最近の動き(2023年10月更新)
米国
FTC及びDOJ、合併ガイドライン改正案の意見募集手続を開始
米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)及び米国司法省(以下「DOJ」という。)は、現代経済における合併の競争への影響の判断方法や合併の評価方法をより反映させることを目的とした、合併ガイドラインの改正案を公表し、60日間の意見募集手続を開始した。
リナ・カーンFTC委員長は、次のように述べた。
「歴史を通して開放的、競争的で弾力的な市場が、米国経済の成功と活力の礎となっている。誠実かつ強力な反トラスト法の執行が、成功と活力を維持する鍵である。ガイドラインの改正は、現代社会における事業者のビジネスの実態を反映するためのものである。医療従事者、農業従事者、患者支援者、音楽家、起業家らから意見募集手続で得た何千もの情報を基に重要な改正を行った。」
メリック・ガーランドDOJ長官は、次のように述べた。
「歯止めのない集中は、米国経済の基礎である自由で公正な市場を脅かすおそれがある。改正案は、現代の市場の現実に対応し、反競争的な合併がもたらす損害から司法省が透明かつ効果的に米国民を守ることを可能にするものである。」
ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。
「競争的な市場と経済的な機会は密接な関係にある。競争を脅かし独占を形成するおそれのある合併を防ぐため、ガイドライン改正案を公表した。市場や商業の実態が変化するにつれ、現代経済の複雑さを反映した形で競争を保護することができるように法執行の手段を順応させることが不可欠である。簡単に言えば、今日の競争は、50年前やあるいは15年前とは変わっている。本ガイドラインを最終決定する前に、一般市民が評価し、意見を提出するための実質的な手続を行う。」
FTC及びDOJは、反トラスト法やその他の連邦競争法の執行を通じて、競争を保護している。1968年以来、両当局は、合併に関して当局がどのように責任を果たすかについて、透明性の向上及び認識の向上を目的として合併ガイドラインを策定・改正してきた。
今回の改正案は、従前のガイドラインにおいて示された枠組みを基礎とし、拡大し、明確化したものである。両当局が合併審査において用いる13の原則を示しているところ、概要は以下のとおりである 。
① 合併は集中度の高い市場における集中を著しく増大させるべきではない。
・ 競争者間の合併が集中度を著しく高め、市場の集中度が高まるかどうかを審査。
・ 仮にそのような状況が見込まれるならば、そのような市場構造に基づき、当該合併が競争を実質的に減退させ得ると推定する。
② 合併は事業者間の実質的な競争を排除すべきではない。
・ 合併により当事者間の競争は必然的に排除されることになるため、当事者間の競争が実質的なものであるかどうかを審査。
③ 合併は協調のリスクを増大させるべきではない。
・ 合併が反競争的な協調のリスクを増大させるかどうかを審査。
・ 集中度の高い市場や過去に反競争的な協調が見られた市場は、本質的に脆弱であり、合併が競争を実質的に減退させる可能性があると推定。
・ まだ高度に集中していない市場では、市場構造だけが示唆するよりも、事実が協調のリスクを示唆しているかどうかを審査。
④ 合併は集中度の高い市場における潜在的な参入者を排除すべきではない。
・ 集中度の高い市場においては、合併が(a)潜在的な参入者を排除するかどうか、(b)潜在的な参入者により現在の競争圧力が排除されるかどうかを審査。
⑤ 競争事業者が使用する可能性のある製品・サービスを支配する事業者を形成することによって競争を実質的に減退させるべきでない。
・ 合併が、ライバル事業者が使用する製品・サービスに関連する場合、合併事業者が製品・サービスへのアクセスを支配し、競争を実質的に減退させることができるかどうかや、そのようなことを行うインセンティブがあるかどうかを審査。
⑥ 垂直統合により競争を阻害する市場構造を形成すべきではない。
・ 合併がどのように供給網や流通網を再構築するか審査。
・ シェアが50%又はそれに近い場合、市場構造自体が、合併が競争を実質的に減退させる可能性があることを示す。
・ シェアが当該レベルを下回る場合、合併が、「競争を阻害し・・・ライバルの公正な競争の機会を奪う」かどうかを審査。
⑦ 合併は支配的地位を強固にしたり拡大したりすべきではない。
・ 合併当事者のいずれかが支配的地位を既に有しているか、合併が支配的地位を拡大するか、又は別の市場で独占を生み出す傾向があるかどうかを審査。
⑧ 合併は集中の傾向を助長すべきではない。
・ 合併が、市場が集中する傾向にある中で行われたものである場合、さらなる集中が競争を実質的に減退させる可能性があるか、独占状態を生じさせる傾向があるかを審査。
⑨ 一つの合併が複数の買収からなる一連の買収の一部である場合には、当局は当該買収全体を審査する。
・ 特定の合併が、事業者による複数の買収に係る傾向又は戦略の一部である場合には、それら一連の合併がもたらす累積的効果を考慮。
⑩ 合併が多面的プラットフォームに関連する場合、当局はプラットフォーム事業者間の競争やプラットフォーム上の競争、プラットフォームを置換させる競争について審査する。
・ 多面的プラットフォームには、競争上の問題を悪化・進行させ得るという特徴があるため、そのような特徴的な特性を慎重に考慮。
⑪ 合併が、競合する買い手事業者間で行われる場合、労働者や他の販売事業者のための競争を実質的に減退させるかどうかを審査する。
・ クレイトン法第7条は、買い手事業者間の競争を守るとともに、関連市場における競争を実質的に減退させる可能性のある合併を禁止。
・ 使用者を含む買い手事業者間の合併が競争を実質的に減退させるかどうか又は独占を形成する傾向があるかを判断するため、本ガイドラインを適用。
⑫ 買収が部分的支配権や少数株主利益に関連する場合、それらの競争への影響を審査する。
・ 部分的支配権や共同所有権の取得は、状況によっては競争を実質的に減退させる可能性がある。
⑬ 合併が、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向があってはならない。
・ 本ガイドラインは、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向がある合併の方法を全て網羅しているわけではない。
2022年1月に合併ガイドラインの改正に向けた意見公募手続を行ったところ、消費者、労働者、州司法長官、学識経験者、事業者、事業者団体、専門家、起業家を含む5,000名以上から意見が寄せられた。また、両当局は食品、農業、ヘルスケアに至るまで様々な産業について4回にわたり公聴会を実施した。
本改正において、両当局は以下の3つの点に焦点を当てた。
① ガイドラインは、議会が制定した法令及び最高裁判所が示した当該法令の解釈を反映すべきであるとともに、ガイドライン自体が実質的に法律になったり、新たな権利や義務を創設するものではないと明らかにすること
② ガイドラインは、アクセスしやすく透明性等を高めるべきであること
③ ガイドラインは、現代経済の実態や最良の現代経済学・分析ツールを反映した枠組みを提供すべきこと
意見募集期間は2023年9月18日までの60日間であり、両当局は提出された意見を踏まえてガイドライン成案を取りまとめる。
リナ・カーンFTC委員長は、次のように述べた。
「歴史を通して開放的、競争的で弾力的な市場が、米国経済の成功と活力の礎となっている。誠実かつ強力な反トラスト法の執行が、成功と活力を維持する鍵である。ガイドラインの改正は、現代社会における事業者のビジネスの実態を反映するためのものである。医療従事者、農業従事者、患者支援者、音楽家、起業家らから意見募集手続で得た何千もの情報を基に重要な改正を行った。」
メリック・ガーランドDOJ長官は、次のように述べた。
「歯止めのない集中は、米国経済の基礎である自由で公正な市場を脅かすおそれがある。改正案は、現代の市場の現実に対応し、反競争的な合併がもたらす損害から司法省が透明かつ効果的に米国民を守ることを可能にするものである。」
ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。
「競争的な市場と経済的な機会は密接な関係にある。競争を脅かし独占を形成するおそれのある合併を防ぐため、ガイドライン改正案を公表した。市場や商業の実態が変化するにつれ、現代経済の複雑さを反映した形で競争を保護することができるように法執行の手段を順応させることが不可欠である。簡単に言えば、今日の競争は、50年前やあるいは15年前とは変わっている。本ガイドラインを最終決定する前に、一般市民が評価し、意見を提出するための実質的な手続を行う。」
FTC及びDOJは、反トラスト法やその他の連邦競争法の執行を通じて、競争を保護している。1968年以来、両当局は、合併に関して当局がどのように責任を果たすかについて、透明性の向上及び認識の向上を目的として合併ガイドラインを策定・改正してきた。
今回の改正案は、従前のガイドラインにおいて示された枠組みを基礎とし、拡大し、明確化したものである。両当局が合併審査において用いる13の原則を示しているところ、概要は以下のとおりである 。
① 合併は集中度の高い市場における集中を著しく増大させるべきではない。
・ 競争者間の合併が集中度を著しく高め、市場の集中度が高まるかどうかを審査。
・ 仮にそのような状況が見込まれるならば、そのような市場構造に基づき、当該合併が競争を実質的に減退させ得ると推定する。
② 合併は事業者間の実質的な競争を排除すべきではない。
・ 合併により当事者間の競争は必然的に排除されることになるため、当事者間の競争が実質的なものであるかどうかを審査。
③ 合併は協調のリスクを増大させるべきではない。
・ 合併が反競争的な協調のリスクを増大させるかどうかを審査。
・ 集中度の高い市場や過去に反競争的な協調が見られた市場は、本質的に脆弱であり、合併が競争を実質的に減退させる可能性があると推定。
・ まだ高度に集中していない市場では、市場構造だけが示唆するよりも、事実が協調のリスクを示唆しているかどうかを審査。
④ 合併は集中度の高い市場における潜在的な参入者を排除すべきではない。
・ 集中度の高い市場においては、合併が(a)潜在的な参入者を排除するかどうか、(b)潜在的な参入者により現在の競争圧力が排除されるかどうかを審査。
⑤ 競争事業者が使用する可能性のある製品・サービスを支配する事業者を形成することによって競争を実質的に減退させるべきでない。
・ 合併が、ライバル事業者が使用する製品・サービスに関連する場合、合併事業者が製品・サービスへのアクセスを支配し、競争を実質的に減退させることができるかどうかや、そのようなことを行うインセンティブがあるかどうかを審査。
⑥ 垂直統合により競争を阻害する市場構造を形成すべきではない。
・ 合併がどのように供給網や流通網を再構築するか審査。
・ シェアが50%又はそれに近い場合、市場構造自体が、合併が競争を実質的に減退させる可能性があることを示す。
・ シェアが当該レベルを下回る場合、合併が、「競争を阻害し・・・ライバルの公正な競争の機会を奪う」かどうかを審査。
⑦ 合併は支配的地位を強固にしたり拡大したりすべきではない。
・ 合併当事者のいずれかが支配的地位を既に有しているか、合併が支配的地位を拡大するか、又は別の市場で独占を生み出す傾向があるかどうかを審査。
⑧ 合併は集中の傾向を助長すべきではない。
・ 合併が、市場が集中する傾向にある中で行われたものである場合、さらなる集中が競争を実質的に減退させる可能性があるか、独占状態を生じさせる傾向があるかを審査。
⑨ 一つの合併が複数の買収からなる一連の買収の一部である場合には、当局は当該買収全体を審査する。
・ 特定の合併が、事業者による複数の買収に係る傾向又は戦略の一部である場合には、それら一連の合併がもたらす累積的効果を考慮。
⑩ 合併が多面的プラットフォームに関連する場合、当局はプラットフォーム事業者間の競争やプラットフォーム上の競争、プラットフォームを置換させる競争について審査する。
・ 多面的プラットフォームには、競争上の問題を悪化・進行させ得るという特徴があるため、そのような特徴的な特性を慎重に考慮。
⑪ 合併が、競合する買い手事業者間で行われる場合、労働者や他の販売事業者のための競争を実質的に減退させるかどうかを審査する。
・ クレイトン法第7条は、買い手事業者間の競争を守るとともに、関連市場における競争を実質的に減退させる可能性のある合併を禁止。
・ 使用者を含む買い手事業者間の合併が競争を実質的に減退させるかどうか又は独占を形成する傾向があるかを判断するため、本ガイドラインを適用。
⑫ 買収が部分的支配権や少数株主利益に関連する場合、それらの競争への影響を審査する。
・ 部分的支配権や共同所有権の取得は、状況によっては競争を実質的に減退させる可能性がある。
⑬ 合併が、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向があってはならない。
・ 本ガイドラインは、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向がある合併の方法を全て網羅しているわけではない。
2022年1月に合併ガイドラインの改正に向けた意見公募手続を行ったところ、消費者、労働者、州司法長官、学識経験者、事業者、事業者団体、専門家、起業家を含む5,000名以上から意見が寄せられた。また、両当局は食品、農業、ヘルスケアに至るまで様々な産業について4回にわたり公聴会を実施した。
本改正において、両当局は以下の3つの点に焦点を当てた。
① ガイドラインは、議会が制定した法令及び最高裁判所が示した当該法令の解釈を反映すべきであるとともに、ガイドライン自体が実質的に法律になったり、新たな権利や義務を創設するものではないと明らかにすること
② ガイドラインは、アクセスしやすく透明性等を高めるべきであること
③ ガイドラインは、現代経済の実態や最良の現代経済学・分析ツールを反映した枠組みを提供すべきこと
意見募集期間は2023年9月18日までの60日間であり、両当局は提出された意見を踏まえてガイドライン成案を取りまとめる。
欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、マイクロソフトが、コミュニケーション及びコラボレーション(共同作業)のための製品である「Teams」を、企業向け製品として人気がある「Office 365」及び「Microsoft 365」に抱き合わせること(tying)又はセット販売すること(bundling)により、EU競争法に違反しているかどうかを判断するため、正式審査を開始した。
マイクロソフトは、プロダクティビティソフトウェア、ビジネスソフトウェア、クラウドコンピューティング、パーソナルコンピューティングを提供する世界的なテクノロジー企業である。「Teams」は、クラウドベースのコミュニケーション及びコラボレーションのための製品であり、例えば、メッセージング、通話、ビデオ会議、ファイル共有などの機能を提供するとともに、マイクロソフト及びサードパーティのワークプレイスツールやその他のアプリケーションを統合している。
新型コロナウィルスの流行により、リモートワークへの移行が加速し、企業のクラウドへの移行と、コミュニケーション及びコラボレーションのためのクラウドベースのソフトウェアの導入が加速した。クラウドへの移行により、社内にデータセンターを維持する必要がなく、異なるプロバイダーから複数のソフトウェアを利用できるようにするサービスを提供する新しい企業やビジネスモデルの出現が可能となった。審査対象製品を含むクラウドベースのソフトウェアは、通常、サブスクリプション形式で顧客に提供されている。
マイクロソフトは、ビジネス顧客向けのクラウドベースのプロダクティビティパッケージとして定着している「Office 365」及び「Microsoft 365」に「Teams」を含めている。欧州委は、マイクロソフトのこの戦略が欧州経済領域(EEA)におけるコミュニケーション及びコラボレーション製品市場における競争を制限し、当該市場における地位を濫用・維持していないか、懸念している。
すなわち、欧州委は、マイクロソフトが、自社のプロダクティビティパッケージのサブスクリプション契約を結ぶ際に、「Teams」へのアクセスを含めるかどうかの選択肢を顧客に与えないことにより、同製品に販売上の優位性を与えている可能性や、自社のプロダクティビティパッケージと競合する製品との相互運用性を制限している可能性を懸念している。
これらの行為は、反競争的な抱き合わせやセット販売に該当する可能性があり、コミュニケーション及びコラボレーションのための他の製品のサプライヤーがマイクロソフトと競争することを妨げ、EEA内の顧客に不利益をもたらす可能性がある。
これらが立証されれば、審査中の行為は、市場支配的地位の濫用を禁止するEU機能条約(TFEU)第102条に違反する可能性がある。
欧州委は、優先的に対応する事項として、詳細な審査(正式審査)を実施する。正式審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。
マイクロソフトは、プロダクティビティソフトウェア、ビジネスソフトウェア、クラウドコンピューティング、パーソナルコンピューティングを提供する世界的なテクノロジー企業である。「Teams」は、クラウドベースのコミュニケーション及びコラボレーションのための製品であり、例えば、メッセージング、通話、ビデオ会議、ファイル共有などの機能を提供するとともに、マイクロソフト及びサードパーティのワークプレイスツールやその他のアプリケーションを統合している。
新型コロナウィルスの流行により、リモートワークへの移行が加速し、企業のクラウドへの移行と、コミュニケーション及びコラボレーションのためのクラウドベースのソフトウェアの導入が加速した。クラウドへの移行により、社内にデータセンターを維持する必要がなく、異なるプロバイダーから複数のソフトウェアを利用できるようにするサービスを提供する新しい企業やビジネスモデルの出現が可能となった。審査対象製品を含むクラウドベースのソフトウェアは、通常、サブスクリプション形式で顧客に提供されている。
マイクロソフトは、ビジネス顧客向けのクラウドベースのプロダクティビティパッケージとして定着している「Office 365」及び「Microsoft 365」に「Teams」を含めている。欧州委は、マイクロソフトのこの戦略が欧州経済領域(EEA)におけるコミュニケーション及びコラボレーション製品市場における競争を制限し、当該市場における地位を濫用・維持していないか、懸念している。
すなわち、欧州委は、マイクロソフトが、自社のプロダクティビティパッケージのサブスクリプション契約を結ぶ際に、「Teams」へのアクセスを含めるかどうかの選択肢を顧客に与えないことにより、同製品に販売上の優位性を与えている可能性や、自社のプロダクティビティパッケージと競合する製品との相互運用性を制限している可能性を懸念している。
これらの行為は、反競争的な抱き合わせやセット販売に該当する可能性があり、コミュニケーション及びコラボレーションのための他の製品のサプライヤーがマイクロソフトと競争することを妨げ、EEA内の顧客に不利益をもたらす可能性がある。
これらが立証されれば、審査中の行為は、市場支配的地位の濫用を禁止するEU機能条約(TFEU)第102条に違反する可能性がある。
欧州委は、優先的に対応する事項として、詳細な審査(正式審査)を実施する。正式審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。
欧州委員会、アドビによるフィグマの買収計画について、第2次審査を開始
2023年8月7日 欧州委員会 公表【概要】
欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、アドビによるフィグマの買収計画について、EU企業結合規則に基づき、詳細審査(第2次審査)を開始した。欧州委は、本件買収が実行されれば、双方向性のある製品設計ツール及びデジタル資産作成ツールの供給の世界市場における競争が減殺される懸念があるとしている。
アドビは、創造的な設計ソフトウェアツール(Illustrator、Photoshop等)、双方向性のある製品設計ツール(アドビ XD)等を提供する世界的なソフトウェア企業である。フィグマは、双方向性のある製品設計のためのウェブ上のコラボレーションツール (フィグマ Design) やホワイトボードツール(訳注:オンライン会議用のホワイトボード)を提供している。
欧州委の予備的審査による競争上の懸念
欧州委の予備的審査の結果、本件買収が実行されれば、以下の製品の世界市場における競争が制限されるおそれがあることが判明した。
1 双方向性のある製品設計ツールの供給市場
① フィグマは標記市場において明らかに第1位の事業者であり、アドビは最大の競争相手の1社である。アドビとフィグマは熾烈な競争相手であり、本件買収が実行されれば重要な競争圧力が失われるおそれがある。
② 他の対抗可能な競合事業者が適時に市場に参入する可能性は低い。
2 デジタル資産作成ツールの供給市場
① フィグマがアドビのデジタル資産作成ツールに制約を及ぼす現在の影響力を排除する。
② フィグマがアドビの資産作成ツールの効果的な競争相手に成長する可能性を失わせる。
また、欧州委は、本件買収により、フィグマをアドビのCreative Cloud Suiteに抱き合わせることとなり、双方向性のある製品設計ツールの競合事業者を排除する可能性があるかどうかについて、さらに審査する。
欧州委は今後、本件買収の影響について詳細審査を行い、当初の競争上の懸念が確認されるか判断する。また、予備審査の間、他の競争当局と緊密に協力しており、詳細審査の間も同様に協力を継続する。
本件買収計画は、2023年6月30日に欧州委に届出が行われた。欧州委は、現在のところ、90営業日以内(2023年12月14日まで)に決定を行う。詳細審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。
アドビは、創造的な設計ソフトウェアツール(Illustrator、Photoshop等)、双方向性のある製品設計ツール(アドビ XD)等を提供する世界的なソフトウェア企業である。フィグマは、双方向性のある製品設計のためのウェブ上のコラボレーションツール (フィグマ Design) やホワイトボードツール(訳注:オンライン会議用のホワイトボード)を提供している。
欧州委の予備的審査による競争上の懸念
欧州委の予備的審査の結果、本件買収が実行されれば、以下の製品の世界市場における競争が制限されるおそれがあることが判明した。
1 双方向性のある製品設計ツールの供給市場
① フィグマは標記市場において明らかに第1位の事業者であり、アドビは最大の競争相手の1社である。アドビとフィグマは熾烈な競争相手であり、本件買収が実行されれば重要な競争圧力が失われるおそれがある。
② 他の対抗可能な競合事業者が適時に市場に参入する可能性は低い。
2 デジタル資産作成ツールの供給市場
① フィグマがアドビのデジタル資産作成ツールに制約を及ぼす現在の影響力を排除する。
② フィグマがアドビの資産作成ツールの効果的な競争相手に成長する可能性を失わせる。
また、欧州委は、本件買収により、フィグマをアドビのCreative Cloud Suiteに抱き合わせることとなり、双方向性のある製品設計ツールの競合事業者を排除する可能性があるかどうかについて、さらに審査する。
欧州委は今後、本件買収の影響について詳細審査を行い、当初の競争上の懸念が確認されるか判断する。また、予備審査の間、他の競争当局と緊密に協力しており、詳細審査の間も同様に協力を継続する。
本件買収計画は、2023年6月30日に欧州委に届出が行われた。欧州委は、現在のところ、90営業日以内(2023年12月14日まで)に決定を行う。詳細審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。
アマゾンは、英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)が同社に対して提起した競争上の懸念に対処するため、英国のマーケットプレイス・プラットフォームを利用するサードパーティの出品者(third-party sellers)の取扱いを変更することを盛り込んだ確約案を提出した。
CMAは、この確約案が承認されれば、サードパーティの出品者による出品が、アマゾンによる自社製品に関する出品と競合する場合、商品ページの「Buy Box」(訳注:購入者が商品をショッピングカートに追加する際に使用する、「カートに入れる」と表示されるボタンのこと。)において、(サードパーティの出品もアマゾンと同等に)顧客に目立つように表示される公正な機会が確保されると考えている。また、この確約案は、アマゾンがサードパーティの出品者から入手したデータを利用して、自社(アマゾン)に不当な競争上の優位性をもたらすことを防止することも目的としている。
2022年7月、CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスを利用する競合出品者によりも自社の小売部門を不当に有利に扱い、又は、競合関係にある物流事業者よりもアマゾン独自の倉庫・配送サービスを利用する出品者に対して不当な優位性を与えることが、英国を代表するオンライン小売プラットフォームとしての地位の濫用に該当するという競争上の懸念について、審査を開始した。
CMAは、アマゾンから提案のあった確約案は(CMAが提起した)競争上の懸念を解消し得ると暫定的に考えているが、現在、確約案を承認するか否かを決定する前に、提案された確約案について意見を募集している。
確約案は、以下を提案している。
・ アマゾンが、他の出品者よりも不当に有利になるように、競合する出品者のマーケットプレイスに関するデータを利用しないことを確実にする。これは、アマゾンがサードパーティの出品者に関する商業的に機密性の高いデータにアクセスできることが、アマゾンの小売部門が販売する商品の決定、それらの商品の在庫量の管理、価格の設定、その他の重要な商業的決定を有利に行うことを助けているという懸念に対処するものである。
・ アマゾンは、「Buy Box」に掲載する商品を決定する際、全ての商品オファーを平等に扱うことを保証する。これは、サードパーティの出品者が提供する商品が、アマゾンの小売部門や同社の配送サービスを利用するサードパーティの出品者が提供する同様の商品よりも「Buy Box」に掲載されにくいとの懸念に関連するものである。
・ マーケットプレイスを利用するサードパーティが、プライム配送サービスを提供する独立したプロバイダーと直接料金を交渉できるようにし、より望ましいサービス料金が交渉された場合には、顧客がより安い配送コストの恩恵を受けられるようにする。
・ アマゾンがこれらの確約を遵守しているかを監視する、独立したトラスティー(監視人)の任命を義務付ける。CMAはトラスティーの任命につき、職務に必要な技能と専門知識を有することを保証するために、直接の介入権を持つ。
ポープCMAシニアディレクター(執行担当)は、次のように述べた。
「アマゾンが提案した確約案は、アマゾンマーケットプレイス上のサードパーティ出品者が、アマゾンの小売部門と対等に競争できることを保証する。これは、最終的には英国の顧客がより望ましい取引ができることを意味する。CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスにおいて顧客を獲得している数千もの事業者に対して優位に立つために市場での強みを利用しているとの懸念を審査した上で、今般の判断に至った。
これらの確約案について、現段階ではCMAの懸念に対処できるものであると信じている。現在、我々は確約案について、意見を募集している。」
CMAは現在、アマゾンが提出した確約案について、意見を募集している。確約案が承認されれば、長期にわたり得る事件審査が必要なくなり、事業者や消費者に利益をもたらす迅速な変更がもたらされる。CMAは、現在までの審査で、同社の競争法違反を認定していない。
CMAは、この確約案が承認されれば、サードパーティの出品者による出品が、アマゾンによる自社製品に関する出品と競合する場合、商品ページの「Buy Box」(訳注:購入者が商品をショッピングカートに追加する際に使用する、「カートに入れる」と表示されるボタンのこと。)において、(サードパーティの出品もアマゾンと同等に)顧客に目立つように表示される公正な機会が確保されると考えている。また、この確約案は、アマゾンがサードパーティの出品者から入手したデータを利用して、自社(アマゾン)に不当な競争上の優位性をもたらすことを防止することも目的としている。
2022年7月、CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスを利用する競合出品者によりも自社の小売部門を不当に有利に扱い、又は、競合関係にある物流事業者よりもアマゾン独自の倉庫・配送サービスを利用する出品者に対して不当な優位性を与えることが、英国を代表するオンライン小売プラットフォームとしての地位の濫用に該当するという競争上の懸念について、審査を開始した。
CMAは、アマゾンから提案のあった確約案は(CMAが提起した)競争上の懸念を解消し得ると暫定的に考えているが、現在、確約案を承認するか否かを決定する前に、提案された確約案について意見を募集している。
確約案は、以下を提案している。
・ アマゾンが、他の出品者よりも不当に有利になるように、競合する出品者のマーケットプレイスに関するデータを利用しないことを確実にする。これは、アマゾンがサードパーティの出品者に関する商業的に機密性の高いデータにアクセスできることが、アマゾンの小売部門が販売する商品の決定、それらの商品の在庫量の管理、価格の設定、その他の重要な商業的決定を有利に行うことを助けているという懸念に対処するものである。
・ アマゾンは、「Buy Box」に掲載する商品を決定する際、全ての商品オファーを平等に扱うことを保証する。これは、サードパーティの出品者が提供する商品が、アマゾンの小売部門や同社の配送サービスを利用するサードパーティの出品者が提供する同様の商品よりも「Buy Box」に掲載されにくいとの懸念に関連するものである。
・ マーケットプレイスを利用するサードパーティが、プライム配送サービスを提供する独立したプロバイダーと直接料金を交渉できるようにし、より望ましいサービス料金が交渉された場合には、顧客がより安い配送コストの恩恵を受けられるようにする。
・ アマゾンがこれらの確約を遵守しているかを監視する、独立したトラスティー(監視人)の任命を義務付ける。CMAはトラスティーの任命につき、職務に必要な技能と専門知識を有することを保証するために、直接の介入権を持つ。
ポープCMAシニアディレクター(執行担当)は、次のように述べた。
「アマゾンが提案した確約案は、アマゾンマーケットプレイス上のサードパーティ出品者が、アマゾンの小売部門と対等に競争できることを保証する。これは、最終的には英国の顧客がより望ましい取引ができることを意味する。CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスにおいて顧客を獲得している数千もの事業者に対して優位に立つために市場での強みを利用しているとの懸念を審査した上で、今般の判断に至った。
これらの確約案について、現段階ではCMAの懸念に対処できるものであると信じている。現在、我々は確約案について、意見を募集している。」
CMAは現在、アマゾンが提出した確約案について、意見を募集している。確約案が承認されれば、長期にわたり得る事件審査が必要なくなり、事業者や消費者に利益をもたらす迅速な変更がもたらされる。CMAは、現在までの審査で、同社の競争法違反を認定していない。
フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)の首席報告官(訳注:競争委員会の審査局の長)は、アップルグループ(以下「アップル」という。)に対し、モバイルアプリの流通分野における行為が、広告及び消費者サービスに係る複数の関連市場に影響を及ぼす可能性が高いとして異議告知書(注)を送付した。
アップルは、広告に利用するために収集したユーザーデータのデータマイニング(訳注:大量のデータから様々な分析手法を用いて必要な情報を習得すること。)に関して、差別的、恣意的及び不透明な条件を課すことにより、支配的地位を濫用したことを疑われている。
本件異議告知書の送付により、当事者間の手続(訳注:正式審査手続)が開始され、アップルは意見提出を通じて防御権を行使することができる。異議告知書は、これを受領した事業者の違反を予断するものではない。関係人の防御権を尊重した当事者間の審査手続が行われて初めて、競争委員会は、書面及び口頭での聴聞手続を経て、異議告知書に示された行為の適法性を判断することができる。
競争委員会は、違反の疑いがあるとした本件行為についてこれ以上のコメントは行わない。
今後、競争委員会は、異議告知書に基づいて、関係人との意思の疎通を図っていくこととなる。
フランス商法典L.463-6条は、情報公開が公共の利益に適い、関係事業者又は事業者団体に対する無罪推定原則に厳格に従っている限りにおいて、競争委員会が、反競争的行為の審査、検討又は制裁に関する措置の情報を簡潔に公開することができると規定している。
当該規定は、EU加盟国の競争当局が、より効果的な競争法の執行及び域内市場の適切な機能の確保のための手段の有することを目的とした、2018年12月11日付け欧州議会及び欧州理事会指令(EU)2019/1の移行に関する2021年5月26日付け政令2021-649による商法典改正に基づいている。
欧州委員会、オーストリア、ベルギー、オランダ、ギリシャ、ポルトガルの競争当局等の他の競争当局も、同様の規定を導入している。
(注) 異議告知書とは、「起訴状」である。反競争的行為(主にカルテルと支配的地位の濫用)を行った疑いのある事業者や団体に対して、競争委員会の審査局から送付されるものである。
この送付により、関係人の防御権を尊重しつつ当事者間の手続が開始され、競争委員会の前で法的又は事実に関する見解を示すこととなる。
書面による当事者間の手続は、2020年12月3日に「DDADUE法」として知られる法律によって新たに導入された。
事案の特徴に応じ、書面による手続が1~2回実施され得る。
全ての事件において、競争委員会による聴聞が行われ、当事者、政府委員のほか、場合によっては証人や専門家に意見を述べさせることもある。
異議告知書は関係事業者や団体の競争法違反を認定するものではなく、聴聞の会議が開催され審査が終了した後に、異議告知の根拠の有無を競争委員会が独立して判断する。
(背景) 競争委員会は、2020年10月23日、オンライン広告業界の様々な事業者を代表する団体から申告を受領し、アップルに対して暫定的措置を採るよう要請を受けた。申告には、アップルが、ターゲティング広告や広告効果測定の目的で、自社のアプリから収集したユーザーや端末のデータを、他社のアプリやウェブサイトから収集したユーザーや端末のデータとリンクさせてユーザーの行動を追跡しようとし、iOSアプリへATT機能(App Tracking Transparency)を強制的に導入しようとしていたことが含まれていた。
競争委員会は、2021年3月17日の決定で、ATTの導入を阻止しない旨の発表を行ったが、本件アップルの行為について審査を継続すると述べていた。
アップルは、広告に利用するために収集したユーザーデータのデータマイニング(訳注:大量のデータから様々な分析手法を用いて必要な情報を習得すること。)に関して、差別的、恣意的及び不透明な条件を課すことにより、支配的地位を濫用したことを疑われている。
本件異議告知書の送付により、当事者間の手続(訳注:正式審査手続)が開始され、アップルは意見提出を通じて防御権を行使することができる。異議告知書は、これを受領した事業者の違反を予断するものではない。関係人の防御権を尊重した当事者間の審査手続が行われて初めて、競争委員会は、書面及び口頭での聴聞手続を経て、異議告知書に示された行為の適法性を判断することができる。
競争委員会は、違反の疑いがあるとした本件行為についてこれ以上のコメントは行わない。
今後、競争委員会は、異議告知書に基づいて、関係人との意思の疎通を図っていくこととなる。
フランス商法典L.463-6条は、情報公開が公共の利益に適い、関係事業者又は事業者団体に対する無罪推定原則に厳格に従っている限りにおいて、競争委員会が、反競争的行為の審査、検討又は制裁に関する措置の情報を簡潔に公開することができると規定している。
当該規定は、EU加盟国の競争当局が、より効果的な競争法の執行及び域内市場の適切な機能の確保のための手段の有することを目的とした、2018年12月11日付け欧州議会及び欧州理事会指令(EU)2019/1の移行に関する2021年5月26日付け政令2021-649による商法典改正に基づいている。
欧州委員会、オーストリア、ベルギー、オランダ、ギリシャ、ポルトガルの競争当局等の他の競争当局も、同様の規定を導入している。
(注) 異議告知書とは、「起訴状」である。反競争的行為(主にカルテルと支配的地位の濫用)を行った疑いのある事業者や団体に対して、競争委員会の審査局から送付されるものである。
この送付により、関係人の防御権を尊重しつつ当事者間の手続が開始され、競争委員会の前で法的又は事実に関する見解を示すこととなる。
書面による当事者間の手続は、2020年12月3日に「DDADUE法」として知られる法律によって新たに導入された。
事案の特徴に応じ、書面による手続が1~2回実施され得る。
全ての事件において、競争委員会による聴聞が行われ、当事者、政府委員のほか、場合によっては証人や専門家に意見を述べさせることもある。
異議告知書は関係事業者や団体の競争法違反を認定するものではなく、聴聞の会議が開催され審査が終了した後に、異議告知の根拠の有無を競争委員会が独立して判断する。
(背景) 競争委員会は、2020年10月23日、オンライン広告業界の様々な事業者を代表する団体から申告を受領し、アップルに対して暫定的措置を採るよう要請を受けた。申告には、アップルが、ターゲティング広告や広告効果測定の目的で、自社のアプリから収集したユーザーや端末のデータを、他社のアプリやウェブサイトから収集したユーザーや端末のデータとリンクさせてユーザーの行動を追跡しようとし、iOSアプリへATT機能(App Tracking Transparency)を強制的に導入しようとしていたことが含まれていた。
競争委員会は、2021年3月17日の決定で、ATTの導入を阻止しない旨の発表を行ったが、本件アップルの行為について審査を継続すると述べていた。