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令和7年12月24日付け 事務総長定例会見記録

令和7年12月24日付け 事務総長定例会見記録

[配布資料]

第231回 独占禁止懇話会の議事概要の公表について

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和7年12月24日(水曜)13時30分~於1106会議室)

ニュースコンテンツ配信分野のフォローアップ調査について

 それでは、今年最後の会見ということで、よろしくお願いします。私から冒頭2点ございます。
 まず1点目は、ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査のフォローアップ調査についてお話をします。公正取引委員会は、デジタル分野に関する新規の実態調査として、令和5年9月に報告書を公表したニュースコンテンツ配信分野を対象とする実態調査のフォローアップ調査を開始することとしました。
 実態調査と申しますのは、競争環境の整備に向けて、取引の実態を確認した上で、独占禁止法や競争政策上の考え方を示すことにより、独占禁止法違反行為の未然防止や、関係事業者における競争制限的な取引慣行の自主的な改善に向けた取組の促進を図ることなどを目的とするものでありまして、独占禁止法等に違反する疑いがあるとして行う事件調査とは異なるものです。
 2年ぐらい前ですが、新聞、雑誌等の既存のメディアの利用が減少する一方で、ニュースプラットフォームの利用が増加しているといったニュースコンテンツの流通構造の変化によりもたらされる懸念、具体的には、消費者が質の高いニュースコンテンツを享受できる環境の劣化への懸念等を踏まえて、公正取引委員会において、ニュースコンテンツ配信分野を対象とする実態調査を実施しまして、令和5年9月に報告書を公表しました。
 この報告書においては、ニュースコンテンツに関する許諾料の決定方法などの課題について、独占禁止法及び競争政策上の考え方を示した上で、ニュースプラットフォーム事業者及びニュースメディア事業者が相互理解のもとで、当事者間の交渉を通じて課題の解消に向けた取組が進められるよう、公正取引委員会として、関係事業者における取組の進捗を注視することとしておりました。
 その後、この報告書の公表から約2年が経過しており、関係事業者間で取組を進めるための時間が一定程度確保されたと考えられます。そのため、取組の実施状況や現在の競争環境、報告書で指摘した課題の改善状況などについて、改めて、実態を確認する必要があると考えております。
 また、最近では生成AIを用いた検索サービスや、AI概要と呼ばれるサービスを提供する事業者が、ニュースメディアの許可なくニュースコンテンツを用いて、ユーザーによる検索に対する回答を生成しているという指摘があります。こうした新たなサービスがニュースコンテンツ配信分野における競争環境に与える影響についても確認していく必要が生じております。
 このような状況を踏まえて、このたびニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査のフォローアップ調査を実施することとしました。競争政策上の課題の解決に向けて実効的な提言を行うことを目指して、関係省庁や海外当局とも連携しながら調査を進めてまいりたいと考えております。
 なお、時期は未定ですが、本調査の一環として、来年に、事業者、消費者の皆様を対象としたアンケート調査を実施する予定です。対象となった皆様には、是非御協力くださいますようお願いいたします。以上が1点目です。

第231回 独占禁止懇話会の議事概要の公表について

 2点目は、本年11月7日に開催しました第231回独占禁止懇話会の概要についてお話しいたします。独占禁止懇話会は我が国の経済の変化に即応して、競争政策を有効かつ適切に推進するため、公正取引委員会が国民各層の意見を広く聴取するとともに、独占禁止法の運用について、国民各層の理解を深めることを目的として、昭和43年11月以降開催しているものです。
 独占禁止懇話会の会員の任期は3年となっておりまして、第18期の会員の任期が今年の8月末で終了し、7名の新会員を含む26名の方が新しい第19期の会員として選任をされました。11月7日に開催した第231回独占禁止懇話会は、この第19期会員による初めての会合でございました。
 今回の独占禁止懇話会では、事務総局から、最近の独占禁止法違反事件の処理状況、下請法やフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況など、それから、「実務家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」について御説明しまして、会員の方々から、デジタル市場における独占禁止法違反の未然防止に向けた取組ですとか、取引適正化に向けた取組をしっかりと進めてほしいといった御指摘をいただきました。
 先週も御紹介しましたが、今月18日にスマホソフトウェア競争促進法が全面施行となり、また、令和8年1月1日から下請法改正が施行され、法律名が中小受託取引適正化法、通称「取適法」になります。公正取引委員会といたしましては、独占禁止懇話会でいただいた御意見も踏まえて、引き続き、所管法律の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
 私からは、以上でございます。

質疑応答

(問) 一つ目のトピックスのニュース事業者を含めたフォローアップの実態調査の件なのですが、今回は生成AIサービスに関してという要素が新しいと思います。その生成AIサービスを提供している主な事業者はオープンAIや、グーグル、マイクロソフト、LINEヤフーという理解で合っているでしょうか。また、生成AIサービスの利用シェアでいいますと、パープレキシティですとか、サービス面で言うとクロード、会社名で言うとアンソロピックがあると思うのですが、対象としている会社名が既にあれば教えていただきたいです。
(事務総長) 現段階で、念頭に置いているAI検索事業者ということでいいますと、お話のありましたグーグル、あるいはLINEヤフー、マイクロソフト、オープンAIですとか、御指摘いただいたようなパープレキシティAIやアンソロピック、そういったところなどを考えております。
(問) 今回の調査は、2023年のときのように報告書という形でまとめられる想定だと思うのですが、半年後にまとめられるなど、そういった想定があれば教えてください。
(事務総長) 最終的には報告書としてまとめたいと思っておりますけれども、まさにこれからスタートということで、これからいろいろな事業者にも当たっていくことになりますので、現段階ではいつ頃公表となるかは未定です。
(問) 現時点でのお考えとして伺いたいのですが、今回の調査は、生成AIの検索サービスは、記事を無断で使用することでメディアの減少につながったりするということで、独占禁止法上の優越的地位の濫用などに当たるのではないか、というような根本的な問題意識から出発しているという認識でよろしいでしょうか。
(事務総長) ニュースメディアの許可なく、ニュースコンテンツを使ってユーザーによる検索への回答を生成していくということ、それ自体が独占禁止法の問題に即直結するかというと、必ずしもそうではないと思っております。ただ、行為の態様であるとか、事業者がどういった地位にあるかといったことなども考えていった場合に、独占禁止法上の問題あるいは競争政策上の問題が出てくるかもしれないということで、今回、実態調査を行うということです。
(問) 先ほどコメントの中でありました課題解決に向けた実効的な提言取りまとめを目指したいという点について、海外の当局とも連携し、また、海外当局などの知見を取り入れて、グローバルな視点での提言をすることになるのでしょうか。
(事務総長) 報告書の内容は、もちろんこれからとなるわけですが、諸外国の当局でもこの問題に関心を持っているところは幾つかありますので、そういったところとも連携を取りながら、我々の報告書の内容をしっかり詰めていきたいと考えております。
(問) AI検索事業者の行為が独占禁止法上のどういった問題になりそうかという点で、今、優越的地位の濫用という話があったのですが、それ以外にAI検索事業者の行為が、どういった点で独占禁止法上の問題になるのか、もし想定しているものがありましたら教えていただけないでしょうか。
(事務総長) この点も、まさにこれから調査をスタートということですので、具体的なことは基本的には控えたいと思いますが、関連し得る違反行為類型ということで言いますと、まずは優越的地位の濫用が考えられ、それから、いわゆる不公正な取引方法で、取引妨害であるとか、抱き合わせとか、そういった行為類型も想定はし得るところだと思っています。
(問) フォローアップ調査についてお伺いします。前回の実態調査のフォローアップということですけど、調査の手法について何かお話しできることがあればお願いします。
(事務総長) 冒頭でも申し上げたように、事業者向けのアンケート、あるいは消費者向けのアンケートをまず行っていくのが一つです。あと、関係する事業者からのヒアリングも並行して行っていきます。主にはそれらを中心にして、情報やファクトを集めていくというやり方になろうかと思っております。
(問) ありがとうございます。年明け以降に想定されているという事業者向けの調査に関しては、今回の調査対象となる事業者のことを指していらっしゃるのか、あるいはニュースを提供する側の事業者についての聞取り等も対象とされていらっしゃるのでしょうか。
(事務総長) ヒアリングという意味では、両方の側の方々からヒアリングを行うことは、当然念頭に入ってくると思います。
(問) そうすると、既存メディアというか、ニュースコンテンツを提供している事業者も調査の対象になるという理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) はい。
(問) もう1点、今回の、生成AIを使った検索サービスという領域、AIの分野において、特に競争政策あるいは競争環境を見ていく上で、もし、現状で、調査するに当たって困難な場面が想定されるようなことがあれば、その点についてお伺いできますか。
(事務総長) もちろんスタートしてみないと分からないところはいろいろあると思うのですけど、ニュースコンテンツ配信分野に限らず、生成AIに関連することは非常に動きが速いですので、例えばこの12月の時点でのファクトが、その半年後とか1年後にはかなり変わっていることもあると思います。従って、もちろんよく調べていく必要はあるのですが、スピード感も意識した上で、あるいは、まさに調査を行っている間にどういった変化が起こっているかについてもよくフォローしながら、実施していく必要があります。これは、AIの分野に固有とまでは言いませんが、この分野に特徴的な点、留意しなければいけない点と思っています。
(問) 今回の調査を始めるに当たっての、公正取引委員会側の問題意識を伺えないでしょうか。
(事務総長) 2年前の前回調査を踏まえたところと生成AIの二つありますが、前回調査を踏まえてというところに関して言いますと、前回の報告書、令和5年9月の報告書においても、ニュースプラットフォーム事業者とニュースメディアの事業者において、許諾料を含む取引条件について十分な交渉なり協議というのを行うことが望ましい、そして、ニュースプラットフォーム事業者が十分な交渉なり協議に応じないまま、取引条件を一方的に変更する場合は、独占禁止法上の問題になり得るといったことも指摘していたところでございます。こうした提言を踏まえて、報告書を出してから2年経つ中で、関係事業者間でいろいろなやりとりもあったであろうと思いますので、当事者間の取組は進んでいるかどうか、公正な競争環境が確保されているかどうか、実態を把握したいということが、まず一つ目です。
 二つ目は、AI検索事業者とニュースメディアの取引について、これは冒頭申し上げた点ともちょっと重なりますが、AI検索事業者がニュースメディア事業者の許可なく、ニュースコンテンツを用いてユーザーによる検索に対する回答を生成している行為、あるいはAI検索事業者が、自然検索のためのデータ収集とAI検索のためのデータ収集というのを一つのクローラーで実施するという行為が、ニュースコンテンツの配信分野の競争性、競争環境にどういった影響を与えているかといった点について実態を把握していくということがポイントかなと思っているところです。
(問) 2年前の実態調査ですと、ニュースメディア向けアンケートは319社出されているということで、基本的に協会等の団体に加盟されている事業者に出されていると思うのですが、現状、例えばヤフーニュースでも、数百社を超えるニュース提供事業者がいらっしゃって、団体等に加盟していない中小ニュースサイトも当然あるわけです。まさに弊社はそのカテゴリーとして入るのですけれども、こういった中小の事業者に関しては、今回は対象外であるということでしょうか。
(事務総長) ニュースメディア事業者という言い方をしたと思うのですが、そこに、中小のメディアが入ってない、あるいは排除しているというわけではありません。
 ただ、調査の中で、具体的にどういったところをアンケート調査の対象にするか、ヒアリング調査の対象にするかという検討の結果として対象とならないメディアは出てくるかもしれません。それはこれから検討していくことになりますが、ローカルの新聞なども含めて、中小のメディアを検討の対象から外しているというわけではないです。
(問) 現状のニュースメディアの一つの実態として、当然グーグルやヤフーなどは、検索連動広告的なもので収入が成り立つという構造がありますが、中小事業者においては、それ以上に、実際にプラットフォーマーのニュースサイトに掲載されることによって、記事が読まれ、メディアの価値が高まるという構造が成立している部分もあるため、一概に取引という側面だけで見ることが少し難しい部分があると思っています。その辺りの認識はいかがでしょうか。
(事務総長) プラットフォームとメディアの間でいろいろな取引条件についての取決めはあると思います。2年前の前回調査は、主として、まずそこに着目していました。 
 例えばニュースメディアの出すニュースがプラットフォームに載ることによって、メディア側もいろいろな利益を得ることはあると思うのですが、十分な協議なり交渉によって、取引条件が決まっているのかどうかについて、前回の調査でも調べたわけで、今回の調査でも、そこが協議や交渉が十分に行われているのかどうか、あるいは、もし十分じゃないとすれば、今後どういったことが必要かということを我々で考えた上で、最終的には何らかの提言ができればと考えているところでございます。
(問) これまでの説明に関連する話と思いますが、フォローアップ調査の対象になっているのは、主にニュースアグリゲーションプラットフォーム、ニュースアグリゲーションサイトであり、生成AIについては、生成AIの検索事業者だと思います。前回調査の中では、ニュースに対する対価の取決め、交渉等が課題になっていたと思いますが、独占禁止法上あるいは競争法上、どういうふうに違う課題を抱えているとお考えになるか、教えてください。
(事務総長) 違う課題というのは、前回フォローアップの部分と生成AIの部分とでということですね。
(問) そうです。
(事務総長) はい、分かりました。生成AIに関連する部分というのは、先ほど我々が今の時点で持っている問題意識を少しお話ししましたけれども、問題の性質として前回フォローアップの部分とは少し違っている、新しい観点のテーマがあるのかと思っております。したがって、前回フォローアップ部分とはちょっと違う問題意識といいますか、競争上の問題となり得るものに違ったものがあり得るという問題意識でやっていく必要があるのかなと思っているところです。
(問) そういう意味では、調査をすることにすごく意義があると思います。
 前回のニュースアグリゲーションサイトの場合は、少ないかもしれないけど対価は払っている、だけど、価格の取決めのやり方がどうなっているかが課題であったと思うのですが、生成AIについては、訴訟も起きていると報じられているように、もしも無償でニュースのコンテンツをクローリングなりしていて、それを検索の結果に表示するだけでなくて、回答にも使っているということになると、先ほどおっしゃったように対価が払われていないかもしれない実態が優越的地位の濫用となり得るという点が考えられますが、このほか特にどういった辺りの取引環境を解明できれば、競争法上の有意義な提言につながると思いますか。
(事務総長) 特に、AI検索事業者に係る取引について言えば、まず、やはり実態がどうなのかをよく把握する必要があるかなと思っております。先ほど少し申し上げましたけれども、ニュースメディアの許可なくニュースコンテンツを用いてユーザーによる検索に対する回答を生成している行為があるとして、どの程度広く行われているのか、それから、AI検索事業者が自然検索のためのデータ収集、あるいはAI検索のためのデータ収集を一つのクローラーで実施するといった行為が、どういうふうに行われているのか、あるいはどういった影響をニュースコンテンツの配信分野において与えているのかということを、まずよく把握する。その上で、独占禁止法上あるいは競争政策上の問題としてどういうことが取り上げられるのか、問題があるかどうかどうかも含めて、よく検討していくことになると思います。
(問) 追加で伺いたいのですが、今回AI検索サービスを対象に実態調査をするわけですけれども、なぜ報道機関に絞って調査するのでしょうか。EUは、恐らくウェブサイトの運営者全般を捉えていると思うのですが、報道機関に絞ることの意味を伺えないでしょうか。
(事務総長) まず、今回の調査は、2年前の調査のフォローアップという色合いが強いというところがあります。前回の報告書を出してから2年余りが経ち、関係事業者間での取組のための時間も一定程度確保されたということで、今回改めて実態を確認する、そのため、こういった対象の絞り方になっています。そういった性格もありますので、もちろんそれ以外の分野についても調べてみるということもあり得ますけども、今回はまずニュースコンテンツを見ていくということになろうかと思います。
(事務総長) 1年間ありがとうございました。

以上

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