最近の動き(2026年5月更新)

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ドイツ

燃料価格高騰対策パッケージの公表

2026年3月31日 ドイツ連邦政府 公表
(訳注:ドイツ連邦政府は情報を更新しており、4月13日時点の状況が公表されている)

原文

【概要】

1 ガソリンスタンドの燃料価格の引上げは、今後、1日1回に限定される。4月1日に施行される政策パッケージには、ドイツ連邦政府(以下「連邦政府」という。)による国内石油備蓄の一部放出も含まれている。 

2 燃料価格の急騰は、イラン・中東紛争に関するドイツ国民の最大の懸念事項の一つとなっている。これを受け、連邦政府は、ガソリンスタンドでの価格高騰に対抗するため、燃料価格高騰対策パッケージを導入した。

3 本パッケージは、燃料価格を調整するための新法と、不当な燃料価格の引上げに対して措置を講じやすくするためのドイツ競争制限禁止法(以下「GWB」という。)の2点の改正(注1)という、3つの主要な措置から構成される。
(注1)新設のGWB第29a条により、燃料の精製・卸売市場において、事業者によるコストを不合理に上回る価格設定が禁止され、事業者側から価格設定の合理性を立証しなければならない。また、GWB第32f条を改正し、連邦カルテル庁によるセクター調査の結果を踏まえ、是正措置を課すまでのプロセスを合理化した。これらの改正を受けて、連邦カルテル庁は燃料市場透明性ユニットを創設するなど、燃料部門における執行体制を強化している。 https://www.bundeskartellamt.de/SharedDocs/Meldung/EN/Pressemitteilungen/2026/04_01_2026_B13.html

4 ドイツ連立与党は、可能であればイースター(訳注:2026年4月5日)前に新規制を導入することを目指し、本パッケージを直ちにドイツ連邦議会に提出する意向である(注2)。
(注2)ガソリンスタンドの価格改定に関する新規制は既に採択され、4月1日から施行されている。

5 主な質問及び回答
(1) ガソリンスタンドがガソリン及び軽油の価格を1日に複数回引き上げることは、いつから禁止されるのか
 ドイツ国内のガソリンスタンドの燃料価格の引上げは、間もなく(訳注:2026年4月1日のこと)、1日1回、正午に限定される。一方、引下げはいつでも可能である。連邦政府は、15年前にオーストリアで導入されたモデルを参考に、ガソリンスタンドにおける価格の信頼性及び透明性を高めるため、燃料価格を調整するための新法を制定しようとしている。
 現在、ガソリン価格は、1日に最大22回も変更されており、これはドライバー及び通勤者に対する透明性の著しい欠如を意味している。1日に複数回価格を引き上げることを禁止する条項に違反した場合、最大10万ユーロ(約1850万円)の制裁金が科され得る。
 本禁止措置は、ドイツ連邦カルテル庁(以下「連邦カルテル庁」という。)が指摘する「ロケット・アンド・フェザー効果(rocket and feather effect)」(注3)を解消することを目指している。連邦政府は、実務における措置の実効性及び影響について、6か月後に検証する予定である。
(注3)原油価格が上昇するとロケットのように燃料価格が急速に値上がりした一方で、原油価格が下落しても燃料価格の低下は舞い落ちる羽のように緩やかだったという過去の現象を指す。
(2)  今後、不当な価格引上げに対してより強力な措置が採られるのか
 そのとおりである。連邦政府は、燃料分野におけるGWB上の濫用行為に対する監視を強化する方針である。今後、不当に高い価格設定の兆候が見られた場合、連邦カルテル庁は、燃料分野における市場支配的地位又は強い市場力を有する企業に対して、より容易に措置を講じることができるようになる。特に、これにより、そのような企業が独立系ガソリンスタンドと比較して過度に高い価格が設定されることも、防がれることが期待される。
 燃料価格が不当に吊り上げられている疑いがある場合、当該企業は価格引上げの正当性を証明しなければならない。コスト及び価格に対するより厳格な統制は、価格引下げの前提条件となる。
さらに、今後、連邦カルテル庁は、競争の構造的な歪みをより容易に特定し、より迅速に是正できるようになる。
(3) 石油備蓄が放出された場合、ドイツには十分な石油が残るのか
 イラン・中東紛争及びホルムズ海峡の航路封鎖により、世界市場における石油価格は約30%上昇し、多くの国で緊張が高まっている。これは特に、日本、韓国等、中東地域から大量の原油を輸入しているドイツのパートナー国であるアジア諸国に当てはまる。ドイツの原油輸入に占める中東からの割合は、ごくわずかである。
 そのため、国際エネルギー機関(以下「IEA」という。)は、加盟国に対し、合計4億バレル(約5400万トン)の石油備蓄を放出するよう要請した。石油備蓄の放出は、石油の供給が十分にあることを世界市場に示す重要なシグナルであり、現在の市場状況を緩和し、世界的な価格上昇を抑制することを目指している。
 ドイツは、IEAからの要請に協力し、備蓄の一部を放出することで連帯を示す用意がある。ドイツの約90日分の緊急備蓄は、原油及び石油製品を合わせて合計約1950万トンである。そのうちのわずか260万トンが放出される予定だが、必ずしも実際に引き出されることを意味するわけではない。いずれにせよ、ドイツにおける軽油、ガソリン、暖房用燃料の供給は確保されている。
(4) ドイツで使用される燃料はどの地域から供給されているのか
 ドイツの原油の約6%のみが中東産であり、大部分はノルウェー、米国、リビア、カザフスタン及び英国から輸入されている。ガソリン、軽油等の石油製品は、主に輸入した原油を原料としてドイツ国内で生産されており、その輸入先は主にオランダ、米国、ノルウェー及びベルギーである。
 

イタリア

イタリア競争当局、量子コンピューティングに関するセクター調査及び意見募集を開始

2026年3月17日 イタリア競争・市場保護委員会 公表

原文

【概要】

1 量子コンピューティング(以下「QC」という。)技術は急速に進展しており、今後数年間で著しい成長が見込まれている(注1)。イタリア競争・市場保護委員会(以下「AGCM」という。)は、QC分野における複数の競争上の懸念について検討することを目指している。

(注1)最近の推計によると、QC関連事業による世界的な収益は既に10億ドルを超え、2040年までに総額1000億ドルを超えると予測されている。

https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/business%20functions/mckinsey%20digital/our%20insights/the%20year%20of%20quantum%20from%20concept%20to%20reality%20in%202025/quantum-monitor-2025.pdf

2 AGCMは、QC分野に対するセクター調査を開始した。QCは、現在の技術と比較して複雑な問題への対処方法を変革する可能性を秘めた新興の計算技術であり、サイバーセキュリティ、バイオテクノロジー、材料設計、生産プロセスの最適化及びフィンテックの分野において、既に応用化が進んでいる。

3 QC分野は、生産及び流通の両方のレベルにおいて、ハードウェアとソフトウェアの境界が従来の計算技術に比べて著しく不明確である。QC分野には、クラウドベースのサービス(潜在的にQCを含む。)を提供するグローバルな大手テクノロジー企業と、特化した技術及びサービスの開発に注力する中小企業(その多くは依然としてスタートアップ企業)の両方が存在している。

4 AGCMは、このような急速な発展の状況を踏まえ、AI分野において既に観察されている諸問題も踏まえつつ、競争上の懸念となり得る複数の事象について検討することとしている。これには、経済的、技術的及び知識面における重大な参入障壁、ロックインのリスク、さらにより広くは、特に現在の特許出願の急増を背景とした、戦略的分野全体における技術的な先行の可能性が含まれる。

5 本調査は、イタリア国内及びEU全体の両方において、QC分野に多額の投資が行われるとともに、期待値が著しく高いことを踏まえ、潜在的なリスク及び課題の全体像をタイムリーに提供することを目的としている。

6 本調査と並行して、AGCMは、本調査の開始決定時に示された論点(後記7参照)について、一般からの意見募集も開始した。利害関係者は、イタリア語又は英語により、2026年4月30日までに意見を提出することができる。

7 本調査の開始決定時に示された論点
(1) 現存の及び将来予想される市場構造(例:①量子ハードウェアとソフトウェアの区別及び相互の関係、②クラウドサービスと「量子・アズ・ア・サービス(”Quantum-as-a Service”)」との関係、③垂直型アプリケーション)
(2) 現存の及び将来予想される競争ダイナミクス(例:①技術的リーダーシップ及び先行者利益、②既に支配的地位を有する大規模クラウド・エコシステムの補完的要素としてQCが取り込まれるリスク)
(3) 現存の及び将来予想される知的財産権の重要性
(4) 既に見受けられる買収及び統合戦略(特にスタートアップ企業の買収)並びにベンチャーキャピタルの支援を受けた開発の現在及び将来の役割
(5) 戦略的依存の態様(例:①重要な量子ハードウェア及びサービスへのアクセス、②技術的・商業的ロックイン及び特許で守られた規格、③安全保障、レジリエンス及び技術主権への影響)

シンガポール

企業結合審査手続ガイドラインの改正

2026年3月27日 シンガポール競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

1 シンガポール競争・消費者委員会(以下「CCS」という。)は、企業結合審査手続ガイドライン(注1)の見直しに関する検討を完了した。同ガイドラインには、2025年10月27日から同年11月17日にかけて実施された意見募集において、利害関係者から寄せられた提案や意見が盛り込まれている。

 改正後の企業結合審査手続ガイドラインは、2026年5月1日に発効する。

(注1)現行の企業結合審査手続ガイドラインは、2022年2月1日に発効している。

2 企業結合審査手続ガイドラインの主な改正点は次のとおり。
(1) 審査期間の短縮等(注2)
(注2)改正後の企業結合審査手続ガイドラインにおいても、当事会社がCCSからの情報提供要請に所定の期間内に回答しない場合や、コミットメントが検討されている場合など、様々な理由により、CCSは審査を中断(Stop the clock)することがある旨規定されている(同ガイドラインパラグラフ2.11)
① 第1次審査
 これまで第1次審査の審査期間は30営業日以内とされていたところ、競争上の影響が見込まれない企業結合案件についてはスリム化された審査を行うことにより、25営業日以内に審査を完了させる。競争上の懸念の有無を判断するため、より詳細な審査が必要な状況に限り、CCSは第1次審査の審査期間を20営業日延長し、特定された競争上の問題について更に評価を行った上で、第2次審査の必要性の有無を決定する。これにより、第1次審査期間は、最長で50営業日となる場合がある。

② 第2次審査
 審査期間を120営業日以内から100営業日以内に短縮する。また、これまで、CCSは当事会社と、事前に企業結合審査における論点を説明するレターを事前に発出した上で、そのような論点を説明するための面談(state of play meeting)を行うことがあったところ、レターの事前発出は取りやめ、当事会社との面談は適切なタイミングで行うこととする。当事会社は、CCSが指摘した論点に対処する問題解消措置案を、できるだけ早期に提出することが推奨される。

(2) 事業者の負担軽減
 これまで当事会社又は第三者がCCSに提出する書類は機密版と非機密版の両方であったが、今後、CCSは機密版の書類のみの提出を求めることになる。当事会社は、CCSに提出される書類に含まれる機密情報を明確に特定し、その情報を機密として扱うべき理由を記載した文書を提出しなければならない。

3 意見募集で寄せられた主な意見とそれらに対するCCSの考え方
(1) 第1次審査での論点指摘レター(Phase 1 Issues Letter)
 当事会社がCCSの懸念に対処できるよう、第1次審査での論点指摘レターには、関連市場や競争制限のメカニズム(theory of harm)を含め、十分な詳細情報が盛り込まれる必要があるとの意見があった。また、複雑な企業結合事案については、論点の解決のため、第1次審査期間中にCCSと協議する機会を設けるべきであるとの意見があった。
 CCSは、同レターが、第1次審査中に特定された主な論点を要約したものであるとした上で、第2次審査で追加の論点が浮上する可能性があり、その場合も同様に当事会社に対して論点を伝えることを明記している。また、CCSは、当事会社が早期に潜在的な競争上の懸念に対処するため、CCSと積極的に関わることを推奨する。

(2) 第1次審査期間におけるスリム化された審査
 審査期間の短縮には賛意が寄せられたが、30営業日という期限と実際に審査を完了するまでに要している期間との間に違いがあることを指摘するとともに、情報提供要請が的を絞ったものとなるようにすることを企業結合審査手続ガイドラインに盛り込むことを提案する意見があった。
     第1次審査におけるスリム化された審査の導入に合わせ、CCSは、競争上の影響が見込まれない企業結合案件においては、提出者に求める情報について、より的を絞ったアプローチを導入しており、今回のガイドライン改正案がそのような点も踏まえたものとなっている。

(3) 付随的制限(注3)
 CCSが企業結合審査プロセスにおいて、届出に関する合意や取決め、条項(以下、併せて「制限条項」という。)について、予備的な問題点を指摘するかどうかについて、疑問が呈された。また、CCSが、届け出られた制限条項の審査を拒否又は延期したにもかかわらず、その後に問題点を指摘した場合、法的確実性が損なわれ、クロージング条件の策定が複雑化する可能性があるとの懸念も示された。
 CCSは、制限条項の審査に関する現行の手続に変更はないことを明確にしている。すなわち、CCSは企業結合審査の一環として、制限条項が付随的制限に該当するかどうかを審査し、決定書において当該制限条項が付随的制限に該当するかどうかを明記する。ただし、CCSが企業結合審査プロセスを長期化させることなく制限条項を評価できるよう、当事会社は、制限条項に関する十分な情報を初期段階からCCSに提供する責任を負う。
    CCSは、制限条項が付随的制限に該当しないと判断した場合、その理由を決定書に記載する。当事会社は、更なる法的確実性を求める必要がある場合、CCSに対して、別途、届出を行うかどうかを決定できる。
(注3)企業結合が円滑に行われ、その目的(効率性の向上等)を達成するために不可欠であるような、競争を制限する合意や契約条項のこと。

(4) 第2次審査における論点指摘レターの廃止
 CCSが第2次審査における論点指摘レターを廃止することに対し、透明性への懸念を表明し、当事会社には具体的な競争上の懸念について明確かつ適時の指針が必要であること、また、第2次審査の過程で追加の証拠が収集されることで、第1次審査の段階で発出される論点指摘レターに依拠することが時宜を逸することになりかねないとの意見があった。
 CCSは、第2次審査における論点指摘レターに関する要件を撤廃し、当事会社とのより柔軟かつ適時な対話方式を採ることを明確にしている。これにより、CCSは第2次審査における論点指摘レターを通じて競争上の懸念を伝達することに拘束されず、特定された競争上の懸念を適切なタイミングかつ手段により当事会社に通知する。これにより、CSSと当事会社間で率直かつ透明性のある意見交換が促進され、当事会社は、早い段階で適切な対応を検討できるようになる。こうした柔軟な対話方式に加え、CCSは、特定された競争上の懸念事項について、適切な場合には、文書で当事会社に伝達する。

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