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令和6年3月13日付 事務総長定例会見記録

令和6年3月13日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

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[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和6年3月13日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

公正取引委員会の経済分析の取組について

 本日は公正取引委員会における 経済分析の取組についてお話します。
 本日お話しする経済分析とは、「企業や消費者の行動の影響や要因を明らかにするためなどに行われる、経済学に基づく理論的又は実証的な分析」です。このような経済分析を様々な調査の中で活用することにより、実態解明の客観性や合理性を高めることができます。このことは、事業者をはじめとするステークホルダーの納得感を高め、法執行やアドボカシーの円滑な実施につながると考えております。
 経済分析の有効性を背景に、欧米では、多くのエコノミストが競争当局で働いておりまして、企業結合をはじめとする様々な事案の調査に深く関与しているところです。これらのエコノミストを束ねるポジションには、世界的に高名な経済学者が任命されているということもあります。
 公正取引委員会におきましても、経済分析の取組を段階的に進めています。例えば、平成15年の競争政策研究センター設置前後から、エコノミストの採用を始めました。平成24年には、企業結合課に経済分析班を設置し、令和2年には、官房総務課に経済分析を本務とする職員を配置いたしました。令和4年には、経済分析室を設置いたしまして、企業結合審査・実態調査・事件審査での経済分析を横断的に支援する体制を整備したところです。
 公正取引委員会の経済分析の活用状況につきましては、配布資料をご覧いただければと思います。こちらは、「これまでに経済分析を実施し、その旨を公表した活用事例」などをまとめたもので、ウェブサイトで公表しております。今年度は、例えば、先週報告書を公表しました「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査」の中で、消費者の属性や選好の違いによって新規契約や解約といった契約行動がどのように異なるのかを分析しております。また、今年1月に企業結合審査の結果を公表しました「株式会社大韓航空によるアシアナ航空株式会社の株式取得」の中では、当事会社グループの値上げインセンティブの有無や程度を分析しております。これらの事例も今後ウェブサイトに掲載していく予定でございます。
 現在、公正取引委員会として、経済分析に関する最大の課題と考えているのは、高度な経済分析に必要な体制の整備と専門能力の向上です。この点、昨年6月に閣議決定されました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」におきまして、「経済分析等の専門性を有する人材の公正取引委員会への登用を進める」とされております。これを受け、本年4月から、経済学者である大学教授など数名を、非常勤の「エコノミックアドバイザー」という官職名で採用いたしまして、経済分析業務への支援・助言・参画をお願いしていく予定にしております。
 このほか、常勤の任期付職員であるエコノミストについても、広く募集を行っていきます。また、公正取引委員会の職員を国内外の大学院に留学させたり、経済学のバックグラウンドを持つ職員などに国内外の大学・研究機関が実施するトレーニングプログラムを受講させるなどしまして、専門能力の育成も行っていく予定です。このような施策によりまして、経済分析の取組を更に前進させるための体制や能力の拡充に努めてまいります。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 4月に大学教授等をエコノミックアドバイザーとして採用する計画について、採用人数であるとか、アドホックなのか、案件によってなのか、週に何日勤務なのか、そういったことを具体的に教えていただけますか。
(事務総長) 日本では多くのエコノミストの方が教員として大学に勤務されていますので、従来から大学教員も対象に常勤の任期付職員を募集してまいりましたけれども、必ずしも十分な応募は得られていないという状況でございました。このため、常勤の任期付職員に加えまして、主に大学教員を対象とした非常勤の職員の募集を行うこととした次第です。エコノミックアドバイザーの勤務日数につきましては、週1~2日程度を想定しておりまして、大学の教員と兼業されるという形になろうかと思います。その業務内容につきましては、 経済分析業務に係るプロパー職員への支援、助言、それから経済分析業務への参画をお願いする予定にしております。採用予定数につきましては若干名の採用を予定しております。
(問) 海外の競争当局においては、チーフエコノミストという職を置いているところが多いと思いますが、公正取引委員会では、どういう状況が整えば、チーフエコノミストというポジションを置けるような状況になるのでしょうか。
(事務総長) チーフエコノミストの役割は おそらくエコノミストを束ねていくという職になろうかと思います。当方といたしましては、経済分析室という体制を整備しておりますけれども、それほど多くの職員が在籍している状況ではないと考えておりまして、今後まずはそこを充実させる、拡充していくことを先に考えるのかなと思っており、その状況によって、チーフエコノミストという話になるのかなと思っております。
(問) 今の経済分析室の人数を教えていただけますか。
(事務総長) 昨年の9月末現在で15名の体制になっております。
(問) 体制につきまして、例えば欧州委員会では、どの程度の規模なのでしょうか。
(事務総長) 外国の体制について、正確な数字を持っているわけではありませんけれども、欧州委員会では、競争エコノミストチームという経済分析の部門があるようでございます。一方で、どのくらい重複しているかは分かりませんけれども、経済学の博士号を取得している人が、約30名いると聞いております。
(問) 欧州委員会では、グーグルに対する審査等でエコノミストの方も活躍したと側聞するのですけれども、体制を拡充させる上で、最終的に例えば欧州委員会に伍するぐらいの人数をそろえたり、あるいはグーグルなどのビッグ・テックへの審査にも活用したりといったお考えはあるのでしょうか。
(事務総長) 当方では経済分析室という体制を作って職員がそこに所属しておりますけれども、彼らは必ずしも企業結合審査や実態調査だけではなくて、事件審査についても支援をしていくという体制になっております。
 将来的にどういうようなという御質問ですけれども、そもそも日本においては博士号を取得している人の数自体が 欧米と比べて少なく、民間の会社もその採用に苦労しているという話があります。また、エコノミスト自体がそれぞれの組織でどれぐらい活用されているのかといったような、国によっていろいろな事情の違いもあろうかと思います。デジタル事案に当たりましては、経済分析も有用なツール、あるいはある種の武器ということになろうかと思いますので、公正取引委員会の方でも内部の職員の育成、それから外部からの採用・登用、あるいは現在エコノミストの募集をしておりますけれども、専門領域がかなり狭いところで募集しておりまして、もう少し間口を広げてということも考えております。いずれにしても十分にしっかりと経済分析を行って、エンフォースメントに活用できるようにしたいと思っております。
(問) 公正取引委員会の中で、経済学の博士号を持っている方は何人いらっしゃるのでしょうか。
(事務総長) 現在は3名です。
(問) 今、経済分析室の中にその3人がいらっしゃるのでしょうか。
(事務方) 経済分析室の中には2人です。
(問) 審査に関しても経済分析を活用していることにつきまして、どういった面で活用ができていて、どういう結果が得られているのかを、一般論で結構ですので、もう少し教えていただければと思います。
(事務総長) 一般的には、例えば対象の事業者から経済分析が提出されてそれを吟味することもあろうかと思いますし、当方の方で立証していく際に経済分析を活用することもあろうかと思います。
(問) 基本的には全ての審査事案について、そういった経済分析を行われるのでしょうか。それとも、難しい事案が起きたときに個別に行うのでしょうか。
(事務総長) 頻度については事案によるかと思いますが、いずれにしろある行為によって競争に対してどういう悪影響が出るのかを考えていくに当たりましては、経済学的な考え方を活用する必要がありますので、そういう意味で言えば、必ずしも計量分析を行うということではありませんけれども、経済分析的な発想が十分必要になってくると思いますので、そういう意味では全員がそういう素養を持っていることが必要だと考えています。
(問) 再度の質問ですみませんが、経済学の博士号を持っている方というのは、事務総局で3名と理解してよろしいでしょうか。
(事務方) 事務総局に2名、委員会に1名で、公正取引委員会全体として3名ということです。
(問) 今日のテーマとは異なりますが、今日ごま油の件で立入検査が行われたという報道がなされています。個別の事案についてのコメントは結構なのですが、ここ数年、この物価上昇の際の価格転嫁に公正取引委員会が非常に努力してきたかと思いますが、一方でカルテル、談合については厳しく取り締まるという態度であると思います。今後の価格の値上げの局面における協調的な行為についての対応の姿勢について聞かせてください。
(事務総長) 今後、マクロ経済全体の状況が変わってきて物価高にもつながってくるかもしれませんけれども、いずれにしても、物価高になってまいりますと当然消費者に対する影響も出てまいります。したがいまして、その中で、競争を阻害するような行為によって価格がつり上げられるようなことがあれば、当然、公正取引委員会としては厳正に対処していきたいと考えております。

以上

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