[発言事項]
事務総長会見記録(平成30年6月20日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
消費者アドバイザー制度について
本日,私からは,最近,公正取引委員会が委嘱を開始しました「消費者アドバイザー」についてお話しいたします。
企業間の競争が行われるということは,消費者の選択を通じて企業が消費者に選ばれるために切磋琢磨するということです。競争政策は,消費者の選択肢が確保されている状態,つまり,市場に多様な商品やサービスが提供される状態を作ることによって,消費者主権を実現しております。独占禁止法の目的規定にも,このことは「一般消費者の利益を確保すること」として謳われております。
また,競争は,消費者に正しい情報が伝達され,適切な商品選択が行われることによって有効に機能するものですので,競争政策の運営に当たっては,消費者の視点を適切に把握することが非常に重要だと考えております。他方で,少子高齢化の進行,情報化の進展といった社会の急速な変化に伴い,消費者ニーズ,消費者の視点も多様になっていると感じております。
消費者との連携強化につきましては,2月28日の会見でも述べましたが,その一環として,変化する消費者のニーズ・視点を適時に把握し,競争政策の運営にいかすため,今般,当委員会は,主要な消費者団体に依頼して,知見のある担当者を御推薦いただき,当委員会の「消費者アドバイザー」として委嘱することといたしました。消費者アドバイザーの皆様からは,最近の消費者問題の動向や競争政策に関連すると思われる消費者問題についての知見を当委員会に御提供いただき,当委員会はそれを競争政策の運営にいかしてまいりたいと考えております。
もう少し具体的に申しますと,当委員会の職員が,消費者アドバイザーに定期的にお話を伺い,最新の消費者問題の動向や当委員会が消費者の視点を知りたいと考えているテーマについて知見をいただく,また,随時,消費者アドバイザーから当委員会の活動に関連すると思われる情報をいただく,さらには,それぞれの所属団体において独占禁止法や競争政策の普及・啓発に御協力いただく,そういった一連の協力関係を進めて,消費者と当委員会の距離がより一層近づくような取組を目指してまいります。
現在,御協力いただいている団体を五十音順に申し上げますと,ECネットワーク,コンシューマネット・ジャパン,主婦連合会,全国消費者団体連絡会,全国消費生活相談員協会,全国地域婦人団体連絡協議会,日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会,日本生活協同組合連合会の八つの団体で,いずれも全国レベルで活動をする主要な消費者団体です。先日,消費者アドバイザーの委嘱の手続を済ませ,早速お話を伺い始めております。
公正取引委員会は,この消費者アドバイザーの取組などを通じて,これまで以上に消費者との連携を強化し,消費者の選択肢を適切に確保する観点から競争政策を推進してまいりたいと考えております。
本件の担当課は取引部取引企画課でございます。
質疑応答
(問) 消費者の視点の確保ということですけど,何か,会議とか,一般に公開されるような形で持ったりということをお考えだったりしますか。
(事務総長) 具体的に,どのような活動をしていくのかというのは,いろいろ考えていきたいと思います。ただ,私どもとしても,いろいろな消費者サイドの御意見を伺いたいということですので,そのやり方というのは,何か一堂に会していただくという,それを公開の場でということよりも,むしろ膝詰めでですね,直接お話を伺ったほうが有効なのかなというふうに考えています。
ただ,いろんな方法があると思いますので,それはまた,今後いろいろ考えていきたいと思います。
(問) 関連でもう一つ。消費者の視点というと,独占禁止法というと,どちらかというと企業の規制という何となくイメージがあるんですけども,どういうふうにいかされていくのかなというのを例示いただけると有り難いかなと。
(事務総長) 確かにおっしゃる点がですね,私どもとして,消費者との連携を強めていかなければいけないと感じた一つの課題だと思っています。私どもは景品表示法を所管していた時代は,消費者団体といろんな形で繋がりが深いものもありました。ただ,景品表示法が,消費者庁ができ,そちらに移管されたことによって,消費者団体の方々からも,公正取引委員会との関係が以前より疎遠になってしまったのではないかという御意見も頂戴しております。
それも一つには,独占禁止法を,あるいは競争政策を運用していくということが消費者に対してどういうメリットがあるのかということがなかなか伝わりにくい。景品表示法のようにですね,消費財の不当表示というような,より直接的に目に見える,分かりやすいというものとは違って,若干間接的な関係になりますので,そうしたメリットというのはどこにあるのかというのがなかなか伝わりにくいという状況があったと思います。
独占禁止法,直接的には,例えば,再販売価格維持行為であるとか,そう多く事例があるわけではありませんけれども,欺瞞的な顧客誘引であるとか,そうしたものが消費財に関して行われていれば,それは直接消費者にとっての不利益ということになるでしょうし,また,消費財の価格カルテルであるとか,そうした事件についても,そのカルテルが崩壊することによって,より適切な消費者に対する価格設定が行われるということになるんだというふうに思います。
また,政策面という意味でもですね,現在,フォローアップを行っておりますけれども,例えば,携帯電話の取引実態であるとか,昨年公表しましたけれども,公立中学校の制服に関する調査であるとか,そうしたものは,やはり消費財に関わるものですので,消費者にとっても,競争の成果,こういう形でいかされるんだということをお示しする一つの成果になるのではないかと思います。
こういった活動は,消費者の方々の御関心も踏まえながら検討していきたいと思います。
(問) とすると,消費者のかたから,あそこの店では,こういうひどい不当なことをやっているという情報を広く集めるというよりは,独占禁止法の普及とか啓発に協力してもらうというイメージなんですかね。
(事務総長) 個別の,もちろん情報提供,この商品についてはどこに行っても値段が同じだというような話,それはもしかしたら再販売価格維持行為が行われているかもしれないという一つの情報ではありますので,そういった情報も歓迎しますし,また,先ほど後半で申し上げたような政策対応に,例えばこういう規制があって,何かこういうのがおかしいのではないか,そういったことも御意見としては頂戴できればと思っています。
以上