[配布資料]
事務総長会見記録(平成22年7月21日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)
[発言事項]
数字で見た公正取引委員会の歴史
(事務総長) 本日,私からは1点,昨日,7月20日は公正取引委員会の創立記念日でありましたので,数字で見た公正取引委員会の歴史ということでお話をしたいと思います。
公正取引委員会は,昭和22年4月14日に独占禁止法が公布されまして,7月20日に施行されたということで,独占禁止法に基づいて設置されておりますので,独占禁止法の施行日であります7月20日を公正取引委員会の創立記念日としてきたところであります。昭和22年,1947年から今年で満63歳ということになるわけですが,この63年間を数字で振り返ってみたいと思います。
お手元に,「数字で見る公取委の歴史」というものをお配りさせていただいておりますが,この資料に沿って振り返ってみます。
まず,定員と予算でありますが,資料の1で定員の推移が書いてありまして,2が予算になります。
昭和22年の公正取引委員会の発足当時の定員数は284名,予算額はわずか1049万円でありました。これは7月に発足したこともありまして,9カ月予算なのですが,1年分の予算が計上されました翌年の昭和23年度の予算でも3591万円であります。
その後,定員につきましては,昭和20年代後半に機構の縮小がありまして,昭和28年から34年までは237名と最少の人数ということになりますが,その後,徐々に増加をし,昭和41年度に300名を超えまして,昭和52年度,これは課徴金制度を導入した独占禁止法の改正が行われた年で,400名を超えました。それから,日米包括経済協議が開始された翌年の平成6年度に500名を超えまして,平成14年度に600名を超えて,今年,平成22年度末の定員が791名であります。
次に予算でありますが,公正取引委員会の場合,予算の8割強が人件費でありまして,予算額も,定員増に伴い,徐々に増加してきているわけでありますが,昭和41年度に3億6000万,昭和52年度には19億6000万,平成6年度に52億4000万,平成14年度は76億で,徐々に増加し,今年の平成22年度の予算が,89億6200万円であります。
物価水準等もありますので,単純な比較はできませんが,物価水準を加味しても定員増を踏まえ,増加してきているということかと思います。
それから,機構でありますが,平成8年度に,それまでの事務局制から事務総局制になり,それ以前の1官房3部体制,経済部,取引部,審査部という3部体制だったのですが,それが1官房2局2部体制と,現在の経済取引局と審査局の2局,それから,取引部と犯則審査部の2部体制,これは平成18年1月に犯則調査権限が導入されまして,それまでの特別審査部が犯則審査部に変わったということであります。
次に,資料の3ページ以下の独占禁止法違反事件の法的措置件数等の推移を見たいと思います。
法的措置は,公正取引委員会が発足しました昭和22年度から昭和30年度までの約10年間で200件程度採っております。昭和31年度から昭和40年度までの10年間では134件で,やや停滞する時期がくるわけであります。その後,昭和41年度から昭和50年度までは364件ということで,また,かなり増えてきているという状況であります。
この昭和20年代は,実は昭和28年の法律改正によって削除された独占禁止法の第4条という条文がありまして,これは共同行為について,競争を実質的に制限しなくても,競争業者間の共同行為については規制をしていた条文がございまして,この条文での執行件数が結構多かったのですが,昭和30年代,不況の影響や,昭和28年の法改正の影響もありまして活動が停滞していた時期があったということで件数も減少したわけであります。昭和40年代に入り,消費者物価の高騰や,オイルショック,あるいは40年代後半の狂乱物価といったような時期に,価格カルテル等が非常に横行したということで,カルテルの対処を行ったために非常に件数が増えたというわけであります。
当時は,カルテルを摘発しましても,カルテルの申合せの破棄を命じるということだけでありまして,カルテルを行った事業者が得た経済的利得が排除し得なかったということで,いわゆるカルテルの「やり得」があったと言われております。このようなことから,違反行為の抑止力を高め,カルテルの禁止規定の実効性を確保するということで,昭和52年の独占禁止法改正で課徴金制度が導入をされたわけであります。
これによりまして,カルテルによる経済的利得を徴収するという課徴金制度が始まるわけであります。このような経緯もありまして,昭和40年代後半は,非常に件数が増えるのですが,50年代に入ってから,また若干,件数が減少するということで,昭和51年度から60年度までは135件,平成に入ってからは,平成元年から10年までは247件,平成11年から20年までも247件,それ以降も2年間で34件ありまして,現在までに1,381件の法的措置を命じております。
特に,この平成元年度から法的措置件数が,ある程度増えておりますが,これは平成元年に日米経済構造協議が開始されまして,規制緩和の推進とともに,独占禁止法の執行面が強化された時期でありまして,体制的にも,その後,事務局制から事務総局制に変わることとなり,先ほど申しましたが,課徴金制度の強化体制,あるいは平成17年にはリーニエンシー制度の導入等による摘発能力の向上ということも,いろいろ影響しているということかと思います。
次に,資料の5ページで,審決数の推移を整理しております。これは,法的措置件数の増減と,ほぼ対応する形になっておりますが,平成11年度以降は法的措置件数を上回る審決が行われております。これは,特に入札談合事件の摘発が多かったわけでありますが,審判で争った場合には審判審決が出されます。勧告や排除措置命令は,事件単位で命じられるのですが,事業者が審判で争いますと,今度は事業者ごとに審決が出されまして,審決の件数が勧告や排除措置命令の件数よりも増えたわけであります。
次に,資料の6ページの課徴金の推移について見たいと思います。これは,昭和52年に導入をされまして,最初の昭和53年は507万円というのが1年の数字だったのですが,昭和50年代,昭和60年までの間に93億,その後の3年間で含めて,昭和53年度から63年度までで102億1700万円という数字になっております。これが平成に入りまして,平成元年度から10年度までの10年間で471億。それから,平成11年度から20年度までが1019億円。平成21年度から22年度の1年数カ月間ですが,この期間だけで592億7700万円ということで,課徴金制度が導入されましてから今まで課徴金の納付を命じた金額の累計額が,2186億3300万円ということになっております。
次に,6の企業結合関係の届出件数等の推移であります。
企業結合関係の届出,又は,報告をしていただく数字については,何回か法律改正に基づきまして,制度自身が変わってきております。そういう面では,単純に数字の比較を行うことによって,結合関係の動向がすべて分かるわけではありませんが,平成8年当時,一番多い1万3000件の報告,届出があったわけでありますが,これをピークに減少傾向ということでありまして,特に,平成11年度を境に,株式所有報告書,あるいは合併の届出の受理といったようなものの件数が10分の1くらいに激減をしております。これは,平成11年の法改正によりまして一定の基準を超えたものの,100億,10億といったような形の一定の基準を超えた合併であるとか,株式所有報告書の提出等も一定の資産基準を超えるものだけに限定するというような改正を行いまして,これによって届出の件数が激減をしたということであります。
平成21年度における届出件数は985件であり,株式所有が840件,合併が48件等であります。このうち,従前もお話ししておりますが,問題解消措置を前提として,容認した件数というのが4件ほどありまして,それ以外は無条件で容認しております。
それから,平成21年度独占禁止法改正によりまして,届出制度についても見直しが行われまして,株式所有規制に関しまして事後報告制から事前届出制に改めるということ等と合わせて,国際的な整合性も踏まえて企業負担を大幅に軽減しようということで,今までの資産基準から国内売上高基準に改め,金額の基準も,100億,10億といったものから200億,50億という形での改定をいたしました。これによって,現在までの1000件程度あった届出件数は,今年度以降は約半分程度に減少するのではないかと見込まれているところであります。
お手元の資料で,この「数字で見る公取委の歴史」のほかに,諸外国との比較のためのデータも御参考にお配りさせていただいておりますので,御紹介したいと思います。
まず,定員数についてですが,お手元の「米国,欧州における処理件数等」と書いているもののうち,4と5に職員数と予算額がございますが,2009年のわが国の公正取引委員会の定員は779名,外国の競争当局のうち,アメリカの司法省反トラスト局(DOJ)と連邦取引委員会(FTC)でありますが,DOJの定員は851名,FTCの定員は1120名ということであります。また,EUの定員は757名ということになっております。
予算額でありますが,公正取引委員会は89億でありますが,アメリカのDOJは1億5780万ドル,日本円に,1ドル90円で換算しますと,142億2200万円ということになるのでしょうか。FTCは2億5920万ドルで,日本円で換算すると233億で,日本の公正取引委員会より予算はかなり多いということかと思います。それから,EUは,8940万ユーロでありまして,これも日本円で,1ユーロ110円で換算しますと,98億3400万ということになっております。
法的措置件数の推移ですが,若干,その制度が違いますので単純な比較ができるものではありませんが,米国のDOJでは2009年度,65の個人と22の法人について刑事訴追をしており,それから,FTCは同意命令件数というものが6件ということになっております。EUでは,7件の法的措置が採られているということであります。
次に日本の課徴金に該当する制裁金なり罰金ということになるわけでありますが,日本の課徴金額は360億7000万円でしたが,米国では,罰金の総額が9億7400万ドル,日本円換算で876億円であります。EUでは制裁金ですが,26億8300万ユーロと,これも日本円に換算いたしますと,2591億円で,日本に比べますと,かなり高額な制裁金が科されている状況かと思います。
それから,3で企業結合の審査件数が書かれておりますが,日本の場合,届出件数は985件で,今年度以降は半減するということでありますが,米国の届出件数は713件,EUの届出件数は259件になっております。また,二次審査,詳細審査に入った件数ということであり,米国のDOJでは23件,FTCでは15件ということでありまして,EUは5件となっております。
この法執行に関する件数等について,各競争当局間の比較でありますが,若干制度の違いもありますので,単純な比較は困難だと思っておりますが,それぞれの制度に対応した形で各競争当局もそれぞれが厳正な法執行を行っているということが言えるのではないかと思っております。
このように,昭和22年に公正取引委員会が発足して,63年経過したわけでありますが,こうした公正取引委員会の活動によりまして,競争政策なり,公正取引委員会の意義,あるいはその重要性についても社会的に少しずつ認知されてきたのではないかと感じているとともに,公正取引委員会の活動に関しても,世の中から大きな期待が寄せられていると感じておりまして,こうした期待に応えられるように,今後とも厳正な法執行,あるいは法運用に努めてまいりたいと考えているところであります。
[質疑応答]
(問) 欧米との比較ですが,職員の数を見ると,それほど日本と変わりないと思うのですが,予算は欧米のほうがはるかに多いと思うのですが,これは何が要因になっているのでしょうか。
(事務総長) 細かい分析まではしていないのですが,人件費以外のいろいろな調査関係経費などの違いがあるのだろうと思います。公正取引委員会の場合,専ら人件費が全体の8割を占めるということでありますが,人件費だけでそれほど大きな差があるということではないと思います。
(問) 先日,BHPとリオについて,二次審査に入るという発表がありましたが,なぜ二次審査に入るのか,また,二次審査ではどういうところを目配りしながら重点的に審査していくかを教えてください。
(事務総長) 先週の7月16日に第二次審査を開始したわけでありますが,制度自身御理解いただけていると思いますが,第一次審査を行いまして,その結果,さらに詳細な審査が必要であるということで,二次審査を行うということであります。
二次審査の対象でありますが,これは既にホームページでも公表させていただいておりますが,海上貿易によって供給される塊鉱の生産・販売事業,あるいはその海上貿易によって供給される粉鉱の生産・販売事業を対象にしておりまして,いろいろな報告を求めさせていただくことになっております。
求めた報告が提出されますと,それから90日以内に第二次審査の結果を出しまして,当事会社へ回答するということになるわけです。御案内のとおり,二次審査を開始いたしますと,いろいろな方,何人たりとも公正取引委員会に意見書の提出ができるということになっておりますので,平成22年8月16日まで,公表から1カ月以内,30日以内ということですが,意見書の提出を受け付けることにしておりますので,関係方面からの意見も踏まえさせていただいて,当事会社から提出される資料も勘案しながら,私どもとして,審査を進めていき,結論を出していきたいということであります。
以上