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平成28年1月27日付 事務総長定例会見記録

平成28年1月27日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

「公的再生支援に関する競争政策上の考え方」(案)に対する意見募集について(平成28年1月27日公表資料)

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成28年1月27日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

「公的再生支援に関する競争政策上の考え方」(案)に対する意見募集について

 本日,私からは,「公的再生支援に関する競争政策上の考え方(案)」に対する意見募集について,お話をさせていただきます。
 我が国におきましては,公的再生支援が様々な政策目的を達成するために行われております。このような状況の下で,これら支援によります競争への影響を最小限のものとすることが重要であるとの認識の下に,競争政策の観点から必要な検討を行うことを目的といたしまして,内閣府特命担当大臣決定に基づきまして,一昨年の8月から8回にわたりまして「競争政策と公的再生支援の在り方に関する研究会」が開催されたところであります。
 この研究会では,8名の有識者の委員の方々に精力的に御議論をいただき,一昨年12月に公表した中間取りまとめにおきまして,「公正取引委員会は,公的再生支援を行うに当たって支援機関が競争政策の観点から留意すべき点を盛り込んだ業種横断的なガイドラインを作成することが適当である」との提言がなされました。
 これを受けまして,公正取引委員会は,公的再生支援が我が国の市場における競争に与える影響を最小化するために,支援機関が支援を行うに当たって競争政策の観点から留意すべき事項等を明確化いたしました「公的再生支援に関する競争政策上の考え方(案)」を作成し,本日パブリックコメントの手続を開始したところであります。
 本ガイドライン(案)は,まず一つ目に,公的再生支援が競争に与える影響を最小化するために踏まえるべき三原則,補完性,必要最小限及び透明性の原則,二つ目に,支援の規模や手法といった支援内容ごとの評価と,それぞれにおいて競争に与える影響を最小化するための考慮事項,三つ目に,支援手続における透明性の確保などにより構成されております。
 本ガイドライン(案)の詳細及び意見提出方法につきましては,公正取引委員会及び電子政府のウェブサイトに掲載しておりますので,そちらを御参照いただきたいと思います。
 意見募集期間は2月26日金曜までとしております。寄せられた御意見を踏まえて,公正取引委員会として検討を加えた上で成案を公表できるよう,作業を進めてまいりたいと考えております。
 なお,詳細につきましては,経済取引局調整課が担当課でございますので,そちらの方にお問い合わせいただきたいと思います。

質疑応答

(問) この「公的再生支援に関する競争政策上の考え方(案)」の件でお伺いします。まず一つは,いわゆる産業革新機構という組織があるわけですけれども,これが行うような支援,出資などの活動は,ここでいう公的再生支援に該当するのでしょうか。
(事務総長) お手元にお配りした「公的再生支援に関する競争政策上の考え方(案)」の冒頭,第1の1にありますように,政府が出資して特別の法律により設立された法人が事業再生の支援を行うということがこのガイドラインの対象でございますので,今,政府が出資して特別の法律により設立した法人が事業再生支援を行うということであれば,このガイドライン(案)の対象になるということでございます。
(問) 産業革新機構は,建前上はいわゆる再生を請け負うファンドではないということになっておりますけれども,それでもこれも対象になる可能性はあるのでしょうか。
(事務総長) 個別具体的な事例の判断ですけれども,その支援が成長資金の供給なのか事業再生支援なのか,それはそれぞれの事案に応じて判断されることになると思います。
(問) もう一点,別の観点からですけれども,こちらの資料の3ページの一番下のところにあります競争回復措置についての考え方ですけれども,事後的に競争回復措置を採ることは好ましくないということが書いてあります。その一方で,9ページには,事業規制がかかるような部分に関しては,何か事後的な是正があり得るかのように書いてあるのですけれども,この両者の関係はどう理解したらよろしいのでしょうか。
(事務総長) 3ページのところは,公的再生支援開始に当たって競争に与える影響が最小限となるような支援政策を考えるべきで,事後的に競争を回復する措置を採ることは,支援される事業者の事業再生に向けたインセンティブ,あるいはそれを支援する関係者の支援に対するインセンティブを損なうということで適当でないということが書かれております。
 一方で,最後の事業規制等のあり方につきましては,支援期間中か事後かということについては特に書かれておりませんので,ここに書いてありますように,公的再生支援を梃子として被支援事業者が著しく競争上優位になる場合に,事後的に措置を採るということをあらかじめ排除したものではありません。しかし,そこにおきましても,先ほど申しましたことと同じでございますけれども,被支援事業者が経営努力により効率性を改善しようとするインセンティブが低下しないように考慮するということが一つの論点であります。それから,規制当局の事業規制のあり方として,競争の活性化を促すことによって競争環境を確保するという方向で処分等の内容について検討を行うということも,先ほど申し上げました公的再生支援を梃子として被支援事業者が著しく競争上優位になるということに加えて留意事項として書かれておりますので,それを総合的に規制当局において考慮していただくということになると思います。
(問) 仮に規制当局が,このガイドライン(案)の考え方にそぐわないような行動を採った場合,公正取引委員会はどのように対処されるのでしょうか。
(事務総長) ガイドライン(案)1ページ目の冒頭に書いてありますけれども,支援機関においては,支援の内容を考えるに当たっては,ガイドラインを踏まえられることが望ましいということでございますので,もちろんその過程で必要に応じ公正取引委員会に相談があれば,我々として積極的に相談を受けさせていただきますけれども,このガイドラインを踏まえて,どのように支援策を決定するかは,それぞれの担当の支援機関あるいはそれを所管する所管官庁の責任においてされることだと思いますので,このガイドライン(案)の考え方からしますと,我々の側から支援機関ないし所管官庁に対してガイドラインのここはどうですかとか,ここはちょっとおかしいのではないですかということはいたしません。
(問) 最後に一点,具体的な例ですけれども,日本航空について公的支援を行って,これが行き過ぎだったのではないかということで,監督官庁である国土交通省は是正措置のようなことを規制権限を使って行ったわけですけれども,このガイドライン(案)の考え方に沿うものであると理解してよいのでしょうか。
(事務総長) このガイドライン(案)は,これから公的な事業再生支援を行うに当たってどうするかということで,過去の個別の事例について,どのように適用されるか,適用されないかということについてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

(問) 例えばこのガイドライン(案)に示した考え方と異なるような事象が起きたときに,どういうことが考え得るのでしょうか。例えば企業結合とか,そういった独占禁止法のエンフォースメントは何かあるのでしょうか。
(事務総長) 具体的な事案で,独占禁止法の禁止する違反行為が,企業結合を含めて行われれば,それは独占禁止法の立場から対応していくということでございますが,その支援政策の支援の内容が,直ちに独占禁止法上問題となる蓋然性があるかということについては,なかなかそういうことはないのではないかと思います。むしろ個別事案において,独占禁止法の違反行為に当たるような行動が行われるかどうかということを注視していくことだと思います。
(問) こういった公的再生支援に対して欧州の競争当局とか,DOJとか,そういった海外の主要当局も同様に競争当局としての考え方を示しているのでしょうか。
(事務総長) アメリカの詳細については確認しておりませんが,欧州につきましては,御案内のとおり,競争当局の大事な仕事の一分野として,国家補助規制というのがございます。域内で,ある国が補助金である企業を応援すると,それが欧州域内の競争を妨げることになるかどうかということで,個別の補助金等につきまして,欧州委員会(EC)の競争当局DGCompがそれぞれ審査をするという枠組みでございます。それと公正取引委員会との関係でいえば,ECにおける競争当局の位置付けと,日本政府における公正取引委員会の位置付けは違いますし,独占禁止法の中に国家補助規制について何ら規定はございませんので,法制度上はECとは全く違うということでございます。ただ,公的な支援策が市場の競争に影響を与えることがあるのではないかという観点から,そういう支援,補助をする場合にも,競争に与える影響というのは最小限にとどめるべきであるという考え方は,多分どこの国でも共通しているのではないかと思います。

(問) 先ほど事務総長が,その支援が成長資金であるのか,事業再生のための資金であるのかというのは,個別に判断されるとおっしゃいましたけれども,判断するのは当事者ということでしょうか。
(事務総長) そうです。支援機関です。
(問) その支援機関が自ら,これは再生なのかどうなのかというのを考えた上で,それに当たるならば,これに留意して行うのだと理解すればいいということですか。
(事務総長) はい。繰り返しになりますけれども,このガイドライン(案)というのは,私ども公正取引委員会が競争政策の観点から,それぞれの支援機関が事業再生支援を行う場合に競争に与える影響を最小限にするということを考えて,支援の内容を作ってくださいということを示したものでございますので,自分がやっている融資,出資がこれに当たるかどうかということは,一義的には,その支援機関において御判断いただき,また,どこまで,どのようにこのガイドラインの内容を支援策に反映させるかということも,支援機関,あるいはこの中にも書いてありますけれども,それを監督する所管庁の責任と判断において行われることだと思っております。
(問) 今まさにシャープを巡る支援で,政府系のいわゆる公的再生支援に当たるような支援をしようという動きや,あるいは,これはちょっと違う話かと思いますけれども,今日の報道ベースでは,トヨタとスズキが事業提携していくというように,国際競争の中で,日本の企業が再編する機運が,今のところ高まっているような傾向にある中で,こういったガイドライン(案)を出されることの意義というのは,どういうところにあるとお考えでしょうか。
(事務総長) 競争政策と公的再生支援の在り方に関する研究会が,それ以前にありましたような個別的な事案で,公的に行われる再生支援のあり方が競争に与える影響が非常に大きい場合があるという問題意識で行われたものでございます。繰り返しになりますけれども,各公的機関が事業再生支援をするのか,そのほかの観点から活動をされるのかということについては,法的拘束力のあるガイドラインではありませんので,事業再生支援を行う場合にはこれを念頭に置いて支援の内容が競争に与える影響を最小限にするようにしてくださいということであって,それ以上でもそれ以下でもないということでございます。
(問) 一昨年の12月に取りまとめたもので,そこから1年2か月というスパンがあって,今日の発表に至っていると思うのですけれども,その期間について,私は見識あるわけではないので恐縮なのですけれども,シャープの支援が大詰めになっている段階で,こういう発表があるというのに,何かしら意味があるのかと思ってしまうのですけれども。
(事務総長) 今おっしゃったような案件が大詰めにあるかどうかというのは,私も報道ベース以上知りません。また,それがこのガイドラインの対象になるべき措置なのかということも,私は分かりません。ただ,一昨年の12月に中間取りまとめでガイドラインを公正取引委員会で示すべきであると提言をいただいてから,そのガイドラインの内容が,実際に支援をする支援機関側にとっても,あるいはその支援機関を所管する所管官庁にとっても,内容が合理的であり,また適用可能であると,実際的なものであるということを担保する必要があるということで,我々,有識者の方も含めて,丁寧に御意見を聞いて,その結果,今の時期になったということで,遅いという御批判はあるかもしれませんが,特段,何か考慮があって,今の時期に発表に至ったというわけではありません。
(問) 先ほど判断は当事者自体がされることだとおっしゃいましたけれども,一般論として,成長資金という名目ではあるが実態とずれている,あるいは成長と事業再生が重複しているところにおいて,そういう再生の要請があるという場合に,公正取引委員会としては,どのようにお考えになるのでしょう。
(事務総長) このガイドライン(案)の射程からいえば,それはそれぞれの支援機関,所管の官庁の説明責任の分野だと思いますが,我々はこういうガイドラインを出して,国が出資する機関で,法律に基づいてできた機関が事業再生を支援する場合は,こういうことを考えてくださいと申し上げて,その適用の範囲内であるかどうかについては,それぞれの支援機関に考えていただきたいということでございます。その具体的なスキームが発表され,あるいは具体的なスキームが実施された段階で,もしガイドラインの射程外であるということであれば,その説明責任は当該支援機関等なり所管官庁においてなされるものだと理解をしております。
 もちろん,この独占禁止法の中には,私どもが目的を達成するために必要な意見を公表することができるとされており,独占禁止法1条の公正で自由な競争の確保という観点から,我々,法の執行以外にも,いろいろと競争政策の提言を一般的にさせてきていただいています。これもそのうちの一環だと理解しております。だから,独占禁止法と全く関係ないというのではなく,独占禁止法の目的であります公正で自由な競争環境の確保というのをきちっと確保していくために,その環境整備として,私どもとしても,今後とも様々な提言は行っていくつもりでございます。

(問) 例えば,本ガイドライン(案)の射程を外れるような再生とか,そういったものがあった場合に,例えば,その再生当事者,スキームの当事者になった企業と競合する事業者,他社の人たちは,このガイドラインに違反しているではないかと,問題があるのではないかというので,例えば,違反行為における申告みたいなことはできるのでしょうか。
(事務総長) 申告というのは,独占禁止法の違反事件の疑いがあることについて行われるのが,独占禁止法の45条もそうですけれども,典型的な場合でございます。このガイドライン(案)が成案になった場合のガイドラインに照らして,おかしいのではないかという御意見はもちろん,今後の競争政策について,もろもろの提言,あるいは考えを展開していく上で参考にさせていただきますけれども,違反行為の申告というように,独占禁止法45条に書いてあるように必要な調査をして,きちっと決着つけるというような意味での申告にはなり得ないと思います。
(問) 45条申告とは,また別ということですね。
(事務総長) はい。
(問) 個別の案件ごとの市場画定の問題と絡んでくると思うのですけれども,国外の事業者が公正取引委員会におかしいのではないか,例えば,先ほどおっしゃったような,私もちょっとシャープのことを想定しているのですけれども,中国とか,今台頭しているようなライバルの液晶パネルの事業者とかが,今回,いろいろ報道されているようなスキームが実行されたときに,世界市場というところで市場画定をしたときに,競争上問題があるのではないかということで,公正取引委員会に何か言ってくるということは理論上あり得ることでしょうか。
(事務総長) 先ほど申し上げたような,このガイドライン(案)の位置付け,独占禁止法上,公正取引委員会は欧州委員会と違って,そういう欧州委員会での国家補助に対する規制の権限等ありませんから,そういう話を我々に持ってこられても,このガイドライン(案)の基本的性格,要するに支援機関等において,その責任において競争に与える影響を最小限にとどめるため,この内容を踏まえて支援政策を決定してもらうということでございますので,先ほど私が申し上げた支援機関等の説明責任の問題に入ってくるのだと思います。公正取引委員会は,この分野での考え方を更に発展させる上で参考にさせていただきたいと思いますし,ガイドラインも一度出したらもう改定しないというわけではありませんので,それはその後いろいろな仕事の参考にはさせていただきますけれども,先ほどの繰り返しになりますけれども,向こうが言ってきたからうちがどうかと,対応をすぐするとか,そういう次元の問題ではないと思います。
(問) 担当ではないのかもしれないですけれども,WTOとか,今回,こうしたTPPとかの競争政策に関するチャプターというのはあると思うのですけど,こういった企業再生が通商問題になる可能性というのはあるとお思いでしょうか。
(事務総長) EUにおいては域内統合という大きな観点で,条約に基づいて作られたEUが,その下での権限を行使していますし,WTO等は国と国との関係として,お互いに協定を結んで,その中で定められた範囲内でやっていくという枠組みと私は理解しておりますので,その中で,直ちに問題になるというのは,私個人としてはなかなか想定しにくいと思います。それは国と国との関係ですから,そこで処理すべき問題だと思います。

以上

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