ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >平成25年 >4月から6月 >

平成25年5月8日付 事務総長定例会見記録

平成25年5月8日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成25年5月8日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

第12回ICN年次総会について

(事務総長)
 本日,私からは,国際競争ネットワーク,英語でインターナショナル・コンペティション・ネットワーク(ICN),このICNの第12回年次総会が,先々週の4月24日から26日の日程で,ポーランドのワルシャワで開催されましたので,これについてお話ししたいと思います。
 ICNは,競争法の執行の手続面及び実体面の収れんを促進することを目的とした各国・地域の競争当局のネットワークです。2001年に日本を含む14か国・地域の16の当局によって設立されましたが,現在では111か国・地域から127の競争当局が参加する,競争法の分野においては最大の国際組織となっております。
 今回のワルシャワでの年次総会には,公正取引委員会からは,ICNのカルテル作業部会の共同議長となっております南部国際担当審議官ほかが出席いたしました。また,世界各国の競争当局のトップをはじめ,民間の弁護士などを含め,約80の国・地域から500名以上の方が参加したところです。
 ICNは,常設の事務局や固有の建物がなく,その活動は,競争当局の人たちの自主的な参加によって支えられております。日常の活動は,主に電話会議や電子メールのやりとりによって行われておりまして,提言や報告書などの成果物が作成されております。年次総会は,こうした活動成果の報告の場であるとともに,次年度以降の活動に向けた議論が行われています。
 今回の総会でも,作業部会として,カルテル,企業結合などの作業部会が各種あるのですが,この1年間の活動成果の報告やパネルディスカッションなどが行われ,競争促進的な制度の実現に向けてどのようにアドボカシー,競争の唱導ということを行っていくべきか,競争法の手続面や実体面について更に収れんを進めていく観点から,現状の整理や国際協力の在り方などについて議論が行われました。
 特に国際的な執行協力につきましては,ICNとOECD,経済協力開発機構との共同プロジェクトとなっておりまして,各国の競争当局に対して実施した調査を踏まえての報告書についての紹介が行われました。そして,今後,報告書を踏まえてカルテルの審査や企業結合の審査などを検討する各作業部会において具体的な国際協力の促進に向けて取組を進めていくこととされたところです。
 また,今年度のICNの取組として,競争による利益を広く関係者に知らせることなどにより,競争政策の重要性をより目に見える形にしていくこと,ICNの成果物の普及をより積極的に行っていくことなどを重点的に進めていくこととされたところです。
 公正取引委員会としては,引き続きICNのこうした活動に積極的に貢献していきたいと考えています。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) いわゆる消費税の価格転嫁法案に関してですが,報道でもあるとおり,当初は,消費税3%という表示を全部認めないという話でしたが,今度,3%という表示をしないで,新春セール等であればよいという見解がございまして,この点について,まず事務総長の御見解を伺えますか。

(事務総長) 今の点は,消費税の転嫁対策に関する特別措置法案で,例えば,転嫁拒否等の行為があった場合にはこれを規制するということは公正取引委員会が担当しますが,今,御質問の消費税の転嫁に関する表示についての問題は消費者庁が担当していますので,私のほうでどのようにお答えするのが適当かという問題はあろうかと思いますが,消費税の一般的なことで申し上げると,消費税は,制度上,最終的には消費者が負担するものであるということから,消費税を転嫁しませんとか,消費税還元セールといった表示は,それ自体,事実と異なる表示であって,かかる表示は一般消費者に消費税の負担についての誤認を生じさせるものだということで,今回の特別措置法では,消費税について,事実と異なる表示を禁止するということにしているわけです。今の御質問の点については,国会で議論が進められているところですし,いろいろ報道もされているところです。

(問) 要するに,消費税3%還元ではなくて,新春セールや新生活応援セールといった表現だったらよいということにするようですが,今回の法案が出てきた背景には,いわゆる下請いじめ的なものを規制しようということがあると思うのですが,そういったときに,3%の転嫁は下請業者や卸業者にしないけれども,新春応援セールの割引ということにして,結局,なし崩しに卸売の価格などで下請のほうに転嫁させるようなおそれがあると思うのですが,そのあたりを公取委としてどうお考えになっているのか。どのように取り締まっていくおつもりですか。

(事務総長) 消費税を転嫁しませんとか,消費税還元セールというようなものは,まず,事実と異なる表示だということで,一般消費者に消費税の負担について誤認を生じさせるものになりますから,そのような表示が行われれば,ひいては納入業者に対する買いたたきが行われるようになるのではないか,また,周辺の小売店による消費税の転嫁をしにくくさせるおそれがあるのではないかということで,消費税の円滑で適正な転嫁を図っていくというための特別措置法の中の一つとして位置付けられているものと思っています。

(問) 素人考えかもしれませんが,3%を還元しますというようなセール内容であれば,非常に公取委としても取り締まりやすいと思うのですが,新春応援セールのために,納入業者に対していわゆる買いたたきを実施するというのであれば,外形上取り締まりにくくなるのではないかと思うのですが,その辺はどうですか。

(事務総長) その点は,今,いろいろ御指摘もあって,具体的にどのような表示が問題になるのかといった議論が行われていて,消費者庁のほうでも検討を進めておりまして,国会の審議を踏まえ,また,パブリックコメントを踏まえた上で,ガイドラインを作成して,事業者に分かりやすいものにしていきたいというふうに答えているところだと思います。
 ただ,今の御質問の点については,具体的には今後の作業ではありますけれども,これまでの消費者庁の国会答弁を明確にするという観点から検討を進めていると承知しています。

(問) 過去に消費税の3%導入や5%に引き上げたときは,下請いじめのような問題は生じていなかったと伺っていますが,今回,8%に上げるという中で,公取委としていわゆる買いたたきのようなものを抑えるためにどのような態勢で臨まれるのか,例えば,取り締まる人員を増やすとか,その辺は,来春に向けてどのような態勢で臨まれますか。

(事務総長) その点は,まず,消費税の導入時において,特別の法的な措置として,今回の転嫁対策の特別措置法の法案にも入っておりますが,転嫁カルテルや表示カルテルを認めるという措置を講じたわけです。そして,それ以外にも,下請いじめや,中小の納入業者いじめになるようなものは優越的地位の濫用として問題になる,下請法として問題になるということをガイドラインとして明らかにしました。平成元年の消費税の導入時にもガイドラインを作りましたし,また,平成9年に消費税率が引き上げられたときにもガイドラインを作成して,問題になるということを明らかにしているところです。
 今回は,消費税の転嫁拒否の行為についても,特別措置法で規定して,これは,今回,初めて講じた措置ですが,どのような行為をすると問題になるか,違反となる行為を明確化して,従来,独占禁止法違反であれば公正取引委員会が,また,下請法違反であれば公正取引委員会と中小企業庁が調査して措置を講じていましたが,今回の法案では,公正取引委員会と中小企業庁だけではなく,各省庁にも調査権限を与えて,迅速で効果的に措置を講じていこうというスキームを作ったわけです。ですから,公正取引委員会,中小企業庁だけではなく関係各省庁も一緒になって,転嫁拒否等の行為が行われないように取り組んでいこうということをしたわけです。
 公正取引委員会の体制としては,消費税の引上げが2段階にわたる引上げですので,その2段階の引上げの期間の時限的な措置ですが,100名を超える人員を増員してもらい,正確には119名ぐらいの数字だったと思いますが,120名近い職員を今の予算案でお願いしておりまして,そのような人員増を含めて,仮に法案が国会で認められた場合にはしっかりとやっていきたいと思います。他方で,既に,来年の4月が5%から8%に引き上げられる予定の時期ですが,来年の4月を見据えた買いたたきというものが行われているという情報もあることから,3月の末に大規模小売業者の納入業者に対する買いたたきの状況があるかどうかということについての書面調査を5万社に対して実施したということで,もう既に,一部取り組んできているところですが,今後,そのような取組をいろいろやっていきたいと考えています。

(問) 今のお話は,非常に具体的で分かりやすかったのですが,120人というのは,もちろん,東京だけではなくて,全国に張りつけていくイメージでよいのですか。また,5万社に対して調査した結果というのは,もう出ているのですか。

(事務総長) そうです。調査の結果はまだ出ていません。

(問) 買いたたきのような事例は複数見られているという感じですか。

(事務総長) 買いたたきの行為が生じているという懸念が寄せられているものですから,実態がどうなのかということを把握するために書面調査を実施したところです。調査の取りまとめは,これから行うところですが,調査を行うのと併せて,3月の末に,公正取引委員会の取引部内に,消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為に関する事業者からの相談を一元的に受け付けるための専用窓口,これは電話の窓口ですが,専用電話番号を3月27日に発表したわけです。東京03-3581-3379で,全国からの相談を受け付けるという窓口を設置して情報収集もしていると,そういう状況です。

(問) 書面調査の5万社は中小業者ということでよいのですか。

(事務総長) 今申し上げた調査対象の5万社は,大規模小売業者と取引していると思われる納入業者5万社ということです。他方で,調査対象の大規模小売業者は約2000社です。

以上

ページトップへ