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平成30年1月31日付 事務総長定例会見記録

平成30年1月31日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(平成30年1月31日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書について

 本日,私からは,実態調査報告についてお話しいたします。
 公正取引委員会では,違反行為の未然防止の観点から,様々な分野の取引の実態について調査を行ってきております。今般,大規模小売業者と納入業者との取引において,優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為が行われていないかについて調査を実施いたしまして,その結果がまとまりましたので,本日,報告書を公表することといたしました。
 報告書の詳細につきましては,本日午後3時に担当の企業取引課から御説明いたします。私からは調査の結果のポイントを,お手元の配布資料に沿いまして,簡単に御説明いたします。
 まず1頁,調査の方法でございます。大規模小売業者との取引があると思われる納入業者約3万2000名に対しまして,調査票を送付して,アンケート形式により問題となり得る行為などを調査いたしました。
 また,今回の調査は,納入業者の具体的な取引についても調査するために,納入業者にそれぞれの取引高が多い上位3社との取引について回答してもらいました。さらに,一部の納入業者にはヒアリングも行っております。
 次に,資料の3頁でございます。「調査結果[2]」とあるところを御覧ください。(1)にありますように,優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為に関して,行為類型別にみますと,「協賛金等の負担の要請」,「返品」といった,これまでも公正取引委員会が優越的地位の濫用に該当するとして法的措置を採ってまいりました典型的なものや,「取引の対価の一方的決定」いわゆる「買いたたき」ですけれども,そういったほかの実態調査などでも納入業者から指摘の多い行為の割合が大きくなっています。また,優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為が一つ以上みられた取引は全取引の15.9パーセントとなっております。
 次に,右側の(2)でございます。大規模小売業者の業態別に各行為類型の割合をみてみますと,「協賛金等の負担の要請」についてはホームセンター,「従業員等の派遣の要請」についてはディスカウントストア,「返品」につきましてはドラッグストアが,ほかの業態に比べて大きい割合となっております。特にドラッグストアにつきましては,先になりますけど,5頁の右側の(2)を御覧ください。ドラッグストアにつきましては,問題となり得る行為がみられた取引の割合も,全体的にほかの業態に比べて大きいという結果になっております。
 次に,6頁の「調査結果の評価」でございます。行為類型別にみた場合に上位の3類型は,先ほど申しましたが,「協賛金等の負担の要請」,「返品」,「取引の対価の一方的決定」でございますが,その具体的な要請内容について御紹介しますと,「協賛金等の負担の要請」につきましては,「大規模小売業者から事前に負担額,算出根拠及び目的の3つについて明確にすることなく,一定額又は納入業者からの納入金額の一定割合に相当する額の協賛金等の要請」との回答が最も多く,事前に負担額などを明確にすることなく協賛金等の要請が行われている状況がみられました。また,「返品」につきましては,「売れ残り,売場の改装等を理由とした返品」との回答が最も多く,大規模小売業者の一方的な都合により返品が行われている状況がみられました。
 次に7頁でございます。業態別にみてみますと,特にドラッグストア,ホームセンター,ディスカウントストアにおいて,問題となり得る行為がみられた取引が大きい割合となっていました。先ほど触れましたように,ドラッグストアにおける「返品」がほかに比べて多いという結果が出ましたが,納入業者にヒアリングを実施しましたところ,その下の方にございますように,「医薬品業界に返品の慣習があるようなので,その慣習を医薬品以外の商品にも適用していると思う」との話が聞かれました。ドラッグストアは,現在,様々な商品を取り扱っていますが,返品を行うのであれば,例えば,商品の購入に当たって納入業者との合意により返品条件を定めて,その条件に従って返品するといった対応が求められると考えられます。
 次に,最後の頁に,今回の調査結果を踏まえた公正取引委員会としての対応をまとめております。
公正取引委員会は,違反行為の未然防止及び取引の公正化の観点から,この調査結果の公表に加えて,事業者団体に対して,業界における取引の公正化に向けた自主的な取組を要請すること,大規模小売業者に向けて,本調査結果それから優越的地位濫用規制を説明するための講習会を実施することなどを行うこととしております。
 公正取引委員会としましては,今後も,本調査結果を踏まえて,大規模小売業者と納入業者の取引実態を注視し,優越的地位の濫用規制上問題となるような行為の把握に努めますとともに,違反行為に対しては,厳正に対処してまいります。
 また,最後になりますけれども,政府が現在「働き方改革」を主導しております。本調査において,短納期発注や時間外作業が対価に反映されていないといった回答や,適正な対価が支払われない「従業員等の派遣の要請」が行われているとの話が聞かれました。こうした行為は,独占禁止法上問題となり得るだけではなく,派遣した会社の業務が滞ることや,深夜・休日にかけて作業が行われるといった場合があることを考えれば,生産性向上や働き方改革が求められているといった観点からも疑問視されることではないかと考えられます。

質疑応答

(問) 今まで結構,量販店であるとかスーパーでの優越の問題が指摘されていたことが多かったのかなと思うんですけれども,ドラッグストアからの返品であるとか買いたたきの行為が多いという,これは新しいトレンドというふうに見るべきなんでしょうか。
(事務総長) こういった大規模小売業者と納入業者の取引実態調査はこれまで何回かしてきておりますけれども,今回は,調査対象の納入業者の数を増やしたりと,いろんな工夫をしております。その中で,これまで注目されてきた以外の業態においても問題となり得るような行為が行われていることが出てきたのかなというふうに思います。
 確かに法的措置をこれまで採ってきたのは,量販店といったところが多かったと思いますけれども,ただ,優越タスクフォースで注意を行っております中にはドラッグストアとかもありましたので,決して目新しい問題というわけではないと思います。

(問) 素朴な疑問ですけど,問題となり得る行為と,違法な行為の間に何があるのかというのと,あと,今回の調査で実際に何か法的措置というのになり得るということは考えられるんでしょうか。
(事務総長) まず,違法な行為というのは独占禁止法上,優越的地位の濫用,あとその特別法である下請法もありますけれども,優越を前提にお話ししますと,継続的な取引において優越的な地位を利用して不当に不利益を取引の相手方に課すということが全て満たされれば,独占禁止法に違反するということになります。ですから,それが違反だというためには,そうした要件を証拠に基づいてきっちり認定しなければいけないということになります。
 優越的地位の濫用についてはガイドラインを作成しておりますので,その中で,どういったタイプは問題になり得るんだということを具体例を示しながら解説しております。今回の調査におきましても,納入業者側からみて,こうした大規模小売業者側の要求を受け入れざるを得なかった,将来不利益になることを心配してとか,そういったことで受け入れたことがありますかという形で聞いたものを,問題となり得る行為として分類しています。
 ですので,飽くまで納入業者側の観点からということになりますので,それに対する反論まで聞いているわけでありませんので,それが直ちに独占禁止法違反になるというふうに言うわけにはいかないものだと思ってます。
 そういう意味では,これに基づいて直ちに何か法律の執行が行われるというものではございませんけれども,ここで挙げられているようなことが,納入業者にとってはかなり心配なこと,問題なことなんだということは取引先であるいろんな業態の大規模小売業者の方々には理解していただき,自らの行為の問題点というのをしっかり把握していただきたいと思いますし,また,先ほど冒頭に申し上げましたように,独占禁止法に違反するということがしっかり把握できるというような場合には,もちろんそれは厳正に法律上の処分をしていくということにはなります。

(問) 今の質問に関連してなんですけれども,この2頁目の真ん中の「取引依存度」のところなんですけれども,優越を問うかどうかという判断になったときに,この10パーセント以下というところは6割以上とかなり多いと思うんですけれども,これは,この依存度であれば,優越にはならないのではないかというふうなことは言えないんでしょうか。この依存度でもやっぱり優越になり得るというのが今あるんでしょうか。
(事務総長) 「取引依存度」というのも,他に取引先が見つけられるかどうかという意味では,優越的な地位を認定する上で一つの要素にはなるかと思います。ただ,具体的に何パーセントであれば問題になるとか,何パーセントであれば問題にならないとか,そういったことではなくて,やはりその納入業者と大規模小売業者との間の取引の関係を具体的に見て,それが他に取引先が容易に見つけられないという状況になるのかどうかということになるんだと思います。
 優越的地位の濫用で審決が出たケースもありますけれども,その中でも,「取引依存度」というのが唯一のメルクマールというふうになっているわけではないと思います。

(問) 繊維とか,そういった業界の歩引きの問題とかも含めて,業界の慣習の問題もあると思うんですけれども,今後は業界団体レベルでの対応になっていくんでしょうか。それとも個別になるんでしょうか。
(事務総長) 今回の大規模小売業者の実態調査の関係でいえばですね,ここに挙げられている業態の企業が属しているような団体,例えばスーパーマーケットであるとかチェーンストアであるとか,そういったところには,先ほど申しましたように,今回の結果を伝えた上で,自主的な取組をお願いしていきたいと考えておりますし,また,個社ベースでもですね,講習会等を開くなりして,本件に関する理解を深めていただきたいと思っております。

以上

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