[配布資料]
地方公共団体等が発注するごみ処理施設入札談合事件に係る課徴金納付命令(平成19年(判)第3号~第7号 平成22年11月10日審決)の内訳等(PDF:116KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成25年1月23日(水曜)13時30分~ 於 官房第1会議室)
独占禁止法コンプライアンスの重要性について
(事務総長)
本日,私からは具体的な入札談合事件を例にして,独占禁止法コンプライアンスの重要性について,お話ししたいと思います。
公正取引委員会は,独占禁止法違反行為が生じないように,従来から企業における独占禁止法コンプライアンスの推進活動を行っておりますが,昨年11月に公表した「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況」の報告書の中では,入札談合等の独占禁止法違反行為があった場合に,企業は,課徴金や損害賠償金等の金銭的な不利益を受けることなど,ダメージ・コスト増を招く点について指摘しております。
本日,具体的な事例として,近年,公正取引委員会が措置を採った事案の中でも大型事案であります地方公共団体等が発注するごみ処理施設入札談合の事件を例として,金銭的な不利益の状況をご説明させていただきます。
本件は,平成22年に公正取引委員会が行いました課徴金の納付を命ずる審決で,総額約270億円の課徴金の納付を5社に対して命じており,現在,これにつきましては一部が最高裁判所に対して上告中であります。
これに加えまして,独占禁止法25条に基づく訴訟と,民法709条に基づく訴訟の形で各自治体などから各種の損害賠償請求訴訟が提起されておりまして,公正取引委員会が把握している限りでは,資料に掲げましたような訴訟が行われております。この独占禁止法25条に基づく訴訟,また,民法709条に基づく訴訟の請求認容判決では,5社合計いたしますと,約315億円の賠償金を支払うこととされております。ごみ処理施設入札談合事件における独占禁止法違反行為者である5社は,課徴金と賠償金を合わせますと,約585億円の金銭的な不利益を被ったということになります。このほか,和解金を支払うこととされた訴訟もありまして,独占禁止法違反行為を行うことが,企業にとって割の合わないものであるということは明らかだと思います。
本日は,課徴金や損害賠償等の金銭的な不利益についてのお話をしましたけれども,独占禁止法違反行為で発生するリスクというものはこれに限られるものではありません。先ほど御紹介した,昨年11月に公表した独占禁止法コンプライアンスに関する報告書においても,入札談合等の独占禁止法違反行為があった場合には,企業は,課徴金や損害賠償金等の金銭的不利益,当局による調査や民事手続へ対応するための事業資源の浪費といったコスト負担が発生すること,企業イメージが悪化することといった事業上の直接・間接のダメージ・コスト増を招くという点について指摘をしているところでありますが,こうしたダメージ・コスト増を防止するためにも,企業は独占禁止法コンプライアンスを,単なる「法令遵守ツール」ではなく,「リスク管理・回避ツール」として戦略的に位置付けて,積極的に活用してほしいと考えます。そして,そのためには,(1)研修等による未然防止,(2)監査等による独占禁止法違反行為が行われていないかどうかの確認と早期発見,(3)危機管理,これは独占禁止法違反行為への的確な対処ということですけれども,こうした3つの施策,「研修」,「監査」,「危機管理」と,頭文字がKになるものですから,3つのKと呼んでおりますが,これを独占禁止法のコンプライアンスプログラムに組み込むことが大切であるということを提言しているところです。
企業において,こうした独占禁止法コンプライアンスに関する取組を一層実効的なものとしていくことを期待しているところです。
私からは以上です。
[質疑応答]
(問) こういった巨額の課徴金や賠償額が出た後も,同じ企業が同じようなことを繰り返していて,そういうことが後を絶たない中で,もう少し抜本的・根本的な具体策として,例えば,課徴金の更なる引上げや,リニエンシーについて,もう少し調査協力についての項目を増やすとか,具体的な対策で今後とり得るものについて,何かお考えのものがあれば教えてください。
(事務総長) 平成17年に独占禁止法の課徴金の率が大幅に引き上げられ,リニエンシー制度と言われる課徴金減免制度が導入されました。その背景には,今,御質問があったように,繰り返し同じ事業者が違反行為者になっているのではないか,また,同じような業界で違反行為が繰り返し行われているのではないかといったことがあり,平成17年の独占禁止法改正があったところです。
今日御紹介したごみ処理施設の談合事件というのは,審判が開始されたのが平成11年の事件で,平成18年に審判審決が出て,平成22年に課徴金納付命令の審決が出たという時間的な経緯がありますので,この事件は平成17年法改正前の事件ですが,そういった事件でも,今時点まで,こういった損害賠償請求が続いているということなのです。公正取引委員会の制度的な仕組みとしては,法改正を平成17年に行い,また,平成21年にも更に,執行力を強化する改正を行いました。また,将来的には,更なる課徴金の率や課徴金減免制度を工夫していくという検討をする必要が出てくるかもしれないと思いますけれども,現時点では今の仕組みをよく説明し,違反行為を行えば,課徴金納付命令を受けるだけではなく,金銭的な面だけでも,このような損害賠償請求が行われ,その訴訟などに対応するために事業の資源が使われなければいけないという,いろいろなダメージ・コストを受けることから,企業には,コンプライアンス活動を進めていただいて,未然防止に努めてもらうというのが一番大事だと思っています。
以上