[配布資料]
OECD競争委員会の概要(令和6年6月現在)(336 KB)
[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和6年7月3日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
OECD競争委員会6月会合について
本日は、二つのテーマについてお話ししたいと思います。
一つ目は、OECD競争委員会の6月会合についてであります。この会議は、6月10日月曜日から6月14日金曜日までフランス・パリで開催され、当委員会からは青木委員、田中国際審議官などが出席しております。OECD競争委員会は、本会合、競争と規制に関する第二作業部会及び国際協力と執行に関する第三作業部会を、それぞれ、毎年2回、6月及び12月頃に開催しています。各会合の議題は、加盟国によるその時々の問題意識などを反映して決まります。今回の会合では、「人工知能、データ及び競争」、「競争促進的な産業政策」、「競争とプライバシー」、「独占行為、障壁構築及び地位固定化」などのテーマが議題として取り上げられました。このうち、当委員会からは、本会合の「競争促進的な産業政策」及び第三作業部会の「独占行為、障壁構築及び地位固定化」の2つのテーマについて貢献文書を提出し、議論に参加いたしました。「競争促進的な産業政策」では、専門家から、競争促進的な産業政策の実現に向けた競争当局と規制当局の協力の重要性などについて説明があったほか、各国当局から、産業政策をより競争促進的なものとするための取組の紹介などが行われました。日本からは、青木委員が、令和5年7月に公表した「高速道路におけるEV充電サービスに関する実態調査報告書」において、高速道路会社はEV充電器の設置者を複数事業者から選定することが望ましい旨を提言したことや、その後、高速道路会社が提言に沿った選定を行う旨の方針を公表したことなどについてプレゼンテーションを行いました。「独占行為、障壁構築及び地位固定化」では、デジタル分野などでみられる従来とは異なる競争上の問題への対応策についての議論や、各国の取組の紹介などが行われました。日本からは、田中国際審議官が、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」の提出の趣旨や主な内容などについてプレゼンテーションを行いました。当委員会としては、OECD競争委員会を含む国際的な枠組みにおいて、引き続き、積極的に議論に参加し、貢献を行っていきたいと考えております。
今後の確約手続に係る対応について
続きまして、二つ目のテーマです。今後の確約手続に係る対応についてであります。確約手続は、違反被疑行為の迅速・効率的かつ効果的な排除により、独占禁止法の全体としての効率的かつ効果的な執行に資することを目的として、平成30年12月に導入され、本年6月までに19件の事案処理を行っております。これまで当委員会において認定を行った確約計画について、その履行が不十分であったとされる事例は、今のところ確認されておりませんが、今後、より効果的かつ実効的な確約手続を運用するため、次のような対応を採ることとしたいと思います。一つ目は、確約措置の履行期間についてであります。これまで確約手続を適用した事案における確約措置の履行期間は、事案ごとにその必要な期間を検討した上で設定されておりますが、確約措置の履行期間は、これまで全ての事案について3年間となっております。しかしながら、違反被疑行為の対象となった製品のライフサイクルやサービスの契約期間など、海外当局の対応、また、競争の確実な回復の観点などを踏まえ、今後、事案の実態を踏まえながらも、原則として少なくとも5年間以上の履行期間を想定し、同様の行為の再発防止をより確実にする方向で運用を行っていくものといたします。二つ目は、確約措置の履行確保についてであります。これまで、確約措置全体の履行については、基本的に当該事業者が自ら履行し、それを当委員会に報告するという形でその実効性を確保してまいりました。一方で、確約措置の履行については、自社のみで行うよりも、独立性のある外部専門家の客観的な監視を経て実施される方が、より確実な履行が確保されることから、今後、確約措置全体の履行について、外部専門家による監視を積極的に活用することといたします。また、市場への影響、社会的影響などの大きな事案などにおきまして、特に必要があると判断される場合には、公正取引委員会も自ら独占禁止法第68条に基づく同法第47条、つまり、罰則付きの調査権限の規定を適用しまして、直接の関係者のみならず、取引先事業者や競合他社などに対しても、履行状況の確認などを行うことで、その措置の確実な履行確保を図ることとしたいと考えております。公正取引委員会としましては、今後とも、より効果的かつ実効的に確約手続を運用してまいります。
私からは以上です。
質疑応答
(問) 二つ目について、これまで履行が不十分だったことについて確認されていないということですが、これは何らかの調査をされての結果なのでしょうか。そして、今回の実効性の確保を図ることについて、これを導入すべきと思った理由や背景を御説明ください。
(事務総長) 公正取引委員会におきましては、これまでの確約手続の運用を通じて、その効果的な在り方などについて、その都度、検討を継続して行ってきたところであります。ただ、今般、本手続きの運用開始から約5年半が経過し、適用事例も相当数、19件ということでございますけども、積み上がってきたことを踏まえまして、その内容を取りまとめることとしたというものでございます。それから、これまで認定を行った確約計画につきましては、事業者から申請された計画それぞれの内容について、当委員会として、違反被疑行為を排除する、又は排除されたことを確保するために十分であると判断したものでございます。したがって、その内容が不十分であったという事実はないわけでございますが、今回の見直しにおきましては、同様の行為の再発防止を、これまで以上により確実にするため、これまでの事案よりも長い期間の履行期間の設定が適切であると判断したものでございます。
(問) 今回の見直しに伴って、法改正は必要ではないのでしょうか。公取内のルールの変更で済むのでしょうか。
(事務総長) 今回は、確約手続で、申請が出てきた際に公正取引委員会が認定をするという手続になるのですけれども、その認定に当たって、公正取引委員会として、どういうふうに対応するのかというところでの話でございまして、法の運用に係る方針ということでございますので、何か法改正が必要ということではないということです。
(問) 外部専門機関ということなんですが、一般的に海外ではトラスティーと呼ばれている機関になると思うんですが、日本においては、同様の機関を想定しているのでしょうか。それとも違うタイプの第三者の監視を想定しているのでしょうか。
(事務総長) 外部専門家、第三者がどのような立場の者かということでございますが、事案ごとに個別に判断するということでございますので、なかなか具体的に申し上げることは難しいと思いますけれども、いずれにせよ、事業者を適切に監視し得る能力を有する独立した第三者であると公正取引委員会が認めた者ということで、現時点では、弁護士の方であったり、公認会計士の方といったような方が想定されるのではないかと考えています。
(問) 企業結合の場面では、トラスティーの活用はこれまでもなされていますが、同様に事業者側が雇って、それを報告し、公取が認めるという形なのでしょうか。
(事務総長) そのような形を想定しています。
(問) 今回の変更はもう直ぐにでもという感じでしょうか。スケジュール感としてはどういう感じなんでしょうか。
(事務総長) 今後出てくる案件について、こういった方針で臨んでいくということを考えております。
(問) 今の第三者を使った改善、状況の監視というかモニタリングについてなんですけど、再発防止に向けて、特にどのような効果を期待されるのかをお聞かせください。
(事務総長) 第三者による履行監視の意義ということかと思いますけども、確約措置の履行につきましては、事業者が自社のみで行うよりも、独立性のある外部専門家の客観的な監視を経て実施されるほうが、より確実な履行監視、履行確保になるというふうに考えております。また、先ほどご指摘ありましたように、欧州委員会におけるほとんどの確約事案では、事業者が任命した第三者が監視し、当該第三者が欧州委員会に報告を行う措置が確約計画に盛り込まれているといったこともございますので、こういったものを踏まえて、今回の方針を決めているということでございます。
(問) 今回、新たな運用を始めるということですが、確約制度そのものについての評価について、ここまで、どのような形で上手くいってるという評価なのかをお聞かせください。
(事務総長) 確約そのものについて、どのように評価するかということだと思いますけども、確約手続は独占禁止法違反の疑いについて、競争上の問題の早期是正を図るということを意図しておりまして、公正取引委員会と事業者の合意によって自主的に解決する仕組みということで、これまで19件の確約計画の認定を行っております。独占禁止法違反被疑行為に対する行政処分として、排除措置命令に加えて確約計画の認定というスキームができたことによりまして、迅速かつ効果的な法運用が可能となっているというふうに考えております。例えば、優越的地位の濫用の疑いの行為に対して、違反被疑行為の取りやめのほか、従来の排除措置命令では命じていなかった、納入業者に対する金銭的価値の回復といった措置を講ずるなど、事業者との協調によって、競争秩序の回復にとって必要な措置をより迅速かつ効果的に実現できるようになったということが一番のメリットであると考えています。
(問) 今回、外部専門家の監視を強化する、入れていくという話なんですけども、4月のグーグルに確約手続を適用した件について、2010年にグーグルとヤフーが提携して、それを公取委が承認していたが、その契約を変更していて、取引を妨害する、制限するようなことになっていたというのが発覚の経緯だと思うんですけども、それが、今回の確約手続の運用の変更に背景としてあるのかどうか、見解を伺えればと思います。
(事務総長) 今回の見直しでございますけれども、先ほど申し上げましたように、これまでの確約手続の運用を通じて、その効果的な在り方というのを常々検討を続けてきたというところでございまして、今回の見直しが何か特定の個別事案を直接のきっかけとして見直したということではないと考えております。飽くまでも、確約手続を的確に運用していく上での継続的な検討の中での見直しと考えております。他方、見直しに当たっては、これまでの運用実績や外部からの御意見、あるいは御批判なども含めまして、確約手続のより効果的な運用や在り方というものを検討したということでございます。
(問) 外部専門家による監視というのは、原則全ての事案で盛り込んでいくという認識でよろしいでしょうか。
(事務総長) 今後の運用において、認定に当たっての検討の方針として、原則として外部専門家を付けていただくという方向で考えております。
(問) 4月のグーグルの確約のときの措置内容として、このときも外部の専門家の定期監査を受けるということが入っていたと思うんですけれども、この当時の運用と、今回新しくする運用というのは同じなのでしょうか。前回グーグルが、いわゆるモデルケースみたいになるという理解でいいのでしょうか。あるいは違うのであれば違いの部分を教えてください。
(事務総長) 今回、第三者による履行監視を行ってもらうということなんですけども、それは確約措置全体の履行についてということを想定しております。これまで行われてきた第三者による監査というのがありますけれども、これは独占禁止法の遵守についての第三者による定期的な監査といったことで、個別の確約措置に係るもので、確約計画に盛り込まれている例はございますけれども、確約措置全体の履行について、第三者である外部専門家の監視の下に行う、あるいはそれら外部専門家にその履行の実施について責任を持っていただくといった対応が採られているというわけではないと考えております。
(問) 従前だと、これまでずっと3年間の期間でやってきたということですが、個別で話を聞くと、例えばプラットフォーム案件だったら、ビジネスモデルが3年以上持つかというそもそもそういう歩留り的な意味もあって3年にしてきているなど、いわゆる理由があったものの、結局、みんな3年だったんですけど、今回の少なくとも5年というのは、もう少し増減するという可能性もあるのでしょうか。
(事務総長) 今回の見直しにおきましては、まず同様の行為の再発防止をこれまで以上に確実にするという観点から、これまでの事案よりも長い期間の履行期間の設定が適切であるというふうにまず考えております。したがいまして、原則として5年間以上ということを想定して、今後の対応を考えていくというところでございます。ただ、必ずしも5年に限定するわけではありません。
(問) 確約破りがあった場合の措置として、先ほど説明いただいた中身について、もう一度詳しく御説明いただけますでしょうか。トラスティーなどが公取委に報告することになるので、これまでよりは遵守されるものと思いますが、何らかの方法で、確約の内容が守られてないのではないかという情報がもたらされた場合に、実行力を伴う報告命令や立入検査などを行うということでしょうか。
(事務総長) 先ほど申し上げた、公正取引委員会自らも独占禁止法68条に基づいて、罰則付きの調査権限の規定を適用していくのかというお話かと思いますが、68条におきましては、公正取引委員会は確約の対象になる排除措置計画の認定をした後においても、特に必要があるときには47条の規定によって、排除措置計画に従って排除措置が実施されていないと認められるようなことがあるかどうかを確かめるために必要な処分をし、又は職員をして処分させることができる、こういう規定になってございまして、それを先ほど申し上げたということであります。
(問) つまり、事件審査においても任意で調査されることも多いと思いますが、強制的な権限というのは47条の規定に基づくものであって、その手法を確約が遵守されてるかを調査するためにも用いることができるようにするということでしょうか。
(事務総長) 確約が一旦認定されて、計画ができた後であっても、必要があるときにはその計画に従って措置が実施されてるかどうかということを確認をするというために47条の権限を用いることができるということであります。
(問) そうなると、今の規定では、確約が遵守されていなかったという場合には、認定を取り消して調査を再開するというのが、現在のルールのプラクティスで実際には行ってないと思いますが、最終的には、強制的な権限を使ってやって、確約が遵守されていないということになった場合には、確約の認定を取り消して、調査を再開するということでしょうか。
(事務総長) 両者がバッティングする、相反するものではないということです。
(問) 今回の見直しについて、何らかの形でそのルールが発表されて、次の確約事案から施行ということになるのでしょうか。それとも、どこかの時点で、まとまった確約手続のルールなどを改定して公表するということになるのでしょうか。
(事務総長) 本日、基準の明確化ということを皆さんに報告をさせていただきましたので、それをもちまして、今後この新しい方針で取り組んでいくということでございます。
(問) 今の質問に関連して、確約手続を認定した後の計画内容について疑義が生じた場合に、今後提出命令などを行って履行状況を確認するということだと思いますが、それは今でもできることだけども、今後より強化していくという理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) 68条自体は現在でも規定をされている内容でございます。ただ、これまで活用されたことがないということは確かでございます。
(問) 今後の方向性というのは、より強力にしていく、積極的に事案があれば活用していくということでしょうか。
(事務総長) これまで活用されてなかったものもしっかり活用していくという方向です。
(問) 期間が5年になる点について、先ほど御説明で製品のライフサイクルやサービスの契約期間ということでしたが、あまりイメージがつかなくて、3年と5年とどういった差があるのか、もう少し詳しく教えてください。
(事務総長) 製品のライフサイクルや購入サイクルの話でありますけれども、例えば、対象となる商品の購入サイクルが5年であるといった場合には、確約後の次の購入時までの取引状況を監視するということが取引条件の適正化に資すると考えられますので、そういったライフサイクルの期間を考慮する必要があるという考えでございます。
(問) 今の3年ですと、市場の現状にとっては短いという判断になるのでしょうか。
(事務総長) 3年、5年の話については、まずはこれまでのプラクティスを検証して、今回の見直しの中で、再発防止をこれまで以上に確実にするという観点からは、まずは3年ではなくて、長い期間を考えるべきという判断をしております。では、どれぐらいの期間にするかということで、今申し上げたようなことを考慮して期間を決めていくという考え方、思考プロセスを経ております。
(問) 3年でも特に欠点はないものの、5年の方がより事業者にとっても意識的にもきちんと遵守していこうという意識の強化にもなるということでしょうか。
(事務総長) 結局は、個別の問題、個別の事案において何が適切かということになりますので、従前採られていた3年の措置については、これが不十分であったという結論には至っていないということであります。
(問) 海外当局も5年が多いといった事例はあるのでしょうか。
(事務総長) 海外も、結局個別に応じた処理をしておりますので、いろんな期間があると思います。
(問) 法改正などは必要ないというお話でしたが、確約手続に関する公正取引委員会の規則があると思いますが、これの改正も特に必要がないということでよろしいでしょうか。
また、今回の見直しについて、期間を5年に広げたり、第三者の監視を入れることで、巨大ITをめぐる市場というのは多層化されていてなかなか難しいという部分もあり、監視も難しいという部分もあると思いますが、こういった巨大ITの規制という部分でも効果が発揮されるとお考えになっているのでしょうか。
最後に、個別に確約手続に関して詳しく聞く場合に、担当はどちらになるかも併せて教えてください。
(事務総長) まず、確約手続に関する現在の運用方針でありますけども、これは「確約手続に関する対応方針」というものがございまして、文書化されたものがございますが、今回の見直しにつきましては、対応方針の枠内の具体的な基準の見直しであると考えておりますので、直ちに対応方針そのものを改定する必要はないと考えております。
また、今回の見直しによって、巨大ITの事案に有効になるのかという点について、巨大ITの事案にとどまらず、様々な事案により有効に対応していけるものと考えておりまして、そういった意味での今回の見直しの意義があると考えております。
それから担当の部局については、審査局の管理企画課企画室が担当しておりますので、詳しいお問い合わせはそちらのほうにしていただければと思います。
(問) 今まで確約手続の対象となった19件の中で、例えば自主的に弁護士たちによる監視を付けてきた事業者というのはあったのでしょうか。
(事務総長) 御質問は、個別の監視について、それぞれの企業が自主的にこういう第三者を付けたことがあったかどうかということでしょうか。
(問) 確約計画の認定を受けた後に、公取委に対して改善の報告をするに当たって、自主的にその報告状況を第三者から常にチェックを受けながら行っていった事業者というのはこれまであったのでしょうか。
(事務方) 基本的には、事業者が確約手続を進めていくだけでなく、履行の段階でも、自主的に弁護士の法律事務所に相談しながらやっているところが多いというのは一つございます。あと、先ほど総長からもありましたとおり、事案によっては個別の措置、確約計画全体ではなくて、個別の措置に第三者の監視が付いているものというのは過去もございまして、確約計画というもの自体が基本的には事業者が策定したものを我々に提出をしてきて、我々が認定しているというプロセスを経ておりますので、そういう意味では、それらのものも事業者側が自主的に付けてきたものということも言えるかと思います。
(問) 計画を作成するときに弁護士も付けているということでしょうか。
(事務方) それもありますし、その後の監視についてということでもあります。
(問) それは自主的な取組ということでしょうか。
(事務方) 基本的には、全て自主的な枠組みの中でということになりますが、それを今回は全ての確約計画全体の履行について、事業者に弁護士を付けて行っていただくということが今回の趣旨ということになります。
以上