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韓国公正取引委員会との協力に関する覚書

韓国公正取引委員会との協力に関する覚書

(正文は英語であり,日本語は仮訳です。)

日本国公正取引委員会と大韓民国公正取引委員会との間の協力に関する覚書

第一条 協力の目的

1.1. この覚書は、日本国公正取引委員会と大韓民国公正取引委員会(以下「両当局」と総称し、個別に「当局」という。)との間の協力関係の進展を通じて、両国の競争法の効果的な執行に貢献することを目的とする。

1.2. 両当局は、それぞれの属する国において効力を有する法令に従って、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で、自己の重要な利益に適合する限り、互いに協力し及び支援を提供する。

第二条 反競争的行為

2. 両当局は、自国の市場の効率的な機能を円滑にするため、それぞれの属する国の法令に従い、反競争的行為に対する取組により競争を促進する。

第三条 定義

3. この覚書の規定の適用上、
(a) 「競争法」とは、
(i) 日本国については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)並びにその実施について定める命令及び規則並びにそれらの改正をいう。
(ii) 大韓民国については、独占規制及び公正取引に関する法律(1980年法律第3320号)並びにその実施について定める命令及び規則並びにそれらの改正をいう。
(b) 「執行活動」とは、当局が当該当局の属する国の競争法の適用に関連して行う審査又は手続をいい、次のものを含まない。
(i) 事業活動の監視又は通常の届出、報告若しくは申請の審査
(ii) 経済概況又は特定の産業分野における概況の調査を目的とする調査研究活動
(c) 「反競争的行為」とは、それぞれの当局の属する国の競争法に基づく当該当局による罰則又は排除に係る措置の対象となる可能性がある事業活動をいう。

第四条 通報

4.1. 一方の当局は、他方に対し、他方の当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があると認める自己の執行活動について通報する。

4.2. 前項の規定に基づく通報は、一方の当局の執行活動が他方の当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があることを一方の当局が了知した場合には、一方の当局の属する国の法令に反しないこと及び一方の当局が実施している審査又は手続に影響を及ぼさないことを条件として、できる限り速やかに行う。

第五条 執行活動における協力

5.1. 一方の当局は、自国の法令及び自己の重要な利益に適合する限り、かつ、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で、他方の当局に対しその執行活動について支援を提供する。

5.2. 一方の当局は、自国の法令及び自己の重要な利益に適合する限り、次のことを行うよう努める。
(a) 他方の当局の属する国における競争に対しても悪影響を及ぼす可能性があると認める反競争的行為に関係する自己の執行活動について、他方の当局に通報すること。
(b) 他方の当局に対し、反競争的行為に関する重要な情報(自己が保有し、かつ、自己の注意の対象となっているものに限る。)であって、他方の当局の執行活動に関連し、又は当該執行活動を正当化する可能性があると認めるものを提供すること。
(c) 要請があった場合には、この覚書の規定に従い、他方の当局に対し、自己が保有する情報であって、他方の当局の執行活動に関連するものを提供すること。

第六条 執行活動の調整

6.1. 両当局が相互に関連する事案に関して執行活動を行う場合には、次のとおりとする。
(a) 両当局は、それぞれの執行活動の調整について検討する。
(b) 一方の当局は、他方の当局の要請があった場合において、自己の重要な利益に適合するときは、自己の執行活動に関連して秘密の情報を提供した者に対し、当該情報を他方の当局と共有することに同意するか否かを照会することを検討する。

6.2. 両当局は、特定の執行活動の調整を行うべきか否かを検討するに当たり、特に次の要素を考慮する。
(a) 当該執行活動の目的を達成する上で両当局が有する能力に対して当該調整が及ぼす効果
(b) 当該執行活動に必要な情報を入手する上で両当局が有する相対的な能力
(c) いずれかの当局が、関係の反競争的行為に対して効果的な排除に係る措置を確保することができる程度
(d) 両当局及び当該執行活動の対象者にとっての費用の削減可能性
(e) 排除に係る措置の調整が両当局及び当該執行活動の対象者にもたらす潜在的な利益

6.3. 一方の当局は、他方の当局に適切な通報を行うことを条件として、執行活動の調整をいつでも限定し、又は終了し、及び自己の執行活動を独自に行うことができる。

第七条 一方の当局の属する国における反競争的行為であって他方の当局の利益に悪影響を及ぼすものに関する協力

7.1. 一方の当局は、他方の当局の属する国において行われた反競争的行為が自己の重要な利益に悪影響を及ぼすと信ずる場合には、当該反競争的行為に関する自己の執行活動から生ずる紛争を回避することの重要性及び他方の当局が当該反競争的行為に関してより効果的な執行活動を行うことができる可能性があることに留意して、他方の当局に対し、適切な執行活動を開始するよう要請することができる。

7.2. 前項の規定に基づく要請には、反競争的行為の性質及び当該要請を行う当局の重要な利益に当該反競争的行為が及ぼす影響について、できる限り具体的な説明を付するものとし、また、当該要請を行う当局が提供することができる追加的な情報その他協力についての申出を含める。

7.3. 第一項の規定に基づく要請を受けた当局は、当該要請において特定される反競争的行為に関し、執行活動を開始するか否か、又は現に行われている執行活動を拡大するか否かを慎重に検討する。当該要請を受けた当局は、当該要請を行った当局に対し、実行可能な限り速やかに自己の決定を通報する。執行活動を開始する場合には、当該要請を受けた当局は、当該要請を行った当局に対し、当該執行活動の最終的な結果を通報し、かつ、暫定的な進展のうち重要なものを可能な範囲で通報する。

7.4. この条のいかなる規定も、要請において特定された反競争的行為について執行活動を行うか否かの決定に関し、当該要請を受けた当局が自国の競争法及び自己の執行政策の下で有する裁量を制限するものではなく、また、当該要請を行った当局が当該要請を取り下げることを妨げるものでもない。

第八条 執行活動に関する紛争の回避

8.1. 一方の当局は、執行活動のあらゆる局面(執行活動の開始及び範囲に関する決定並びに各事案における罰則又は排除に係る措置の性質に関する決定を含む。)において、他方の当局の重要な利益に慎重な考慮を払う。

8.2. いずれか一方の当局が、他方の当局による特定の執行活動が自己の重要な利益に影響が及ぼす可能性があることを他方の当局に通報した場合には、他方の当局は、当該執行活動の重要な進展について適時に通報するよう努める。

8.3. いずれか一方の当局の執行活動により他方の当局の重要な利益に悪影響が及ぼされる可能性がある旨を当該いずれかの当局が認める場合には、両当局は、利害の競合を適切に調整しようとするに当たり、次の要素その他当該状況において関連し得る要素を考慮する。
(a) 執行活動を行う側の当局が属する国における行動又は取引が、反競争的行為について、他方の当局が属する国における行動又は取引に比して有している相対的な重要性
(b) 反競争的行為がそれぞれの当局の重要な利益に及ぼす相対的な影響
(c) 反競争的行為に関与している者が、執行活動を行う側の当局が属する国における消費者、供給者又は競争者に影響を及ぼす意図を有することに関する証拠の存否
(d) 反競争的行為がそれぞれの国の市場における競争を実質的に減殺する程度
(e) 一方の当局の執行活動と他方の当局が属する国の法令又は他方の当局の政策若しくは重要な利益との間の抵触又は一貫性の程度
(f) 私人(自然人か法人かを問わない。)が両当局による相反する要求の下に置かれることとなるか否か。
(g) 関連する資産及び取引の当事者の所在地
(h) 当局の執行活動が、反競争的行為に対する効果的な罰則又は排除に係る措置を確保することができる程度
(i) 同一の者(自然人か法人かを問わない。)に関する他方の当局の執行活動が影響を受ける程度

第九条 年次協議

9.1. 共同して別段の決定を行わない限り、両当局は、少なくとも年一回、次の目的のために協議を開催する。
(a) それぞれの国の競争法に関連する執行努力及び重点事項の現状に関する情報を交換すること。
(b) 共通の関心を有する事業分野に関する情報を交換すること。
(c) 両当局が関心を有する政策事項について討議すること。
(d) その他それぞれの国の競争法の適用に係る事項であって両当局が相互に関心を有するものに関して討議すること。
(e) 両当局間の協力関係に関連することのある他の二国間又は多国間の場に関する進展について討議すること。
(f) その他両当局により共同して決定された事項について討議すること。

9.2. 両当局が共同して別段の決定を行わない限り、前項に規定する協議は、日本国及び大韓民国において交互に開催される。

第十条 情報交換

10.1. 両当局は、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で、以下の分野において協力する。
(a) 競争政策及び競争法執行に係る重大な進展について、並びに、情報の秘密性に係る法令の修正について、相互に継続的に情報提供すること。
(b) 適当な場合には,競争法執行の経験を交換すること。
(c) 競争政策及び競争法執行に関する情報を相互に求めること。

10.2. 両当局は、この覚書に基づく協力の促進のための連絡窓口を以下のとおり指名し、当該連絡窓口間の効果的な情報交換及び協力を確保する。それぞれの当局の連絡窓口は以下のとおりとする。
(a) 日本国公正取引委員会については、事務総局官房国際課
(b) 大韓民国公正取引委員会については、競争政策局国際協力課

10.3. 両当局間の情報交換は、適切な場合には、電話、電子メール、テレビ会議、会議、又は他の手段で実施することができる。

第十一条 情報の秘密性

11.1. 一方の当局は、当該当局の属する国の法令に従い、他方の当局がこの覚書の下で秘密のものとして提供するあらゆる情報の秘密性を保持する。

11.2. この覚書の下で一方の当局から他方の当局に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については、受領した当局は、その競争法の効果的な執行のためにのみ使用するものとし、かつ、他の当局又は第三者に開示してはならない。

11.3. この覚書の他の規定にもかかわらず、いずれの一方の当局も、その国の法令によって禁止されている場合又は自己の重要な利益と両立しないと認める場合には、他方の当局に情報を提供することを要しない。

11.4. この覚書の下で一方の当局から他方の当局に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については、受領した当局により、当該受領した当局の属する国の裁判所又は裁判官が行う刑事手続において使用されてはならない。

11.5. この条の規定は、情報を受領した当局が、自国の法令により要求される限度において、この覚書に基づき提供された当該情報の使用又は開示を行うことを妨げない。そのような場合には、当該受領した当局は、可能な限り、情報を提供した当局に対し当該使用又は開示について事前に通報する。

第十二条 雑則

12.1. この覚書のいかなる規定も、法的拘束力のある権利又は義務を創造するものではない。

12.2. この覚書に基づく全ての協力は、それぞれの属する国において効力を有する法令に従い、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で実施される。

12.3. 両当局は、この覚書に関するいかなる問題についても協議する。

12.4. この覚書を実施するための細則は、必要に応じて、両当局が共同して決定することができる。

第十三条 開始、終了及び変更

13.1. この覚書に基づく協力は、両当局の代表者による署名により開始される。

13.2. いずれかの当局は、他方の当局に対し、少なくとも30日前に自己の意図を文書で通告することにより、この覚書に基づく協力を終了させることができる。

13.3. この覚書は、両当局の文書での同意により変更することができる。

2014年7月25日に日本国東京において、英語により2通署名された。

日本国公正取引委員会のために
大韓民国公正取引委員会のために

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