欧州委、DMAに基づき相互運用性及びオンライン検索データ共有に係る遵守義務確保のため、グーグルに対する特定手続を開始
2026年1月27日 欧州委員会 公表
【概要】
1 概要
2 今後の手続
2026年1月27日、欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、デジタル市場法(以下「DMA」という。)に基づくグーグルの遵守義務を支援するため、2件の特定手続を開始した。これらの特定手続は、DMA上の2つの義務に関するグーグルの遵守状況について、欧州委とグーグルとの間で行っていた規制に関する協議(regulatory dialogue)を正式なものとする。
第1の手続は、DMA第6条第7項の規定に基づき、グーグルのAndroid OSにより制御されるハードウェア及びソフトウェアの機能について、第三者の開発者に対し、無償かつ効果的な相互運用性を提供するというグーグルの義務に関するもので、Gemini等のグーグル自身の人工知能(以下「AI」という。)サービスによって利用される機能に焦点を当てている。欧州委は、グーグルが第三者のAIサービス提供者に対して、グーグル自身のサービスで利用可能な機能と同等で効果的なアクセスを付与する方法について明確化しようとしている。その目的は、第三者のプロバイダが、スマートフォン等のモバイル端末上で急速に進化するAI分野において、技術革新を推進し、同等な競争条件を確保することにある。
第2の手続は、DMA第6条第11項の規定に基づき、グーグル検索(注1)が保有する匿名化されたランキング、検索クエリ、クリック及び閲覧データへのアクセスを、第三者のオンライン検索エンジン提供者に対し、公正、合理的かつ非差別的(FRAND)な条件で認めるというグーグルの義務に関するものである。本件手続は、対象となるデータの範囲、匿名化手法、アクセス条件、そしてAIチャットボット提供者が当該データにアクセスする資格を有するかどうかに焦点を当てている。こうしたグーグルに課せられる義務の効果的な遵守と実効的なデータへのアクセスが確保されれば、第三者のオンライン検索エンジン提供者は、自らのサービスを最適化し、利用者に対してグーグル検索の真の代替となるサービスを提供できるようになる。
(注1) いわゆるオンライン検索エンジンについて、DMA第2条第6項では、「ユーザーが検索クエリを入力できるようにするデジタルサービスを指し、原則として全てのウェブサイト、または特定の言語の全てのウェブサイトを対象に、キーワード、音声リクエスト、フレーズその他の入力形式による任意の主題のクエリに基づいて検索を実行し、要求された内容に関連する情報が見つかるあらゆる形式で結果を返すもの」と定義されている。
2 今後の手続
欧州委は、本件手続を開始から6か月以内に終了させる予定である。今後3か月以内に、欧州委はグーグルに対し、DMAの効果的な遵守を確保するために課すことを予定している措置案を記載した予備的見解を通知する。また、欧州委は、予備的見解及び予定されている措置について機密情報を含まない要約版を公表し、第三者がこれらに対して意見を提出できるようにする。
本件手続は、その性質上、DMAへの適合性について何ら立場を示すものではない。また、DMAに定められた義務のいずれかについてゲートキーパーの非遵守を認定する決定を欧州委が採択する権限を害するものではなく、制裁金又は定期制裁金(注2)を課す可能性も含め、欧州委の権限は維持される。
(注2) 義務を履行するまでの期間、日額単位で課される制裁金のこと。
3 背景
DMAは、デジタル分野における市場の競争可能性及び公正性を確保することを目的としている。同法は、ビジネスユーザーと消費者との間の重要なゲートウェイとなり、その地位によってデジタル経済におけるボトルネックを生み出し得る大規模なデジタルプラットフォームであるゲートキーパーを規制するものである。
2023年9月6日、欧州委は、グーグルが提供するグーグル検索、Google Play、Google Maps、YouTube、Google Android OS、Google Chrome、Google Shopping及びオンライン広告サービスをコアプラットフォームサービスに指定した。2024年3月7日(注:DMAの施行日)以降、グーグルは、指定されたプラットフォームサービスに関して適用されるDMA上の全ての義務を完全に遵守しなければならないとされている。
欧州委は、2025年4月にDMAの実施状況及び目標達成に向けた進捗に関する年次報告書を公表した。
4 テレサ・リベラ上級副委員長(クリーンで公正かつ競争力のある移行担当)による声明
AIツールは、我々がスマートフォンでのオンライン情報の検索や取得の方法、さらには端末とのやりとりの仕方までも変革しつつある。これは新たな機会を生み出すものである。我々は、この深い技術変化の潜在力と恩恵を最大限に引き出すため、競争の舞台が最大手の数社にとって有利になるのではなく、開かれた、公平なものとなるようにしなければならないと考えている。本日の手続により、グーグルがDMAに基づく相互運用性及びオンライン検索データ共有に係る義務をどのように遵守すべきかについて、より詳細に説明し、同社を支援したいと考えている。
5 ヘナ・ヴィルックネン上級副委員長(テック主権・安全保障・民主主義)による声明
何百万もの欧州市民が日々オンライン検索エンジンに依存し、そして今やより一層AIサービスに依存している。本日のDMAに基づく手続は、グーグル検索やGeminiのようなグーグル自身のサービスと同様の検索データ及びAndroid OSへのアクセスを第三者のオンライン検索エンジン及びAI提供者にも確保するための指針をグーグルに示すものである。我々の目標は、AI市場を開かれたものとし、実力に基づく競争を促進し、技術革新を推進することで、消費者と企業の双方に利益をもたらすことである。