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日本国公正取引委員会とインド競争委員会との間の協力に関する覚書

日本国公正取引委員会とインド競争委員会との間の協力に関する覚書

日本国公正取引委員会とインド競争委員会との間の協力に関する覚書

 日本国公正取引委員会とインド競争委員会(以下「両競争当局」と総称し,個別に「競争当局」という。)は,効率的な市場の運営のための及び各国の国民の経済的厚生のための協力関係の進展を通じた,それぞれの国の競争法令の効果的な執行の分野における協力及び連絡の利益を認識し,両競争当局が,それぞれの国の法令に従い,それぞれ国の市場の効率的な機能を円滑にするため反競争的行為に対する取組により競争を促進すること及び透明性,無差別待遇及び手続の公正な実施の原則に従ってこれらの目的のために適切な措置をとることを認識し,両競争当局が,それぞれの国において効力を有する法令及びそれぞれの重要な利益に適合する限りにおいて,自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で,互いに協力し及び支援を提供することを認識し,2011年8月1日に発効した「日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定」,とりわけ,各締約国は,自国の法令に従い,両締約国間の貿易及び投資の流れ並びに自国の市場の効率的な機能を円滑にするため,反競争的行為に対して適当と認める措置をとることを特に規定する競争に関する第11章を想起し,平等及び相互の利益の原則に基づき,次の共通認識に達した。
 

パラグラフ1 定義

 この協力に関する覚書の適用上,「競争法令」とは,
(a) 日本国については,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)及びその実施について定める規則並びにそれらの改正をいう。
(b) インドについては,2002年の競争法(2003年の第12号)及びその実施について定める規則並びにそれらの改正をいう。

パラグラフ2 協力

(1) 一方の競争当局は,他方の競争当局に対し,当該他方の競争当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があると認める自己の執行活動について通報する。
ただし,当該通報が,当該一方の競争当局の国の法令に反しないこと及び当該一方の競争当局が実施している審査又は手続に影響を及ぼさないことを条件とする。

(2) 通報は,一方の競争当局が,他方の競争当局に通報する必要性を了知した場合には,速やかに行う。

(3) 両競争当局は,それぞれの国の法令及びそれぞれの重要な利益に適合する限りにおいて,かつ,自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で,次の事項に関する情報を交換する。

(a) 互いの法令,競争政策及びそれぞれの管轄における執行活動の進展
(b) 競争政策の法的枠組みの改善に関する経験
(c) それぞれの管轄における反競争的行為に対する審査の実施に関する経験
(d) 市場における競争条件の改善
(e) 競争法分野における研究の進展

(4) 両競争当局は,相互の協議に基づき,競争法令及び競争政策の実施並びにこれに関連する又は付随する事項に関して共通の関心を有する分野を決定することにより,協力の進展を図る。

(5) 両競争当局は,次のような技術協力活動の分野において協力することができる。

(a) 競争法令及び競争政策に関する研修課程であって,他方の競争当局が組織し,又は後援するものに参加すること。
(b) 研修のため両競争当局の職員を交流させること。
(c) 競争法令及び競争政策の実施に関する研修課程であって,一方又は双方の競争当局が組織し,又は後援するものにおいて,両競争当局の職員が講師又はコンサルタントとして参加すること。
(d) 適当な場合には,産業界,弁護士会,学術機関等の様々な利害関係者の間における健全な競争政策に関する理解を促進する上での支援を提供すること。
(e) 両競争当局が相互に決定するその他の形態の技術協力を行うこと。

(6) 両競争当局は,相互に関連する競争に関する事案を審査している場合には,それぞれの国において効力を有する法令及びそれぞれの重要な利益に適合する限りにおいて,かつ,自己の利用可能な資源の範囲内で,それぞれの執行活動の調整を検討する。

(7) 両競争当局は,競争法令の執行及び競争政策に係る事項に関して,互いに助言を求めることができる。
ただし,事件審査に関係する情報については,当該事件に関与した競争当局以外の者に提供せず,かつ,当該情報が提供された目的にのみ使用することを条件とする。

(8) 両競争当局は,互いの期待と要請が満たされていることを確保するため,定期的にこの協力に関する覚書に基づく協力の有効性について議論し,検討し及び評価することができる。

パラグラフ3 連絡

(1) この協力に関する覚書に基づき,相互に決定するところに従い,共通の関心事項に関して議論することに加えて,高官による定期的な会合を開催することができる。両競争当局は,当該会合において,両競争当局の間の協力を検討し,評価することができる。
 
(2) 両競争当局の職員は,競争法令及び競争政策の分野における経験を共有するために会合することができる。
 
(3) 会合のための職員の出張旅費は,当該職員を派遣する競争当局が負担するが,会合を開催するための費用は,会合を主催する競争当局が負担する。
 
(4) 両競争当局は,この協力に関する覚書に基づく協力の促進のための連絡部局を以下のとおり指定する。当該協力のための連絡は,適当な場合には,電話,電子メール,テレビ会議又は対面により実施することができる。
 
(a) 日本国公正取引委員会:事務総局官房国際課
(b) インド競争委員会:国際協力課

パラグラフ4 情報の秘密性

(1) 一方の競争当局は,他方の競争当局への情報の提供が自国の法律によって禁止されている場合又は自己の重要な利益と両立しない場合には,当該提供を行わない。

(2) 一方の競争当局は,自国の法律に従い,他方の競争当局によって秘密のものとして提供されたあらゆる情報の秘密性を保持する。

(3) この協力に関する覚書に基づいて,一方の競争当局から他方の競争当局に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については,受領する競争当局は,その競争法令の効果的な執行のためにのみ使用することができ,かつ,当該情報を提供する競争当局の書面による事前の同意なしに他の競争当局又は第三者に提供しない。

(4) この協力に関する覚書に基づいて,一方の競争当局から他方の競争当局に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については,受領する競争当局は,裁判所又は裁判官が行う刑事手続において使用しない。

パラグラフ5 実施

(1) 両競争当局は,協力活動に関する作業計画を作成する意図を有する。当該作業計画は,相互の同意により,修正することができる。

(2) この協力に関する覚書は,協力のための枠組みを構築することを意図するものである。

(3) 両競争当局は,この協力に関する覚書を実施する上での十分な裁量を留保しており,この協力に関する覚書のいかなる項目も,既存の法律,協定又は条約を変更することを意図するものではない。

(4) この協力に関する覚書は,国際条約ではない。この協力に関する覚書からはいかなる法的拘束力も強制権も生じない。

(5) この協力に関する覚書のいかなる項目も,両競争当局が他の協定,条約,取決め又は慣行に従って,並びに,自国の法令及び規則に従って他の競争当局からの支援を求めること又は他の競争当局に対して支援を提供することを妨げるものではない。

パラグラフ6 最終項目

(1) この協力に関する覚書に基づく協力は,署名の日から開始され,無期限に継続する。

(2) いずれか一方の競争当局は,90日前に他方の競争当局に対して書面による通告を行うことにより,この協力に関する覚書に基づく協力を終了させることができる。

この協力に関する覚書を終了させようとする競争当局は,この協力に関する覚書を終了する前に,他方の競争当局と協議するため最善の努力を払う。

(3) この協力に関する覚書の解釈又は適用に関するいかなる問題についても,両競争当局による相互の協議又は交渉により解決されなければならない。

(4) この協力に関する覚書は,両競争当局の相互の同意により変更することができる。

以上の証拠として,それぞれの政府から正当な権限を与えられている,下名の代表者は,この協力に関する覚書に署名した。
2021年 月 日に東京/ニューデリーにおいて,英語により本書2通に署名された。
 

日本国公正取引委員会のために インド競争委員会のために
古谷 一之 アショク クマール グプタ
委員長 委員長
日本国公正取引委員会 インド競争委員会

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