2026年4月

米国

FTCファーガソン委員長、アップルのクックCEOに対し、政治的理由による記事の抑制又は優遇に関して、FTC法違反の疑いで警告書簡を発出

2026年2月12日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】

1 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)のアンドリュー・ファーガソン委員長は、アップルのティム・クックCEO宛てに書簡を発出し、アップルが顧客に対して負っている義務(注1)について注意喚起した。同書簡は、Apple News(注2)が体系的に左派系報道機関を優遇し、右派系報道機関を抑制しているとの報告を受けて発出されたものである。また、同書簡は、アップルがApple Newsにおいて事実を誤認させる表示を行った場合や、利用規約に違反した場合には、FTC法に違反する可能性があると指摘している。
(注1)①不公正又は欺瞞的な行為を行わない義務、②重大な虚偽表示及び重大な不開示を行わない義務、③利用規約どおりにサービスを提供する義務(書簡参照)。
(注2)書簡には、「Apple Newsは、新聞、雑誌、デジタル出版物から記事を集約し、それらの記事を選定及び編集して消費者にデジタルニュースフィードを提供している。」、「Apple Newsは、iPhoneやiPadを含む多くのアップルの端末にプリインストールされており、米国で最も使用されているニュースアプリだと主張している。」旨記載されている。

2 ティム・クックCEO宛の書簡の概要は次のとおり。
(1) FTC法第5条は、不公正又は欺瞞的な行為又は慣行を禁止している。ある表示がFTC法の下で欺瞞的とみなされるのは、表示が重要なものであり、かつ、当該状況下で合理的な消費者を誤解させるおそれが高い場合である。FTC法は、重大な虚偽表示及び重大な不開示の両方を禁止している。行為又は慣行が不公正とされるのは、合理的に回避することができない重大な損害を消費者に与える、又は与えるおそれがあり、かつ、その損害が消費者又は競争によってもたらされる相殺的な利益によって正当化されない場合である。昨年、FTCは、ビッグテック企業やプラットフォームが、言論の内容や所属関係に基づいて、消費者のサービスや情報へのアクセスをどのように拒否又は制限しているか(FTC法第5条に違反するおそれのある行為を含む。)について理解を深めるため、意見募集を実施した。

(2) 合衆国憲法修正第1条(注3)は、ビッグテック企業の言論も保護している。しかし、同条は、消費者に対して行われた重大な虚偽表示に対してまで保護を拡大したことはなく、また、たとえ当該行為が言論を伴うものであっても、議会がFTC法の下で不公正とみなした行為について、発言者を免責するものでもない。
(注3)合衆国憲法第1条は、「この憲法で付与された全ての立法権は、合衆国議会に属する。議会は上院及び下院から構成される。」と記載され、個人の権利保障が明記されていなかった。修正第1条は、「政治権力を制限し、個人の自由を保護するため」に採択され、「合衆国議会は、宗教の設立に関する法律、またその自由な行使を禁じる法律を制定してはならない。また、言論や出版の自由を制限する法律、及び人民が平和的に集会する権利や、苦情の是正を政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない。」と記載されている。

(3) ニュースアグリゲーター(注4)やフィード(注5)において、記事や出版物の思想的又は政治的見解に基づいてニュース記事を抑制又は優遇するビッグテック企業は、そのような抑制又は優遇が①利用規約に違反する場合、②消費者の合理的な期待に反しており、思想的な偏向の不開示が重大な省略(material omission)となる場合、又は③当該行為が、合理的に回避不可能であり、消費者や競争に対する相殺的利益によって正当化することができない重大な損害を与える場合には、FTC法に違反する可能性がある。
(注4)インターネット上に公開されたニュースを収集し、ユーザーが容易にアクセスできる形式で提供するサービスやアプリのこと。
(注5)「ニュースサイトなどで更新情報が表示される領域」や「SNSの投稿一覧」のこと。

(4) 御承知のとおり、Apple Newsは、既存及び将来の消費者との関係を規定する利用規約及びポリシーを定めている。これらの利用規約及びポリシーは、サイト上のコンテンツ、利用者によるサイト利用、禁止行為、プライバシー及びデータセキュリティ、紛争解決などを含む幅広い事項を扱っている。

(5) 最近、Apple Newsが左派系報道機関のニュース記事を組織的に優遇し、右派系報道機関ニュース記事を抑制しているとの報告があった。複数の調査結果(注6)(注7)によると、ここ数か月、Apple Newsは米国における保守的傾向の報道機関の記事を1本も取り上げていない一方で、リベラルな報道機関の記事を何百本も取り上げてきた。このような報告は、Apple Newsが利用規約及び消費者に対する表明に従って行動しているかどうか、さらに、Apple Newsを利用する何千万人もの米国人が抱く合理的な消費者の期待に沿っているかどうかについて、重大な疑問を提起するものである。
 (注6)メディアリサーチセンター(メディアバイアスの追跡に焦点を当てた保守的な監視グループ)は、2026年1月1日から1月31日までの間に、トラフィックの多い朝の時間帯にApple Newsが取り上げた合計620件の記事を分析した。https://nypost.com/2026/02/10/business/apple-news-promotes-left-leaning-media-outlets-as-it-shuts-out-conservative-sites-entirely-study/
(注7)メディアリサーチセンターは、2025年11月にApple Newsのトップ20に掲載された記事や報道源を分析した。https://mrcfreespeechamerica.org/blogs/free-speech/heather-moon/2025/12/08/apple-news-shows-only-1-right-leaning-outlet-out-560

(6) 私(訳注:FTCファーガソン委員長)は、米国民として、思想的な理由でコンテンツを検閲しようとするいかなる試みも嫌悪し、非難する。そのような取組は、外国政府の要請で熱狂的な活動家を懐柔するために行われたものであれ(注8)、単にシリコンバレーのエリート層の政治的見解を推進させるために行われたものであれ、自由な意見交換を抑圧し、公の議論を操作するものであり、米国の価値観と相いれないものである。
(注8)FTCファーガソン委員長が、欧州のデジタルサービス法や英国のオンライン安全法を引き合いに外国勢力の要請に応じて検閲を行ったり、米国民のデータセキュリティを弱体化させたりしないよう企業に警告(2025年8月21日)。https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2025/08/ftc-chairman-ferguson-warns-companies-against-censoring-or-weakening-data-security-americans-behest

(7) FTCは言論を取り締まる機関ではない。我々には、アップルを含むいかなる企業に対しても、特定の政治問題について肯定的な立場を取るよう要求する権限も、ニュースの提供内容を特定の思想に沿って編集することを要求する権限もない。しかし、議会は、消費者に提供される製品又はサービスが言論に関連するものである場合であっても、重大な虚偽表示及び不開示から消費者を保護することを義務付けている。

(8) 私は、FTCの委員長として、FTC法に基づく貴社の義務について通知するため、本書簡をしたためた。アップルの利用規約について包括的に見直しを行い、Apple Newsによる記事の選定及び編集が当該利用規約及び消費者に対する表明と一致するよう確保するとともに、一致していない場合は、速やかに是正措置を講じるよう促す。

ページトップへ