[配布資料]
(平成25年5月22日)平成24年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組(概要)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成25年5月22日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
「平成24年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」について
(事務総長)
本日,私からは,「平成24年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」について,お話しさせていただきます。
まず,下請法違反事件の処理状況についてですが,平成24年度におきましては,勧告件数は16件,指導件数は4,550件となっております。
まず,勧告件数についてですが,勧告件数16件というのは,勧告を公表するようになりました平成16年度以降,平成23年度の18件が一番多い件数ですが,それに次ぐ勧告件数となっております。また,4,550件という指導件数は過去最多の数となっております。
勧告事件について見ますと,ここ数年,卸・小売業者によるプライベートブランド商品,いわゆるPB商品の製造委託に係る勧告事件が多いという傾向にありまして,平成24年度におきましても16件の勧告のうち11件がPB商品に関するものとなっております。平成23年度のPB商品に関する勧告事件が10件,その前の年の平成22年度が10件ですから,依然として卸・小売業によるPB商品の勧告事件が多いという傾向は変わっていないということが言えると思います。
これは,卸・小売業者によるPB商品の取扱いが増えてきているということが背景にあって,それにもかかわらず,PB商品の製造委託というものが下請法の規制対象になるということが,卸・小売業者にいまだに十分浸透していないということが要因の一つだと考えられます。
こうしたPB商品が下請法の対象になるということをよく理解していただくことが必要だと思っておりまして,一つには,個別の事件を勧告し公表するということを通じて卸・小売業者等の方々に理解していただくとともに,下請法の講習会や大規模小売業者向けの業種別講習会といった各種の講習会において,PB商品も下請法の対象になるということについて,丁寧に説明することなどを通じまして,今後ともしっかりとした普及・啓発を図ってまいりたいと考えております。
次に,「下請事業者が被った不利益の原状回復の状況」についてですが,不利益の原状回復の状況といいますのは,例えば,親事業者が下請代金を減額した金額を返還してもらうといったものがありますが,平成24年度におきましては,延べ下請事業者9,821名に対して,総額57億94万円相当の原状回復が行われました。この額は,改正下請法が施行された平成16年度以降,最も多い金額となっておりますが,これを個別に見ますと,昨年の9月25日に勧告いたしました日本生活協同組合連合会に対する件の減額金額などが約39億円と大きかった事案があったということによるところであります。
次に,「下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案」について御説明したいと思いますが,公正取引委員会が調査に着手する前に,親事業者が違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採るということを勧告するまでの必要はないという取扱いを平成20年から行っているところですが,平成24年度においては,こうした取扱いを行った事案が3件ありまして,下請事業者119名に対して,下請代金の減額分の返還等,約3億3000万円相当の原状回復が行われたところであります。
続きまして,「企業間取引の公正化への取組」ですが,下請法の運用に当たっては,違反行為の是正を図るということと併せまして,違反行為の未然防止を図ることも重要でありまして,企業間取引の公正化に向けて各種の施策を実施しているところであります。
まず,下請法については,毎年11月を下請取引適正化推進月間として集中的に普及・啓発を行っているところですが,下請取引適正化推進月間を一層効果的にPRすることを目的としまして,平成24年度におきましては,初の試みとして,キャンペーン標語の一般公募を行いまして,そのキャンペーン標語を決定したところであります。
また,下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図るという観点から,「下請法等に係る講習会」,例えば,下請法の基礎講習会,大規模小売業者向けや荷主向けの業種別講習会など,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会を開催することによって,きめ細やかな対応を進めるということに努めているところであります。
続きまして,公正取引委員会は個別の事案のほか,個別の取引分野について,取引実態調査を実施して,その分野における取引の公正化を図っているところですけれども,平成24年度は,「ホテル・旅館と納入業者との取引に関する実態調査」や,「大規模小売業者等と納入業者との取引に関する実態調査」を行いまして,その結果を公表したところであります。
先ほど,指導件数が過去最多となっているということを申し上げましたけれども,公正取引委員会としては,引き続き,下請事業者が受ける不利益が重大であると認められる場合には勧告を行うなど,違反行為に対して適切に対処していき,下請取引の適正化に努めていきたいと考えております。
また,併せまして,こうした個別の勧告事件を公表したり,業界別の取引実態調査結果を公表したり,更には講習会の開催といったものを通じまして,違反行為の未然防止に向けた個別の企業の方々のコンプライアンス活動の取組が一層促進されていくよう,公正取引委員会としては,違反行為が未然に防止されるための取組を進めていきたいと考えているところです。
私からは以上です。
質疑応答
(問) 勧告の件数は,大体,横ばいですが,指導の件数が過去最多となっていて,これについてはどのような背景事情が考えられるのでしょうか。
(事務総長) 報告書の本体の5ページの第3表として,「下請法違反行為の類型別件数」があり,「手続規定」と「実体規定」という2つに分かれているのですが,まず,実体規定の違反の件数を見ますと,これは複数の違反行為の類型についてそれぞれ件数を取っているものですから,先ほど申し上げた件数と一致しない部分がありますが,平成24年度で見ると,支払遅延や減額といった違反行為の件数が,延べ2,218件になっております。これが平成23年度は2,286件,そして,平成22年度を見ていただきますと1,955件となっております。ですから,まず,件数としては,この3年間を見ても2000件から2200件ぐらいの事件があって,個別の内訳で見ますと,例えば,平成24年度で,製造委託等については,支払遅延が804件で48.9%を占めており,また,減額が234件で14.2%を占めておりますように,支払遅延や減額等の事件が毎年かなり多くの違反として捉えられているところです。
次に,手続規定については,平成24年度は4,811件,平成23年度は4,528件,平成22年度は4,557件ということで,平成24年度は,手続規定の違反の件数が23年度,22年度に比べると300件程度増えていることがありまして,トータルの指導件数が多くなっていると思います。この平成24年度の手続規定の件数を見ますと,一番多いのは書面交付義務で,書面の記載不備がいろいろあったという件数が3,987件になっています。こういった書面の記載をきちんとやってもらうということが,やはり立場の弱い下請事業者が親事業者と取引するに際しての出発点といいますか,大変大事なことなので,親事業者が下請事業者と取引をするに当たって,下請代金の額や,支払期日をきちんと書面に書いてもらうことの指導に力を入れているところであります。
(問) それは,勧告するまでもなく,軽微なものが多いということなのか,それとも,指導に重点を置いて下請法を分からせることに重点を置いているということなのか,そういうこともあるのでしょうか。
(事務総長) どちらに重点を置くということではなく,やはり下請事業者の直接の利益に影響の大きい減額事案のようなものについては,慎重に調査をして勧告を行うということは従来から進めておりまして,今後とも進めていきたいと思っております。他方で,書面の記載不備といったものについては,取引の前提として大変大事なことなので,ちゃんと書面について記載するようにといった指導も,併せて,かなり重点を置いて取り組んでいるところです。
(問) 額が多い,指導件数が多い,勧告件数もかなりの数ということで,額が多いのは確かに生協の話があると思うのですが,それを除いてもやはり多いかなという気がするのですが,近年の社会的背景みたいなものを何か推測できるものがあれば教えていただけますか。
(事務総長) 下請法の場合は,親事業者,下請事業者が形式的に定められておりまして,違反行為も定められております。迅速に調査をしていくということで,毎年,親事業者,下請事業者合わせて約25万通の調査票を送って,4,500件程度の指導を行っているということで,迅速な処理をしていくということがあります。他方で,今,御質問のあったような,違反行為の背景にどういったものがあるかというところまでは,具体的に把握した上での調査という形では行っていないところですけれども,やはり一番大きいのは,一般的な話になりますけれども,長引く不況というものが背景としては大きいのだろうというふうに思っています。
(問) 長引く不況で,親事業者も自社の利益を確保せざるを得ないような状況だという理解でよろしいでしょうか。
(事務総長) 長引く不況が背景にあって,どうしても下請事業者に対して,また,納入業者に対してしわ寄せが行われやすいということだと思います。
(問) 分かりました。また,先ほどPBの製造委託に関してお話が出ていまして,下請法の規制対象であることが十分浸透していないということも背景にあるというところをおっしゃっていたと思うのですが,例えば,生協ですと,昨年度,日生協とコープさっぽろで,それぞれ1件ずつ勧告があったと思うのですが,こういったところでは,かなり古くからプライベートブランド商品を作っているのかと思うのですが,そうなると,総長のお話ししていたところとも,また違う背景があるのかなと思うのですが,その辺はどのようにお考えでしょうか。
(事務総長) おっしゃるように,生協については,昨年9月に日本生活協同組合連合会の件がありましたし,その前の年,平成23年度にも中国・四国地区の生協の事件もありましたし,昨年度,平成24年度には北海道地区の事件もあったということで,ここ2年ぐらいで勧告の事件がありますが,その背景まではよく分からないところであります。
(問) 分かりました。あと,これは話がそれるかもしれないのですが,中小企業庁でも同様のことを行っていて,同様の統計を発表されていると思うのですけれども,基本的に,それぞれ別の組織ですから,別々に発表して,別々の数字が出る,基本的に対象の会社は重ならないと聞いておるのですが,下請法違反で,公取のまとめが一つ出る反面,中小企業庁でもおそらく月内には出るのかなという気もしているのですが,これを合わせたところで発表していただくと,こちらとしても,結局,全国で見たらどれぐらいの下請法違反があったのか分かるのかなという気がします。これは要望ベースという意味でもあるのですが,そこに対してのお考えを教えていただけますでしょうか。
(事務総長) 今,御質問があったとおり,下請法の運用については,中小企業庁も公正取引委員会と同様に年間約25万社に対して調査票を送って調査を進めているということで,分担して,協働して行っているわけです。そして,悪質な案件,問題がある大きい案件があれば,公正取引委員会に措置請求が行われて,公正取引委員会が勧告を行うとしているわけです。また,毎年11月の下請取引適正化推進月間を行うときには,公正取引委員会と中小企業庁との連名で,いろいろ,親事業者やその団体に対して要請文書を送って,下請取引の公正化を要望するといった取組をしております。
確かに,おっしゃるように,この1年の運用状況というのは一緒の形では公表していないのですが,一般の国民の方から見たら,もう少しそれが分かるようになっていたほうがいいというお考えも検討していきたいと思います。いろいろなやり方があろうかと思います。いろいろな分野で関係省庁が同じような取組をしている例というのはありますので,御提案のあったような,一緒に公表するというやり方もあると思いますし,それぞれの発表文にお互いのリンクといいますか,紹介するといったやり方もあると思いますので,今後,国民に分かりやすいという観点からの工夫はしていきたいと思います。
以上