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平成23年12月21日付 事務総長定例会見記録

平成23年12月21日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成23年12月21日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 平成23年の公正取引委員会の活動について

平成23年の公正取引委員会の活動について

 (事務総長)
 本日は,今年最後の定例会見ですので,本年の公正取引委員会の活動について振り返ってみたいと思います。
 まず1点目としては,平成23年の独占禁止法違反事件への取組状況について,お話したいと思います。
 公正取引委員会としては,国民生活に影響の大きい価格カルテルや入札談合に対して厳正に対処すること,また,中小事業者に不当な不利益をもたらす優越的地位の濫用といった行為への取組の強化を重点施策として独占禁止法違反事件の処理に当たってきているところですが,平成23年におきましては,15件の排除措置命令を行いました。
 15件の内訳を見ますと,入札談合が7件,価格カルテルが5件,不公正な取引方法のうち,優越的地位の濫用が2件,取引妨害が1件であります。本年の独占禁止法違反事件の特徴といたしましては,まず,価格カルテルや入札談合では,エアセパレートガスの製造業者・販売業者による価格カルテルで141億円の課徴金が課されており,また,屋内配線として使用されるVVFケーブルの製造業者・販売業者による価格カルテルで約62億円の課徴金が課されておりますが,こうした大型の価格カルテルの摘発が行われたということが一つの特徴としてあります。
 また,地方都市における建設工事の入札談合事案としては,山梨県,茨城県,石川県における事件がありまして,このうち茨城県が発注する土木一式工事や舗装工事の入札談合については官製談合の事案であり,官製談合事件にも積極的に取り組んだということが挙げられると思います。
 次に,中小の事業者に不当に不利益を与える優越的地位の濫用等の不公正取引については,山陽マルナカ及び日本トイザらスに対して排除措置命令を行うとともに,昨年施行されました改正独占禁止法に基づき課徴金納付命令を行ったことが挙げられます。
 また,ITや知財の分野では,携帯電話向けのソーシャル・ネットワーキング・サービスに関してDeNAに対し排除措置命令を行ったことが挙げられます。
 次に,2点目でありますが,経済取引局の活動について振り返りたいと思います。
 まず,企業結合規制に関しましては,企業結合審査の迅速性,透明性,予測可能性を一層高めるとともに,国際的整合性の向上を図るという観点から,事前相談制度の廃止や当事会社とのコミュニケーションの充実といった見直しを行い,本年7月から運用を始めているところです。
 社会的な関心が高く,大型の案件といえる新日本製鉄株式会社と住友金属工業株式会社の合併計画につきましては,先週公表いたしましたように,約30の取引分野について審査を行いまして,そのうち2つの取引分野については,当事会社が申し出た問題解消措置を前提とすれば一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断いたしました。また,それ以外の取引分野については,いずれも競争を実質的に制限することとはならないと判断いたしました。本件についての企業結合審査では,企業結合規制の見直しの趣旨を踏まえまして,迅速な審査に努めるとともに,当事会社とのコミュニケーションの充実に努めてきたところです。
 また,先ほど,茨城県の官製談合事案について申し上げましたが,官製談合事件が後を絶たないことから,官製談合防止に向けた発注機関の取組についての実態調査報告書を9月に公表いたしました。調査報告書では,いわゆる官製談合防止法の研修の充実や組織として入札談合に関与する行為を許容しないというような意思の明確化など,発注機関や職員における法令遵守の意識の向上について提言しております。
 次に,審判制度の廃止などを内容といたします独占禁止法改正法案につきましては,審議が行われることなく次期通常国会への継続審査となりました。来年は早期に国会で御審議いただけるように引き続き努めてまいりたいと考えております。
 3点目として,取引部の活動についてお話します。
 取引部では,現在の厳しい経済環境の下で,とりわけ中小事業者が非常に厳しい立場にあるという認識に基づきまして,優越的地位の濫用や下請取引の適正化の推進に取り組んできました。
 まず,優越的地位の濫用の関係では,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高いと思われる分野について,個別に実態調査を実施・公表して,優越的地位濫用規制の普及啓発と違反行為の未然防止に努めております。
 具体的には,本年においては,金融機関と企業との取引慣行に関する調査,フランチャイズチェーンの本部と加盟店との取引に関する調査,また,食料品製造業者と卸売業者との取引に関する実態調査をしました。
 

 次に,下請取引の公正化の推進について申し上げますと,平成23年におきましては16件の勧告を行っております。
 暦年の件数としては,平成16年の改正下請法以降,最多であったのが平成20年の16件ですから,これと同数ということになりますが,本年で特徴的なのは,この16件のうち,卸・小売業者に対する勧告が8件と過去最多となったことが挙げられます。また,過去,勧告の対象となった違反行為については,例年は下請代金の減額という案件がほとんどでしたが.本年の特徴としては,減額以外にも返品や有償支給原材料の対価の早期決済,不当な経済上の利益提供要請,これはいわゆる協賛金などの話ですが,こういった事件について勧告を行ったことが挙げられると思います。特に返品に対する勧告や有償支給原材料の対価の早期決済についての勧告は平成16年の改正下請法がスタートして以降,初めてのケースとなります。
 また,勧告に基づく原状回復措置として,延べ約1,700名の下請事業者に対し,約17億円が親事業者から下請事業者に対して支払われております。
 引き続き下請法の違反行為に対しては,迅速かつ的確に対処して,下請事業者や中小事業者の取引の適正化について努めていきたいと考えております。
 また,取引部では,独占禁止法や下請法の違反行為の未然防止という観点から,事業者や事業者団体の方から個々の具体的な活動について独占禁止法上問題になるかどうかといった相談に応じているところですが,特に今年は3月の東日本大震災や夏の節電対策に関連する相談がいろいろ寄せられました。そして,3月以降,公正取引委員会のホームページにこうした相談のポイントについてQ&Aを掲載し,独占禁止法や下請法上の考え方を迅速に明らかにするといった取組をしてきました。
 最後に4点目として,国際的な活動について御紹介いたします。まず,二国間の定期的な意見交換についてお話しすると,本年においては,カナダ,EU,韓国の競争当局と意見交換を行いましたほか,9月には北京で行われましたBRICSの競争法カンファレンスに参加した際に,中国の競争当局とも意見交換を行いました。
 また,国際組織としてはICN,インターナショナル・コンペティション・ネットワークという組織があります。これは現在,108カ国・地域から123の競争当局が参加しており,競争当局間のネットワークとしては世界最大のネットワークとなっておりますが,公正取引委員会は従来からこのICNの副議長職の業務を担っております。また,本年からは新たに作業部会の1つとしてカルテル作業部会の共同議長も担うようになりました。
 このほか,東アジア地域については,東アジア競争政策トップ会合のほか,フィリピンやインドネシア,ベトナムの競争当局の職員に対して研修を行うなど,東アジア地域の競争当局との協力関係の構築にも努めたところです。
 経済のグローバル化が進む中,国際関係の重要性がますます高まっておりますので,来年も引き続き国際的な活動を一層強化していきたいと考えております。

 私からは以上です。

 [質疑応答]

 (問) 下請法の勧告件数の関係ですが,平成20年と同様に過去最多の勧告件数になり,返品や早期決済が初めてのケースだったということですが,時代的な背景のようなものを分析できるのであれば教えてください。また,指導件数も本年の上半期は最多ということでしたが,そのようなことも踏まえて,来年度以降の取組への方針や見通しなどを教えていただければと思います。

 (事務総長) 勧告件数が平成20年と同数の16件だということを申し上げましたが,平成20年が16件で,平成21年が14件,平成22年が13件ということで,10数件の件数が続いております。ですから,大きな違いというものは平成20年と比べてないと思います。むしろ今の日本の厳しい経済環境の中,今年は東日本の震災や円高の問題等ありましたけれども,平成20年のころから引き続き下請事業者が厳しい経済環境に置かれており,親事業者も同様に厳しい状況にありますから,このような下請法の違反事件が引き続き高い水準で続いているということかと思います。
 そして,今後の見通しとしても,親事業者から下請事業者が不当なしわ寄せを受けないように取り組む必要性というのは引き続き高まっておりますので,公正取引委員会としても,下請事業者からなかなか申告が期待できないものですから,親事業者と下請事業者に広く調査をして,その中でどういった方からの情報で調査をしているかということが分からないような形で広く調査を行って,違反事件の摘発に努めているところです。このような経済環境ですので,引き続き,下請の分野については目を光らせていかなければいけないと思っていますし,その結果として,事件の件数も何件ということは申し上げることはできませんが,違反事件の摘発に努めていきたいと考えております。

 (問) 企業結合審査について,今年はいろいろ指針が変わったり,ガイドラインが変わったことに加えて,同時並行的に新日鉄・住金等の,大型合併の審査があり,いろいろ変わった年だったかと思います。経済界からの要望に押される形で変わったのだと思いますが,振り返ってみて,当初,経済界からいろいろ不満が出ていたことや経済界との溝は,一連の指針の改正などで埋まったとお考えでしょうか。

 (事務総長) 企業結合規制の見直しは,昨年から閣議決定を受けて進めてきたものですが,その1つには,企業結合の届出の前に事前相談制度というものを企業・産業界からの要望を受けて実施してきたのですが,それについての予測可能性が十分ではないということで,事前相談制度を見直したらどうかと,また,企業結合審査を受ける過程で,特に事前相談制度の下だと思いますが,企業と公正取引委員会が十分議論できていないのではないかという指摘がありました。
 こういったことを受けまして,今年の7月からスタートした見直しでは,一つは,大きな点としては,手続的な面ですが,事前相談制度を廃止するということで,法律に基づいた届出を受けて,その中で審査を進めるという形にしました。
 2点目としては,十分な議論ができていないのではないかといった指摘もあったことから,先ほど申し上げましたが,当事会社との十分なコミュニケーションを取りながら審査を進めていくということを6月に公表した見直しの指針で示しました。そして,その中に示しておりますが,当事会社とコミュニケーションを取りながら審査を進めていくということは,公正取引委員会が迅速に企業結合審査を進めるという上でもメリットがありますし,企業にとっても,自分たちの主張が十分できていないということに対する不満がなくなるという意味で,両方にとってメリットがある話だと思います。
 先週も大きな案件であります新日鉄と住友金属の案件についての結果を公表したところですが,こういった企業結合の案件はこれからも続きます。公正取引委員会としては,この7月に発表した見直しの方向性に沿って,特に大事にしたいのは,企業と十分なコミュニケーションを取りつつ検討を進めて,それによってできるだけ迅速な審査に努めていきたい,この2つについて,手続的には十分取り組んでいきたいと思っております。
 また,内容的な話としては,企業結合ガイドラインを今年の7月で見直しまして,具体例を追加したり,明確化を図りましたが,これについては,経済の実態がどう変わってきているか,今の実態がどうであるかということを適切に把握して,それに基づいて当該企業結合によって消費者やユーザーの方が不利益を受けるようなことになってはいけないという視点で問題がないかどうかということを検討していくということになろうかと思います。
 そして今,例えば東アジアでいえば,中国や韓国で,鉄鋼の分野では先般の調査をしたときにもいろいろ把握しておりますが,中国や韓国のメーカーが中国や韓国における需要の急増を背景として生産能力の増強を図っているという事実があれば,そういったことを踏まえて,国内への輸入の可能性といったものの評価も変わってくるでしょうし,経済の実態がどう変わってきているか,また,国内の需要がどう変化しているか,競争業者がどういう状況にあるかといったことを,つまり経済の実態や競争の実態を適切に把握して,それに基づいて企業結合によってどういった影響があるかということを判断していく,これは,以前から変わるものではありませんが,今,非常に変化が激しい時期ですので,そういった競争の実態を適切に把握して,審査を進めていきたいと思っています。

 (問) 今年の課徴金から,優越的地位の濫用の違反の一部の行為については,課徴金の対象として加わってきたと思います。山陽マルナカは,今,審判になっていると思いますが,今,順調にいっているのか,また問題点があるのかなど,今後の取組でどう考えておられるのかについて聞かせていただければと思います。

 (事務総長) 優越的地位の濫用については,平成21年の法改正によりまして,昨年から優越的地位の濫用の一部の行為については課徴金の対象になり,本年に入りまして,山陽マルナカと日本トイザらスに対する件については排除措置命令を行うとともに,課徴金納付命令を行い,本年では2件の課徴金納付命令を行っております。
 そして,問題点があるかという御質問でしたが,課徴金についてというよりも,優越的地位の濫用について状況はどうかということで申し上げれば,先ほど下請法の話についても申し上げましたとおり,今,非常に厳しい経済環境にありますので,優越的な地位にある,例えば大手の小売業者から納入業者に対して不当なしわ寄せが行われやすいという状況は以前にも増して厳しい状況だろうと思います。公正取引委員会の取組としては,取引の公正化を図るという観点から,優越的地位の濫用行為についての取組は引き続き厳正に対処していく必要があろうと考えています。

 (問) 今回,東日本大震災があり,その地域に対する立入検査は,違反行為があったところでも遠慮された部分もあったかもしれませんが,今後,一部報道では,がれきの撤去などで談合があったかのような話も出ているようです。東日本大震災も落ちついて,被災地のエリアも落ちついてくれば,やはり積極的に審査,立入検査を行っていくと考えておられるのでしょうか。

 (事務総長) がれきの処理だけに限らず,入札談合というのは,税金の無駄遣いという観点も含めて非常に問題の大きい行為ですので,従来から価格カルテルと並んで公正取引委員会が重点的に取り組んでいる分野ですが,震災関係を含めて,今後とも目を光らせて,談合が行われないように,また,そういった情報に接した場合には,厳正に対処していく必要があろうと思っております。

 以上

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