[配布資料]
(平成26年6月18日)独占禁止法に関する相談事例集(平成25年度)について
独占禁止法に関する相談事例集(平成25年度)(PDF:233KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成26年6月18日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独占禁止法に関する相談事例集(平成25年度)について
本日は,独占禁止法に関する相談事例集について御紹介したいと思います。
公正取引委員会では,毎年,独占禁止法に関する相談事例集を取りまとめて公表しております。本日,平成25年度の相談事例集を公表することとなりましたので,お手元の資料,本文とスライドの両方がありますが,ここではスライドのほうの横長の資料に沿って御説明をしたいと思います。
1ページ目を開いていただくと表があります。公正取引委員会では,事業者や事業者団体がこれから行おうとする行為について,それが独占禁止法上問題とならないかどうかということについての相談を受け付けております。平成25年度は,1,517件の相談が寄せられたところであります。
2ページ目には,相談事例集を公表することの趣旨を記載しておりまして,要は,相談事例集は事業者等から寄せられた個別の相談の中から,相談者以外にも参考になる主要な事例を選び,独占禁止法上の考え方をできる限り分かりやすく説明したものであります。
今回の相談事例集には,事業者からの相談が10事例,事業者団体からの相談が4事例,合わせて14の事例を掲載しています。個別の事例の詳細につきましては本文を見ていただきたいと思いますし,更なる詳細につきましては,担当部局の取引部相談指導室に御照会いただければと思いますが,ここでは,今般の規制改革会議でいろいろ議論をされました「流通・取引慣行ガイドライン」で示しております行為類型に関する相談4事例について簡単に御紹介させていただきたいと思います。
お手元の資料の3ページ目に,その「事例の概要」というのがありますが,この3ページ目の事例1,2,3,4が流通・取引慣行ガイドラインで示している行為類型に関する相談事例であります。
まず,事例の1は,販売価格の調査に関する相談でございます。これは市場における有力な玩具メーカーが,商品開発及び営業戦略の参考とするため,店舗販売業者の過去1年間の販売価格及び陳列方法について,卸売業者を通じて報告をさせるということについては独占禁止法上問題ないと回答した事例であります。
流通・取引慣行ガイドラインで明らかにしておりますように,市場価格調査を行うこと自体は問題となるものではありませんが,この市場価格調査によって,「小売業者に対し,販売価格を拘束する」ということになるかどうかで独占禁止法上の問題の有無が分かれてくるわけでございます。
本件では,メーカーが小売業者に対して販売価格を拘束するものとは認められませんでしたので,独占禁止法上「問題なし」と回答したものであります。
続いて事例2は,販売地域の制限の相談でございます。市場における有力な健康食品メーカーが,販売代理店に対しまして,一定の販売地域を割り当て,地域外での販売を禁止するという厳格な地域制限を行うことについて,これも独占禁止法問題ないと回答した事例であります。
メーカーが販売代理店に対しまして,地域制限を行うこと自体は独占禁止法上の問題となるものではありません。これによって「販売価格が維持されるおそれ」がある場合には独占禁止法上問題となり得るということになります。
販売価格が維持されるおそれがあるかどうかということについて判断する際の考慮事項につきましては,流通・取引慣行ガイドラインに幾つかの事項が明記されているところでございますが,これに沿って本件を考えた場合には,複数の有力な競争事業者が存在しており,ブランドごとの製品差別化が進んでおらず,また,ブランド間の価格競争が活発であるということ等から,販売価格が維持されるおそれはないので独占禁止法上「問題なし」と回答したものであります。
次に事例の3でございます。これは,販売方法の制限に関する相談でございます。市場における有力なリビング用品メーカーが,小売業者に対しまして,専用陳列棚を設置させ,リビング用品の陳列方法を指定することについて,独占禁止法上問題ないと回答した事例でございます。
流通・取引慣行ガイドラインでは,販売方法を制限すること自体は,商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ,また,全ての取引先小売業者に対して同等の条件が課せられる場合は独占禁止法上問題になるものではなく,ただ,「販売方法の制限を手段として販売価格や競争品の取扱いを制限する」場合には,独占禁止法上問題となり得る場合があるというふうに書かれているところでございます。
本件は,リビング用品の陳列方法を指定することが商品の適切な販売のためのものでありまして,全ての取引先小売業者に対して同等の条件を課すということでございますので,独占禁止法上「問題なし」と回答したものであります。
事例の4は,リベートの供与に関する相談でございます。市場における有力な福祉用具メーカーが,福祉用具を販売するに当たって,インターネット販売業者を対象とせずに,店舗販売業者のみを対象とするリベートを新たに設けることについて,独占禁止法上問題ないと回答した事例であります。
流通・取引慣行ガイドラインでは,メーカーが流通業者にリベートを供与すること自体は,実質的な値引き,あるいは販売促進のために行われることが多く,それ自体が直ちに独占禁止法上問題となるものではなく,ただ,リベートの供与が「流通業者の事業活動を制限する手段として用いられる」場合には,独占禁止法上問題となることがあるというふうに書かれているところでありますが,本件は,店舗販売に要する販売コストを支援するためのものでありまして,また,インターネット販売業者に対する卸売価格を引き上げるというものでもなく,その事業活動を制限するものとは認められませんでしたので「問題なし」と回答したものでございます。
以上,4事例について簡単に御紹介しました。この相談事例集は毎年公表しておりまして,公正取引委員会のホームページに掲載しております。毎年かなりのアクセスがあるところであります。
公正取引委員会としては,今後とも引き続き,事業者等において,この相談事例集が活用されることにより,独占禁止法上の考え方への理解が深まり,違反行為の未然防止が一層図られることを期待しているところでございます。
私からは以上です。
以上