その他

ドイツ

グーグル、車載サービスなどに関する競争制限を取りやめる確約を申し出

2025年4月9日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】
1 グーグル(アルファベット、米国)は、グーグル車載サービス(Google Automotive Services)及びグーグルマップ・プラットフォームに関する複数の競争制限を取りやめる旨の確約をドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)に申し出た(注1)。ムント長官は、次のように述べた「カルテル庁がグーグルとの間で、グーグルの行為から影響を受ける経済分野での問題の直接的な改善につながる合意に達することができたことをうれしく思う。グーグルによる確約は、関連市場に広範囲の変化をもたらす可能性がある。現在の制限がなくなることで、顧客にとっての選択肢が増え、グーグルの競合他社には新たな機会が生じる。」
(注1) カルテル庁は、2023年6月21日、グーグルが同社の様々な車載サービスとグーグルマップを抱き合わせて販売していたことが、ドイツ競争法第19条aに違反するおそれがあるとして、異議告知書を送付している。 https://www.jftc.go.jp/kokusai/kaigaiugoki/sonota/2023others/202309others.html  

2 グーグル車載サービス
 車載用インフォテインメント・システム(訳注:ナビゲーション情報及び娯楽情報を提供する車載用システム)を通じて自動車で利用されるデジタル・サービスの範囲及び重要性は、ここ数年で継続的に拡大している。現在の車載用インフォテインメント・システムでは、地図やナビゲーションサービスに加えて、アプリストアがインストールされているのが一般的で、これによって非常に多くのサービスが利用できるようになっている。グーグル車載サービスは、グーグルマップ、グーグルプレイ、グーグルアシスタントで構成され、車載用インフォテインメント・システムでこうしたサービスの利用を可能にするもので、今後さらに重要性が増すと考えられている。これまでは、グーグル車載サービスに含まれるサービスを個別のスタンドアロン版として提供することはできなかった。ムント長官は、次のように述べた。
 「将来的には、自動車メーカーが様々なプロバイダーのサービスを自由に選択し、顧客のニーズに応じて組み合わせることが可能になるであろう。これにより、代替的なプロバイダーに新たなチャンスがもたらされる。例えば、自動車メーカーと協力して、新しい車載インフォテインメント・ソリューションの開発に取り組むことができるようになる。」
 グーグルは、カルテル庁に対し、グーグル車載サービスに含まれるサービスを個別のスタンドアロン版としてライセンス供与する旨の確約を申し出た。この確約には、グーグルがデフォルト設定や広告収入の分配に関する条項など、グーグルのサービスの利用を顧客に促すような制限的な契約条項を撤廃することも含まれている。グーグルはまた、サードパーティのサービスとの相互運用性を可能にするために必要な条件を整備することも確約した。
 
3 グーグルマップ・プラットフォーム 
 物流、移動、配送サービス事業者など多くの事業者は、B2Bの地図サービスを利用している。グーグルマップ・プラットフォームでは、グーグルが地図へのアクセス、ナビゲーション、交通情報、住所確認、位置情報検索、地図上の特定の地点表示などのサービスをライセンスしており、圧倒的に重要な事業者である。特に、ローカル検索及び名所情報に関しては、グーグルは独自の地位を確立しており、これはエンドユーザーがグーグルのサービスを広く利用しているからこそ実現できたことである。ムント長官は、次のように述べた。
 「これまで、グーグルの様々な地図サービスとサードパーティのサービスを組み合わせることは、限られた範囲でしかできなかった。今回、こうした制限が撤廃されたことで、顧客にとって、より多くの選択肢及び柔軟性がもたらされることになる。今後、地図サービスの利用者は自分のアプリケーションに最適で低価格のサービスを組み合わせ、代替案を自由に開発できるようになる。」
 グーグルは、自社の地図サービスと、HERE、Mapbox、TomTom等の他の事業者の地図サービスを組み合わせて利用することを制限していた契約条項を撤廃することを確約した。今後は、グーグルが提供する地図コンテンツは、OpenStreetMapのようなサードパーティの地図上にも表示することが可能になる。 
 グーグル車載サービスに関する確約に加えて、この確約により、自動車メーカーや部品サプライヤーは、インフォテインメント・システムの中でグーグルマップ・サービスをサードパーティのサービスや自社開発のサービスと組み合わせて使用することができる。 

4 ドイツ国外への影響
 グーグルの確約の影響はドイツ国内に限定されるものではない。この確約は、ドイツで登録されている、又は将来登録される可能性のある車両の車載インフォテインメント・システム向けの車載サービスに適用される。車両登録条件はEU全域で標準化されているため、確約は欧州市場全体に及ぶ。自動車業界では、国際的に展開可能な統一システムを開発することが一般的であるため、この確約は、他の国や地域で使用される車載インフォテインメント・システムにも実質的に適用される。
 契約上の制限を撤廃するという確約は、グーグルマップ・プラットフォームに関しては、欧州経済領域内に請求先住所があるグーグルマップ・サービスの全てのライセンス保有者に適用される。

5 大規模デジタル企業に対する新たな規定
 カルテル庁は、大規模デジタル企業に関する新しい規定(ドイツ競争法第19条a)に基づいて今回の手続を実施した。カルテル庁は、この規定に基づき、2段階の手続で、市場全体の競争に卓越した重要性を持つ事業者に対し、特定の競争制限的行為をより効果的に禁止することができる。
 グーグル(アルファベット)に対する今回の手続の他、カルテル庁は既に、アマゾン、アップル、フェイスブック(メタ)及びマイクロソフトに対しても、ドイツ競争法第19条aの規定に基づいて手続を開始又は終了している。カルテル庁は、2021年12月30日の決定により、アルファベットが市場全体の競争に卓越した重要性を持つ事業者と認定した(注2)。
 (注2) https://www.bundeskartellamt.de/SharedDocs/Meldung/EN/Pressemitteilungen/2022/05_01_ 2022_Google_19a.html?nn=48888 


インド

CCI、Android TV事件におけるグーグルの和解案を承認

2025年4月21日 インド競争委員会 公表

原文

【概要】

1 インド競争委員会(以下「CCI」という。)は、2002年競争法(以下「競争法」という。)第48A条第3項及び2024年CCI(和解)規則(以下「和解規則」という。)に基づき、多数決により、Android TV事件におけるグーグルの和解案に同意した。

2 本件は、競争法に基づき、個人2名が提出した申告(Google LLC、Google India Private Limited、Xiaomi Technology India Private Limited及びTCL India Holding Private Limitedが、同法の様々な条項に違反した疑いがある。)に端を発する。

3 申告の要旨は、グーグルがOEM事業者(相手先ブランド製品製造業者)に対して、Android TV OSにGoogle Play Store を強制的に抱き合わせたり、フラグメンテーション(断片化)禁止契約(Anti-Fragmentation Agreements以下「AFA」という。)を通じて、競合するAndroidフォーク(訳注:グーグルから承認されていないAndroid OSの改変版)の使用や作成を阻止するなどの制限的な契約を強制することにより、支配的地位を濫用したというものであった。これらの行為は、市場アクセスを妨げ、競争を制限し、OEM事業者に無関係な義務を課し、最終的にイノベーションを阻害し、競争法第4条(支配的地位の濫用の禁止)の規定に違反するものである。

4 CCIは、グーグルが競争法第3条第4項(反競争的垂直協定)及び第4条(支配的地位の濫用)の諸規定に違反しているとの暫定的な見解を示し、競争法第26条第1項の規定に基づき審査を行うよう事務局長に指示した。

5 事務局による審査の結果、①Android Smart TV OSは、「インドにおけるライセンス可能なSmart TVデバイスのオペレーティングシステム(OS)市場」において支配的地位にあり、②Google Play Storeは「インドにおけるAndroid Smart TV OS向けアプリストア市場」において支配的地位を有していることが判明した。

6 事務局の審査の結果、グーグルが締結したグーグルのテレビアプリ配信契約(Television App Distribution Agreement、以下「TADA」という。)とAndroid互換性義務(Android Compatibility Commitments、以下「ACC」)という。)が合わせて実行されることにより、以下のような不公正な条件を課されていたと認定された。
①グーグルの全部のアプリをバンドルしてGoogle TV Servicesのプリインストールを義務付けたこと
②OEM事業者によるAndroidフォークの開発や使用を禁止したこと
③イノベーションを阻害したこと 
 これらの契約は、デバイス全体のポートフォリオに適用されており、Play StoreをYouTubeなどの他のグーグルのサービスと抱き合わせ、グーグルの市場支配力を強化し、競争法第4条のいくつかの条項に違反するものであった。

7 これに対し、グーグルは、和解規則及び競争法第48A条に基づいて和解申請を提出した。 グーグルは、和解申請において、以下を含む和解案を提示した。
 (1) グーグルは、インドで販売される互換性のある Android Smart TV 機器向けに、「新インド協定(New India Agreement)」と呼ばれる、Google Play Store及び Google Play サービスのスタンドアロンライセンスを提供する。新インド協定には、Play Store又は、その他の グーグルのサービスの配置又はデフォルト要件は含まれない。グーグルは、現在のAndroid TV OEM及びその他の関心のあるOEMと新インド協定を締結する。
 (2) インドで出荷されるデバイスのうち、グーグルのアプリをプリロードしていない端末については、TADA における有効な ACC の要件を撤廃する。この点に関して、グーグルは、インドに出荷されるデバイスにグーグルのアプリが含まれていない場合、有効なACCが必要であるというTADAの要件を法的に免除する旨をインドの全てのAndroid TVパートナーに通知する。
 (3) グーグルはまた、インドの全てのAndroid TVパートナーに対し、(i)グーグルからアプリケーションを取得したり、ACCを締結したりすることなく、スマートテレビ向けにオープンソースのAndroid OSを使用すること、(ii)Tizen、WebOS、Roku OSを含む他の競合OSを使用してスマートテレビを開発することについて、グーグルとの現在の契約に基づいて既存の柔軟性を確認する書簡を送付する。
 (4) グーグルは、和解案を5年間遵守する。グーグルはまた、これらの和解案に基づく義務を遵守していることを確認するコンプライアンス報告書をCCIに定期的に提出する。 

8 CCIは、和解案を検討した結果、以下のとおり判断し、上記6に示した懸念に対処するとしてこれを承認した。
【上記7の(1)に関して】
 新インド協定により、OEMは、インド市場向けのAndroidベースのスマートテレビに対して、Google Play StoreとGoogle Play サービスのスタンドアロンライセンスを一定の料金で取得できるようになり、YouTubeのようなグーグルの追加サービスをプリロードする必要はない。また、新インド協定では、Google Play Storeやその他のグーグルサービスの配置やデフォルト設定は義務付けない。
 OEMは、自社の商業的な希望に基づき、新インド協定及び既存のTADAのどちらの下でも、数の制限なくデバイスを供給できる柔軟性を持つことになる。
 TADAと新インド協定の両方を提供することで、OEMはGoogle Play Storeのみのライセンスを取得することも、Google TV サービスのアプリ一式をプリインストールすることも、より柔軟に選択できるようになる。これにより、OEMは自社のデバイスをカスタマイズし、消費者の嗜好に合わせ、戦略的にプリインストールアプリを選択することができる。
 以上から、この提案は、TADAの下でのGoogle TV サービスのアプリ一式の強制的プレインストール及び、YouTubeのGoogle Play Storeへの抱き合わせに関して事務局が強調した懸念に対処するものである。

【上記7の(2)、(3)に関して】
 和解案によると、グーグルはインドでスマートテレビを販売する全てのAndroid TVパートナーに対し、インドにおけるTVデバイスのACCに関するTADAの要件を免除する拘束力のある書簡を送付する。この措置により、TADAに署名した事業者は、グーグルのアプリを搭載しない限り、互換性のないAndroid バージョンで動作する端末をインドで導入することができる。基本的にこの措置は、TADAの互換性要件は、署名事業者が互換性のないAndroidバージョンを搭載したデバイスを発売することを禁止することにより、競合するテレビOSの開発を制限していると指摘した事務局の懸念に対処するものである。

9  以上から、記録された資料及び違反行為の性質、重大性及び影響を考慮した和解案の評価を踏まえ、CCIは、競争法第48A条第3項及び和解規則に基づくグーグルの和解案を承認した(注1)。和解減額15%を適用した後の最終和解金額は、2億240万ルピー(約3億4000万円)とした。
 (注1)委員のうち、一人(アグラワル委員)は、グーグルの和解案は不十分だとする反対意見を述べている。例えば、グーグルは、TADAと並行して、新たに「新インド協定」を提供するとしているが、TADAに基づく反競争的行為が放置される。OEM事業者は、有償の新インド協定を選ぶか、無料だが制限付きのTADAを継続するしかなく、「自由な選択」が事実上制限される。 
https://www.cci.gov.in/antitrust/orders/details/1182/0

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