[発言事項]
事務総長会見記録(平成22年6月23日(水曜)13時30分~ 於 官房第1会議室)
[発言事項]
独占禁止懇話会(第186回会合)について
(事務総長) 公正取引委員会と各界の有識者との間での意見交換の場として,昭和43年11月から開催させていただいている会合でありまして,今回の会合が186回目の会合ということであります。会員は,学識経験者,産業界,法曹界,消費者団体,中小企業団体等の各分野における有識者24名で構成されており,会長は東京大学大学院経済学研究科の伊藤元重教授であります。
今回の独占禁止懇話会の内容ですが,公正取引委員会から,平成21年度における法執行状況として,独占禁止法違反事件の処理状況,下請法違反事件の処理状況,主要な企業結合事例等をそれぞれ報告させていただきました。また,大規模小売業者と納入業者との取引に関する実態調査報告書の概要についても御説明いたしました。これらにつきまして,各会員からいろいろな御指摘,御意見等をいただいたところであり,独禁法違反事件の処理状況に関しましては,平成17年改正法で導入されました課徴金減免制度の導入の効果がどのように現れているのかといった御質問,官製談合事件における改善措置の内容について,どのようなことが行われているのかといったこと,それから,国際カルテル等に関連しまして,我が国市場に影響を及ぼすような反競争的行為が日本国外で行われた場合の我が国の独占禁止法の適用に関しての考え方について,いろいろな御質問,御意見をいただいたところであります。
次に,平成21年度の下請法違反事件の措置状況を御報告したほか,平成21年11月に公表した中小企業取引公正化推進プログラムについての取組状況も御報告いたしました。また,大規模小売業者と納入業者の取引実態調査についても御報告させていただきました。
これらに関しましては,会員から,下請法の書面調査に関して公正取引委員会と中小企業庁の役割分担はどのようになっているのか,あるいは,大規模小売業者と納入業者との取引実態調査に関しましては,不当な返品や不当な従業員派遣要請等の大規模小売業者による納入業者に対しての違反行為が平成16年に行った調査に比べて6分の1程度まで減少しているということを御報告したのですが,そうした効果が現れている背景等についての御質問,御意見がありました。
それから最後に,主要な企業結合事例等を御紹介を行いましたが,会員からは,個別事案においての地理的範囲の画定や商品の代替性に基づく市場画定をどのように行っているのかいうことについての御質問,企業結合審査をより一層迅速化すべきではないかという御要望,市場が寡占的になってしまっていて資源価格等が高止まりしているといった問題について,競争当局がどのような対応策を打てるのかといったようなことについての御質問,御意見等を頂戴したところであります。
今回頂きました御意見,御要望も踏まえ,公正取引委員会としましては,今後とも適切な法運用に努めてまいりたいと考えております。
ただいま御紹介しました御意見も含めて,今回の独占禁止懇話会において出された意見につきましては,議事概要及び議事録として後日公表いたしますので,詳しくはそちらを御覧いただければと思います。
優越的地位の濫用ガイドラインの原案の公表について
(事務総長) 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方,いわゆる優越的地位の濫用ガイドラインの原案を公表し,意見公募手続,パブリックコメント手続を開始いたしますので,その概要について御紹介したいと思います。
近年の厳しい経済情勢等に鑑みまして,中小企業に不当な不利益を与えるような行為の未然防止の重要性が高まっていること,それから,今年の1月から施行されました平成21年独占禁止法改正によりまして,優越的地位の濫用行為については課徴金納付命令の対象になるといったことも踏まえまして,この優越的地位の濫用規制に関しての考え方をガイドラインで明らかにすることによりまして,法運用の透明性を一層高め,事業者の予見可能性も向上させようということであります。
このガイドラインの特徴でありますが,まず第1に,優越的地位の濫用規制につきましては,業種横断的,一般的な考え方としては初めてのガイドラインであるということであります。従来,公正取引委員会としては,スーパー,百貨店等の大規模小売業における独占禁止法上の考え方やフランチャイズシステムにおける考え方,あるいは役務取引に関してのガイドライン等の優越的地位の濫用の考え方を示してきており,これらはいずれも特定の業種なり,分野に関するものでありましたが,本日,パブリックコメントに付するガイドラインは,あらゆる業種に対応する規制の一般的な考え方を示すものであります。
このガイドラインでは,優越的地位の濫用とはどのようなものかということやこの取引上の地位が優越的とはどのようなことをいうのかという考え方でありますとか,どのような行為が違反となり得るのかということで,購入・利用強制,協賛金等の負担の要請,従業員等の派遣の要請等の各行為類型ごとに考え方を示しまして,これまで問題となったような類型はすべて対象にするということで網羅しております。また,最近のコンビニエンスストアのフランチャイザーによる見切り販売の制限といったような行為類型まで記載させていただいております。それから,できるだけ多くの具体例と想定例を記載しようということで,過去に実際に事件として違反になった行為について,それを言及するということで記載しております。また,このほかに,想定例も取り上げておりまして,このようなことになれば独占禁止法上の問題になり得るとしております。従前,公正取引委員会が取り上げてきた過去の事件例としては小売分野等が多いのですが,それ以外の製造業,あるいはサービス業に係る具体的な行為につきましても,想定される例を取り上げて示してガイドラインを作成しております。
違反行為を行う可能性がある優越的な立場にある事業者の方々,あるいは,その被害者となるような中小企業の方々についても,どのような行為を行えば問題となるのかということがイメージしやすくなるということから,違反行為の未然防止効果が高まることを期待しているものであります。
このガイドラインの原案に関しての意見の提出期限は平成22年8月6日の午後6時まででありまして,本日から45日間であります。
今後,本局のみならず,各地方事務所等におきましても,様々な機会をとらえまして,中小企業の団体を含む関係方面にこのガイドラインの内容の広報を行い,広く,関係各方面から御意見をいただければと思っているところであります。
以上