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韓国

タクシー配車市場における支配的地位の濫用を行ったとして、タクシー配車アプリ事業者とその幹部3名を在宅起訴

2026年1月26日 ソウル南部地方検察庁 公表
原文(韓国語)

【概要】

 ソウル南部地方検察庁は、タクシー配車アプリ事業者であるカカオモビリティと同社の幹部3名(以下併せて「被告人」という。)を公正取引法違反の疑いで在宅起訴した。
 本件は、韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)が、2024年10月2日にカカオモビリティを公正取引法違反の疑いで検察に告発(注1)したことを契機に、ソウル南部地方検察庁が捜査を実施したものである。
 (注1) KFTCは、カカオモビリティを刑事告発した旨をウェブサイト上で公表している。他方、ソウル南部地方検察庁は、韓国法務部(日本の法務省に相当)が定める刑事事件の公報に関する規定に基づき、事業者名や幹部の実名については明らかにしていない。

1 被告人及び公訴事実の要旨
(1) 被告人
・カカオモビリティ(注2) 
・カカオモビリティ代表取締役 
・カカオモビリティ副社長 
・カカオモビリティ事業室長
 (注2) 韓国の中型タクシー一般配車市場において95%のシェアを占める。

(2) 公訴事実の要旨
 被告人は、中型タクシー一般配車市場における支配的地位を濫用し、2021年2月から2023年12月頃までの間、中小加盟競争事業者(訳注:タクシードライバーと加盟契約を結びブランド運営を行う事業者。)4社(A社、B社、C社及びD社)に対し、次の不公正取引行為を行った。
・手数料の支払い又は営業上の秘密(出発地や経路情報等)の提供を要求
・上記の要求に応じない当該中小加盟競争事業者に所属するドライバーに対して、カカオモビリティのタクシーアプリを利用できないよう遮断

2 本件違反行為の構造
(1) 中型タクシー一般配車市場
 タクシー配車アプリ事業者は、タクシー配車アプリを通じて乗客とドライバーを結び付ける。
配車方式は、加盟契約を締結したドライバーのみが利用できる「加盟配車」と全てのドライバーが利用できる「一般配車」の2種類からなる。
 カカオモビリティは、加盟ブランドを運営し、加盟契約を締結したドライバーに「加盟配車」を割り当て、加盟契約締結の有無を問わず全てのドライバーに「一般配車」を割り当てていた。
 中小加盟競争事業者に所属するドライバーは、カカオモビリティの一般配車を利用していたものの、手数料は一切支払っていなかった。

 (2) 犯行経緯
 被告人は、2019年11月から2020年11月頃まで、競争加盟事業者に所属するドライバーに対する一般配車を遮断する案を検討したものの、公正取引法違反による摘発の可能性が高いとの結論に至り、実行しなかった。
 しかし、2020年12月頃、タクシー加盟市場における競争が激化し、韓国政府がタクシー業界の独占的な構造の解消に向けて旅客自動車運輸事業法(注3)の改正を検討するなど、カカオモビリティの加盟市場シェア(注4)の拡大が困難となり得る環境に直面した。 
 被告人らは、「ブランド混同問題(注5)」等を名目として、中小加盟競争事業者に対して、手数料の支払等を要求し、これに応じない場合には所属するドライバーに対する配車を遮断する計画を実行した。
(注3) タクシー、バス、レンタカーなどの旅客運送事業を規制する法律
(注4) 2021年3月時点で55%(加盟ドライバー数基準)であった。
(注5) カカオモビリティの一般配車利用客が、同社のタクシーではなく他のブランドのタクシーが割り当てられたと抗議する問題のこと。

(3) カカオモビリティが要求した不当な条件
 カカオモビリティは、2021年2月から2023年12月頃まで、中小加盟競争事業者であるA社、B社、C社及びD社に対し、従前徴収していなかった所属するドライバーの一般配車の利用手数料を代わりに支払うこと、又は、営業秘密データ(出発地や経路情報等)を提供することを要求し、いずれにも応じなかった場合は所属するドライバーのカカオモビリティのタクシーアプリ使用を遮断すると通知した。
 これらの中小加盟競争事業者は、所属するドライバーが個人的に利用する一般配車の手数料を支払う理由がなく、提示された手数料の水準も加盟料の2~3倍と非常に高額であった。また、カカオモビリティは営業秘密データをナビゲーションの高度化等に使用する目的で不当な要求を行っていたと認定した。

(4) 市場に与えた影響
 被告人は自らの要求に応じなかったA社に所属するドライバーのアカウント14,042件(2021年7月から2023年12月まで)、B社に所属するドライバーのアカウント1,095件(2021年7月から同年11月まで)に対し、一般配車等のサービス提供を停止した。
 また、被告人は、A社及びB社の加盟表示を付けているタクシーに関する通報を受けて、配車遮断措置を実行した。配車を遮断されたドライバーが自ら車両から加盟表示を剥がし、写真で認証するとカカオモビリティが配車遮断措置を解除した事実も確認された。
 これにより、一般配車を遮断されたドライバーは月平均約101万ウォンの収入減少が生じ、特にB社は被告人の遮断行為が継続した期間の前後で加盟運行車両数が半減し、その後、新規加盟車両を募集できなくなり、中型タクシー加盟ブランド事業の中止を余儀なくされた

(5)その他
 ソウル南部地方検察庁は、これに加え、KFTCが告発したいわゆる「配車の集中配分」に関する公正取引法違反事件(カカオモビリティが所属するドライバーに対して有利に一般配車を割り当てた疑い)及び金融委員会が2024年11月に通知した外部監査法違反事件(カカオモビリティが売上高を水増しした疑い)についても併せて捜査したものの、嫌疑を証明することが困難であり、全て嫌疑なしと判断した。

3 本件捜査の意義
(1) 犯罪全容の解明
 KFTCによる告発後、ソウル南部地方検察庁は、綿密な捜査により本件犯罪の内容を具体的に確認し、その主導的立場にあったカカオモビリティの幹部3名(個人)を起訴するなど、本件の実態に合致する適切な処分に至った。

(2) 支配的地位の濫用への厳正な対応
 カカオモビリティは中型タクシー加盟ブランド市場に参入した中小加盟競争事業者の事業活動に多大な支障をきたし、これらの一部が該当事業を中止するなどして、中型タクシー一般配車市場のみならず、中型タクシー加盟ブランド市場においても支配的地位を一層強化した。
 これはタクシー配車市場全体の自由な競争を制限し、同市場のイノベーションを阻害することで、タクシー利用者が享受する便益を低下させ、負担する費用を増加させる、国民生活に影響を及ぼす重大事案であると判断し、被告人全員について在宅起訴とした。

4 今後の計画
 ソウル南部地方検察庁は公訴維持に万全を期し、今後も市場競争秩序を損ない国民生活と国家経済発展を阻害する各種公正取引法違反事件に対し、法と原則に基づき厳正に対応する。

 

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