[配布資料]
「公立中学校における制服の取引実態に関する調査について」(平成29年11月29日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成29年11月29日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
公立中学校における制服の取引実態に関する調査について
本日は,「公立中学校における制服の取引実態に関する調査報告書」について御紹介いたします。
学校の制服は,入学に際して,その学校が指定した制服を生徒の保護者が購入するのが一般的ですけれども,保護者が入学に当たって準備する品目の中で,制服の購入価格というのは比較的多くの割合を占めております。また,その販売価格は近年上昇傾向にあります。こうした状況を踏まえて,公立中学校の制服取引における学校,製造業者,販売業者などの間の取引慣行などについて,競争政策上あるいは独占禁止法上問題となるようなものがあるのかどうかについて,昨年の12月に実態調査を開始いたしました。
この実態調査の詳細につきましては,本日午後3時に担当室長から公表,御説明をいたします。私からは調査結果のポイントを簡単に御紹介したいと思います。
この調査でございますけれども,手法としましては,公立中学校に対するアンケート調査,それから,セレクトしました中学校,販売業者,製造業者に対するヒアリング調査などを通じて行ったものであります。
学校は通常,自ら制服を直接購入するということはありませんけれども,生徒・保護者の経済的負担を考慮して,制服の取引に関し,制服のメーカーや販売店に対して,仕様の変更時の価格交渉や販売店の指定などについて,一定の関与を行っています。
また,調査の中では,価格という点については,制服の仕様がある程度共通化していたりしていること,それから,販売店の数が増加していること,そうしたことは価格が安くなるということに統計上有意に関係するという結果も出ております。
その一方で,一部の学校においては,制服を指定しているんですけれども,そのメーカーを指定した理由が不明なまま,同じ制服メーカーを指定し続けていたり,あるいは,指定販売店などの変動が余りないといった競争に対する意識が十分でない状況も見受けられました。
そのため,この調査の結果としまして,学校に対しては,制服の取引に関与する際には,コンペや入札などいった方法で制服メーカーや指定販売店等を選ぶことなどといった制服メーカー間,それから販売店間の競争が有効に機能するような取組が行われることを期待するとしております。
また,学校が価格交渉などに関与する際に,制服メーカーや販売店等の独占禁止法違反行為を誘発することがないよう留意すべき点についても指摘をしております。
さらに,制服メーカーや販売店に対しましては,学校の関与の有無にかかわらず,独占禁止法違反の要件に該当する行為が行われた場合には,直接,法的責任を問われることに留意して,適正な取引が行われることを期待するとしております。
公正取引委員会としましては,今後,学校関係者などに対して,積極的にこの調査結果を周知するとともに,引き続き,公立中学校における制服に関する取引の動向を注視し,独占禁止法に違反する行為があれば厳正に対処してまいります。
また,この調査結果の公表によりまして,保護者にとってより好ましい制服の取引環境というものが形成され,保護者が安価で良質な制服を購入することができるようになることを期待しております。
質疑応答
(問) 現在,これとは別に,JRの制服など,いろいろ公正取引委員会が調査をしている件があるかと思うんですけれども,そちらと今回のこの中学校の制服に対する調査などの関連などはあるんでしょうか。
(事務総長) 今,御指摘の企業が発注する制服について,いわゆるカルテル等が行われていたのではないかということで調査を進めているところでございますけれども,今回公表します中学校の制服の件は,実態調査の結果,先ほど申し上げましたような競争政策上,改善していただいた方がよいのではないかという点があるかどうかという視点から行ったものでございますので,両者の間には関係はございません。
(問) こういった実態調査の対象として,学校が含まれたりとかですね,提言の主な対象が学校になっていたりというようなケースというのは,珍しいものなんでしょうか。
(事務総長) この種の実態調査の中では,取引に直接関わっている人たちについて調査するのが通常ですので,制服の場合には学校というのは直接取引環境の中には出てこないという意味で,余りあることではないと思いますけれども,過去にも,取引の仕方といいますか,こうしたことで学校が関わるようなことについても含まれていたような調査をしたことはありますので,全く初めてというわけではありません。
(問) 調査自体は,大分前からされていたということなんですけれども,改めて,今回,公立中学校の制服というのを調査の対象にした理由があれば教えてください。
(事務総長) 冒頭でも申し上げましたけれども,昨今,制服の価格というのが徐々に上昇しているというのがあって,独占禁止法というのは,企業間の行為というのを基本的に問題にするわけですけども,その目的としては,消費者の利益ということもございますから,特に価格というのは大きな指標の一つでありますので,そうした中で,独占禁止法,あるいは競争が十分に行われていないということが,その価格が上昇していることの背景にあるのであれば,そうした点については何らかの見直しを行っていただいた方がいいのではないかというのが基本的な視点です。
(問) 価格上昇の要因になるものというのは,例えば繊維価格が上がっているとかですね,例えば子供が減っていて,一着当たりの利益が十分に得られないとかですね,いろんな要因があると思うんですけれども,今回調査をしてですね,近年,制服の値段が上がっているというのは,どういうところに原因があったというふうにお考えですか。競争政策上,問題があるからということに,今回のこの調査をやってみて,そういう御見解をお持ちなんでしょうか。
(事務総長) 価格が上昇する要因というのは,おっしゃるとおり,様々な要素があるかと思います。今回の調査は,その流通に学校が関わっているという点,何らかの関わりを持っている点も含めて,その流通という視点から何か改善すべきことがないのかということで調査を行い,その調査結果に基づいて提言をしております。もちろんコストの上昇であるとか,そうしたものはあると思いますので,価格が高いということ自体に何か問題があるということを申し上げようとしているわけではありません。ただし,その上昇している要因,あるいは高止まりしている要因の中に競争が十分に行われていないという要素があるのであれば,その点はできるだけ競争に配慮したやり方に変えていただいた方がいいのではないかという視点であります。
(問) 今回の調査の対象なんですけれども,公立学校ということであると,小学校とか高校もあるかと思うんですが,今回,対象を中学校ということにされたのは,どういう観点でしょうか。
(事務総長) 中学校までは義務教育であり,公立の中学校に進学するということになりますと,どこの中学校に行くのかというのがほぼ決められている。進学する中学校においては,ほとんど全てのところで制服が指定されている,ほぼ必ず買わなければいけないという状況があって,そういう意味で,公立中学校というのが一番こうした調査をするにはふさわしいのではないかということです。
先ほど申し上げた制服の価格が上がっているというのは,必ずしも公立中学校の制服の価格ということで調査をしているわけでありませんけれども,やはりほかの制服,ほかの形態の学校であってもですね,ここで取り上げられているような流通上の,あるいは調達と言っていいのか,そうしたときに留意しなければいけない点というのは,共通するものがあるというふうに思います。
以上