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日本・シンガポール新時代経済連携協定 実施取極

日本・シンガポール新時代経済連携協定 実施取極

 (正本とは形式面で異なります。)

第五章 競争

第十五条 第五章の目的

 この章は、基本協定第百四条に規定する協力の実施を目的とする。

第十六条 第五章における用語

 この章の規定の適用上、
(a) 「連絡官庁」とは、次のものをいう。
(i) 日本国については、公正取引委員会
(ii) シンガポールについては、シンガポール競争委員会

(b) 「反競争的行為」とは、各締約国の競争法により罰則又は排除に係る措置の対象とされる行動又は取引をいう。

(c) 「競争法」とは、次のものをいう。
(i) 日本国については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)並びにその実施について定める命令及び規則
(ii) シンガポールについては、電気通信法(第三百二十三章)に基づく電気通信サービスの提供における競争の実施規則、電気法(第八十九章のA)第七章「競争」、ガス法(第百十六章のA)第九章「競争」及び競争法(第五十章のB)

(d) 「実施当局」とは、次のものをいう。
(i) 日本国については、公正取引委員会
(ii) シンガポールについては、電気通信の分野においてはシンガポール情報通信開発庁、電気及びガスの分野においてはシンガポールエネルギー市場庁並びに競争法(第五十章のB)により規制される分野においては競争委員会

(e) 「執行活動」とは、締約国政府の実施当局が自国の競争法に基づいて行うすべての審査、捜査その他の手続であって、次のものに該当しないものをいう。
(i) 事業活動の監視又は通常の届出、報告若しくは申請の審査
(ii) 全般的な経済概況又は特定産業の概況についての調査研究活動
(iii) 刑事手続

(f) 「重要な利益」とは、この章の規定に基づく協力活動を行う締約国政府が重要と認める利益をいう。

第十七条 通報

1 各締約国政府は、他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼすことがあると認める自国政府の執行活動について、当該他方の締約国政府に通報する。

2 他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼすことがある執行活動は、次のものを含む。

(a) 当該他方の締約国政府の執行活動に関連する執行活動
(b) 当該他方の締約国の国民又は当該他方の締約国の領域における関係法令に基づいて設立され若しくは組織された会社若しくは団体に対して行われる執行活動
(c) 企業結合以外の反競争的行為であって、その実質的な部分が当該他方の締約国の領域において行われるものに関する執行活動
(d) 企業結合であって、当事者の一若しくは二以上又は当事者の一若しくは二以上を支配する会社が当該他方の締約国の領域における関係法令に基づいて設立され又は組織された会社である場合に関する執行活動
(e) 当該他方の締約国政府が要求し、奨励し又は承認したものと一方の締約国政府が認める行為に関する執行活動
(f) 当該他方の締約国の領域における行為を要求し又は禁止する排除に係る措置を含む執行活動

3 1の規定による通報は、一方の締約国政府の連絡官庁が、他方の締約国政府の重要な利益を考慮して、できる限り速やかに行う。

4 通報の内容には、詳細(当該通報を行う締約国政府の判断として、当該通報を受ける締約国政府がその重要な利益への影響について当初の評価を行う上で十分と認められるものとする。)を含める。

第十七条のA 透明性

 各締約国政府は、次のことを行う。

(a) 自国の競争法の改正及び反競争的行為を規制する新たな法令の制定について他方の締約国政府に速やかに通報すること。
(b) 適当な場合には、自国の競争法に関連して発出し及び公表したガイドライン又は政策声明の写しを他方の締約国政府に提供すること。

第十八条 第五章の下での情報交換

 各締約国政府は、自国の法令及び自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、かつ、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内において、次のことを行うよう努力する。

(a) 他方の締約国の領域における競争に対しても悪影響を及ぼす可能性があると認める反競争的行為に係る自己の執行活動につき、他方の締約国政府に通報すること。
(b) 反競争的行為に関する重要な情報(自己が保有し、かつ、その注意の対象となっているものに限る。)であって、他方の締約国政府の執行活動に関連し又はその執行活動を正当化することがあると認めるものを、当該他方の締約国政府に提供すること。
(c) 要請に応じ、かつ、この章の規定に従い、自己の保有する情報であって他方の締約国政府の執行活動に関連するものを、当該他方の締約国政府に提供すること。

第十九条 技術支援

 各締約国政府は、反競争的行為を規制する法令の効果的な運用及びその制定のため、他方の締約国政府に対し技術支援を行うことができる。

第二十条 情報の提供に関する条件

1 この章の規定に従って一方の締約国政府から他方の締約国政府に提供された情報は、当該一方の締約国政府が別段の承認を与える場合を除くほか、

(a) 当該情報を入手した締約国政府の実施当局により当該締約国の競争法の効果的な執行のためにのみ使用される。
(b) 第三者に伝達されてはならない。

2 各締約国政府は、この章の規定に従って他方の締約国政府から秘密として提供されたあらゆる情報の秘密を保持する。ただし、当該他方の締約国政府が情報の開示に同意した場合には、この限りでない。

3 各締約国政府は、秘密の保持又は情報の使用目的の制限に関して自己の要請する保証を他方の締約国政府から得ることができない場合には、当該他方の締約国政府に提供する情報を限定することができる。

4 この章の他のいかなる規定にもかかわらず、一方の締約国政府は、自国の法令によって禁止されている場合又は自己の重要な利益と両立しないと認める場合には、他方の締約国政府に情報を提供することを要しない。

第二十一条 刑事手続における情報の使用

1 この章の規定に従って提供された情報は、提供を受けた締約国政府によって裁判所又は裁判官の行う刑事手続に使用されてはならない。

2 この章の規定に基づき一方の締約国政府が入手した情報が裁判所又は裁判官が行う刑事手続において提供されることが必要とされる場合には、当該一方の締約国政府は、外交上の経路又は他方の締約国の国内法に定める経路を通じ、当該他方の締約国政府に対して当該情報を提供するよう要請する。当該他方の締約国政府は、当該一方の締約国政府が示す正当な期限内に迅速かつ好意的に回答を行うよう最善の努力を払う。

第二十二条 第五章の適用範囲

1 第十七条及び第十八条の規定は、電気通信、ガス及び電気の分野についてのみ適用する。

2 両締約国政府は、1に定める協力の範囲の拡大のためにこの章の規定を改正することの要否を検討するため、相互に協議することができる。

第二十三条 見直し及び協力の拡大

1 両締約国政府は、この取極の効力発生後三年以内に、第十七条及び第十八条の規定に基づく協力について見直しを行う。

2 1に規定する見直しに当たっては、両締約国政府は、この章の規定に基づく協力を拡大し、次のいずれかに掲げる活動を行うことについて検討を行うことができる。

(a) 執行活動の調整
(b) 積極礼譲
(c) 消極礼譲

3 2の規定によるいかなる協力の拡大も、両締約国の関係競争法令及び両締約国政府の利用可能な資源の範囲内で行われる。

第二十四条 第五章の下での協議

 両締約国政府は、この章の規定の適用に関して生ずることのあるいかなる事項についても、必要に応じ協議することができる。

第二十五条 連絡

 第十七条、第十七条のA及び第十八条の規定による連絡は、両締約国政府の実施当局間において、連絡官庁を通じて直接これを行うことができる。ただし、第十七条の規定による通報は、外交上の経路を通じ、書面によって確認されなければならない。その確認は、該当する連絡が両締約国政府の連絡官庁間において行われた後できる限り速やかに行われるものとする。

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