[配布資料]
「独占禁止政策協力委員から寄せられた主な意見(平成29年度下半期)について」(平成30年4月11日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成30年4月11日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独占禁止政策協力委員から寄せられた主な意見(平成29年度下半期)について
本日,私からは,独占禁止政策協力委員から寄せられた主な意見の概要についてお話しいたします。
本日,平成29年度下半期に行いました,独占禁止政策協力委員からの意見聴取において頂いた主な御意見を公表いたします。
この独占禁止政策協力委員制度は,平成11年度から行っているもので,上半期と下半期の年に2回,競争政策や公正取引委員会の活動などに関する御意見を伺っております。現在,全国各地域の経済界,報道機関,学識経験者,消費者団体から有識者150名の方々に協力委員をお願いしています。
平成29年度下半期には,お手元の資料の1枚目,2枚目にございます四つの項目を中心に御意見を頂きました。
まず一つ目の「公正取引委員会に対する期待」としまして,「消費者が自分の身近な取引の実態に気が付いていないことも結構あるので,そういったものについて競争政策の専門家の立場から調査し,報告書を公表することは有益である」,「日常化している談合構造にメスを入れる機関が必要であり,リソースの制約は理解できるが,公正取引委員会には尽力してほしい」,「外国事業者の事業活動が日本国内の市場競争に影響を与える場合には,厳正に監視し法執行に当たる必要がある」といった御意見を頂きました。
次に,「経済社会環境の変化と競争政策の役割」についてお聞きしましたところ,様々な分野や業種に関する御意見を頂きました。例えば,「民泊は低料金なので,ホテルや旅館といった既存の宿泊事業者は厳しい価格競争に巻き込まれる可能性がある。その際,それらの事業者と取引する納入業者にそのしわ寄せが行くことがないように注視してほしい」,「農地に工場を建設して,天候に関係のない作物育成をしたいというところもあるが,農地に工場を建設することは規制されているので,なかなかそのような取組が進まない」との御意見も頂いております。
三つ目の「中小企業・小規模事業者の取引条件改善,生産性向上等」については,例えば,「フリーランス等と事業者との取引について,フリーランスを個人事業者と位置付け,独占禁止法の適用対象であるとの考え方を示したが,今後は,実例を積み重ねていくことが重要である」といった御意見がありました。
四つ目の「IT・デジタル関連分野への取組」について御意見を伺ったところ,例えば,「最近では契約のマネジメントが大企業側にとっては非常に重要な戦略になっており,これが新規参入を阻害したり,優越的地位の形成につながったりして,結果,中小企業の成長に悪影響を及ぼしている可能性がある」,「市場シェアは大したことがないが,先端的なシステムやソフトを開発していたり,有力なノウハウを有している企業を買収することにより,あっという間に企業グループの規模が巨大化することがあるため,企業結合の審査基準を見直す必要がある」などの御意見を頂きました。
公正取引委員会としましては,これらの独占禁止政策協力委員からの御意見,御希望を今後の競争政策の適切な運営に役立ててまいりたいと考えております。
なお,本件の担当課は官房総務課でございます。
質疑応答
(問) 九州の地銀統合の関係なんですけども,再調査の分析状況,3月に回収を終えて,今,4月になって分析していると思いますが,その状況はどうなのかということと,銀行側に公正取引委員会の考え方を伝えるのは従来からゴールデンウィーク前後という形だったと思うんですけども,その辺の考え方はいかがなんでしょうか。
(事務総長) 分析については,もちろん日々仕事をしているわけですから,先へ先へと進んでおりますけれども,最前から申しておりますように,今月中には終了したいというふうに考えております。そして,その分析が終了する,していないにかかわらずですね,当事会社との間のコミュニケーションというのは必要に応じて行っているところでございますので,分析が終わらなければ事が始まらないとか,そういうことではないと思います。
(問) 地銀統合の件なんですけど,先日,長崎県の市長会が2社の早期統合実現を求める要望書を提出しました。また,金融庁の有識者会議が2社の統合は地域経済にとって望ましいとの見解をまとめて,本日,夕にも公表される予定というふうに聞いています。事務総長として,こうした外部の動きというか,圧力と言ってもいいのかもしれないですけど,こういう動きをどのように捉えておられるかということをお聞きしたいのが1点と,公正取引委員会としての今後の対応,取組についても教えていただけたらと思います。
(事務総長) ある種の統合案件について,それに利害関係を持つ方,あるいは直接は利害関係を持たない方でも,様々な意見なり考え方を表明されるということはあるんだと思います。今,御質問に「圧力」という言葉がありましたけど,別に私どもはそうしたことの一つ一つが何らかの圧力であるというふうに見るのは適当ではないと思います。今も申し上げましたように,いろいろな立場の方が,それぞれのお立場でいろんな発言なりをされていくというのは当然あり得ることでございますけれども,公正取引委員会としましては,個々の企業結合の案件が,近い将来において競争を実質的に制限することとなるかどうかということを,事実関係に基づいて,きちんと判断していくということが重要だと思っております。
(問) 重ねてなんですが,であれば,特にこういう外部の動きということに縛られず,自分たちの審査というものは法に基づいて行われるという,そういう認識でよろしいんでしょうか。
(事務総長) 基本的には,そういう認識で結構でございます。ただ,その過程において,先ほども申しました事実がどうなっているのかというのを判断するに当たって,様々な,かつ,できるだけ新しい情報を収集して,それに基づいて判断していくということでございます。
(問) 今の質問に関連してですね,今朝の報道でですね,先ほどの金融庁が報告書を今夕,公表するということに関連して,その中で,統合する際には金融庁が金利状況などをモニタリングする必要性があるという文言が盛り込まれているというふうにも報じられているんですけれども,地域でですね,競争が実質的に制限されるおそれがあるところで,金融機関が採る問題解消措置として,そういった行動的措置が適切である,それが有意であるというふうにお考えでしょうか。
(事務総長) 金融庁の検討会議の報告書の内容について,いろいろ報道されているのは存じ上げておりますけれども,私ども自身としましては,その中身については承知しておりませんので,その点は置きまして,今,行動的措置がどうなのかという御質問として承れば,競争を実質的に制限することとなる場合には,当然,独占禁止法に違反することになるわけですから,当該企業結合についてはそれをやめていただくということにならざるを得ないと思います。ただ,その問題点を解消するための措置というものがきちんと採られるのであれば,それを前提とすれば,競争を実質的に制限することとならないという判断は可能であります。その際において,構造的措置と行動的措置があるわけですけれども,その措置の内容が構造的措置でなければならないとか,行動的措置では不十分だとかということを先見的に考えているわけではありませんので,当事会社が実行できるものであって,その中身が競争の制限という結果に対して,その懸念を除去するために有効・有益なものであるということであれば,当然,その中身をよく見させていただいて,判断するということになります。
(問) 金融庁が事後的に監視するというものが,金融機関の問題解消措置として適切かどうかというのは,まだ物が出てきてない以上は判断しづらいということでしょうか。
(事務総長) 基本的には,そうお考えいただいて結構だと思います。そして,先ほど申し上げましたように,将来変わる市場環境も含めてですけれども,当事会社が,こういうことができますというのがまず大前提でありますので,そうした上で,価格であるとか,供給能力であるとか,供給のバラエティーであるとか,選択肢という形でこれまで申し上げてきたかと思いますけれども,そうしたものがきちんと確保できるのかどうか,そうした判断に応えられるものになっているのかどうかというのが中心になります。
以上