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平成29年12月20日付 事務総長定例会見記録

平成29年12月20日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

「中国競争当局との意見交換について」(平成29年12月11日公表資料)

[発言事項]

事務総長会見記録(平成29年12月20日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

中国競争当局との意見交換について

 今日はまず,先週行われました中国の競争当局との意見交換についてお話しいたします。
 先週の12日,当委員会の山本和史委員が中国の三つの競争当局,すなわち商務部,国家発展改革委員会及び国家工商行政管理総局を訪問いたしまして,それぞれの当局との間で意見交換を行いました。各部署の概要につきましては,お手元の配布資料のとおりでございます。
 その中身でございますけれども,まず,企業結合規制を担当します商務部につきましては,山本委員が呉振国独占禁止局長と面談した後,両競争当局による意見交換が行われました。意見交換では,両国における企業結合規制の概要及び最近の主な企業結合事例につきまして互いに紹介し合うとともに,今後,個別の企業結合審査においては,必要に応じて協力を行っていくことを相互に確認いたしました。
 次に,価格に関連する独占的協定,市場支配的地位の濫用等についての執行を担当します国家発展改革委員会につきましては,山本委員が張漢東価格監督検査・独占禁止局局長と面談した後,意見交換が行われました。意見交換では,日本側から,競争評価制度の本格実施やデータと競争政策に関する検討会報告書などについて説明を行い,中国側からは,中国における競争評価制度として2016年から開始されています公平競争審査制度についての説明がございました。
 最後に,価格以外に関する独占的協定,市場支配的地位の濫用等の執行を担当します国家工商行政管理総局につきましては,山本委員が楊紅燦独占禁止反不正当競争執法局長と面談した後,意見交換が行われました。意見交換では,両国における最近の動向や国際協力の状況について互いに紹介するとともに,今後より一層,協力関係を深化させるために,両競争当局間で現在検討されております協力に関する覚書の締結に向けて,可能な限り早期の締結を目指して努力するということを相互に確認いたしました。
 複数の国にまたがる事案について,各国競争当局の競争法執行が活発化している中で,特に近年,その傾向を強めております中国との間で,競争法執行分野における協力関係を構築,結ぶということの意義は大きいと考えております。公正取引委員会としましては,今後とも日中両競争当局間の協力・連携を一層深めてまいりたいと考えております。

平成29年の公正取引委員会の活動について

 そして,本日は今年最後の定例の会見となりますので,平成29年の公正取引委員会の活動について振り返ります。
 一つ目は,独占禁止法違反事件への取組状況です。公正取引委員会は,国民生活に影響の大きい事案,中小事業者等に不当に不利益をもたらす事案への取組強化などを重点施策として,独占禁止法違反事件の処理に当たってきております。平成29年におきましては,これまで9件の排除措置命令を行うなどをいたしました。個々の事件の概要につきましては,お手元の資料を御覧ください。
 そのほか,資料にはございませんけれども,公益事業分野に関する取組として,6月に,戻り需要家への対応に関して北海道電力に対して警告を行い,また,IT・デジタル関連分野に対する取組として,6月に,出店者との取引条件に関するアマゾンジャパンによる独占禁止法違反被疑事件の処理について公表いたしました。このほか,野菜の不当廉売に対する警告も行いました。
 公正取引委員会としましては,独占禁止法違反行為に対して,引き続き厳正に対処してまいります。
 2点目は,経済取引局の活動でございます。まず,企業結合審査でございますが,平成29年における企業結合計画の届出件数は11月末の時点で275件でした。このうち,1次審査で終了したものが259件,その他の事案のうちで,現在2件について2次審査を行っているところでございます。なお,本年,2次審査が終了したものは,1月に公表しました「新日鐵住金株式会社と日新製鋼株式会社の統合」,そして先週公表いたしました「株式会社第四銀行と株式会社北越銀行の統合」の2件でございます。
 次に,競争環境の整備に関する取組についてお話しいたします。4月のガス小売業への参入の全面自由化などに伴いまして「適正なガス取引についての指針」を改正いたしました。また,10月から規制の政策評価における競争評価が本格的に実施されることに伴い,競争評価の手順及び考え方を示した文書を公表しました。
 また,新たな分野における競争政策上の考え方の検討整理として,事業活動における重要性が増しているデータ収集及びその利活用について,6月に「データと競争政策に関する検討会」報告書を公表いたしました。同報告書では,大量のデータが一部の事業者に集中しつつあるとの指摘もあり,競争が制限され,消費者の利益が損なわれるおそれがある場合には,独占禁止法による迅速な対応が必要であることなどが指摘されています。今後は,この報告書の内容を念頭に置きながら,データ分野に関する競争政策の推進,法執行を行っていく必要があると考えています。
 また,8月には「人材と競争政策に関する検討会」を設置いたしました。これは,インターネット上で企業と人材のマッチングが容易になったことや,企業における終身雇用体制の変化などを背景としまして,就労形態が多様化し,雇用契約以外の契約形態が増加するなどの就労形態を巡る環境変化を踏まえて,使用者の人材獲得競争を妨げる行為等について,独占禁止法をどのように適用していくのかという考え方を理論的に整理していこうという試みでございます。
 続いて,独占禁止法の制度的な動きについてお話しいたします。昨年の12月に公布されました独占禁止法の一部改正を含むTPP協定整備法により,確約手続が導入されることになりました。そのために必要な規則を制定するなど,関係法令については所要の整備を行いました。協定が早期に発効して,確約手続の関係規定が施行されることを期待しております。
 また,近年の経済活動のグローバル化・多様化・複雑化の進展に機動的に対応できるような課徴金制度の改正について,4月に公表されました独占禁止法研究会報告書などを踏まえて検討を進めました。
 3点目としまして,取引部の活動についてお話しいたします。まず,下請法違反行為への是正として,配布資料にもございますが,平成29年においては10件の勧告を行っております。勧告以外の措置である指導と合わせまして,11月末までに親事業者296名から下請事業者1万1001名に対し,総額約34億円の原状回復が行われております。平成29年には自動車部品メーカーやフランチャイズ本部などによる高額な減額事件といった社会的インパクトや特色のある事件を対象に勧告を行っております。
 また,違反行為の未然防止も大変重要でございますので,下請法などの普及啓発活動にも積極的に取り組みました。
 消費税転嫁対策への取組でございます。消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,転嫁拒否行為の未然防止のための取組のほか,違反行為に対する迅速かつ厳正な対応をしております。違反行為に関しましては,お手元の資料にございますように,本日までに5件の勧告を行い,不動産取引業者や教育講座の運営業者などによる転嫁拒否行為を取り上げて,社会的な注目を集めました。そして,11月末までに,中小企業庁と合わせまして545件の指導を行い,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益,約9億4000万円が約2万名の特定供給事業者に支払われております。
 また,取引実態調査につきましては,3月に「ブライダル」と「葬儀」,6月に「液化天然ガス」,11月に「公立中学校の制服」について調査結果を公表いたしました。さらに,eコマースの発展・拡大など,我が国における流通・取引慣行の実態が大きく変化してきたことに対応するため,6月に「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を改正いたしました。そして,汎用性・利便性の高いものとするため,全体の構成の変更や,適法・違法性判断基準の更なる明確化を行いました。このほか,参考となる相談事例集も公表しております。
 4点目として,公正取引委員会の国際的な活動についてお話しいたします。
 公正取引委員会の国際的な取組は多岐にわたっておりますが,その一つに競争当局間の連携強化があります。先ほど申し上げました中国との間のように2国間での意見交換や,東アジア競争政策トップ会合の開催に加え,協力に関する覚書の締結も進めてまいりました。3月にはモンゴルの公正競争・消費者保護庁,5月にはカナダ競争局,6月にはシンガポール競争委員会との間で,それぞれ協力に関する覚書などを締結いたしました。我が国が各種の経済連携協定等の締結交渉を進めている中で,競争分野での協力枠組みが適切に構築されるよう,これらの交渉に積極的に対応してきております。
 さらに,新興国の競争当局との関係強化にも注力しておりまして,JICAの協力の下,インドネシア,モンゴル,ケニアなどの競争当局へ技術支援のほか,日ASEAN統合基金を活用して,訪日研修や現地での研修,ワークショップを行いました。また,インドネシア事業競争監視委員会やUNCTAD事務局へ専門家を派遣しています。そのほか,国際競争ネットワークやOECD,UNCTADなどの多国間での取組も一層充実させてまいりました。

質疑応答

(問) 中国競争当局との意見交換について,2点ほど質問があります。この意見交換の中で,まず1点,東芝の半導体部門について中国当局も審査をしていると思うんですけど,これについての言及はあったのでしょうか。あと,2点目,私の勘違いかもしれませんが,今までは,商務部と国家発展改革委員会と意見交換していたんですけど,3番目の国家工商行政管理総局というのは,新しく意見交換することになった相手なのか,その辺りについて詳しく教えてください。
(事務総長) まず,1点目の東芝メモリに関するものにつきましては,今回の意見交換は企業結合規制全般,それから最近の執行状況について意見交換をし合ったということで,個別のケースについて,何か協議をしたということはございません。
 それから,国家工商行政管理総局ですけれども,これまでも意見交換しておりまして,今回が初めてというわけではございません。

(問) 先日,WTOの会合の場でも日欧,日米欧との三極会合があって,そこで少し話題になったんですけど,中国の技術移転に関する問題で,企業結合の審査の中で問題解消措置の形で技術移転が出てくることが,過去,PHVとかそういったケースであったと思うんですけど,今回,そういった産業政策と競争政策のちょうど中間地点にあるような技術移転についてのポリシーが示されたとか,そういったことはありましたでしょうか。
(事務総長) 意見交換の細かい内容は差し控えさせていただきますけれども,今,おっしゃったような形で,例えば産業政策との関連性であるとか,そういったことは今回のテーマにはなってはおりません。

(問) 今ほどもお話ありましたが,先週,第四銀行と北越銀行の統合計画が承認されました。その所感とですね,今後の地方銀行の在り方,また,地域のために第四銀行と北越銀行に何を求めるかという,その3点について,お聞かせ願えますでしょうか。
(事務総長) まず,所感ということでございますけれども,先般の公表の際にも担当部局の方から申し上げたんではないかと思いますが,今回,地方銀行統合という案件に関しては,初めてといっていいのかもしれませんけど,公正取引委員会の審査における考え方をきちんと示すことができたと思っております。今後,似たような案件,現在進行中のものも含めですね,あろうかと思いますので,そういった方々は,公正取引委員会はこういう考え方を採るんだということを前提に,計画の内容であるとか,その後,もし対処が必要であれば,こういう対処の方法があるんではないかといったことを御検討いただけたらいいのかなというふうに思います。
 後の二つへのお答えは似たようなことになってしまうかと思いますけれども,先般のこの会見でも申し上げましたが,地方銀行が事業を展開していくためにやれることというのは,いろんな種類,統合以外にもですね,あるいは地域内の統合以外にもいろいろな手段があるんだろうというふうに思いますので,それぞれの事業実態に応じて真摯な御検討をしていただきたいと思います。
 また,私どもはあくまで競争を制限するかどうかという観点から統合を審査して,この第四銀行,北越銀行のケースについては問題ないという判断をしましたので,あとは,若干矩をこえた発言になってしまうかもしれませんけれども,統合によるメリットというのはきちんと需要者に反映していただければなというふうに思います。

(問) 今,東京地検特捜部と公正取引委員会が,大手ゼネコンに対して独占禁止法違反で捜査をしているという報道があります。この中で,そのうちの一つはリーニエンシーを自己申告したんじゃないかというような報道もありまして,それは個別の事案として置いておいて,こういう独占禁止法における談合の実態解明において,リーニエンシーというのはどういう意味を持つのか,それから,来年の独占禁止法改正をにらんでですね,どのような期待をされておられるのか,総長の所感を改めてお聞かせください。
(事務総長) 課徴金減免制度は,平成17年の独占禁止法改正で導入されて10年ほどが経っております。カルテルや談合といった隠されてしまう違反行為の発掘には有効であるということが,導入をお願いしていった際の理由の大きなものでありました。
 この10年間の実態を述べますと,最初に適用された案件も談合事件でありましたし,そういう意味では,隠れた違反を発見するという意味では非常に大きな役割を果たしてきたと思います。ですから,そうした役割というのは今後も期待されるところだと思います。
 その一方で,今回の法改正との関連でいえば,やはり10年間使ってきた中では,こういうふうにすれば更にもっと利用されるだろう,我々としてもより有効に使うことができるだろうと思える点はございましたので,例えば,申請事業者からの協力をどういうふうに継続的に引き出していくのかというのが一つの大きなテーマに,この10年間でその意識が強くなってきたと思いますので,そうした点にきちんとした手当てをしていきたいとは考えております。それを現在,検討中の課徴金制度の改正案の中にも盛り込んでいければと思っております。

(問) リニア新幹線の捜査についてですけども,まだ捜査は始まったばかりですが,日本を代表するゼネコン業者に対して,東京地検とともに捜査が始まったことについての感想と,あと,最初から公正取引委員会も一緒に始まったという御理解でよろしいんでしょうか。
(事務総長) 御指摘の案件について捜索等が行われたことは,当事会社の方からも公表されておりますので,それ自身は否定するものではありませんが,やはり個々の事案の中身に関することになりますので,その手法も含めて,こういう場で申し上げるのは適当ではないと考えております。いずれ結論が出れば,きちんと公表することになると思いますので,それまでは,今後も質問されても同じような答えになるかと思います。

以上

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