[配布資料]
「平成29年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等」(平成29年11月8日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成29年11月8日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
平成29年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等
本日は,下請法の運用状況等についてお話しいたします。
公正取引委員会では,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めております。平成28年12月には,下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準を改正いたしました。
平成29年度も引き続き下請法の運用強化に努めており,本日,お手元にあります「平成29年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等」を公表いたしましたので,お手元のうち「概要版」に沿って,その内容を御紹介したいと思います。
まず,概要版の2頁を御覧ください。下請取引におきましては,下請事業者が親事業者から下請法違反に該当するような行為を受けても,その立場上,公正取引委員会などに報告するということが難しいという事情がございます。そのため,公正取引委員会等から親事業者,下請事業者の双方に定期的な書面調査を行って,下請法違反行為が生じていないかを確認しております。
平成29年度におきましては,より一層の情報収集を図る観点から,書面調査の発送数を大幅に増加させました。具体的には,親事業者につきましては従来の約4万通から6万通に,下請事業者につきましては約20万通から30万通へと増加させております。
次に,下請法違反事件の処理状況についてお話しいたします。4頁を御覧ください。棒グラフがございますが,平成29年度上半期におきましては,平成28年度の上半期と比較しまして,勧告件数が3件から5件へ,指導件数は3,796件から4,093件へと,いずれも増加しております。
なお,本年度上半期の勧告事件につきましては,本文の別紙,12頁になりますけれども,概要をまとめております。その中では,大手自動車部品メーカーのタカタ株式会社に対する件,それからコンビニエンスストア本部の株式会社セブン-イレブン・ジャパン,山崎製パン株式会社に対する件など社会的なインパクトの大きい事件を処理しております。このうち,山崎製パンに対する件につきましては,中小企業庁長官から措置請求があった案件でございます。
次に,措置を採った事案の内訳を御紹介いたします。6頁を御覧ください。業種別の内訳を円グラフにしたものでございます。平成29年度上半期におきましては,「製造業」,「卸売業,小売業」,「情報通信業」の順に割合が多く,これは平成28年度上半期と同様の状況でございます。
また,8頁を御覧ください。こちらは違反行為についての内訳をグラフにしたものでございます。本年度につきましても,支払遅延,買いたたき,減額で実体規定違反の全体の約9割を占めており,こちらも昨年度上半期と同様の動向を示しております。
このような取組の結果,下請事業者に対してどの程度,不利益の回復が行われたのかを示しておりますのが,9頁の表でございます。合計欄を御覧ください。平成29年度上半期におきましては,下請事業者7,865名に対しまして,24億4490万円の原状回復を行っており,前年同期を上回る状況となっております。
次に,資料の11頁でございます。下請法違反事件の処理の関係で,自発的申出事案の処理状況を記載しております。この制度の趣旨につきましては,「(注)」に記載してございます。自発的申出の件数は年々増加しておりまして,平成29年度上半期におきましては37件の申出が行われ,上半期に処理した事案のうち2件については,勧告に相当するような事案となっております。
平成29年度上半期において,親事業者の自発的な取組により,下請事業者700名に対して,総額17億2652万円の原状回復が行われ,早期に下請事業者の不利益が回復されたと考えております。
今まで下請法の違反行為に対する処理状況について御説明しましたけれども,下請法の運用におきましては,違反行為の未然防止も重要でございます。概要の12頁以降で,企業間取引の公正化へ向けた取組について説明しております。
まず,13頁でございます。下請法,優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図る観点から,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会を行っております。平成29年度上半期におきましては,基礎講習会を49回,業種別の講習会を17回実施しております。また,下の段にございますが,中小事業者からの求めに応じて,公正取引委員会の職員がその中小事業者のもとに出向く,「中小事業者のための移動相談会」を38か所で開催するなど,きめ細かな対応をとっております。
また,その次の頁でございますけれども,企業間取引の公正化を図る必要の大きい分野について,実態調査などを行い,独占禁止法,それから下請法の普及・啓発に活用しております。現在は,「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査」,それと「荷主と物流事業者との取引に関する書面調査」を実施しております。
そのほか,「概要」にはございませんけれども,公正取引委員会では,各地域の下請取引などの実情に明るい中小事業者の方々などに,下請取引等改善協力委員を委嘱しております。各協力委員から,下請取引等をめぐる最近の状況などについて意見聴取を行っておりまして,その主な内容につきましては,本文の資料の21頁以降に記載しております。こうして協力委員から頂いた生の声は,今後の施策に生かしていきたいと考えております。
最後に,平成29年度下半期における取組を申し上げます。
先般の会見でもお伝えいたしましたが,公正取引委員会は,中小企業庁と共同して,毎年11月に「下請取引適正化推進月間」を行い,下請法の普及・啓発活動を集中的に行っております。今年度の標語は「取引条件 相互に築く 未来と信頼」で,ポスターなどで活用しております。
また,全国47都道府県,62会場におきまして,下請法に関する講習会を開催することとしております。講習会のテキストをもとに,それぞれのレベルに合わせた研修を行っております。ここにも先ほど申し上げたキャンペーンの標語を使っております。このテキストは公正取引委員会のホームページからも御覧になることができます(注)。
さらに,今月15日には,親事業者及び関係事業者団体に対して,下請法の遵守の徹底などを要請する文書を発出することを予定しております。
先ほど申し上げましたように,依然として下請事業者が厳しい対応に迫られている状況の中,公正取引委員会としましては,引き続き下請法違反行為の未然防止に努めるとともに,例えば下請事業者が受ける不利益が重大であると認められる場合には勧告を行うなど,迅速かつ効果的な対処を行うことによって,下請取引等の一層の適正化に努めてまいりたいと考えております。
なお,お示ししました資料の詳細等,御質問がございましたら,担当課の方にも御照会いただければと思います。
以上