[配布資料]
(令和7年6月25日)令和7年度におけるフリーランス法の広報強化期間(第1弾)(333 KB)
(令和7年6月25日)フリーランス法説明会案内(196 KB)
「CPRCの公開セミナーの開催」のフライヤー(212 KB)
(令和7年6月25日)独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)について(276 KB)
独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)(8,353 KB)
[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和7年6月25日(火曜)13時30分~於官房第1会議室)
フリーランス法の広報強化期間(第1弾)
本日は、三つのテーマについてお話をしたいと思います。
最初に、いわゆる「フリーランス法の広報強化期間」について、それから第二に、「CPRCの公開セミナーの開催」についてお話をしたいと思います。それから第三に、「独占禁止法に関する相談事例集」について話をしたいと思います。
それでは、一番最初のテーマですけれども、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス法は、昨年11月1日に施行され、まもなく施行から8か月となります。公正取引委員会では、令和5年5月の本法公布後、本法の円滑な施行に向けて集中的かつ大規模なメディア広報を実施するなど、積極的な周知広報に取り組んでまいりました。
そして、本法施行後は、本法に違反する疑いのある行為の発見に努め、違反行為が認められた事案について迅速かつ適切に対処してきたところ、先週17日には、初めての勧告を行ったところです。
公正取引委員会では、本法の周知広報は施行後も極めて重要であると考えており、6月30日から8月31日までを令和7年度における広報強化期間の第1弾として、フリーランス法の広報を行うことといたしました。
これは、フリーランス法の認知度と理解度を高めることで、発注事業者による本法違反行為の未然防止、そして違反行為を受けたフリーランスの申出を促すことを目的としておりまして、昨年度に引き続き、イラストレーター兼漫画ブロガーのBUSON(ブソン)氏のオリジナルキャラクター「しきぶちゃん」とタイアップした各種広報を展開いたします。
まず、公正取引委員会ウェブサイトに、今年度版の本法の特設サイトを新たに設けます。この特設サイトには、「しきぶちゃん」とタイアップした社内研修にもお使いいただける本法の解説動画や理解度診断などのほか、取引の各段階で本法違反行為がないか確認することができるコンテンツなどを盛り込む予定ですので、是非御覧いただきたいと思います。このほか、インターネット広告や東京メトロとJR東日本の車内ビジョン広告も実施いたしますので、御期待いただきたいと思います。
また、フリーランス法の説明会をオンラインで6回、東京の会場で1回開催いたします。今回の説明会では、取引条件の明示義務などの取引適正化に関する内容について、下請法との違いや勧告、指導事例にも触れつつ説明しますので、是非御参加いただければと思います。
公正取引委員会といたしましては、引き続き、フリーランス、発注事業者の双方に対して分かりやすい情報発信を行い、フリーランス法の積極的な周知広報に努めてまいります。
CPRC第54回公開セミナー(フリーランスをめぐる取引の適正化の現状と展望)の開催について
続きまして、本年7月25日の金曜日に、競争政策研究センター、CPRCが都内で開催する予定の「第54回CPRC公開セミナー」について御紹介いたします。お手元にパンフレットが配ってあると思いますけども、本セミナーにつきましても、フリーランスの取引の適正化を取り上げることとしておりまして、テーマとして「フリーランスをめぐる取引の適正化の現状と展望」としております。
先ほど申し上げましたように、昨年11月に法律が施行され、その後、指導、あるいは先週公表しました初めての勧告など、法執行の実績も積み上がってきているところでございます。
本シンポジウムでは、フリーランスと発注事業者間の取引の適正化、すなわちフリーランス法の第2章の部分に焦点を当てまして、公正取引委員会の職員から法執行後の取組について説明するほか、法学者や弁護士の方々から法やガイドラインの評価、フリーランスや発注事業者の実務上の留意点などについて講演してもらい、パネルディスカッションも行う予定です。
本セミナーは、日本経済団体連合会の後援を得て、日本経済新聞社、公正取引協会との共催により開催するものです。
本日から参加申込みの受付を開始しております。開催場所や登壇者、各講演のテーマなどにつきましては、ウェブページにも掲載しておりますので御参照いただければと思います。会場のほか、オンラインでも御参加いただけますので、奮って御参加をいただければと思います。
独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)について
本日、三つ目のテーマですけれども、令和6年度の「独占禁止法に関する相談事例集」について簡単にお話をいたします。
公正取引委員会は、独占禁止法違反行為の未然防止と、事業者や事業者団体の適切な事業活動に役立てるため、事業者などが新たな取組を実施しようとする際、その行為が独占禁止法上問題になるかどうかについて、事前の相談に応じております。
そして、寄せられた相談の中から、相談者以外にも参考になると考えられる主要な事例を選んで相談事例集として取りまとめ、毎年公表しております。
本日公表しました令和6年度の相談事例集では、10件の事例を収録しております。
具体的な収録事例を若干紹介いたしますと、例えば、
① 環境負荷の低減と経済成長の両立する社会、すなわちグリーン社会の実現に向けた事業者の取組に関する相談として、メーカー数社が温室効果ガス排出量削減に向け、パッケージの一部を小型化・軽量化するための共同研究などを実施する事案につきまして、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例。これは事例5です。
② 社会において必要とされる事業を、働き手不足などの課題を抱える過疎地においてもどのように維持していくのかという点についての事業者団体の活動に関する相談として、事業者団体が、特定のガソリンスタンド過疎地において、会員が経営するガソリンスタンド間で休業日を調整する取組を行うという事案につきまして、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例。これは事例6です。
③ 一般消費者が購入する製品の流通に関する相談事例として、家電メーカーが、家電製品の一般消費者への販売に至るまでに生じるリスクと費用を自ら負担することを前提として、取引先事業者に対し、一般消費者への販売価格、いわゆる再販売価格を指示するといった事案につきまして、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例。これは事例の1です。
こういったものがございます。
公正取引委員会のウェブサイト上では、令和6年度分を含めまして、過去に公表した相談事例集に収録されている多数の事例を閲覧することができるようになっており、各事例をキーワードや行為類型などで検索することも可能になっております。各事例につきまして、独占禁止法上の考え方を記載しておりますので、事業者などの皆様が相談事例集を参考にしていただくことにより、独占禁止法に関する理解が一層深まるということを期待しております。
本件の担当は、取引部の相談指導室です。
私からは以上です。
質疑応答
(問) 相談事例集についてなんですけれども、まず、相談の件数について、令和6年度は令和5年度と比較してずいぶん増えています。この背景についてお分かりになることがあったら教えてください。
(事務総長) 最近の相談件数の動向をもうちょっと伸ばしてみますと、令和元年度から令和3年度までは2000件前後で推移しておりましたが、令和4年度は約3000件を超えまして、令和5年度及び6年度が6000件程度と、近年は増加している状況にございます。
増加した正確な要因というのは、これは相談者の方々の事情によるものということでありますので不明ですが、令和6年度の全体の相談件数6210件のうち、優越的地位の濫用に関する相談が5052件ということで、全体の81.4%を占めております。令和5年度と比べましても、全体で299件増えているところ、優越的地位の濫用についての相談がこのうち264件となっておりますので、こういった優越的地位の濫用に関する相談が増えてきているということです。これは推測になりますけれども、政府の中小企業対策の浸透によりまして、事業者の方々の優越的地位の濫用に対するコンプライアンス意識が高まっているということも一つの要因として考えられるかなと思っております。
(問) そうすると、例えば価格の転嫁に関することであるとか、そういったことも含まれると理解してよいでしょうか。
(事務総長) 相談の中身については多種多様な内容があろうかと思います。
(問) フリーランス法の関係で伺いたいのですが、前に小学館等が摘発されたときに、実際、対策はある程度したけど、そもそも法の認識が間違っていたというような指摘がありました。自分が取材した限りだと、これは施行前ですけども、KADOKAWAの下請法の事件のときに、出版業界から「これは他人事じゃない」みたいな声も聞いていますが、実際のところ、ある程度皆気にはしているのに、結局それができていないというのは、フリーランスという特性上、フリーランスの数が多すぎてなかなか一つ一つに対策を持てないのか、若しくは相談ができないのか、弁護士等でフリーランス法に詳しい人がいないのか、それこそこういう相談体制もそうですが、どういったところに一つ要因があると考えられますでしょうか。
(事務総長) いろんな要因があろうかとは思いますけれども、企業のほうでコンプライアンス意識が昨今高まっているということもありますので、例えば、社内システムの整備であったり社内研修を実施されているということもございますが、残念ながら、フリーランス法遵守の体制は整えたけれども、なかなか実態が伴っていない。つまり、管理部門ではしっかりとシステムを作ったり遵守のルールを作ったりということなんですけれども、それが現場では実行されていないといった問題というのもあろうかなと思います。
したがいまして、是非経営陣の方におかれては、自らリーダーシップを採っていただいて、実際にフリーランス法が現場の隅々まで遵守されるように、自己点検を行ったり、あるいは問題があれば自発的申出を行っていただくといったことにより、フリーランス取引の適正化を図っていただきたいと思います。
また、先週の事件でもございますが、取引条件の明示義務の違反であったり、期日における報酬の支払い義務の違反といった点が見られております。発注を書面ではなく口頭で行うといったことや、発注時に支払期日を明示していないといったことは、業界を問わず、多く見られているということが以前から指摘されていることでございます。こういった件につきまして、当方もしっかりと法執行をして勧告、公表を行うことで、問題となる行為をなるべく広く一般に認識していただくということ、そういった効果を期待しておりまして、違反行為の未然防止につなげていければなと考えております。
(問) 相談事例の中の2頁の相談事例1のところに、家電メーカーによる取引先事業者に対する一般消費者への販売価格の指示というものがあります。電気屋さんで時々、最近見かけるもので、大手家電量販店でも値引きができないというようなものがあり、店頭とかでも不思議に思っていたのでお伺いします。これは取引先事業者は単なる取次ぎとして機能しているにすぎず、実質的にX社が家電製品を販売していると言えるという御見解になっていますが、こういうものがどんどん増えると、一般消費者から見ると、メーカーが値段を指定しているように見えると思えて、何か法の抜け穴をメーカーが突いているような印象を受けるのですが、その辺りはどのような御見解なのでしょうか。
(事務総長) まさに、そこのところは非常にポイントかなと思います。一般論としては、正当な理由がないのに、メーカーが自己の供給する商品を購入する小売事業者などの取引先事業者が一般消費者に対して販売する商品の販売価格、いわゆる再販売価格ですけれども、その自由な決定を拘束するということは不公正な取引方法に該当し、違反となるというのが独占禁止法上のルールでございます。
他方で、小売業者などの取引先事業者がメーカーの単なる取次ぎとして機能しており、実質的にみてメーカーが一般消費者に販売していると認められる場合には、メーカーが小売事業者などの取引先事業者に対して価格を指示しても、通常、違反とはならない、そのような考え方でございます。この事例1におきましては、相談者である家電メーカーは、対象となる家電製品の一般消費者への販売に至るまでに生じるリスクと費用を自ら負担するということを前提にしておりますので、本件取組において、小売事業者などの取引先事業者は、当該家電メーカーの単なる取次ぎとして機能しているにすぎず、実質的にみて当該家電メーカーが一般消費者に対して対象となる家電製品を販売しているということがいえると考えられます。
したがいまして、本件取組につきましては、独占禁止法上問題とならないと判断しておりまして、ポイントは、まさにその形だけではなくて、実際にリスクなり、費用を自ら負担するという実態が伴っているかどうかというところだろうと思います。
以上