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海外当局の動き

海外当局の動き

最近の動き(2026年1月更新)

米国

DOJ、RealPageに対し、競争上機微な情報の共有及び競合他社間の価格調整を終了するよう要求

2025年11月24日 米国司法省 公表

原文

【概要】

1 2025年11月24日、司法省(以下「DOJ」という。)は、全米の賃貸住宅市場においてアルゴリズムを使用した価格調整、情報共有、その他の反競争的行為に対する継続的な取締りの一環として、RealPage Inc.(テキサス州リチャードソンに本社を置く一般的な集合賃貸住宅業界向け収益管理ソフトウェア及びサービス提供会社。以下「RealPage」という。)に対するDOJの申立てを解決するための同意判決案を裁判所に提出した。同意判決案は、数百万人の米国の賃貸人にとって、賃貸住宅市場における自由な競争の回復に資するものとなるだろう。

2 アビゲイル・スレーターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。
「競合企業は独自に価格設定を行うべきであり、アルゴリズムやAIツールが台頭していく中で、我々は反トラスト法の厳格な執行の最前線に立ち続ける。」 
 
3 DOJの訴状によれば、RealPageの収益管理ソフトウェアは、家主から共有された非公開の競争上機微な情報を用いて賃貸価格の設定を行っていた。RealPageのソフトウェアには、賃貸価格の引下げを抑制し、競合他社間の価格を一致させる仕組みも組み込まれていた。また、RealPageは、競合する不動産管理会社が参加する会合を主催し、その会合では競争上機微な情報が共有されていた。

4 DOJが提出した同意判決案について裁判所が承認した場合、RealPageには、次の義務が課される。
 (1) ソフトウェアを稼働して賃貸価格を設定する際に、競合他社の非公開かつ競争上機微な情報の使用を差し控えること。
 (2) ソフトウェアの基盤モデルの学習を目的に現行の賃貸契約データを使用することを取りやめ、少なくとも12か月以上経過した過去の非公開データに限定してモデル学習を行うこと。
 (3) 州レベル(訴状で主張されている市場と比較して広い範囲)よりも細かい範囲の地理的影響を判定するモデルを使用しないこと。
 (4) 賃貸価格引下げを抑制する仕組み、又はソフトウェアの競合ユーザー間で価格を一致させる仕組みを削除又は再設計すること。
 (5) 競争上機微な情報を収集する市場調査(注1)を取りやめること。
 (6) RealPageが主催する収益管理ソフトウェアに関する会合において、非公開データに基づく市場の分析や動向、価格戦略について議論しないこと。
 (7) 本同意判決の遵守を確実にするため、裁判所によって任命された監督者(monitor)を受け入れること。
 (8) RealPageのソフトウェアを使用した不動産管理会社に対する米国における訴訟(注2)に協力すること。
 (注1) 不動産管理者又は不動産所有者からの電話、電子メール、テキストメッセージ、調査又は類似の通信手段を通じた、RealPageが蓄積する非公開データの収集のために行われるもの。(同意判決案5ページ参照) 
(注2) 2025年1月7日に、DOJ及び州は、RealPageのアルゴリズムによる価格設定に参加し、賃借人に損害を与えたとして全米最大手の家主6社を被告に追加する修正訴状を裁判所に提出している。

5 Tunney法の規定に基づき、同意判決案は、競争上の影響に関する記述とともに、連邦官報に掲載される。関心のある者は誰でも60 日間の意見募集期間中に、DOJ反トラスト局技術・デジタルプラットフォーム課長代理宛てに同意判決案に関する意見書を提出することができる。ノースカロライナ州中部地区連邦地方裁判所は、60 日間の意見募集期間終了後、公共の利益に適うと判断した場合、最終判決を下すことができる。

EU

欧州委、ボーイングによるスピリットの買収を条件付きで承認

2025年10月14日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

1 概要   
 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、EU企業結合規則に基づき、Boeing Company(以下「ボーイング(注1)」という。)による Spirit AeroSystems Holdings, Inc.(以下「スピリット(注2)」という。)の買収計画(注3)について、当事会社が提示したコミットメントを完全に履行することを条件に承認した。
(注1) 米国に本社を置く、民間航空機や防衛・宇宙・安全保障システムを設計、製造及び販売するとともに、関連サービスを全世界に提供する企業。
(注2) 米国に本社を置く、民間航空機や軍用航空機、ビジネスジェット向けの航空機構造部品を製造・販売するとともに、民間航空機や軍用航空機向けのアフターマーケットサービスを全世界に提供する企業。
(注3) ボーイングが、2025年8月26日に欧州委に届出。

2 欧州委による審査
 欧州委は、当初の届出内容の下では、本件買収計画が航空機構造部品及び大型民間航空機の世界市場における競争を著しく減少させるおそれがあると懸念した。スピリットは主として大型民間航空機向けの航空機構造部品を製造・販売しており、これらはボーイング及び Airbus SE(以下「エアバス(注4)」という。)等の大型民間航空機の製造販売業者によって使用される。 特に、欧州委の調査により、本件買収の実行後、当事会社(ボーイング及びスピリット)は次のような能力及びインセンティブを有することが明らかとなった。
 (1) 特に、エアバスに対し、航空機構造部品の供給を停止、又は供給条件を悪化させることが可能であり、インセンティブも有すること
 (2) エアバスに関する商業上の機微な情報にアクセスし、それを自社の利益のために利用し得ること
(注4) オランダに本社を置き、主にフランスで、民間航空機や多様な防衛・宇宙製品を設計、製造及び販売する世界有数の航空宇宙企業。

3 提案されたコミットメント
 欧州委の予備的な競争上の懸念に対処するため、ボーイングは次のコミットメントを申し出た。
 (1) エアバスに航空機構造部品を供給しているスピリットの全ての事業(必要な資産及び人員を含む。)をエアバスに譲渡すること。
 (2) エアバスを含む複数企業に航空機構造部品を供給しているスピリットのマレーシア部門を、Composites Technology Research Malaysia Sdn. Bhd.(以下「CTRM(注5)」という。)に譲渡すること。
(注5) マレーシアに本社を置く、先進航空宇宙向け複合材、特に複合材サブアセンブリを世界の航空宇宙関連サプライヤーに供給する企業。 
  
 これらの構造的なコミットメントは、欧州委が確認した競争上の懸念を完全に解消するものである。これにより、エアバスは、自社に航空機構造部品を供給しているスピリットの事業(以下「譲渡対象事業」という。)をエアバス自身の配下に統合し、サプライチェーンの安定性を確保することが可能となる。また、CTRM が新たな競争事業者として航空機構造部品市場に参入することが可能となる。
  市場テストにおいて肯定的な意見が寄せられたことを踏まえ、欧州委は、当該コミットメントにより修正された買収計画は、もはや競争上の懸念を生じさせないと結論付けた。

  欧州委は本決定において、譲渡対象事業の買手としてエアバス及び CTRM を適格と認定した。特に、欧州委は両社が次の基準を満たすことを確認した。
 ・ 統合後の事業体から独立し、かつ、関係を有しないこと
 ・ 譲渡対象事業を存続可能かつ活発な競争主体として維持・発展させるための財務的資源及び関連分野の実証された専門性、インセンティブや能力を有すること
 ・ 譲渡対象事業の取得後、新たな競争上の問題を生じさせるおそれがなく、また、コミットメントの履行遅延のリスクを生じさせないこと 

 本決定は、コミットメントの完全な履行を条件とするものである。欧州委による監督の下、独立したトラスティがその履行状況を監視する。 

4 テレサ・リベラ上級副委員長による声明 
 スピリットは、ボーイングやエアバスといった大型民間航空機メーカーにとって重要な航空機構造部品の供給者である。欧州委は、ボーイングがスピリットを買収することにより、競合他社であるエアバスに対する供給を停止又は制限するインセンティブが生じるおそれがあることを懸念した。このような事態は、価格の上昇や大型民間航空機部品の調達が困難になる状況を招き、欧州の旅客がより高い航空運賃を負担することにつながった可能性がある。ボーイングのコミットメントは、この重要な市場における競争を維持し、新たな競争者の参入を可能にするとともに、航空機メーカーが必要な部品を競争的な価格で調達できる状態を確保するものである。
 
 2025年9月19日、エアバスは、ボーイングのコミットメント(エアバスがスピリットの航空機構造部品事業を買収すること)について、フランス競争委員会(以下「仏競争委」という。)に届出した。
 仏競争委は、欧州委と連携して本件コミットメントに関する競争への影響を分析した結果、次のとおり結論付けた。

(1)競争阻害リスクに関する判断 
  仏競争委は、航空機構造部品供給市場において、水平的効果による競争阻害のおそれはないと判断した。
 また、仏競争委は、大型商用航空機製造市場におけるエアバスの事業と、航空機構造部品供給市場におけるスピリットの事業との間の垂直的連携がもたらす競争上のリスクについても検討した。しかし、本件取引(エアバスがスピリットの航空機構造部品事業を買収すること)は、エアバスとスピリットとの間に既に存在している供給関係を、エアバスの事業に統合するものである。さらに、スピリットの譲渡対象事業は、既存のエアバス向け航空機構造部品の製造に特化して構成されている。一方で、航空機構造部品供給市場は長期的な関係が特徴であることから、本件取引は、航空機構造部品供給市場における第三者(既存の供給業者、参入可能性のある供給業者かを問わない。)やエアバスと競合関係にある航空機製造業者に対しても、重大な影響を及ぼさない。
 したがって、仏競争委は、垂直的効果による競争阻害のおそれも排除できるとの結論に至った。

(2)商業的に機密性の高い情報が共有されるリスクに関する判断
 垂直統合により、統合後の事業体は上流市場(航空機構造部品供給市場)及び下流市場(航空機製造市場)の競合他社の事業に関する商業的に機密性の高い情報にアクセスできる可能性があった。
 しかし、スピリットの譲渡対象事業はエアバスのみを供給先としているため、エアバスに移転され得る第三者に関する商業的に機密性の高い情報を保持していない。
 さらに、ベルファスト、ウィチタ、プレストウィック及びカサブランカの各拠点における事業については、ボーイングがスピリットの買収の一環として取得する事業と、エアバスがボーイングのコミットメントの一環として取得する事業との間に分離措置が適用される。この分離措置はボーイングが欧州委に対して行ったコミットメントの一部であり、モニタリングトラスティの協力のもと欧州委が監視することにより、ボーイングとエアバスとの間で商業的に機密性の高い情報が共有されないことを確保する。 

 以上のことから、2025年10月16日、仏競争委は、エアバスによるスピリットの航空機構造部品事業の買収を無条件で承認した。



その他

豪州

独立系ガソリン小売業者はドライバーに選択肢を提供し、ガソリン価格の低下につながる可能性がある(オーストラリアのガソリン小売市場)

2025年11月11日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

1 概要
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)が公表したガソリン業界の動向に関する最新の報告書(以下「ガソリン業界報告書」という。)によると、中小規模の独立系ガソリン小売業者が大手チェーンと競合する都市では、ガソリン価格が一般的に安いことが判明した。 

2 ガソリン業界報告書の重要なポイント
(1) オーストラリアの石油市場の全体構造(図1) 
 アンポル、BP、エクソンモービル及びヴィヴァ・エナジー(以下「大手4社」という。)は、オーストラリア全土でガソリンの供給(国内精製又は輸入による。)及び卸売を行っている主要な企業である。2023~24年には、大手4社が、オーストラリア全体で供給するガソリンの約88%を、卸売販売するガソリンの約85%をそれぞれ占めている。
 一方、オーストラリア全土では多種多様なガソリン小売業者が営業しており、小規模な独立系小売業者が約26%を、他の大手小売ブランド(セブン・イレブン、EGグループ、シェブロン/カルテックス、ユナイテッド・ペトロリアム、オン・ザ・ラン)が約34%をそれぞれ占めている。

 図1 2023~24年の供給・卸売・小売部門におけるガソリン供給量の国内市場シェア(%)(注1)
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(注1) ACCCウェブサイトからの引用。本図の市場シェアは、ACCCのガソリン監視プログラム対象企業から取得したデータやオーストラリア連邦気候変動・エネルギー・環境・水資源省の「オーストラリア石油統計2025」に基づく小売データを用いて、ACCCが算出したものである。

(2) 小売部門
 2023~24年にACCCが監視対象とした8つの小売ブランドは、オーストラリア全土の小売ガソリン販売量の約74%を占めた。これにはアンポル、BP、ヴィヴァ・エナジー、セブン・イレブン、EGグループ、シェブロン/カルテックス、ユナイテッド・ペトロリアム、オン・ザ・ランが含まれる。スピードウェイやメトロ・ペトロリアム、フリーダム・フューエルズ、バジェット、ヴァイブ、パール・エナジー等の独立系小売業者や少数の小売拠点を有する事業者(総称して「小規模独立系小売業者」と呼ばれる。)は、2023~24年のオーストラリア全土のガソリン販売量の約26%を占めた。小規模独立系小売業者は少なくとも30の異なる小売ブランドで構成されており、2017~18年のオーストラリア全土のガソリン販売量の18%から、2023~24年には約26%へと、市場シェアは時間とともに徐々に増加している。この期間中、オーストラリアの小売店舗総数は増加した一方で、様々な要因によりガソリン需要は減少した。こうした傾向は、人口増加や、長らくガソリン小売業者の重要な収益源となってきた燃料以外の日用品・サービスへの需要拡大を反映している可能性がある。

(3) 消費者部門 
ア 主要都市ごとの分析(図2)
  一部の主要都市では競合ブランド数が他の都市と比較して多い。2023~24年のガソリン販売量に基づき、ACCCは小規模独立系グループがシドニー、メルボルン、アデレードで最も強い存在感を示し(それぞれ41%、29%、34%)、ブリスベンとキャンベラでは存在感が小さい(それぞれ15%、17%)と推定している。
 2022年7月から2024年6月にかけて、主要都市の中でキャンベラのレギュラー無鉛ガソリン平均小売価格は1リットルあたり194.4セントで最高値を記録し、ブリスベンが192.7セントで2番目に高かった。同期間において、シドニーとアデレードのレギュラー無鉛ガソリン平均価格は比較的低く(それぞれ1リットルあたり190.2セント、184.2セント)、パースは同期間において、主要都市間で最も低い平均小売ガソリン価格(1リットルあたり182.8セント)を記録した。
  ACCCの過去の分析によると、一部地域において特定の小規模独立系小売業者が比較的低価格のガソリンを提供することが多いことが判明している。また、ACCCは、活発かつ効果的な競争の欠如が特定地域においてガソリン価格が比較的高くなる主な要因であることも確認している。独立系小売業者が販売するガソリンは、一般的により知名度の高いブランドが販売するものと同一の精製所又は輸入ターミナルから供給されている。

図2 2023~24年における主要都市の小売部門におけるガソリン供給量の国内市場シェア(%)(注2)
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(注2) ACCCウェブサイトからの引用。ACCCの計算は、ACCCのガソリン監視プログラムに参加する企業から得たデータに基づく。またACCCの推定値は、オーストラリア連邦気候変動・エネルギー・環境・水資源省の「オーストラリア石油統計2025」及びインフラ・運輸研究経済局の「オーストラリアの道路車両、2024年1月」に基づく。

イ 競争的な市場行動の促進
  燃料価格アプリやウェブサイトで入手可能なほぼリアルタイムの燃料価格は、自動車利用者がより低価格の小売店を容易に比較検討するのに役立つ。また、これらのアプリやウェブサイトの利用可能性は、価格競争を積極的に行う小売業者に報いることで競争的な市場行動を促進する。それは、ガソリン販売価格が自動車利用者によって容易に確認され、行動に移されるからである。
 最近では、ビクトリア州で、ガソリン小売業者に対し価格データを可能な限り速やかに報告することを義務付ける制度が導入された。これにより、同州のドライバーは包括的なガソリン価格データを入手できるようになった。同様の制度は他の全ての管轄区域で既に存在している。

3 本報告書の公表に関して、ACCCアナ・ブレイキー委員は次のように述べた。
(1) 競争が活発化すれば、消費者はより良い結果を得られる。価格低下もその1つである。
(2) 我々の調査では、小規模な独立系ガソリンスタンドが多く存在する都市では、消費者がより競争力のあるガソリン価格を見つけられるケースが多いことが判明した。
(3) 消費者は複数の店舗を比較検討し、リアルタイムに近いガソリン価格アプリやウェブサイトを活用して、地域内でより低い販売価格を見つけることを推奨する。

4 背景
 2022年12月14日、オーストラリア財務大臣は、ACCCに対し、石油製品及び関連サービスの供給に関連する価格、コスト及び利益の監視を継続するよう指示を発出した。
 同財務大臣による指示は、2010年競争・消費者法第95ZE条1の規定に基づくもので、2022年12月15日から3年間効力がある。ACCCは、同指示に基づき、四半期ごとに主要都市及びオーストラリア全土の190以上の地方都市における価格変動に焦点を当てたガソリン監視報告書や、ガソリン市場における消費者の関心事の特定の側面に焦点を当てたガソリン業界報告書を作成する。

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