[配布資料]
なし
[発言事項]
- チーフ・グリーン・オフィサーの設置とグリーン社会の実現に向けた公正取引委員会の取組
- フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査に係るWebアンケートの実施及び積極的な情報提供のお願いについて
- 質疑応答
事務総長定例会見記録(令和6年9月11日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
チーフ・グリーン・オフィサーの設置とグリーン社会の実現に向けた公正取引委員会の取組
本日は二つテーマがございまして、一つ目がチーフ・グリーン・オフィサーの設置についてです。それから二つ目が、フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査に関する話でございます。
まず第1に、チーフ・グリーン・オフィサーの設置の関係でございますけれども、本年8月1日に、公正取引委員会に新たに設置いたしました「チーフ・グリーン・オフィサー」についてお話ししたいと思います。今年の夏も日本各地で記録的な猛暑となりましたが、気候変動問題は我が国のみならず、人類全体の問題として国際社会の一致団結した取組の強化が急務となっております。
公正取引委員会といたしましても、これまで「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」、いわゆる「グリーンガイドライン」を公表するとともに、カーボンニュートラルに向けた事業者や事業者団体の取組を後押しするため、ガイドラインの広報活動や、事業者及び事業者団体からの相談対応に努めてまいりました。
また、昨年及び今年と2回にわたり実施したEV充電サービス実態調査や、使用済みペットボトルのリサイクルに係る取引に関する実態調査により、市場実態の把握と今後に向けた提言等を行ったほか、7月の定例記者会見において御紹介させていただきましたとおり、国際競争ネットワーク(ICN)のサステナビリティ・ワークショップにおきまして、日本の取組を紹介するなど、この分野における国際連携にも積極的に取り組んでまいりました。今般、こうした取組を更に加速するため、公正取引委員会事務総局にチーフ・グリーン・オフィサーを置くことといたしました。チーフ・グリーン・オフィサーの具体的な業務内容は、主に四つございます。まず第1に、環境負荷の低減と経済成長の両立する社会である「グリーン社会」の実現に向けた事業者等の取組状況、技術動向、市場動向、海外競争当局の動きなどに関する調査や情報の収集を行うということが一つ目でございます。第2に、公正取引委員会の内外に情報を提供すること、第3に、グリーン社会の実現に関する事前相談、企業結合審査などの適切な処理の補助、それから第4に、グリーン社会の実現に関係する公正取引委員会の取組の対外的なアピールを行うといったものでございます。
このチーフ・グリーン・オフィサーには、本年9月1日付けで鈴木相談指導室長を充てております。鈴木室長は、令和5年3月のグリーンガイドラインの策定及び本年4月の同ガイドラインの改定を担当した管理職でありまして、現在は個別の取組に関する事業者等からの相談について対応する相談指導室の管理職であります。公正取引委員会として、グリーン社会の実現に向けた事業者等の様々な取組に関しまして、今後とも積極的かつ適切な対応を継続的に実施してまいります。
フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査に係るWebアンケートの実施及び積極的な情報提供のお願いについて
それから、二つ目の話題でございますけれども、フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査の件についてお話しいたします。公正取引委員会は、フードサプライチェーンのうち、食品の製造業者、卸売業者、小売業者の取引における商慣行について、独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から実態調査を行うことといたしました。令和5年9月から令和6年8月までの1年間を調査対象期間とし、製造業者と卸売業者に対し、今週13日にウェブアンケートへの協力依頼状を発送いたします。
今回の実態調査は、ウェブアンケートの対象とならなかった事業者の方からも幅広く情報をお寄せいただきたいと考えておりまして、公正取引委員会のウェブサイト上に、今週13日から来月25日まで、フードサプライチェーンにおける商慣行に関する情報を匿名で提供することができる情報提供フォームも設けることとしております。情報をお持ちの事業者の方におかれましては、是非このフォームから情報をお寄せいただければと考えております。
今回の実態調査を行う経緯について補足をいたします。公正取引委員会では、従前から、食品流通に関する競争上の懸念を持っておりまして、平成4年には加工食品業界の流通実態に関する調査を、平成23年には食料品製造業者と卸売業者との取引に関する実態調査を、また、平成26年には食品分野におけるプライベートブランド商品の取引に関する実態調査をそれぞれ実施してきたところであります。
こうした中、フードサプライチェーンの商慣行についても、競争上の懸念に関する様々な声が寄せられてきておりますので、こういったことから、納品のいわゆる3分の1ルールなど、業界特有の商慣行の中には独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から問題になり得る行為があるのではないかと考えていたところでございます。
また、食品流通に関する競争上の懸念につきましては、国際的にも検討を進める動きがみられておりまして、本年12月にOECDで「フードサプライチェーンにおける競争」をテーマとする議論が行われる予定となっております。また、ICNでも同様のテーマで議論が行われるということでございます。こうしたことも踏まえまして、今回の実態調査を実施することにしております。
今回の実態調査において問題として想定している行為ですが、例えば先ほど申し上げました3分の1ルールを前提として、納品期限が迫っていることを理由に不当に受領を拒否したり、小売業者が製造業者などに売れ残った食品を不当に返品したりする行為、こういったものがございます。
調査の結果、問題となり得る行為が認められた場合には、その結果を公表し、業界全体に広く周知することによって、食品製造業者等への不当なしわ寄せの解消など、フードサプライチェーンにおける取引の適正化を図りたいと考えております。今後はウェブアンケートの調査結果を踏まえ、小売業者に対するヒアリング調査も実施し、早ければ令和6年内をめどに調査結果を取りまとめる予定にしております。
私からは以上です。
質疑応答
(問) フードサプライチェーンに関する実態調査について、以前から加工食品やプライベートブランドに関する実態調査も行われてきたということですが、今回の調査の違いというのは、あまり食品や種類を限定しない調査という理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) 今回は、まさに食料品のフードサプライチェーン全体において、様々な商慣行がありますので、それについて問題行為が行われていないかどうかという観点からの調査でございます。これまでも、食品業界に関し、食品の流通に関して様々な観点から調査を行ってきておりまして、今回の調査と比較的似ているのは、平成4年に行いました加工食品業界の流通実態に関する調査と考えております。
(問) フードサプライチェーンのイメージですと、加工食品も含む食料品や飲料品ということかと思いますが、飲食店などそういうお店でのサプライチェーンに関するものは、今回の調査の対象からは外れるということですか。
(事務総長) そうですね。それとは少し違うと思います。
(問) フードサプライチェーンの実態調査について、実態調査において何らかの違反になり得るということを公表した後に、実際にエンフォースメントでやることも少なくないと思いますが、今回は優越的地位の濫用でフードサプライチェーンということですと、下請けにも援用が効くと思いますが、そういう可能性というのはあるのでしょうか。
(事務総長) 下請法との関係ということを想定されているかと思いますが、今回の調査につきましては、優越的地位の濫用の観点から調査するということでございますので、下請法というよりは、独禁法に焦点を絞った調査になっております。
(問) 3分の1ルールについて教えてください。
(事務総長) 賞味期限までの期間について、当初の3分の1以内の期間に卸売業者が小売店に納品しなければならないという商慣行ということでございます。
(問) 今回の調査の対象は、製造業から卸、卸から小売りというように、サプライチェーン全体を通じての優越の観点からの調査という理解で正しいですか。
(事務総長) はい。アンケート調査を行いますけれども、調査対象になっておりますのは、食品製造業者約1万2000社、それから卸売業者約6000社、合計1万8000社に協力依頼状を発送する予定にしております。
(問) 調査の取りまとめのめどですが、令和6年ということで、早ければ12月頃までにという理解で正しいですか。
(事務総長) そうです。現時点では具体的には未定ということですが、早ければ年内をめどにと考えております。
(問) フードサプライチェーンの件で、現在、物流の2024年問題を受けて、この3分の1ルールを見直す動きというのが業界の中で出てきていると思いますが、今このタイミングでこの調査を行う意義というのをどのようにお考えでしょうか。
(事務総長) 必ずしも物流の2024年問題とリンクしたものということで考えているわけではありませんが、従前から食品流通に関しましては、3分の1ルールを始めとして、様々な声がございますので、今回はそこにも注目して調査を行うということです。
(問) 3分の1ルール以外で何か懸念されていることはありますか。
(事務総長) 幾つか言われている商慣習がございますが、具体的には、欠品ペナルティーの問題なども含めて考えております。
(問) 今回、OECDでも議論が行われるテーマということですが、他国でもこのような3分の1ルールなどが問題になっている現状なのでしょうか。
(事務総長) 国際的によく議論になっていますのは、小売部門でかなり集中が進んでいる、寡占状態になって正に競争上の問題が起こっているのではないかといったことや、あるいは、食品についてのカルテルがあるのではないかなど、そういった議論もありまして、日本の3分の1ルールという商慣行があるかどうか分かりませんが、若干視点が違うと思います。
以上