[配布資料]
イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開(本文)
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イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開(概要)
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[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和8年1月28日(水曜)13時30分~於1106会議室)
イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開について
本日私からは、「イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開」についてお話します。
公正取引委員会は、今後の競争政策の運営方針を明らかにした「イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開」というステートメントを作成いたしました。
近年、公正取引委員会が果たすべき役割、業務は拡大してきております。直近だけでみても、令和6年11月にフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されたのに続きまして、昨年12月にスマホソフトウェア競争促進法、本年1月には取適法が施行されるなどの大きな動きがあるわけですが、昨年5月の茶谷委員長就任から約半年が経過した令和8年の年始に当たり、そのような公正取引委員会の昨今の状況を踏まえ、当委員会が果たすべき役割を明らかにするとともに、その役割を全うすべく、当委員会が取り組む法運用・法執行の方向性を示すということで、このステートメントを作成、公表することといたしました。
以下、ステートメントの内容について申し上げます。
我が国は、デジタル社会の進展、グリーン社会の実現など、急速に変化する時代の中で、少子高齢化、人口減少などの様々な課題に直面しています。このような中、我が国が持続的な経済成長を実現し、国際経済における競争力を発揮していくためには、革新的な製品や新たな市場の開拓などにつながる、イノベーションの促進が非常に重要です。
公正取引委員会は、従前から、独占禁止法等の運用を通じて、公正かつ自由な競争の促進に努めてきていますが、公正かつ自由な競争の促進により、事業者の創意工夫が最大限発揮される環境を整備することはイノベーションの促進に資するものです。このような認識の下、今回のステートメントでは、これまで公正取引委員会が行ってきた施策を、取引適正化による「公正な取引環境の確保」、ステークホルダー等との対話を通じた「市場環境の整備」及び違反行為に対する「厳正な法執行」という三つに整理いたしました。その上で、今後、公正取引委員会はこの三つの柱を有機的に連携させることによって、事業者の創意工夫が最大限発揮されるような環境を整備し、これによりイノベーションを促進することを目指して、競争政策を運営していくことを明らかにしています。
例えば、一つ目の柱である取引適正化による「公正な取引環境の確保」に関しては、イノベーションを促していくためには、中小企業等に不当に不利益を与える行為を排除し、適正な条件で付加価値に見合った対価が支払われる公正な競争環境が確保されることが必要です。このため、公正取引委員会では、取適法やフリーランス・事業者間取引適正化等法等の迅速かつ効果的な執行や、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知といった施策を引き続き強力に進めてまいります。
次に、二つ目の柱として掲げたのが、対話を通じた「市場環境の整備」です。デジタル化に伴う市場の構造変化や、グリーン社会の実現に向けた取組の推進の要請など、我が国経済が多様な変化に直面している状況において、イノベーションを促進する市場環境を整備するためには、幅広いステークホルダー等と緊密な対話を行い、各分野の競争の実態を正確に把握することが不可欠です。そして、把握した競争実態を踏まえて、競争を通じて多様な主体によるイノベーションが活性化されるような施策を講じ、市場環境を整備していくことが求められます。公正取引委員会としては、市場関係者といったステークホルダー等との対話を深めながら、スマホソフトウェア競争促進法や企業結合審査の運用、事業者等からの相談への積極的な対応といった施策を行うことを通じ、事業者の予見可能性を確保するとともに、イノベーションを促進する市場環境を整備してまいります。
そして、三つ目の柱として掲げているのは、公正取引委員会に任された最も基本的な任務である「厳正な法執行」です。法執行は違反行為を排除するだけでなく、不当に固定化した取引関係や取引慣行を打ち破り、イノベーションを強力に後押しする力を持っています。そして、厳正な法執行は、取引適正化による「公正な取引環境の確保」や、対話を通じた「市場環境の整備」を根底から支えるものであります。公正取引委員会は、引き続き、スタートアップを含む中小企業等に不当に不利益を与える優越的地位の濫用や、競争者の不当な排除行為、国民生活に密接に関連する商品の価格カルテルなどに対する法執行に積極的に取り組んでいきます。
公正取引委員会といたしましては、今回このようなステートメントを明らかにし、これに沿って各種施策を実施することによって、イノベーションを促し、事業者の生産性の向上に資することで、持続的に成長する強い日本経済、そして、国民の皆様の豊かな生活の実現に貢献していきたいと考えております。
冒頭私からは以上です。
質疑応答
(問) 全体的に見たところ、これまで公正取引委員会が進めてきた政策を、イノベーション促進という大きな目標の下で整理し直したという印象を持つのですが、大体そういう理解でよいのでしょうか。
(事務総長) はい。御指摘のように、イノベーションを促進することを全体の大きな柱にし、公正取引委員会が行ってきた施策を先ほど申し上げた三つの柱に基づいて整理をしたというところです。もう少し付け加えるとすれば、市場や産業構造が複雑化、あるいは専門化している中で、公正かつ自由な競争を促進するためには、ステークホルダーなどとの対話が重要になってくるということで、対話の重要性をより明確にしていることも一つのポイントと思っております。
(問) このステートメントの公表に関連して、具体的に何か新しい取組の予定はあるのでしょうか。例えば、一つ目の柱である取引の適正化のところでは、配布資料3頁に当面実施していく施策として挙げられた項目の二つ目に、優越的地位の濫用に関する考え方の整理などと書かれています。優越についてはガイドラインがありますが、それをさらに改定するお考えとか、何か具体策があるのでしょうか。また、項目の三つ目については、知的財産・ノウハウ・データに関連する取引実態調査を既に実施していると思いますが、どう進んでいるのか、御説明いただけますか。
(事務総長) ある意味では両方に共通していますけれども、特に前者について、新たに施行された取適法の対象にならない取引への対応についての議論が進められているところであります。その点については、法案審議の段階からも議論があったわけですが、公正取引委員会では、企業取引研究会を開催して、ステートメントに記載されているようなサプライチェーン全体での価格転嫁に関する取組をどういうふうにしていけばいいのか、あるいは、知財・ノウハウなどに関する取引適正化をどういうふうにやっていけばいいのかという議論を行っているところであります。
この2点に関しては、そういった企業取引研究会の検討も踏まえて、公正取引委員会として対応することとしている内容について触れていると御理解いただければと思います。
(問) では、その検討会の進捗なり提言なりを経て、今後の具体的な施策を考えていくという理解でよいのでしょうか。
(事務総長) はい。そういうことになります。
(問) 対話の強化については、グリーンガイドラインのときも言われていましたし、先日の経済安全保障に関連した取組に対する考え方の公表でも、対話の姿勢は示したと思いますし、生成AIの市場調査も継続して進められているものと思います。それ以外に何か予定されていることがあるのか、ここにいう対話の強化について、具体的なイメージがあれば教えてください。
(事務総長) 今仰ったような点も関連してくるわけですけれども、もう少し付け加えるとすれば、この会見でも度々申し上げておりますが、昨年の12月から施行されているスマホソフトウェア競争促進法については、従来の独占禁止法の法執行のやり方とは少し違うスタイルといいますか、指定事業者やスマホアプリの開発事業者であるとか、あるいはもっと広範なステークホルダーといった方々との対話をベースにしながら、法律の遵守を促していくという形での運用を進めているところです。ステートメントでいう「対話」には、そういったスマホソフトウェア競争促進法での取組も含まれております。
以上