。ありがとうございました。定例記者会見の場などを通じまして、皆様方とはよくお付き合いさせていただきまして、また私どもの発信に対して積極的に記事に取り上げていただきまして、ありがとうございました。
 私は、就任して1年になりますけれども、この1年間、事務総局、あるいは委員会が、いろいろな成果を上げまして、その御報告をしたり、あるいはその関連で御質問をいただいたり、ということをして参りましたけれども、大変楽しく過ごすことができました。ひとえに皆様方の御協力のおかげだと思っております。改めてありがとうございます。
 この1年間は、エンフォースメントと、それからアドボカシー両方ともに、いろいろな成果があったと思います。また、エンフォースメントとアドボカシーの連携についても一定の進展がありました。さらに、私は、去年の就任のときの会見で、なるべく外部に対して優しい、親切な公正取引委員会でありたいということを申し上げました。そういったことも少し進展したかなと思っております。私は本日で退任いたしますけれども、引き続き公正取引委員会の活動への御理解とそれから報道をよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

(藤本新事務総長)
 本日付で事務総長を拝命いたしました藤本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 公正取引委員会は、小林前事務総長がおっしゃったように、エンフォースメントとアドボカシーによりまして市場機能をよりよく発揮させ、日本経済を発展に導く、こういう使命を負っていると考えております。
 目下、経済社会は、非常に大きな構造変化を起こしていると捉えております。また、デジタル化を始めとしまして、技術革新の進行のスピードも非常に速いという状況かと思っております。こうした中で、公正取引委員会の業務はますます複雑困難な状況になってきていると認識しております。また、様々な方面での公正取引委員会に対する役割の拡大あるいは期待が増大しているとも受け止めております。今後公正取引委員会としては、こうした様々な分野において、的確に対応していく力を持つ必要があると考えております。
 公正取引委員会がこれからも十分に使命を果たしていくために、事務総局といたしましては、世界で最高水準の法執行力、それから施策の立案能力を持った専門家集団であるべきだと考えております。エンフォースメントにつきましては、事案に即して、効果的な法執行力を発揮するということが必要だと思いますし、アドボカシーに関しましては、経済の実態を見まして、感度高く競争政策上の問題を発見、あるいは分析をし、必要な問題提起や提言を行っていくということが大事と思っております。これらを行うためには常に最新の知識と技能を発揮できる実力を備えておくべきだと考えております。
 このため、公正取引委員会事務総局といたしましては、これまで培ってきた良き伝統を継承しつつ、まず第1に事務総局の組織力を強化していくことが必要と思っております。それから第2に時代の変化を敏感に察知し、幅広い視野で対応を考えるという力を付けていくことが必要と思っております。第3に、十分に検討した対応策の意義あるいは効果を分かりやすく説明するという、対外的な発信力をこれからも強化をしていくということです。小林前事務総長のお話にもありましたように、ある局面では、公正取引委員会は、親しんでもらえるような距離の近さも感じられるという意味でも、対外的な発信力を強化していくことが必要かと思っております。
 まとめまして、事務総局は、これからはバージョンアップが必要、キーワードはバージョンアップかなと思っております。
 以上です。

質疑応答

(問) 小林前事務総長にお聞きします。この一年、東京オリンピックの談合事件であったり、電力カルテル事件であったりといった、かつてないような大がかりな案件がありました。今裁判も行っている中でおっしゃられにくいところもあると思うのですが、その辺りを振り返った今の心境等についてお話いただけますでしょうか。
(小林前事務総長) 今御指摘いただきましたように、この1年間振り返ってみますと、東京オリンピック談合事件の刑事告発でありますとか、課徴金が合計1000億円を超えるという電力カルテル事件、あるいは新たな制度である課徴金の調査協力減算制度を適用した事件、第1号案件は国立病院機構発注の九州エリアにおける医薬品卸談合事件で、それ以降も続いていますが、そういった事件がありました。大変華々しい成果が出ており、その意味では担当部局における頑張りが実ったものと思っております。個人的な思い出を言えば、電力カルテル事件は、私が2年前に審査局長であったときに着手したものでして、その意味で個人的にも思い入れの深い事件になり、それが在任中に、無事に排除措置命令まで行ったことについては感慨深いものがあるというのが個人的な感想でございます。

(問) 藤本新事務総長に質問なのですが、お話にあったように、確かに経済のいろいろな変化がある中で幅広く対応していくということは結構チャレンジングなことかと思います。特に近年公正取引委員会は、政府の方針に協力する形で、値上げの転嫁対策や下請対策、中小企業への優越的地位の濫用の適用に非常に積極的になっております。
 ただ一方、値上げの動きも起こっており、海外においてはその面におけるカルテルへの執行なども行われています。そういった経済の変化の中で、どのように公正取引委員会が対応していきたいか、もう少し御説明いただけますか。
(藤本新事務総長) 非常に大きな流れでいいますと、少子高齢化ということで、日本の経済規模が縮小しているとか、あるいは地方での経済状況がなかなか厳しくなっているといった問題もあって、おそらく高度成長期と比べたときには、かなり違う状況になっていると思います。したがいまして、そういう状況を踏まえた新たな観点が必要であれば、それも取り入れながら対応を考えていくということかと思います。
 それからもう一つは、デジタル化の話ですけれども、経済の各分野にわたって、広範に、生活の中にデジタル技術が入ってきておりますので、デジタル関係ではない、いわゆるごく普通の事件であっても、これからはデジタルの特質を見て判断していくことが必要になってくると思いますので、そういったときにしっかりと新たな変化に対応できるような実力を養うということが必要かと思っています。

(問) 追加で二つ質問をお願いします。一つは、最近の企業結合事例などを見ると、経済の中で集中が進んでいる部分がありますが、先ほどおっしゃったような市場の縮小という状況もあり、割と柔軟な見方をしているような印象も持っています。このような企業の結合や再編の分野における公正取引委員会の役割をどうご覧になっているのか教えてください。
 また、二つ目の質問ですが、組織の強化というお話がありましたが、特にどういったことに重点を当てて、事務総局のバージョンアップを行うのか、組織力の強化というのは、具体的にどういうことをおっしゃっているのか御説明いただけますか。
(藤本新事務総長) まず企業再編についての御質問ですけれども、イノベーションが進んでいく、あるいは経済の状況が変わっていくといった中で、様々な形でM&Aといったニーズが出てくると思います。これにつきましては、状況に応じてというよりは、基本的には競争政策上の考え方がございますので、それぞれの個々のケースに応じて、それをいかに適用していくのか、ということが大事になってくると思っております。
 それから二つ目の組織力の強化についての御質問ですけれども、私が一つ考えているのは、各職員の潜在的能力を最大限に発揮できるような形にしたいということです。それから、いろいろと技術革新が進んでいき、いわば常識の範囲というのがどんどん広がってきているというところもありますので、それぞれの事案を処理していく、あるいは実態調査をしていくに当たって、基礎的な分析力を持っていく必要があるということでありますので、そういった意味での専門能力の増強も必要だと思います。
 また、行政領域が拡大していくというところに合わせまして、必要なところには体制なり人員の増強といったことも必要だと考えています。

(問) 藤本新事務総長に伺いたいのですけれども、先ほど様々な分野に関するお話がありましたが、御自身の御経歴などを踏まえて、例えばエンフォースメントについて、御関心のある分野や注力されたい分野を教えていただけたらと思います。
(藤本新事務総長) 特に独占禁止法のエンフォースメントについていえば、国民生活に影響が大きい分野の価格カルテルや入札談合は非常に重要だと思います。
 それから、最近のデジタル化を考えれば、ITデジタル関連分野における経済社会に豊かさをもたらすようなイノベーション、あるいはその技術の進展を妨げているような反競争的行為に対する対応というのも非常に重要だと考えています。また、価格転嫁といった、中小企業者等に不当に不利益を与えるような行為も含めまして、社会的ニーズに対応した分野を重視していく必要があると考えております。

(問) もう1点伺いたいのですが、公正取引委員会が実態調査をされて、スマホ規制に関して先日総務省でも取りまとめ案が出ていますが、公正取引委員会としては今後、どのように関わっていかれるのかを教えてください。
 それから、最近では生成AIの話が盛んになってきておりまして、ガイドライン等を含めたいろいろな議論があると思いますが、公正取引委員会としては、どう受け止めておられるのかを教えてください。
(藤本新事務総長) スマホの規制に関しての御質問ですが、電気通信の分野は、電気通信行政がありますので、電気通信行政の観点からの規制をどう進めていくのかというのは総務省で議論されていくことかと思います。
 一方で、値引きの上限額について規制があったときに、その金額さえ守っていれば他に何の問題もないといったことにはならないようにする必要があると思っています。つまり、独占禁止法の観点については、我々は実態調査の中で問題点を提示しておりますので、そういった問題点と併せて、考えていただく必要があると思っております。したがいまして、事業者の皆様、あるいは消費者の皆様にとっても、両方の規制をよく目配りをしていただく必要があると考えております。
 それから、生成AIに関する御質問ですけれども、AIに関しましては、従前から公正取引委員会において研究会を開催して、例えば、アルゴリズムとの関係などについて研究を進めてきております。生成AIは、去年の年末頃から爆発的に世界的にも話題になっているものでありまして、最新テクノロジーの動向だと思いますので、こういった動向には十分に関心を持って見ていきたいと思っております。また、生成AIは1週ごとに進化を遂げているという話もあり、その進化のスピードが非常に速い中で、これからどういった事業領域で使われていくのか、あるいは、どんなビジネスモデルが展開していくのか、そういった辺りを勉強していく必要があると思っております。その中で、競争政策上問題となるようなことがないかという問題意識で見ていきたいと思っております。

(問) 藤本新事務総長に伺いたいのですが、コロナ等の影響もあって、事件の数が少しずつ減っている時期が続いていると思いますが、コロナも落ち着きまして、例えばまた元の水準に戻したいといったことはあるのでしょうか。また、菅久さんが事務総長の時には、排除措置命令には必ずしもこだわらないといったことを聞いたように記憶しているのですが、そういった点についてはどうお考えでしょうか。
(藤本新事務総長) コロナの影響は、かなりあったと認識しております。私が審査局長であった際にも、コロナがなかった頃と比べると、その自由度はかなり狭まっていたかなと思います。徐々にそういう制約がなくなってくれば、そこで制約されていたことは、だんだんなくなっていくのかなと思いますし、そういう制約のない中では、もっと活発に、積極的に取り組んでいくことは十分可能なのだろうと思います。
 また、事件が減っているという観点についていえば、令和4年度については、インパクトのある事件も取り上げていることが理由の一つにはあるのだろうと思っています。

(問) もう一つ質問がありまして、先ほどおっしゃっていた世界最高水準の執行能力についてですが、藤本事務総長が審査局長でいらっしゃった当時のアップルのアプリストアの件は、公正取引委員会が世界に先駆けて結果を出したものだと思いますが、こういったものもイメージに入れていいのでしょうか。
(藤本新事務総長) いわゆるグリーンのガイドラインである「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」がございますけれども、これも世界各国ではまだできていなかった段階で、公正取引委員会が策定したと思っておりまして、そういった世界のどこも取り上げてない段階での問題提起も含めて考えております。比喩的な例で言えば、世界最高水準として考えているのは、ワールドカップに行ったときにベスト4には入るぐらいの実力をもって仕事をしていきたいということです。世界中のいろいろな流れが進んでいく中で、理論的な発展や技術的な発展があるでしょうから、それを審査の手法の中に取り入れていくなど、最新の知識や技能を持って行っていきたいと思っています。それを考えるに当たっては、やはり日本だけではなくて、競争法の世界は共通した発展段階に来ていますし、途上国と先進国の間でのギャップもどんどん狭まってきていると思いますので、なるべく先頭の方に立って行きたいと考えております。

(問) 4月に成立したフリーランスの新法について、公正取引委員会は今後、指導や勧告といった法執行部門を担当すると思いますが、どういう形でこのフリーランスの保護に向けて進めていくのかという思いについてお聞きします。
(藤本新事務総長) これは政府全体としての働き方の多様化という観点から、いろいろな働き方ができるようにという大きな政策の方向があり、その中でフリーランスはこれまであまり焦点が当たっていなかったと思います。これからどんどん成長するかもしれない領域であるフリーランスというものに着目して、今回法制度を整備してきていると思いますので、そういった方向感をよく見定めた上で、十分な対応を行っていけるように、これから中身について詰めていくということだと思っています。

(問) もう1点質問がありまして、東京オリンピックの談合事件について、今日の午前中の初公判で、被告である組織委員会の元次長が起訴事実を認めるということですが、これに関して、今後一連の公判をどういう形で見ていくのか、この公判を後の行政調査の執行にどういう形で生かしていくのかを教えてください。
(藤本新事務総長) 本日、初公判が開かれたということはお聞きしております。手続中ですので、それについてコメントということは差し控えたいと思います。公正取引委員会といたしましては、本件告発につきましては、今後入札談合等を抑止する上でも大きな意義を持つと考えておりますので、公判での審理の動向を十分注視していきたいと考えております。

(問) 藤本新事務総長に2点お伺いしたいのですが、1点目は、グリーンのガイドラインにつきまして、これから政府がどんどんGXに向けて投資をしていく中で、グリーン分野ではどのような市場機能を損なうような問題が起きてくると想定されているのかをお伺いします。
 2点目ですが、先日、内閣官房のデジタル市場競争本部でアプリストアの開放を義務づけるような内容を柱とする報告書がまとまりましたが、その中で来年新法を作るという話も盛り込まれておりまして、執行が公正取引委員会になるのではないかという印象を持っているのですが、今後この新法にどのような形で関わっていかれるのかを教えてください。
(藤本新事務総長) グリーンに関して、GXを推進していくに当たって競争上の問題としてどういうことがあるのかという御質問ですが、カルテルや談合といった競争制限効果しかないようなものは厳正に対処すべきと考えております。こういったことが起こらないとは限らないと思っておりますので、いわゆるグリーンウォッシュの問題も含めまして、このような事案を厳正に対処していくことこそが、グリーン社会の実現に向けた正しい方向だと考えております。
 それから、モバイル・エコシステムに関する競争評価の最終報告に関する、新たな法整備についての御質問ですが、これにつきましては、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版や骨太の方針において、今般の最終報告を踏まえて、必要な法整備について検討することが決定されております。 こちらは競争政策の領域の話でございますので、公正取引委員会としましては、引き続き、関係省庁とも連携をしながら、政府における検討において、今後ともより積極的に参画をしていきたいと考えております。

(問) 藤本新事務総長に追加で教えていただきたいのですが、昨日、欧州委員会などでドイツがFacebookに対してデータ保護上の違反をもってして競争上の問題があったとしたことに対して、ドイツの最高裁判所がお墨付きを与えた形になりました。一審では負けましたけれども、最終的には最高裁判所で、データ保護法の違反をもって競争上の課題について対処するのはよいのだという判決が出ました。公正取引委員会においても、杉本委員長の時代に、プライバシー保護に対して競争法のことを考えていきますということを個人情報保護委員会等の同意のもとで発表されました。実際にまだ案件は起こっていませんけれども、生成AIを含めて、データの保護やプライバシーと競争法がより密接になっていく中で、どのような姿勢で対応していきたいとお考えですか。
(藤本新事務総長) 御指摘の点は、ビッグデータの領域において、必ず出てくる議論だと思いますし、生成AIを含めて、そういった問題がどんどん現実化しているのではないかと捉えております。したがいまして、プライバシーの問題や個人情報の問題など、従前ですと、それほど競争政策とあまり関係のない領域、あるいはあまり交錯しなかったと思われた領域についても、これから競争政策を推進していく中で、実際にどのように考えていく必要があるのかという問題が現実化することが十分に考えられると思っております。その点についても、先ほどの専門能力の強化の一環として、そういった問題にも対応できるような能力、あるいはいろいろなところとの連携を考えていく必要があると思っています。

(問) 藤本新事務総長にお聞きしますが、コロナの影響がかなり大きかったということで、具体的などんな影響があったかということと、これが事件数の減少の背景にあるという認識でいいのかどうかということをお聞かせいただけますでしょうか。
(藤本新事務総長) コロナで人と人が接触できないという状況になっておりましたが、我々の調査では、これは実態調査も含めてですが、ある程度人と人が接触しながら進めていくということも必要なプロセスですので、そういったところで、なかなか思うままにできないところがあったというのが私の実感です。

以上

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