[配布資料]
(平成25年3月27日)消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為への対応について
[発言事項]
事務総長会見記録(平成25年3月27日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為への対応について
(事務総長)
本日,私からは,消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為への対応についてお話ししたいと思います。
昨年8月に成立いたしました,いわゆる税制抜本改革法により今後予定されております消費税率の引上げは,平成26年4月及び平成27年10月の2段階にわたるものでありまして,中小事業者の方たちを中心に消費税の価格転嫁についての懸念が示されているところです。このため,政府では消費税率の引上げに際し,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,先週3月22日,「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案」として,略称いたしますと,消費税の転嫁対策に関する特別措置法案を国会に提出したところです。この法案につきましては,速やかに御審議いただければと考えているところです。
さて,今後予定されている消費税率の引上げを見据えまして,現在でも既に大規模小売業者が納入業者に対して買いたたき等の行為を行っているとの懸念が寄せられているところです。このため,公正取引委員会はそうした懸念があることを踏まえまして,このたび消費税率の引上げを見据えて買いたたき等の行為が行われているかどうかといった事実関係,実態を含めまして2つの対応をとることといたしました。
1つ目ですが,大規模小売業者による買いたたき等の行為があれば,これを早期に発見し,是正を図るために,大規模小売業者及び納入業者を対象とした緊急調査を実施いたします。この調査に関しましては,既に昨日,大規模な小売業者約2,000社と,これら小売業者に納入していると見られる納入業者約5万社に対しまして,4月19日を回答期限とする調査票を送付したところであります。
2つ目ですが,大規模小売業者によるものに限らず,消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為を受けている事業者からの相談や,情報提供を一元的に受け付けるための専用窓口として,4月1日から公正取引委員会事務総局の取引部内に専用窓口を設置いたします。事業者からの相談等を受け付ける専用電話番号は,東京03-3581-3379です。
公正取引委員会としては,こうした対応をとることによりまして,消費税率の引上げを見据えた買いたたき等の行為を早急に把握するとともに,是正を図ってまいりたいと考えております。
本件についてのお問い合わせは取引企画課が担当となります。
私からは以上です。
[質疑応答]
(問) 何点かお伺いしたいのですが,まず,例えばこういった買いたたきなどの行為があったと確認された場合には,どのような措置を採られるお考えなのか,また,一部報道で16万社調査という記事が出ていましたが,例えばそのとき公取委以外で同じような調査を共同で実施するお考えがあるのか,理由がお分かりになれば教えてください。また,なぜ消費増税の前年度から始められるか,もし理由についてお伺いできればお願いします。
(事務総長) まず1点目の御質問の,今回の調査を受けて,仮に問題があった場合にどうするのかという御質問ですが,この調査の結果,独占禁止法や下請法に違反する行為が認められた場合には,そのような行為の是正を図っていきたいと考えております。具体的な是正がどのような形になるかはまだ今後の調査結果を見てからの話なので申し上げられませんが,一般的に下請法でも,このような買いたたき行為が禁止されておりまして,例えば平成23年度でありますと,下請法違反行為に対して,勧告を18件行い,また,いわゆる指導という形で直してもらうのは,消費税に関係なく全体ですけれども,4,326件行っており,そのような形で指導等を行っていくことが考えられます。
また,独占禁止法についても,従来から法的措置を採るなり,また,平成21年には審査局内に優越的地位の濫用事件のタスクフォースを作って,迅速な是正を図るという取組を進めておりまして,審査局のそのような取組を見ても,平成23年は,例えば52件の注意をタスクフォースで行っておりますので,そのような取組を進めていきたいと考えています。
それから,私も,16万社調査の報道を見ましたけれども,これは平成25年度に,今後,特別措置法案については国会の御審議が行われるところで,私どもとしては速やかに御審議いただければと思っているところですが,消費税の転嫁に関する調査を今後平成25年度に入ってから,公正取引委員会や中小企業庁が,大規模に調査をしようということを考えておりますが,今の時点で先ほど申し上げたような懸念がいろいろ指摘されているものですから,今回,そういった実態を把握するために,調査を緊急に行うこととしたということですので,先ほどおっしゃった調査とは別の調査ということになります。
3点目の御質問は,今申し上げたような形で,この3月の末に行うことにいたしました。
(問) 幾つかお伺いしたいのですが,まず1点目ですが,買いたたきなどの行為が生じているとの懸念が事業者より寄せられているということですが,これはおそらく納入業者からそういう声が上がっているということだと思うのですが,もう少し具体的に,何か,例えばどういう話があるのかということを教えてください。2点目ですが,緊急調査の書面調査ですけれども,これは具体的にどういう項目を調べて,どのようにして把握されるようなものなのかということを教えてください。また,関連して,売上高70億以上の約2,000社と納入業者が約5万社ということですが,なぜこういう対象にしているのかという理由と,最後に1点,細かいところですが,専用相談窓口の期限と,緊急調査の取りまとめの時期をお伺いできればと思います。
(事務総長) まず,買いたたき等の行為が生じているとの懸念が寄せられているということを申し上げました。買いたたきとは何なのかということですけども,一般的に買いたたきというのは,納入価格の引下げ交渉があって,典型的に問題になるのは,一方的に著しく低い値段,価格での取引を行うというようなものが買いたたきの典型だと思いますけれども,そのようなことについての懸念が一部の大規模な小売業者から生じているのではないかという指摘もあったところであります。ただ,これから調査いたしますので,具体的には申し上げられません。
2点目の御質問で書面調査の中身については,買いたたきについて,一方的に著しく低い価格での取引を行うような引下げ交渉があったかということが,買いたたきの典型ですということを申し上げましたけれども,そのような行為があったかどうかを書面で調査するということとしております。
業者数ですが,やはり大規模小売業者に納入している納入業者の数というのは,圧倒的に多いものですから,従来から一定の数の小売業者を選び,またそれと取引をしているとみられる納入業者でかなり多くの数を,例えば下請法で毎年定期調査を行っているのですけれども,これは大規模小売業者ということではなく,一般的な,いわゆる親事業者ですけれども,そのときにも,大体の数字で親事業者38,000社ぐらい,納入業者21万社ぐらいといった形で従来から一定の小売業者よりはずっと多くの納入業者を対象に調査を行って,複数のところから情報を得て,要は特定の誰かから,こういった情報を得て,公正取引委員会が調査をしたのかということが分からないように調査をするというのが,この優越的地位の濫用に関する独占禁止法や下請法の調査で重要な点ですので,1つの小売業者に複数の納入業者に調査をして,そこでどういったところから情報があったかということが分からないような形で調査をするという手法をこれまでもとっているところであります。
もう1点,窓口の期限ですが,これはまだ特に期限等,今の時点では設けておりません。
それから,緊急調査の取りまとめの時期は,できるだけ早く取りまとめて公表したいと思っておりますが,まだ今の時点では,具体的な時期としてはお答えできる段階ではございません。いずれにせよ,緊急調査という位置づけですので,なるべく早く取りまとめ,公表したいとは考えております。
(問) 書面調査の件ですが,先ほど総長,回答期限は4月19日とおっしゃっていたと思うのですけれども,結構時期的にも早いように思うのですが,公取委としては買いたたきの行為というのが,既にいろんなところで行われている可能性が高いと見ているということでよろしいのでしょうか。
(事務総長) 回答期限が早いということですけども,昨日送りましたので,1か月はないですが,4週間弱ありますので,きちんとしたお答えをしていただくためには,それなりの時期をあけた方がいいと思っていますが,これは緊急調査ということですから,やはり一定の区切りで調査をすることに意味があると思っていますので,そういった意味では早いと思われるかもしれませんが,一定の期間で,早く実態を把握したいということがあります。
(問) この調査を行う理由立てとして,先ほど事務総長は具体的には言えないけれども,買いたたきなどの行為が生じるとの懸念が寄せられているという指摘もあったということですけれども,急に懸念が寄せられているということもないでしょうから,何か具体的な事案が寄せられたのがきっかけなのか,それとも例えば,新委員長が年度内に何かやりなさいと言われたのか,あるいは,予算が余ったなど何か別の理由というのはあるのでしょうか。
(事務総長) 別の理由というのはありません。もちろん今後消費税の税率の引上げが近づいてくれば,先ほど申し上げたような別途の大規模な調査が必要になってくると思っておりますが,その前の段階で,まだ1年先ではないかという御指摘もあろうかと思いますが,もう来年の4月を見据えた納入価格の引下げ交渉が始まっているという指摘もあるものですから,そういった事実関係を把握しようと,そして必要な場合には是正を図っていこうということで調査をしようとした趣旨でありまして,それ以外の理由はありません。
以上