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平成29年6月14日付 事務総長定例会見記録

平成29年6月14日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

平成28年度における主要な企業結合事例について(平成29年6月14日公表資料)

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成29年6月14日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

平成28年度における主要な企業結合事例について

 本日は,平成28年度の企業結合に関する届出等の状況及び主要な企業結合事例について御紹介したいと思います。
 まず,届出等の状況についてでありますが,お手元の1枚紙の資料の1頁目に表を三つ掲載しております。表1は,過去3年度に受理した届出の処理状況をまとめたものであります。平成28年度には,合計で319件の届出を受理いたしました。平成27年度における届出の受理件数は295件ですので,前年度に比べ24件,約8%の増加となっております。
 受理した届出の審査状況につきましては,今申し上げました平成28年度に届出を受理した319件のうち,第1次審査で終了したものが308件となっております。第1次審査終了前に取下げがあったものを除いた311件のうち約99%は,第1次審査の期間,つまり,届出を受理してから30日以内に独占禁止法上の問題がないと判断したものであります。
 平成28年度に届出を受理した319件のうち,第2次審査に移行したものは3件ございまして,このうち,「新日鐵住金株式会社による日新製鋼株式会社の株式取得」につきましては,平成28年度中に,問題解消措置を前提に独占禁止法上の問題はないと判断し,第2次審査を終了しておりますが,残りの2件については現在も第2次審査中であります。
 表2では,平成28年度に審査を終了した第2次審査案件について記載しておりまして,平成28年度に処理をした3件については,いずれも問題解消措置を前提に問題なしとしたものであります。具体的な案件としては,先ほど申し上げました「新日鐵住金株式会社による日新製鋼株式会社の株式取得」の案件のほか,平成27年度中に届出を受けて平成28年度に処理をいたしました「出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社の株式取得」及び「JXホールディングス株式会社による東燃ゼネラル石油株式会社の株式取得」が含まれております。
 また,表3は,外国企業を当事会社に含む企業結合計画に係る届出の件数の推移でございます。平成28年度は,平成27年度に引き続き外国企業を当事会社に含む企業結合計画に係る届出が増加しておりまして,我が国市場における競争に影響を与えるような国際的なM&A案件が引き続き増えていることがうかがわれます。
 お手元の資料の裏側にございますが,本日,平成28年度における主要な企業結合事例を公表しております。この事例集は,平成5年度以降,毎年公表しているもので,今回で24回目となり,これまで261の企業結合事例を公表してきております。企業結合につきましては,法運用の透明性を確保する観点から,また,企業結合規制についての理解の増進や予見可能性の向上を図ることを期待いたしまして,当委員会が審査を行った主要な事例について公表してきているものであります。
 平成28年度の事例集では12の事例を掲載しております。配布資料2頁目では,表4として,掲載事例の一覧を記載しております。
 事例の3と5は第2次審査を行ったものであります。このほか,第1次審査で終了したもののうち,他の事業者の参考となると考えられる事例を選定いたしました。具体的に,平成28年度の事例といたしましては,企業活動のデジタル化やグローバル化の進展を踏まえ,海外の事業者同士のM&Aや電子書籍のような電子商取引関連の事例を掲載しております。グローバルに活動する事業者による企業結合事案の場合,世界各国の競争当局に届出がなされることから,必要に応じて海外の競争当局との間で情報交換を行っております。今回公表する12の事例のうち,「海外情報交換」の欄に○印を付けた3件が,海外当局と情報交換を行った事例であります。また,昨年に引き続き経済分析にも力を入れておりまして,経済分析を実施した事例を2事例選んでおります。事例集の本文や脚注において,それぞれの事例において実施した経済分析の概要を掲載しております。
 なお,個別の企業結合事例の内容につきましては,企業結合課にお問い合わせいただければと思います。
 この事例集は,毎年,公正取引委員会のホームページに掲載しておりまして,多くのアクセスがあります。昨年度の事例集につきましては,発表した昨年6月から今年3月までの10か月間に約7,000件のアクセスがあったところであります。
 以上が平成28年度の主要な企業結合事例,あるいは件数の推移についてでありますが,公正取引委員会に届出がなされた事案は,今申し上げたように近年増加傾向にある中で,最近は,統合のメリットを顧客に還元するということを前面に出して計画される企業結合案件も増えてきているわけであります。従来から,公正取引委員会としては,統合メリットが顧客に還元されるためには,何よりも市場における競争という当事会社の外からの力が有効に機能することが不可欠と考えておりまして,公正取引委員会としては,これらの統合案件に関しましても,引き続き,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかどうかを厳正に審査してまいりたいと考えております。

質疑応答

(問) 企業結合審査で,一般論的にお伺いしたいことがあるんですけれども,日本企業のM&Aとかが進むにつれてですね,プレーヤーに事業会社じゃなくてファンドが参加してくるケースが増えてくると思うんですけれども,例えば日本企業が事業部門を切り出して,そこにファンドが出資する場合,そういうファンドが絡む審査というのは,通常の例えば海外の事業会社とかよりは,少し迅速にできるとか,そういうことはあるんですか。ファンドは売り抜けが究極の目的ですし,ある意味ちょっと国籍不明的な部分もあるんで,出資比率からいっても,どういうふうに見ているか,参考までに。
(事務総長) そこはファンドであるからといって特別な手続等が,あるいは審査の手続等が定められているわけではありませんが,今御指摘がありましたように,そのファンドが,ある一定の取引分野でどの程度のシェアを占めているかということをきちんと立証する必要がある上で,なかなか客観的な情報が入らないのではないかというような御指摘だと思いますけれども,そこについては届出を受けて,その中で必要な情報として,私どもは当事会社に求めていきますので,それが出てこない限りは審査ができないということになると思います。
 ファンドにつきましても,そのファンドがいろいろなところで出資した先の企業が,どういう分野にあるのか,それが届出案件となった事案の取引分野とどういう関係にあるかということは,審査において,まずもって解明しなければいけないところだと思いますので,そこは当事会社にきちんとした情報を求めていくというのが第一歩だと思います。
(問) 先ほど統合のメリットを顧客に還元するというふうなことを打ち出す結合案件が増えているという御指摘だったと思うんですけれども,今回,事例集の中で,その辺りを当初からアピールして,むしろスムーズに審査が進んだとか,そういった案件というのはあるのでしょうか。
(事務総長) あくまで一般論を申し上げたことでございますので,この事例集,あるいはこれまでの事例集の中で,具体的にこれがそうだということを言っているわけではありません。企業結合により,効率化,合理化を図って,場合によってはそのメリットをその企業結合をする当事会社等の顧客にきちんと利益を還元していくんだということが,いろいろ報道等で論ぜられることがあるもので,一般論としてあくまでも言わさせていただいたわけであります。
(問) もう一点,経済分析についてなんですけれども,こういうのをやる場合とやらない場合というのは,どういう判断なのか,もしくは当事会社の方から提出してきたものがあるからやるとかですね,どういったケースならやるというものなのでしょうか。
(事務総長) それは事案によって区々だと思います。経済分析を何のために私どもが使うか,あるいは当事会社が提出してくるかというのは事案それぞれでありますけれども,よくありますのは,一定の取引分野というのを画定するために経済分析を使うということはありますし,また,この事例集の中にも書いてありますけれども,企業結合をした場合の単独行動の効果,一つになったので,値段を上げられるかもしれないという,その効果について検証するために経済分析を使うこともあります。
 当事会社がそういういろいろな場合に,経済分析を提出してくれば,我々としても,その分析が,経済学的にも,あるいはデータ的にも正しいかどうかというのは見させていただいて,必要であれば我々独自の分析をするということもありますし,当事会社が出す,出さないにかかわらず,例えば一定の取引分野でそれが日本市場である,あるいは世界市場であるというような議論が仮に我々と当事会社であれば,それについての説得的な資料という意味で,経済分析をお互いにするということもあると思いますし,我々からするということもあると思います。いずれにしても,そういう経済分析をするに当たっては,経済分析を使用することにつきまして,当事会社,あるいは我々で必要と思う場合に,経済分析を活用しているということでございます。
(問) 経済分析について,企業結合課長からレベルが高くなっているという御説明があったんですけれども,その企業結合課,あるいはほかの課でも,公正取引委員会全体の中で経済学者を増やしたりとか,どういうふうな対策を具体的にとってらっしゃいますか。
(事務総長) 経済分析の重要性というのは,企業結合分野だけではなく,この競争当局,世界的に見ても,一つの重要な点として議論されているところであります。御案内のとおり,EUのDG.COMPやアメリカのFTC,司法省(DOJ)の反トラスト局にはそれぞれ経済分析を専門とする一つのチームが作られているということで,これは企業結合における,先ほど申し上げました市場画定,あるいは企業結合の競争に与える影響というものも算定するだけではなくて,審査部門におきましても,例えば,端緒の助けとするとか,私の記憶が間違いなければ韓国等ではそういうことをやっておりますけれども,談合等のスクリーニングをする,これは審査部門で摘発をする場合に,そういう経済分析のモデルを事案のスクリーニングとして使うとか,いろいろ各当局で経済分析をしております。
 公正取引委員会としても,当然,経済分析の重要性というのは,特にグローバル化,あるいはデジタルエコノミーということで,競争に与える影響を厳しく客観的に,しかも事前に予測していかなければならないというときに,経済分析の役割というのは,更に増していると思います。そのような観点から,我々でも,残念ながら現時点では経済分析のための何か一つの課とか室というのはまだできておりませんけれども,事務総局の職員の中のエコノミストを中心に,経済分析チームというのを最近発足させまして,これは人数の関係から,あるいは組織的に経済分析をやっていくという観点から,公取内の組織横断的になっております。
 企業結合課の職員ももちろんエコノミストとして在籍しておりますし,審査局の中にもエコノミストがおりますので,そういう者が集まって,それぞれその時々に,経済分析が必要であるとして持ち込まれた事案につきまして検討を行っています。もちろん,例えば審査であれば情報を機密に扱わなければいけないという要請もありますので,どこまでそれが可能かというのは事案によって区々でありますけれども,委員にも経済分析の大家をかねてより迎えさせていただいて,御指導いただいているところですが,事務総局としても,この経済分析に力を入れるべく経済分析チームというものを発足させて,経済分析能力の向上に努めているところであります。
(問) そのチームが発足されたのはいつ頃で,何人ぐらいのメンバーなんですか。
(事務総長) これはですね,ある意味でバーチャルな組織ですから,何とか室とか,何とかチームという部屋があるわけではありませんので,数年前から,私が事務総長になったときからそういう検討はしておりまして,昨年,今年になってからですかね,もう一回チームというものをきちっと発足して,これは委員会でも御紹介したということであります。
 人数につきましては,事務総局内の経済的知見のある,いわゆるエコノミスト,あるいは経済学の学位を取っている人ということでありますので,大体10人程度だと思います。これにつきましては,新しい人で,特にまた新規採用者の中で経済分析が得意な人,あるいは中途採用の人でエコノミストを採用することもありますので,人数はどんどん増員していきたいと思っています。

以上

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