EU
欧州委員会,リサイクル会社4社が自動車用バッテリーのリサイクル業務について価格カルテルを行ったとして,うち3社に対し総額6800万ユーロの制裁金を賦課
2017年2月8日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会は,Campine, Eco-Bat Technologies及びRecylexの3社が,中古バッテリーの購入価格を決定したことについて,EU競争法違反として,3社に対し総額6800万ユーロの制裁金を課した。4社目のJohnson Controlsは,欧州委員会にカルテルの存在を通報したため制裁金は課されなかった。
2009年から2012年まで,リサイクル会社4社は,ベルギー,フランス,ドイツ及びオランダのスクラップ鉛酸自動車用バッテリーの購入価格カルテルを行っていた。カルテルに参加していたのは,Campine(ベルギー),Eco-Bat Technologies (英国),Johnson Controls(米国)及びRecylex(フランス)の4社である。
リサイクル会社は,スクラップ販売業者やスクラップ収集業者から,(乗用車,バン,トラックの)中古バッテリーを購入している。中古バッテリーは,ガレージ,整備修理工場,バッテリー販売店,廃棄物置き場,その他の廃棄物処理場といった集積場所から調達する。リサイクル会社は,中古バッテリーから鉛の回収と処理を行い,主に,リサイクルした鉛を使用して新車用バッテリーを製造するバッテリーメーカーにリサイクルした鉛を販売する。
企業が販売価格を引き上げようとする大部分のカルテルと異なり,リサイクル会社4社は,中古バッテリーの販売業者や収集業者からの購入価格を引き下げるために共謀した。4社は,中古バッテリーの購入価格を引き下げるよう調整することで,市場の正常な機能を阻害し,価格競争を阻んだ。
当該行為は,スクラップ用に販売された中古バッテリーの価格を低下させることを意図し,中古バッテリー販売業者に損害を与えていた。カルテルの影響を受けた企業は,主に中小規模のバッテリー収集業者やスクラップ販売業者であった。
リサイクル会社4社間の反競争的な交渉の大部分は,主に電話,電子メール,又はテキストメッセージを用いて,2社間で行われ,一部の交渉は,2社間又はそれほど頻繁ではないものの3社以上で直接会って行われた。4社は,このような交渉の違法性を十分認識しており,時には暗号を使用して,例えば天候を符丁として異なる価格水準を示すなどにより,交渉を偽装しようとした。
本日(2017年2月8日)の決定は,自動車バッテリーのリサイクル業者間の実力での競争及び中古バッテリーの真に競争力のある価格の実現を確保するものである。
制裁金
制裁金は,制裁金に関する欧州委員会2006年ガイドラインを基に設定された。
本件は購入価格の共謀に関するカルテルであることから,罰金の水準を設定するために,(売上額ではなく)購入額を使用した。これらの購入額は,カルテル行為により人為的に引き下げられたと推定されるので,違反行為の経済的重要性を下回るレベルの制裁金が課される可能性が高い。したがって,抑止力が過小とならないように,制裁金ガイドラインに基づく裁量により,全社に対する制裁金を10パーセント増額した。
欧州委員会は,他のカルテル参加者よりも重要な役割を果たしていないことから,Campineに対する制裁金を5パーセント減額した。
さらに,欧州委員会の2006年リニエンシー告示の下,:
・ Johnson Controlsは欧州委員会にカルテルの存在を通報したため,制裁金の全額免除が適用され,38,481,300ユーロの制裁金を免れた。
・ Eco-Bat及びRecylexは,欧州委員会の調査に協力したため,制裁金が減額された。
・ Campineのリニエンシー申請については,同社が違反行為への関与を明らかにしていないと判断したため,却下された。
各社の制裁金の内訳は以下のとおり。:
リニエンシー告示による減免率 | 制裁金(ユーロ) | |
Johnson Controls | 100% | 0 |
Eco-Bat | 50% | 32,712,000 |
Recylex | 30% | 26,739,000 |
Campine | 0% | 8,158,000 |
背景
自動車バッテリーは,世界で最もリサイクルされている消費者向け製品である。EUの自動車バッテリーの実に99パーセントがリサイクルされており,年間約5800万個の自動車バッテリーがEUでリサイクルされている。