[配布資料]
「規制の事前評価(RIA)の内容と競争評価の位置付け」(PDF:133KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成29年3月8日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
規制の事前評価における競争評価の本格実施について
本日,私からは,今週月曜日,3月6日に,総務省の政策評価審議会で政策評価に関する提言が行われたことに関連いたしまして,規制の新設等に係る競争評価についてお話をさせていただきたいと思います。
競争評価(competition assessment)とは,新設される規制等が市場における事業者間の競争にどのような影響を及ぼすかを評価するものであります。国際的にも,10年ほど前にOECDが競争評価のツールキットを作成し,これを参考に,我が国をはじめ各国が競争評価を行ってきているところであります。
我が国では,平成19年10月以降,規制の事前評価(Regulatory Impact Analysis,RIA)の枠組みの中で,規制の新設等に際し,規制によって発生する効果や負担を予測し,それを事前に評価する評価書を作成することとされております。その事前評価の一部として,規制がもたらす社会的費用の一要素として競争への影響を考慮する競争評価が,平成22年4月以降,試行的に実施されてきたところであります。
今回,出されました政策評価審議会の規制に係る政策評価の改善方策についての提言におきましては,このように試行的に実施されてきた競争評価について,本格的実施に移行すべきということが提言されております。
これまでの試行的実施におきましては,競争評価の結果を評価書に記載するか否かは各府省の任意とされておりましたが,今回,提言された本格的実施では,新設等される規制につきまして,各府省が競争評価を行った結果,競争に影響を及ぼす可能性があるとの結論になった場合には,その旨を規制の事前評価書に明記すべきとされております。提言を受け,規制の事前評価を具体的にどのように改善していくかにつきましては,所管庁であります総務省を中心にこれから検討されることとなります。
公正取引委員会としては,この提言を踏まえ,各府省にとって,より使いやすい競争評価チェックリストの改定などについて検討していく所存であります。今回の競争評価に関する提言が実現すれば,新設される規制等の競争への影響について,各府省が説明責任を果たすことにつながり,その結果,各府省は新たな規制の立案に際して競争への影響をより考慮するようになり,ひいては競争制限的な規制の導入が抑制される効果を持つ,あるいは規制の質が向上するものと公正取引委員会としては評価し,期待しております。
なお,競争評価あるいはそのチェックリストの詳細につきましては,担当課であります経済取引局調整課にお問い合わせいただければと思います。
質疑応答
(問) チェックリストの改定に協力していくというか,そこに関わっていくということなんですけども,競争に影響を及ぼす場合,可能性がある旨,明記するということで,そうなった場合は,今後の運用で,公取としては何か関わることはあるんですか。明記された後ですね。
(事務総長) それぞれの所管庁が規制を新設する,あるいは改廃するに際しては,競争に与える影響を考慮した上で検討すべきということでございます。我々は,各府省が自ら競争への影響を評価するための手立てとしてのチェックリストをOECDのツールキットを参考にして作ってきているということでございます。したがいまして,今後,本格的実施された後,事前評価書上,競争に与える影響があるということであれば,政府内の法令協議,ひいては立法府において,その規制の適正さが判断されるということだと思います。もちろん法令協議において,私どもとして懸念する競争への影響が評価書に明記されている場合には,必要に応じ協議をすることになりますけれども,その法案をどうするかということは,法令協議を通じて政府部内で議論を取りまとめ,最終的には立法府において判断されるというふうに理解しております。
(問) この競争評価は,今,提言の段階ですけども,どういうプロセスを経て,いつごろ実施されるんですか。
(事務総長) 政策評価というのは総務省の所管でございまして,今,政策評価審議会の提言が出たということでございます。その提言を踏まえて,先ほど申し上げましたように,具体的にどのように現在の事前評価の内容を改善していくかということは,総務省を中心に,公正取引委員会を含め,政府部内で検討していくことになり,スケジュール等につきましては,私どもが決めることではありませんので差し控えさせていただきたいと思います。
(問) 昨日,発表されました下請法の違反に関する「あらた」に対する勧告についてですけども,下請代金の減額について,例えば値引きとか協賛金等の名目,それについて,下請事業者と合意があっても違反になるというふうに資料に書かれています。この点について御説明いただけますか。
(事務総長) 正にそのとおりでありまして,独占禁止法の優越的地位の濫用と下請法の違うところ,あるいは下請法の特徴として,減額については,下請事業者の責に帰すべき事由によらない限り,あらかじめ定めた下請金額を減額してはいけないということになっております。したがって,合意があろうがなかろうが,当初,決めた下請代金を減ずるのはいけないというのが下請法の基本的な立て方であります。その趣旨は,御案内のとおり,下請法というのは優越的地位の濫用のいわば特別法として,親事業者の意向を往々にして下請事業者は受け入れざるを得ないという文脈にあるときに,もちろん契約自由の原則でございますので,独占禁止法では,中小事業者にとって不利益な取引がなされた場合,合意があるかというのは非常に大事な論点の一つとなりますが,下請法では,そういう力関係というものをあらかじめ前提として,画一的に下請事業者の利益を迅速に保護しようというふうにして立てられたものでございます。一方で,エンフォースメントの方も,命令ではなく勧告でありますから,それを受け入れる,受け入れないは親事業者の判断によるという枠組みの中でやっておりますので,下請事業者の責に帰すべき事由によらない限りは,合意があろうがなかろうが,下請代金の減額は基本的に下請法違反であるということは下請法の一番大きな眼目の一つだと思います。
以上