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平成24年4月4日付 事務総長定例会見記録

平成24年4月4日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成24年4月4日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

最近の下請法違反事件の傾向について

 (事務総長)
 本日,私からは,最近の下請法違反事件の傾向についてお話ししたいと思います。
 平成23年度,公正取引委員会は,下請法の違反行為に対して18件の勧告を行いましたが,下請法違反事件の傾向をみますと,先週勧告を行いました100円ショップで知られる日用品等の小売業者など,卸売業者・小売業者に対する勧告が増加しておりまして,平成23年度の勧告事件18件中10件が卸売業者・小売業者や生協に対するものになっております。
 この卸売業者・小売業者や生協が他の会社に自社のプライベートブランド商品,いわゆるPB商品の製造を委託したときには,下請法の規制対象となるわけですが,近年では,卸売業や小売業におけるPB商品の取扱いが増えている一方で,PB商品の製造委託取引が下請法の適用を受ける取引であるということが,まだ十分に浸透していないということも,ここ数年の勧告件数の増加につながっている理由の1つではないかと考えております。
 この点については,もちろん,違反事件があれば,調査を実施し,必要な措置を講じていくということになるわけですが,他方で,未然防止を図るという観点から,下請法の講習会などにおいて,今申し上げたような卸売業者,小売業者に対してPB商品が下請法の規制対象になるということを丁寧に説明し,しっかりと啓発を行ってまいりたいと考えております。
 なお,平成23年度における下請法の運用状況の詳しい内容については,後日,改めて発表させていただきたいと思います。
 私からは以上です。

 [質疑応答]

 (問) 下請法の関連で,23年度,18件の勧告を行ったということですが,例年と比べてどのくらいの差があるのでしょうか。また,傾向として,今までも製造がほとんどだったのでしょうか。

 (事務総長) まず,勧告の件数で申し上げると,平成16年の4月に下請法が改正されて役務なども対象になる改正下請法が施行されたのですが,それ以降の件数を見ますと,平成20年度から平成21年,22年の3年間は,3年連続して勧告件数は15件ということで,平成16年の改正下請法施行以来,一番多い件数だったのですが,平成23年度は18件の勧告件数になっておりますので,平成16年の改正下請法の施行以来,一番多い件数ということになります。
 また,2番目の御質問の分野としては,役務と製造に分かれていますが,この製造の中でも,今申し上げた卸や小売業,生協も含めたPB商品に関する違反事件が増えているということで,18件中,卸・小売業や生協の分野の事件とは,平成23年度は10件あります。昨年の平成22年度の件数を見ても,10件ですので,最近,卸・小売業の分野における違反事件が増えていると言えると思います。

 (問) 違反した会社に聞くと,必ず下請法違反の認識がなかったということをよく言うのですが,公正取引委員会としても指導は行っているということですが,これから,もっと画期的に法律を知らしめるような対策は考えているのでしょうか。

 (事務総長) 先ほど,この卸・小売業のPB商品が最近増えており,他方で,PB商品の製造委託が下請法の適用を受ける取引だということが十分に浸透していないということが勧告件数の増加の理由の1つではないかと申し上げましたが,そういった点で,下請法の講習会といった未然防止のための取組も,これからしっかりとやっていかなければいけないと思っております。実績で申し上げますと,例えば,この勧告一覧を見ていただいても,食品関係の分野の卸売業者や小売業者が違反事業者となっているものが何件かありますが,公正取引委員会では業種別講習会というものを毎年行っておりまして,最近ですと,食品の卸売業者向けに業種別講習会を去年の11月から今年の3月までの間に全国で延べ11回開催しております。また,今年に入って,アパレル業界でも,もっと周知をしようということもあって,東京地区中心の4カ所で下請法の基礎講習会を開催するなど,いろいろな形で周知の活動を今後も強化していきたいと思っています。

 (問) 先日,政府の規制・制度行政改革の電力市場について,公正取引委員会が今年度調査をするという項目があったのですが,具体的には,どのような問題意識でどのようなことを調査して,いつごろまでに結果をまとめる予定でしょうか。

 (事務総長) 昨日,閣議決定されましたエネルギー分野における規制・制度改革に係る方針におきまして,公正取引委員会においては,電力市場における競争実態の把握・分析,検討を行い,競争政策上の考え方について結論を得ることとされたところです。公正取引委員会は,新電力,PPSなどのシェアが伸びていない状況や,一般電気事業者間の供給区域を越えた競争が起きていない状況を踏まえまして,現在,経済産業省においても検討が進められているわけですが,こうした経済産業省における検討状況も勘案しつつ,競争実態の把握を行うということとされております。公正取引委員会としては,この閣議決定を踏まえて,今後,競争実態の把握を進めていくことについて,どのように進めていくかということの検討を開始したところですので,具体的な時期等は申し上げることはできないのですが,有効な競争を確保するという観点から競争政策上の考え方について整理を行っていくということになると思います。

 (問) 昨日,経済産業省の審議会で電力システム改革専門委員会がありまして,そこの場でも複数の委員から,公正取引委員会が前回報告書を出して以来,一体何をやってきたのかということを是非聞いてみたいという声があったのですが,今,電力市場をめぐっては,値上げの問題や,いろいろな課題が出ているのですが,現時点で,電力市場については,どのような問題意識をお持ちなのか,公正な競争がなされているという御認識なのか,お考えをお伺いします。

 (事務総長) 今後,競争実態の把握を進めて有効な競争を確保するという観点から検討を進めていくということを申し上げましたが,その中で,今御質問のような問題意識についてどう考えるかということを検討していくことになると思います。ですから,今の段階でどのような見解かということは申し上げられません。今後,電力市場の競争実態の把握を進めて有効な競争を確保するという観点から検討を進めていくということにしております。

 (問) 最後に,政府は,今年の夏ぐらいに新しい電力制度を描こうとしているのですが,公正取引委員会が行う調査は,そのスケジュールもある程度意識した上で行うのでしょうか。

 (事務総長) そこは先ほど申し上げたとおり,昨日の閣議決定におきましても,経済産業省における検討状況も勘案しつつ,競争実態の把握を行うということとなっておりますので,今御指摘の経済産業省の検討の状況も勘案して進めていくということになると思います。

 (問) 下請法違反の関係でお伺いしたいのですが,平成16年,17年,18年,19年はどれぐらいの勧告件数だったか教えていただけますでしょうか。

 (事務総長) 勧告件数で申し上げると,平成16年が4件,平成17年度が10件,平成18年度が11件,平成19年度が13件,そして先ほど申し上げましたように,20年度から22年度までが15件で,23年度が18件という件数になっております。

 (問) このうち,卸・小売業が占めるものを過去に遡って教えていただけますでしょうか。

 (事務総長) 平成17年度が1件,平成18年度が1件,平成19年度がありませんで,平成20年度が4件,平成21年度も4件,そして先ほど申しましたように平成22年度と平成23年度は10件という件数になっています。

 (問) 金額ですが,昨年度が28億9000万円ということですが,22年度以前はどのような金額の推移でしょうか。

 (事務総長) すいません,今,資料が手元にないので,別途,担当課に照会していただければと思います。

 (問) 分かりました。また卸・小売業者のプライベートブランド商品の製造委託取引における違反行為が多いということなのですが,例えばですが,消費者の低価格志向とか,より安い商品を提供しないといけないということで,そのしわ寄せが下請業者にも来ているということはあり得るのでしょうか。

 (事務総長) 今,PB商品の取扱いが大手の量販店等で非常に増えており,その背景には,やはり消費者の低価格志向があると思いますが,むしろ,先ほど申しましたように,PB商品についての取扱いが増え,製造委託が増えてきているのに伴って,下請法上の問題になるケースが増えてきているという状況です。今申し上げた消費者の低価格志向がPB商品の伸びに関連しているということは言えると思いますが,さらに遡って消費者の低価格志向がPB商品の下請法違反の背景になっているのではないかというと,そこまでは直接の関係にはないかなと思いますが,やはり,PB商品の取扱いが増えているということが,下請法違反事案が増えていることの一つの理由なのだろうと思っています。

 (問) 前回のプロ野球の新人契約の関連の話で,いま一度お伺いしたいのですが,日本プロ野球組織機構に残っている平成6年,1994年10月28日の公正取引委員会の見解を記した文書によると,新人選手に対する契約金額に上限を設けることが現時点で直ちには独占禁止法に違反しているとの考え方は持っていない。野球機構における球団と選手の関係に雇用契約的な面もあり,確定していないことがその要因であるというようには書いてあります。前回の総長の会見でおっしゃった見解と若干ニュアンスが違いますが,大筋で同じであるような気がしますが,これで間違いないでしょうか。

 (事務総長) 今御質問の点につきまして,前回私が申し上げたのは,当委員会は,新人選手の契約金に上限を設けることについて相談を受けて,これに対して,プロ野球選手の契約関係については,労働契約ないし労働関係としての性格を備えているものと見られる点などを踏まえ,独占禁止法に直ちに違反するものとの認識は有していない,契約金の性格等に関して当事者において確立した理解がされていない面があることから判断は困難であるものの,基本的な認識としては,今申し上げたとおり,労働契約としての性格を備えているものと見られる点などを踏まえると,独占禁止法に直ちに違反するとの認識は現在有していないという旨を口頭で回答しているところだということを申し上げました。私どもの回答としてはそういうことだということです。

 (問) 労働契約の性格が強いということを前回もおっしゃって,今もおっしゃっていただきました。また確認になりますが,労働契約だと断定あるいは確定していないという意味でいるわけですね。

 (事務総長) そういった意味では,労働契約ないし労働関係としての性格を備えているものと見られるという点を踏まえて,今のような独占禁止法に直ちに違反するものとの認識は有していないということをお答えしたところです。

 (問) だから確定していないという認識でいいですか。

 (事務総長) そういった意味では,プロ野球選手の契約関係については,必ずしも一定の解釈が確立していないと思います。

 (問) ということであれば,野球組織側が独占禁止法違反の可能性も全否定できないというように受け取って対応策を採るということは,野球機構側,相談側の判断ということでよいわけですか。

 (事務総長) 公正取引委員会としては,プロ野球の団体からの相談に対して今申し上げたような回答を行いましたが,これを相談者の方で,それについてどのように検討され,対応されるかということは,相談者側の御判断の問題だと思います。

 (問) もう1つ,一般論として教えてください。事業者と労働者の契約関係について,事業者間で何らかの拘束的な取決めをしたときに,それでも独占禁止法に抵触しないということでいいのでしょうか。

 (事務総長) 一般論という御質問ですが,拘束的な取決めでも何も問題にならないかどうかということを,一般論として申し上げるのは難しいところでして,今回も,新人選手の契約金に上限を設けることについて相談を受けて,今申し上げたようなことを当時,回答したわけですが,そこはやはり個別のケースごとに,どういったものについて,今,拘束的な取決めとおっしゃいましたが,それを見て判断していく,個別の事案に基づいて考えていくということになると思いますので,そこは一般的なこととしては申し上げられない点があろうかと思います。

 (問) そうすると事業者である球団間で拘束的な取決めをした場合も同じように個別の事案で話し合っていくということでいいのでしょうか。

 (事務総長) 一般論としては申し上げられないということで申し上げたつもりですので,それは球団間であっても同じことだと思います。

 (問) 分かりました。

 以上

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