[配布資料]
企業結合審査に係る国際協力枠組みの構築について(PDF:114KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成24年4月25日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)
企業結合審査に係る国際協力枠組みの構築について
(事務総長)
本日,私からは,国際競争ネットワーク(ICN)の第11回年次総会が先週の4月18日から20日の日程でブラジルのリオデジャネイロで開催されましたので,これについてお話ししたいと思います。
この会合には,公正取引委員会からは,竹島委員長や国際担当の審議官ほかが出席しております。総会には,世界各国の競争当局のトップの方をはじめとして,弁護士の方などを含めまして,80以上の国・地域から約500名の方が参加しました。
ICNは,競争法の執行の手続や実体面の収れんの促進を目的とした各国・地域の競争当局のネットワークでして,2001年に日本を含む14か国・地域の16の競争当局によって設立されましたが,現在では100を超えて,108か国・地域の123の競争当局が参加する,競争法の分野においては最大の国際組織となっております。
公正取引委員会は,ICNの発足時から運営委員会のメンバーで,2008年4月には京都において第7回の年次総会を主催しており,また,竹島委員長はICNの副議長を務めています。
このICNは,常設の事務局や固有の建物がなく,その活動は競争当局の人たちの自主的な参加によって支えられています。日常の活動は,主に電話会議や電子メールのやりとりによって行われておりまして,提言や報告書などの成果物が作成されています。
年次総会は,こうした活動成果の報告の場であるとともに,次年度以降の活動に向けた議論が行われています。今回の総会でも,作業部会としてカルテル,企業結合など5つの作業部会があるのですが,この1年間の活動成果の報告やパネルディスカッションなどが行われました。
今回,竹島委員長は,企業結合作業部会の全体会合にパネリストとして参加いたしまして,企業結合分野における国際協力の今後の課題について説明するとともに,日本の公正取引委員会が提唱して取りまとめました「ICNにおける企業結合審査の協力のための枠組み」を紹介しました。
近年,企業活動の国際化などグローバル化の進展に伴いまして,複数の国の競争当局が同時に審査を行う必要があるような国際的な企業結合事案が増加しております。そのため,個別の事案についての情報交換を含め,競争当局間の実質的な協力がより体系的に行われる必要があります。このような問題意識から,公正取引委員会が提唱して取りまとめましたこの企業結合審査に係る国際的な協力枠組みでは,まず,ICNに加盟する競争当局間における企業結合審査に関する効率的で効果的な執行協力の促進を目的として,ICNに加盟する各競争当局から連絡窓口となる担当官の連絡先を日本の公正取引委員会に提出してもらい,公正取引委員会がこの連絡先のリストを作成,管理することにしております。そして,変更が生じた場合等には,公正取引委員会に連絡してもらいます。枠組みの内容といたしましては,各国の法律などと両立する範囲でですが,関連情報,具体的には秘密ではない一般的な情報や秘密情報,これはウェーバーの取得が前提になっておりますが,このような情報を交換するということを内容とするものであります。この企業結合審査の協力の枠組みは,先週の4月20日にICNの年次総会がありましたが,その場において承認されたところです。
公正取引委員会としては,今後,ICNの企業結合作業部会において連絡先のリストの取りまとめを担当するなどして協力の枠組みの利用の促進に協力するとともに,引き続きICNの活動に貢献していきたいと考えています。
私からは以上です。
[質疑応答]
(問) 今の御説明にもあったように,今後,公正取引委員会がICNを代表して,一旦(連絡先リストを)集約する事務窓口になるということですよね。また,いろいろな関連情報とか秘密情報の交換というのは,ここは個別と書いてあるのでバイになるということですか。
(事務総長) 連絡先リストについては,昨年,オランダのハーグで第10回ICN総会があった際に日本の公正取引委員会から,現状,国際的な企業結合の事案が増えてきているとして,このような枠組みを作ってはどうかということを提案しました。御承知のとおり,アメリカとEUでは,もちろん従来からいろいろな協力関係がありますし,平成21年のパナソニック,三洋の案件や平成22年のBHPビリトン,リオ・ティントの案件,平成23年のハードディスクドライブの案件では,日本としても海外の競争当局と情報交換等をしながら検討を進めているという事案が出てきていますが,全体的に見れば,まだ個別の協力はアドホックな関係になっています。そこで,国際的な協力関係をより効率的,効果的なものにするためには,まず,各国に担当者のリストを出してもらって,これを提案した公正取引委員会がリストを作るという作業をやることになるわけです。今後,こういった枠組みに参加するかどうかは,もちろん各ICNの加盟当局の判断なのですが,仮に参加しようという場合に,誰に連絡を取ったらいいのかわからない,他方,こういった企業結合案件というのは,早い段階で誰に連絡したらいいかというのが必要なものですから,こういったリストを作ることによって,早い段階での接触が可能となるようにしようということが1点です。
2点目の個別の情報交換をバイでやるのかという御質問については,これはまさしくそのとおりです。仮に情報交換を進めるという話になった場合に,こういった情報交換が必要でしょうということで,お手元の資料には,その情報交換でどういったことが考えられるかということが書いてあります。
これは実際にそうしなければいけないといったものではなくて,こういったことが考えられるということですが,まず公表されている情報,秘密でない情報というのは,それほどお互いに協力するのに支障がないので,公表されている情報ですとか,両方の当局の審査スケジュール,市場や競争に関する潜在的な影響といったことについての情報を交換することが考えられます。
それからもう1つ,秘密情報については,日本も含めまして,各国とも法律の制約があって,提供することができませんが,企業結合を行う会社や第三者がウェーバー(権利放棄)ということで,他の当局にも自分が出した資料を含めて議論してもらって構わないということを企業が申し出た場合,すなわち,ウェーバーが得られた場合には,機密情報も含めて当局間で議論を行うことができるということが書いてあります。逆に言えば,ウェーバーを得られなければ,現状では秘密情報の交換というものは行うことはできないという制約があります。
今後,国際的な案件がどんどん進むと思いますので,今回,こういった枠組みを作ることによって,いわばそういった各国の国際的な協力の土台作りをスタートとして,今後より発展的なガイダンスの策定もできたらいいと考えています。
(問) ウェーバーの部分というのは,例えば新日鐵の情報を,例えば韓国の公正取引委員会が聞く時に,韓国の当局が直接新日鐵にウェーバーを得なければならなかったのが,日本の公正取引委員会がウェーバーを得ていれば,日本の公正取引委員会を通して情報が得ることができるということを指しているのですか。
(事務総長) いいえ,そういうことではありません。個別の会社名を言うのは適切ではないので,例えば,Xという会社が日本の公正取引委員会に届出を行って,韓国の競争当局にも届出を行った場合に,日本の競争当局に届けた資料の中には,そのXという会社の秘密の情報が入っています。それから,韓国の当局に出した情報にもそういった秘密の情報が入っています。日本の公正取引委員会に提出されたX社の秘密の情報と韓国の当局に提出された秘密の情報について,うちにはこういう情報が来ているということを当局間でお互いに話し合うことが一般的にはできないわけですが,当事会社が,自分たちが出した情報は日本と韓国の当局間で出した情報の中身を含めて議論してもらって構わないということで,ウェーバーが得られた場合には当局間の情報を前提に話をする,競争に与える影響はどうかなどについての情報交換を行うことができるという趣旨です。
(問) 従来も基本的にはそうではなかったのですか。
(事務総長) そうです。ですから,今回のこの枠組みというのは,新しいことをこれから始めることができるというよりは,日本とアメリカ,EUと日本,日本と韓国などはそれなりに国際的な協力案件の協力というのは経験がありますが,今後,こういった案件がいろいろな国に広がっていく中で,国際協力の枠組みの土台作りといいますか,これをスタートとして,より一層の効率的で効果的な当局間の協力を進めていければという思いがあるわけです。
(問) 今まではどのようにしていたのですか。
(事務総長) 今までは,先ほど申し上げたように,そういった意味ではアドホックといいますか,個別の案件で日本の当局とEUの当局,アメリカの当局に届出があった場合に,担当間で連絡を取って情報交換を行うということは,今までももちろん行っております。
以上