[配布資料]
欧米において日本企業が関与した最近の競争法違反事件(PDF:116KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成24年12月5日(水曜)13時30分~ 於 官房第1会議室)
欧米において日本企業が関与した最近の競争法違反事件について
(事務総長)
本日,私からは,米国やEUにおいて日本企業が関与した2012年の競争法違反事件についてお話ししたいと思います。
近年,競争法を有する国や地域の数が増加し,特にカルテルや入札談合などの悪質な競争制限行為に対しては,アメリカ,EUを中心に厳罰化の傾向が強まっておりますが,本年も,アメリカ,EUにおいて日本企業が関与した競争法の違反事件が多く見受けられた年でした。
まず,米国では,2012年に7社の日本企業に対し罰金が科されております。このうち6社は,自動車用部品に係る価格カルテル事件についてのもので,今年1月,矢崎総業に対しては,4億7000万ドル,日本円にして約380億7000万円の罰金が科されております。また,この事件では,矢崎総業の邦人幹部社員6名の個人に対しまして最長で2年の禁錮刑が科されております。4億7000万ドルという罰金額は,これまで米国においてカルテル行為に対し科された罰金額の最高額を見ますと,5億ドルを科された企業,これは日本企業ではありませんが,これが2社ありまして,これに続いて,歴代でも3番目に高い罰金の額となっております。また,2年の禁錮刑というのは,本年1月の時点では,カルテルに関して米国で収監される外国人の中では最長のものでした。
また,自動車用のヒーターコントロールパネルに係る価格カルテル事件については,本年10月に東海理化という会社が1770万ドル,日本円にして約14億3370万円の罰金の支払に同意しています。さらに,本件については,調査の開始の際に,違反行為の証拠を含む電子データや書類の破棄の指示があったということで,同社は,当局による調査を妨げたという,司法妨害の罪についても認めています。また,国際航空貨物の利用運送に係る価格カルテル事件では,2010年から始まっておりますけれども,本年の9月にヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社が230万ドルの罰金の支払に同意しています。
次に,EUにつきましては,国際航空貨物の利用運送に係る価格カルテル事件について,本年の3月に欧州委員会から制裁金が課されました。この事件では,日本に関係する企業としては,日本通運,近鉄エクスプレス,そして郵船ロジスティクスの3社の中国現地法人に対しまして,それぞれ81万2000ユーロ,62万3000ユーロ,31万9000ユーロ,日本円にしますと,それぞれ約8364万円,約6417万円,約3286万円という金額の制裁金が課されております。
以上が2012年に日本企業が関与した,アメリカ,EUの事件ですけれども,価格カルテルや談合というものは,国際的なもの,国内的なもののいずれも独占禁止法に違反する行為であります。特に国際的なものについては,日本だけではなく関係する諸外国の競争法にも違反する行為です。
最近,国際的なカルテル事件の審査におきましては,例えばワイヤーハーネスに係る審査において,公正取引委員会は,アメリカの司法省,欧州委員会等とほぼ同時期に審査を開始するなどして,各国の競争当局間の協力・連携が進んでいるところです。海外で事業展開している日本企業は,公正取引委員会のみならず,海外の競争当局からも同時に調査を受ける可能性があり,また,アメリカ,EUでは,多額の罰金や制裁金を支払うことになります。
したがいまして,海外のグループ企業を含めて,日本の企業において独占禁止法のコンプライアンスに関する取組を進めることが大変重要となっております。この独占禁止法コンプライアンスにつきましては,先週,11月28日に,公正取引委員会としても報告書を公表いたしました。その報告書を見ますと,研修に関する事例として,海外を中心に事業展開していることを踏まえて,海外の競争法についても研修を実施しているといった事例が紹介されています。また,違反行為の未然防止や早期発見のための取組に当たっては,海外も含めた企業グループ全体で一体的に進めていくことが重要です。今回の報告書を見ますと,国内の傘下のグループ会社に対する関与に比べますと,海外の傘下のグループ会社に対する独占禁止法コンプライアンスへの関与が手薄になっているという調査結果となっております。
日本の企業におきましては,競争法違反行為に対する公正取引委員会,また,海外当局の厳しい処分ということによるダメージコストというものについても念頭に置いていただき,しっかりと,今後とも独占禁止法のコンプライアンスに取り組んでいただきたいと思っております。
私からは以上です。
[質疑応答]
(問) アメリカでは刑事罰があると思うのですが,日本では犯則調査権がありながら,それほど刑事罰はないと思うのですが,この辺はどのように考えているのでしょうか。
(事務総長) アメリカは,基本的にこういった価格カルテル,談合については刑事罰で対処するということになっていまして,法人に対しては非常に高額の罰金が科され,また,個人に対しても,先般の日本企業で2年間という禁錮刑が科されたということで,非常に重たい禁錮刑が科されております。他方で,EUでは,刑事罰ということではなく制裁金ということで,これも非常に高額の制裁金が課されているところで,今日御紹介していませんけれども,EUのこれまでのカルテル事件での企業に対する最高の制裁金額を見ますと8億9600万ユーロですから,1000億円クラスの制裁金ということで,非常に重たい制裁金になっています。
日本においては,基本的には価格カルテルや談合は公正取引委員会が行政処分をもって対処するということで,課徴金算定率が引き上げられていまして,今では,年によって違いますけれども年間450億円や700億円といった課徴金が課されています。そして,国民経済に対して影響が大きい案件については,別途,刑事罰も科されるということで,そのような事件については,一方で刑事罰が科されて,また,刑事罰とともに行政上の処分として課徴金も別途課せられるという仕組みになっています。それぞれ国によって違いますが,日本もこういった形で行政処分をして,また,案件によっては刑事告発を求めて,国民経済に影響が大きい案件については厳正に対処していくということで,今後ともやっていきたいと思っています。
(問) その割には,刑事罰は少ないのではないかという感想があるのですが。
(事務総長) 時期によって,しばらく刑事告発がない時期もありますけれども,公正取引委員会としては,国民経済に影響の大きい事件があれば,刑事告発を積極的に行っていきたいというつもりで事件審査に当たっています。
以上