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平成22年9月29日付 事務総長定例会見記録

平成22年9月29日付 事務総長定例会見記録

事務総長会見記録(平成22年9月29日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 [発言事項]

下請法違反事件に対する取組等について

 (事務総長) 公正取引委員会は,下請法違反事件に対しましては,従前から厳正に対処してきているところですが,平成22年度におきましては,本日までに6件の下請法違反行為について勧告・公表を行っております。
そのうち,3件を,今週,昨日2件,月曜日に1件,勧告・公表を行いましたので,その3つの事件の概要を簡単に御紹介した上で,下請法違反行為に対する取組についてお話をしたいと思います。
 1点目ですが,一昨日の9月27日に勧告した大阪府所在の建築金物の製造業者の株式会社ユニオンに対する件についてです。これは,建築金物の製造を下請事業者に委託しているユニオンが,「歩引」と称して下請代金の額に一定率を乗じて得た額を差し引くことにより,下請代金の額を減じていた事案です。減額した金額は,下請事業者125名に対し,総額約3233万円です。
 2件目は,昨日勧告した同じく大阪府所在のスポーツ用品の卸売業者の株式会社エスエスケイに対する件です。これは,スポーツ用品の製造及び修理を下請事業者に委託しているエスエスケイが,「支払歩引き」と称して下請代金の額に一定率を乗じて得た額を差し引くことにより,下請代金の額を減じていた事案です。これは,下請事業者24社に対し,総額約1272万円を減額した事案です。
 3件目は,昨日勧告・公表した事案で,福島県所在の婦人服等の小売業者の株式会社ハニーズに対する件です。これは,婦人服等の製造を下請事業者に委託しているハニーズが,「各店商品振分け・発送経費負担分」と称して下請代金の額に一定率を乗じて得た額を差し引くなどの行為により,下請代金を減額していたということで,下請事業者115名に対して,総額約1億3618万円の減額を行ったとして勧告を行った事案です。また,本件は,中小企業庁長官から下請法第6条の規定に基づく措置請求を受けて処理を行った事案です。
 本日紹介した3件の勧告事件のうち,大阪府所在の株式会社ユニオンと株式会社エスエスケイに対する件は,いずれも「歩引」という名目で下請代金から下請代金の一定率を乗じて得た額を差し引くという減額事案でありまして,「歩引」を名目とする減額事案は,昨年度におきましても,今回と同じような近畿地区や中部地区管内の大阪府所在や愛知県所在の繊維関係の事業者に対して勧告を行っておりまして,「歩引」の名目で下請代金から一定額を差し引く行為ということが結構あるわけであります。
 こうした「歩引」が,特に繊維業界の中においては,業界の慣習的に行われているという言い方がされることもありますし,また,その下請事業者と個別に合意を得ているので下請法違反にはならないだろうと考えたということが言われておりますが,下請法では,親事業者が下請事業者の責めに帰すべき事由がないのに,発注時に定められた下請代金の額を発注後に減じて支払うということは下請法上の下請代金の減額に該当し,下請法違反になるということで運用しておりますので,そこを十分御注意いただきたいと思います。
 次に,下請法違反行為に対しての取組の特徴について説明したいと思います。下請取引につきましては,今後,取引を継続することへの影響を危惧して,下請事業者から自発的な申告,下請法違反であることを公正取引委員会等に情報を提供することがなかなかできないということがあるわけであります。そういう面で親事業者と下請事業者の双方に,定期的に書面調査を実施するということを行っておりまして,それによって下請法違反行為の発見に努めているわけであります。
 この調査票の発送数ですが,年々増加しておりまして,親事業者に対する調査票については,平成19年度は3万268社を対象にしていましたが,今年度は3万8046社ということで,3年前に比べて26%増加させていまして,また,下請事業者に対する調査票についても,平成19年度は16万8108名を対象にしていたのですが,平成21年度では20万1005名ということで,これもやはり2年前に比べますと20%増加をさせているわけであります。
 また,今年度の下請法の下請事業者向けの書面調査において,過去,違反行為が多く見られた道路貨物運送業,自動車小売業,機械器具製造業,円高等の影響を強く受けていると言われている電気機械器具製造業及び輸送用機械機具製造業といった5業種を重点監視対象の事業ということで,親事業者と取引のある下請事業者への書面調査も増やしており,積極的に違反事件の発掘に努めているわけであります。
 公正取引委員会におきましては,この下請法違反行為についても体制の整備を進めなければいけないということで,下請法違反事件の処理に当たる下請取引検査官の数ですが,平成15年度当時は29名だったのですが,それ以降,ほぼ毎年,増員の努力をしてまいりまして,平成22年度には90名ということで,この数年間で3倍に増やしているという状況であります。
 最近もいろいろな面で経済環境が厳しい中にありますので,下請法の運用体制の一層の強化を図っていきたいと考えておりまして,平成23年度予算要求におきましても,下請法違反にも関連する優越的地位の濫用も含めて増員要求をお願いしているところであります。
 公正取引委員会としては,今後とも下請法違反行為が行われないように監視に努め,また,違反を行った親事業者に対しましては,違反が繰り返されないような的確な指導をしてまいりたいと考えているところであります。

 [質疑応答]

 (問) 今の数字の話で,体制を3年で3倍にされたということですが,その間で摘発というか,件数が2割増というのは,人数かけたわりに,そのぐらいなのかなと思ってしまうのですが,これについてどうお考えでしょうか。

 (事務総長) 勘違いされたのかもしれませんが,平成15年度29名だったものが平成22年度90名ということですから,3年間ではなくて7年ということでしょうか。これは,地方事務所の検査官の数も含めてということになろうかと思います。
 また,実際の件数というか,先ほど申しましたのは,事件処理(件数)の話ではなくて,調査票を出す数を,この2,3年の間に増やしてきているということでありまして,そのようなことを通じて,違反事件の端緒を得るという努力をしているということであります。

 (問) 体制を増やしさえすれば,まだまだこういう問題の数というのは増える,水面から出てきてないケースが多いという認識を持たれていますか。

 (事務総長) 私ども,先ほど申しましたように親事業者と,親事業者と取引のある下請事業者ということで,すべてということではないのですが,かなりカバレッジはしているのではないかという感じはしております。
 平成15年以前は,下請法違反行為については,勧告を行っても公表はしていなかったのですが,平成15年の法改正によって,勧告を行うと原則公表するという処理をしていますので,そのような面では私どもも,より厳正化し,法律も改正するなどの努力もしているところです。また,対象も従前は製造業を中心としての製造委託,修理委託だったのですか,それに役務提供委託やサービス業関連の情報成果物の提供委託なども対象にするという,下請法の対象範囲を拡大させておりまして,そのような関連で調査対象も広げてきたということであります。
 そういう面では,調査対象を広げてやっていけば違反事件も増えていくという傾向はあるのだろうと思います。もちろん,各事業者が,コンプライアンスを進められて違反行為が生じないようにしていただければ,機械的に増えるのではなくて,違反事件が減るということもあろうとは思います。

 (問) この2年ぐらいの景気後退局面に入ったことと,事案の出てき方の間に何らかの関係があると見ていらっしゃるのでしょうか。

 (事務総長) 下請法違反事件を見てみますと,会社の経営内容がかなり厳しくなってきているということで,それを親事業者が下請事業者に決算対策という形で認定しているケースもありますし,負担,しわ寄せがあるという事件も幾つかありますので,今回の3件がどうだということではないのですが,一般的には,経済情勢が厳しくなれば,中小企業者,下請事業者等にそのような不利益が寄せられる事案が増えてくる傾向にあるということはいえると思います。

 (問) 一般的な傾向というのは分かるのですが,近年,この1,2年に関していうと,そのような傾向が実際でも見られるというように御覧になっているということでしょうか。

 (事務総長) 先ほど言ったように決算対策や,親事業者の経営内容が厳しくなってきてたからという事案も現実にありますので,そのような傾向はあるのだろうと思います。

 (問) 来週,ICNのカルテルワークショップが予定されていると思うのですが,主催国として何か目標,このような会合になればということがあればお聞きしたいのですが。

 (事務総長) 来週の10月5日火曜日から7日木曜日にかけまして,公正取引委員会の主催によって横浜市でICNのカルテルワークショップが開催されることになっております。世界各国の競争当局の職員や民間の弁護士も含めて,50カ国から総計150名の参加が予定されているところであります。ここでは,従前から競争当局のカルテル審査の実務担当者等が審査手法や問題点等を意見交換する,また,実際にまだカルテル審査等を担当していないような途上国の職員に対して,経験を伝えるということで情報の共有化を図っています。平成16年度以降,毎年開催されているものでありまして,日本で開催するのは今回が初めてということであります。いずれにしましても,こういう場でいろいろな審査手続に関して情報交換を行うことは,競争当局にとっても非常に重要な機会であろうと考えているところであります。

 (問) メディア対応としてはどのようにお考えでしょうか。

 (事務総長) この会議は,競争当局の職員やICNに登録をしている弁護士などのメンバーのみが出席できるという国際会議でありまして,部外者が自由に立ち入ることができるというような性格の会議ではありません。ただ,いろいろな取材に対応する形で,ブリーフィングをどう行うか,あるいは冒頭カメラ撮りをどうするかという問題は現在検討をしております。また,これは,日本だけで決められる話ではなく,国際会議ですから,それぞれの共同議長の立場にある方とも確認した上で御返事申し上げるということになると思います。今現在,検討しているところですので,しかるべき対応が決まりましたら御説明できると思います。

 (問) 先週の金曜日,国交省発注のコンクリート製橋梁の談合の審判で,1社,SMCコンクリートが,いわゆる無罪というか,違反行為を認定されないという審決が出されたと思うのですが,その審決についての御所見を伺えればと思います。

 (事務総長) これは審判事案でありますので,審判の過程で出された証拠なり,いろいろな事実関係も含め,審決という形での命令でどう認定するかという判断でありますので,審判の手続を経て出された証拠や事実関係を踏まえて判断されたということだと思います。そのような面では,何かそのこと自身について,いい,悪いということをコメントするものではないのではないかと思っております。

 (問) 内閣改造に伴って,公取の担当の政務三役の交代があったと思うのですが,新しく担当になられた方を紹介していただきたい。また交代に伴って,例えば成長戦略にうたっている事項について,指示は今のところはないのでしょうか。

 (事務総長) 内閣改造に伴って,従前からの対応として,蓮舫大臣が公正取引委員会の担当をされ,担当の政務官として園田内閣府大臣政務官が担当されるということだったのですが,本日,変更があったようでありまして,海江田大臣及び和田内閣府大臣政務官が公正取引委員会の担当をされるように変わったということだと思います。本日,変更があったということでありますので,何か御指示があったということはございません。

 以上

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